玩具が安くても、主役を張れるキャラクター達

サイバトロン・ミニボット部隊
「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」登場人物群



皆さんはロボットアニメにおいて、視聴者の分身ともいえる主役級の人間との絡みが一番濃厚に描かれているロボットといえば、どんなものを連想するだろうか?多くの場合はよく目立つ大型のロボットか、小型のロボットであっても大型ロボットの中核をなすものを想像するだろう。そしてそういったロボットは、玩具が高価だったりするのではないだろうか。ロボットアニメが「30分オモチャCM」である以上、利潤を上げるために、最も高価な商品のプロモーションに力を入れるのは当然のことである。だが、トランスフォーマー(以下TF)シリーズ第1作「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」ではどうだったのかというと、なんとその正反対だったのである。

主役級の人間・スパイクの親友として描かれたロボットは、善の軍団サイバトロンの中では最も小さく、そして玩具が500円と最も安いキャラクターである情報員バンブルだった。決して3900円(バンブルの8倍弱)もするコンボイ司令官ではなかったのである。これは明らかにロボットアニメの常道を逸した描写である。バンブルだけではない。彼の属する小型ロボットチームであるミニボット部隊は、どのメンバーも決してないがしろにされず、要所要所で活躍していた。主役となるエピソードを与えられた人物も少なくない。なぜ、そのような小さく、玩具も安いキャラクターをそこまでしっかり描いたのだろうか。

まず考えられるのは、彼らは小さいがゆえに、人間を含む地球の生物たちと絡めやすかったという点である。ご存知のように、トランスフォーマーというロボットは、機械の肉体を持った巨大な宇宙人である。標準体型であっても、人間に比べはるかに大きく、威圧感を与えやすい(参考までに、標準的な体格のデストロンであるスタースクリームの身長は7mである)。これよりはるかに小さく、人間よりわずかに大きい程度であるミニボットは、人間等と絡めやすかったのである。戦士パワーグライドと人間の令嬢アストリアとの恋を描いた第37話「令嬢より愛をこめて」や、自然の楽園が戦略的価値のために戦火に覆われ、焼け野原になる様を、自然を愛する地質学者ビーチコンバーの視点から描いた第31話「ゴールデンラグーンの秘密」は、その代表格といえるだろう。

もう一つ考えられることは、TF発祥の地であるアメリカのお国事情である。自由主義の雄であるアメリカは、富める者とそうでない者の格差が激しい国である。放映当時の日本のような、国民総中流の国とはわけが違うのだ。よって、子供の玩具にかけられる予算は、家庭によって天と地ほどの差が存在する。コンボイ司令官やメガトロン様、さらには両軍リーダーより高価な合体戦士も買ってもらえる子供もいれば、ミニボットを1体でも買ってもらえれば御の字な子供もいるのである。もしも劇中で玩具の高価なキャラクターばかりが目立ち、ミニボットがモブキャラ扱いであれば、後者に当たる子供たちは落胆し、TFに見向きもしなくなるだろう。だが、玩具の安いキャラクター1体たりともおろそかにせず、1体1体の個性を立たせるように描けば、たとえミニボット1体しか買ってもらえなくても、劇中での活躍と重ね合わせ、子供は喜んで遊ぶのだ。

繰り返しになるが、ロボットアニメは「30分オモチャCM」である。日本のアニメ作家たちがこの現実に「30分オモチャCMだって、ここまでできるんだ!」と戦いを挑み続け、綺羅星のごとき名作を生み出してきた一方、TFスタッフたちは「玩具1つたりとも死筋にしない、最高の30分オモチャCMを作ろう」と、この現実を丸呑みにし、「TFイズム」とも言うべき独特の美学を作り上げたのだ。ミニボット部隊は、そんな「TFイズム」の体現者たちだと言えるだろう。


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