高町ひよりさんの投稿作品

モモタロス
(「仮面ライダー電王」のイマジン)
…言っておくが俺は最初からクライマックスだぜ!
 
平成ライダー「クウガ」から続く第8作目であり異色作とされている事でも話題になったライダーだ。
異色とされている由縁として挙げられるのはまず、モチーフとして「電車」、怪人には「おとぎ話に登場する生物」というライダー作品としては奇抜なものを取り入れている事だろう。
これは音楽関連にも言える事で、主題歌も従来のケレン味の強いものでなく軽快なアップテンポで「いーじゃん!いーじゃん!スゲーじゃん!?」といった台詞が印象に残る。(後に声優陣が歌う「DEN-LINERform」も強烈に濃い歌声だったり(笑))

ライダーのデザインが「ナンデモアリ」になってきたのは、恐らく電王の脚本を担当した小林氏が同じ平成ライダーで脚本を請け負った「龍騎」からではないかと思われる。そういえば、主人公の環境や設定には「龍騎」と共通する部分がいくつか見られ、例えば主人公がタイプは違うものの、基本的に「へタレ」であったり喫茶店で働いていたり、更には「怪人と契約」等がそうである。そして、この怪人達というのが中々の曲者揃いでこの「電王」という作品の人気を担った最大の要因であるのは間違いない。

短気かつ好戦的でイマジンの使命などどうでもよく「強くカッコよく戦う」という事を信条とする桃太郎の鬼をイメージしたモモタロス
冷静沈着で頭の回転が速いが、キザで自信家でその上女好きな浦島太郎の海亀の様相をしたウラタロス
人情に脆く世話好きで責任感が強いがどこかズレている部分があり問題を引き起こす金太郎の熊を連想させるキンタロス
口調は無邪気で性格は我儘で気分屋な甘えん坊。行動も強引で一方的な正に子供である龍の子太郎を具現化したリュウタロス

この他にも作中の二号ライダーであるゼロノスこと桜井侑斗と行動を共にする、まるで彼の母親のように世話を焼くデネブ(ファンや関係者等からおかんと呼ばれている)や、自身を「プリンス」と称して高飛車な振る舞いを好むジーク等、アクの強いキャラ達がハチャメチャな正に「お祭り騒ぎ」を繰り広げるのである。

こういったキャラを演じる役者の演技力も目を見張るものがあるのではないだろうか?作品内で良太郎は上記に挙げたイマジン全てに憑かれる訳で、その度に主人公のキャラが変わるのだが。それを見事特徴を損なう事なく良太郎自身のキャラも含めば計7役を一作品内で演じきっている佐藤氏には最早脱帽するしかない。
スーツアクターである高岩氏の演技も巧みであり

「バリバリの喧嘩殺法で戦うソードフォーム」
「スマートな戦法を行いライダーキックを放つロッドフォーム」
「屈強なパワーと鋼の肉体で迫るアックスフォーム」
「ダンスを取り入れた銃撃戦と格闘戦で反撃の隙を与えないガンフォーム」

とイマジン達の個性を生かしたライダーのデザイン、戦闘演出は見ていて飽きない。多段フォームを駆使する場合大抵色違いと細部の変更が定番であったが、電王の場合は外見も完全に別物となるのだ。しかも各フォームごとに「Double-Action」というED曲を各キャラに合わせたアレンジが施されているのを流すのも特徴である。

これに加え、全フォームを集約させた「クライマックスフォーム」や良太郎自身が戦う「プラットフォーム」「ライナーフォーム」もありそれら全てにそのキャラらしさが出ており、「ああ、これ本当に○○が戦ってるんだな」と感じる事ができる説得力ある戦い方には目を見張るものがある。更に戦隊ヒーローのように所謂「ロボットに人が乗って戦う」的な「電車に乗って怪物を撃退する」という電車戦パートが設けられたのも画期的な試みであるといえよう。

次にストーリー面であるが平成ライダーに見られるハードな展開や複雑な伏線はあるものの、それは控えめにされ、単純明快な作風となっており各キャラの特徴を生かしたエピソードが多い。メインに絡んでくる要素は「人の記憶」や「時間」といった言わば「神の領域」のような曖昧なものであり、だからこそ中盤でヒロイン役が体調不良で交代してしまった時も、時に関する知識が最も豊富と思われるデンライナーのオーナーがそれっぽい理由を言っておけば納得出来るようになっているのである。(無論交代後の子役の演技も一役買っているが)

クライマックスフォームへのパワーアップもただ強くなるだけでなく、消えてしまった仲間を取り返すといった要素が強く、その時の演出も普通なら燃えるようなカッコ良いものであると思いきや、何が起こっているのか分からずガタガタ怯えながら(!)

「皮が剥けたぁぁ!?」

等と言ってしまう非常に面白い演出がなされているのだ。更に平成ライダーでおざなり気味であった「ヒーローの孤独感」といった部分にも力を入れている。ゼロノスである桜井侑斗は電王と違いゼロノスカードという「記憶」を消費して変身している。つまり、侑斗が変身する度に侑斗の記憶が人から失われてしまうのだ(自分の未来の婚約者ですら)。だから、デネブは自作の飴玉を渡し「侑斗をよろしく!」と彼を人に覚えて貰う為に必死だったのである。そんな本作のラストは平成ライダーでありがちな何かしこりが残るような結末でなくイマジン達の乗るデンライナーを見送るという清涼感の吹き抜ける心地良いものだ。

この作品もまたバカ騒ぎの中にキラリと光る魅力を持つ「仮面ライダー」なのである。

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