ゲリググ氏ヒロインを語る

音無響子
「めぞん一刻」ヒロイン

いつも他の人よりも余計に苦労を背負ってしまう、気苦労の多くてさえない、だけど、それゆえに日々を素朴で素直に生きている青年、五代優作。
そして、ヤキモチ焼きで、何でも物事をすぐに早とちりしてしまい、周囲を自分のワガママで振り回してしまう、でも、本当はとても優しくて、心がまっすぐで、若くして一生添い遂げるつもりだった夫を亡くしても毎日けなげに頑張っていて、美人と呼ぶよりもあらゆる面でカワイイという表現が似合う女性、音無響子。
「めぞん一刻」はこの二人を中心に、個性的な一刻館の住人とその他様々の魅力的な人達を巻き込んで繰り広げる、騒々しくも優しい、ラブコメ至上最高の一つに挙げられる不朽の名作です。

物語は響子さんが夫である総一郎さんを事故で失ってあまり日のたたないままに管理人として一刻館にやって来るところから始まります。その総一郎さんのことがあるので、響子さんは当初、普段の何気ないしぐさの中にもどこか影を持ち、ずっと総一郎さんのことを想い続けて生きていこうとしています。

五代君はそんな事情があるとは知らず、響子さんに一目ぼれをしてしまいます。受験浪人という立場にあるにもかかわらず響子さんの事が気になって舞い上がります。そんな五代君を一刻館の住民はからかったり、おもちゃにしたり、酒の肴にして遊ぶというドタバタした毎日の中で、日は過ぎていきます。

さて、この様なドタバタは五代君が大学に合格してからも変わらないのですが、ちょっと興味深い出来事がおきます。
五代君は比較的早い時期(物語を通して見た時期、という意味)に響子さんが好きだという事を告白するのです。とはいっても、酒に酔った勢いだった上に、近所中に知られてしまうほどの大声で、しかもそのまま響子さんに襲いかかってしまうという最悪なものでしたが。結局、情けなくも泥酔いしていた五代君は思いを果たせず、またもや一刻館の住民にとって彼をからかう格好のネタにされてしまい、それでこの事件はうやむやになりますが、少なくとも響子さんは五代君が自分に興味があるということをこの事件をきっかけに知ってしまうのです。

物語はこれから先ずっと続いていくわけなのですが、五代君が自分の事が好きなのだということを知った響子さんはこれからずっと総一郎さんへの思いを中心に五代君と、この騒ぎをきっかけに近所の人に誘われて通うことになったテニスクラブ先のコーチの三鷹さんの気持ちの間でゆらゆらと揺れ続けるのです。

ここで三鷹さんが出てきましたが、この人は私が響子さんを語る上で重要なキーパーソンになる二人の人物のうちの一人です。
響子さんの、総一郎さんだけを想って生きていこうとする姿勢を、表面だけでも総一郎さんと出会う前の日々の生活態度に戻したきっかけは間違いなく三鷹さんの存在です。テニスやデートに強引とも思えるようなやり方で響子さんを連れ出し、なんとか響子さんの気持ちをこっちに向かせようとする手腕は彼のプレイボーイ(死語!)としての軽さと才能を超えた真剣さを感じます。その真剣さが見えるからか私はその行動には不快さを感じず、むしろ一人の女性のために時にはマメに、時には打算的に動く三鷹さんに強く愛着がわきました。
陽気でめげない二枚目な三鷹さんゆえにその行動は時として作品のギャグに使われ、結果的に五代君の引き立て役という立場から脱却できませんでしたが、五代君だけでは響子さんとこうもうまくゴールできなかったと思います。
まさしく、彼は五代君にとっていい刺激をくれたライバルであり、響子さんにとってもう一人の好きになるかもしれなかった人です。

もう一人のキーとなる人は五代君のおばあちゃんです。これは作者が故意にやっているのか、五代君のおばあちゃんは五代君の人生の岐路、特に響子さんとの仲の進展にかかわる話に数多く登場しています。
おばあちゃんは意図してやっているのかどうかは、ともかく、五代君が響子さんとちょっとした仲たがいしたときにも、何か他の騒ぎを起こしてうやむやにかき消しています。おばあちゃんにしてみると、自分が育てた五代君が幸せになってほしいのは当然のことで、時々一刻館に来て五代君の部屋に居ついては五代君のために響子さんやガールフレンドのこずえちゃんとの仲を進展させようとちょっかいをかけたりします。五代君も迷惑そうにしていますが、自らがおばあちゃんっ子だったと言っている通りおばあちゃんにはかなわないようです。

変な言い方になりますが、響子さんを五代君の家族へ最初に引き入れ、そのように扱ったのもおばあちゃんです。何度も会っていたという事もあったのでしょうが、普段なら緊張する、結婚前の五代君の家族との顔合わせをする日にも何の遠慮もなく響子さんに実家の店の手伝いをさせます。遠慮もなく平気でこういう扱いができるのは、まさしくおばあちゃんの器の大きさでしょう。響子さんも助かったと思います。
この後、響子さんに自分の大事な指輪を形見として渡し、五代君を頼むと頭を下げるという、重要な感動のシーンがあるのですが、それよりも前のおばあちゃんなりの家族と響子さんへの気の使い方に感動してしまいました。もちろんこの二人のほかにも様々な人たちに優しく、時には厳しく見守られながらも紆余曲折を経て響子さんはもう一度幸せを手に入れるのですが、今度こそ、不幸な出来事が彼女に訪れないことを願います。

もちろん、ただのマンガのキャラクターだとはわかっています。しかし、うまく説明できませんが読む人にそのように思わせる何かを彼女は持っています。それが彼女の魅力であり、今もなお支持される理由ではないでしょうか。その理由の一端でも私のこの感想から読み取ってもらえましたら幸いです。・・・・・・決して私はマンガに必要以上にのめりこむアブナイ人ではありません、念のため。


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