ゲリググ氏の投稿作品

モロボシ・ダン
「ウルトラセブン」主人公

宇宙から次々とやってくる侵略者との戦いに備えて地球人は、我が星を守る為一致団結して地球防衛軍を設立した。今この世の現状に照らし合わせてみると、痛烈な皮肉と取ることが出来てしまう設定の中でスタートしたウルトラシリーズ屈指の名作「ウルトラセブン」。今でも幅広いファン層に支持されている永遠のヒーローだ。だがこの作品が放映されていた当時、文字通り兄弟作品である「ウルトラマン」の平均視聴率と比べると各段に低かったのである。

その理由はいくつかあると思うが、その中でも世間で最も広く取り上げられている説にストーリーが子供向きではなかったというのがある。「ウルトラセブン」が子供向けかそうではないかという論議はここでは関係ないと思うので割愛させていただくが、確かに作品1話1話に込められたテーマは重く深い。(特に名脚本家である故・金城哲夫氏の力は凄い!)もので、私が今見ても難しくて頭が痛くなる話がいくつもある。

そして、この物語を良くも悪くもより深いものにしているのが、今回語らせていただく「ウルトラセブン」の主人公「モロボシ・ダン」その人である。モロボシ・ダンはもともと地球の平和を守るのが目的で地球へやってきたのではない。本来、ウルトラセブンこと恒点観測員340号はM78星雲より軌道図作成の為派遣されてきたのである。その時にセブンは、登山中自らの身を犠牲にして仲間の命を救おうとした青年「薩摩次郎」の勇気ある精神に心を打たれ、以後彼の姿をコピーして人間に変化し、モロボシ・ダンと名乗ったのである。その後、ある宇宙人の撃退に協力したダンは地球防衛軍のエリート集団である「ウルトラ警備隊」に入り、地球を宇宙人の侵略から守るために戦うことになる。

余談になるが、宇宙人である彼はどのようにして地球防衛軍に入隊したのか疑問である。やはり地球防衛軍、それもエリートであるウルトラ警備隊に入るのだから色々な意味でチェックが厳しいだろうことは想像に難くない。大槻教授じゃないけど住民票の問題はクリア出来たのだろうか。また、彼の履歴書というのも是非見てみたいものである。

地球人の為に地球を守っていく決意を固めたモロボシ・ダンではあったが、全てが例えば、まるでゲームのような感覚で地球侵略を企む宇宙人なら容赦しなくていいので単純で楽だろう。しかし時に自分の存在について思い悩む姿が作中で度々見られた。地球人には皆が住んでいる地球を守るという主張があるのと同様に、やはり宇宙人にもどうしても地球を侵略せざるを得ない立場でやってくるというケースもあるのだ。このことは世界の歴史を見れば人間同士が現実にもこういう侵略のケースがあったりするので理解して頂けると思う。そういう何が何でも地球を守るという地球人と、何らかの事情で地球を侵略、または破壊してしまわなければならないという宇宙人の間で、全くの第三者的な立場にあるモロボシ・ダンは悩み苦しむのだ。

それぞれ違うどちらも正しい言い分、言い換えれば2つのエゴがぶつかる時、自分は一方の「正義」の為だけに戦っていいものかと…。これが素晴らしい心の葛藤を生み出し、それによって堪らなく面白いドラマとなり、こういう主人公だからこそ私達視聴者は感動するのである。

前にも述べている通り、モロボシ・ダンはヒーロー物にはお約束である勧善懲悪の趣をかなり逸脱しているヒーローなのである。このような異なる2者のエゴに悩むストーリーは他のウルトラシリーズでもタマには取り扱ってはいるが、この「ウルトラセブン」ほど成功させてはいない。理由は簡単である。これはとても大事なことなのだが、モロボシ・ダンはウルトラシリーズで唯一、セブン自身が1人で地球人に変化した姿なのである。他のウルトラシリーズのヒーローは皆、地球人に取り憑いている(?)のだ。つまり、ダンだけが唯一「宇宙人」の立場で我々地球人を見ているのである。自分自身の、時に独善的な正義で地球人への「助太刀」の是非に苦悩するヒーロー、モロボシ・ダン…なんともカッコ良いじゃありませんか!!こういうある意味で人間よりも人間臭いヒーローはなかなかいないのではないだろうか。

モロボシ・ダンを語るときにもう一つ忘れてはいけないのが同じくウルトラ警備隊にいる恋人、アンヌ隊員である。とにかくかわいい人で、いつ見てもこの人は素直に美人だと思える憧れの人である。彼女とダンのやり取りは文字通り、一昔前の淡い素朴なカップルといった感じでとても微笑ましく映るので、そういう場面は少ないが、タマに出てくるととてもホッとしてしまう。この2人で特に忘れてはいけないのが最終回の別れのシーンである。これは今でも時々TVでやる「なつかしのヒーロー特集」といった類の番組で「ウルトラセブン」を紹介する際、必ずと言って良いほど出てくるのだ。ちなみにその時の銀幕をバックにしたシルエットのシーンは当時のテレビの技術者を唸らせたほどの出来だったそうである。

最後に一つだけ。ダンはとても女性に甘い。いや、弱いといった方が良いかもしれない。作中でもよく女性に化けた宇宙人等に騙されて、変身道具を盗まれるなどの危険な目にあっているのである。やはりいくらウルトラ一族でも女性に弱いのは地球人と同じ。いや、ダン性の性か…お粗末。


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