殴り合う最新鋭バルキリー

YF−19&YF−21
「マクロスプラス」試作AVF

「機動戦士ガンダム」以降のリアルロボットブームの中でもトップクラスの人気を誇った作品、「超時空要塞マクロス」は、その卓越したメカニカル描写と派手な戦闘演出、そしてそこに描かれる主人公「一条輝」と人類を救ったスーパーアイドル「リン・ミンメイ」、そして輝の上官「早瀬美沙」の複雑に絡み合う三角関係が話題を呼び人気を博した。

もっとも、劇場版の「愛・おぼえていますか」以降はファンの期待とは裏腹に、「バンダイのガンダム」程の展開は行われていなかった。よく、「マクロスって名前は知ってるけど、どんなのかは忘れちゃった」等と言う意見を耳にするのもこういった背景があるのだろう。だからといって、「愛・おぼえていますか」以降、唯一テレビにて放送された「マクロス7」をマクロスのスタンダードと考えてしまうのはかなり危険な思想であるとは思うが…。

そんな中、「マクロス」の放映から10年の月日が過ぎ去り、「ロボットアニメ」というジャンル自体が廃れかかった時代に今回紹介する2機のバルキリーの登場する作品「マクロスプラス」のリリースが開始された。そして同時期に兄弟作品とも言える「マクロス7」のTVシリーズ企画もスタートしていた。奇しくもこの2年前、「機動戦士ガンダム0083」がリリースされ、「当時のファンへの新たなるガンダム」として人気を博した。つまり、「マクロスプラス」も「0083」と同様に、「当時のファンへの新しいマクロス」であったのだ。

いわゆる「ミンメイ・アタック」から30年後を舞台とした「マクロスプラス」は、前作とは違い歌を生身のアイドルには歌わせず、敢えてバーチャロイドアイドル「シャロン・アップル」に歌わせている。しかしその歌は人類を導くどころか暴走を始め、未曾有の大参事への引き金となってしまう。その暴走を食い止めた男に聞こえたのは、シャロンのまやかしの歌声ではなく、夢を捨てた幼馴染の、青春時代と変わらぬ歌声だった…。

「マクロスプラス」は、当時のファンにこんなホロ苦い青春への郷愁のような淡い抱かせてくれる。

さて、本題に入ろう。本作の最大の見せ場であるクライマックス、イサムとガルドの因縁の大喧嘩の主役となるのが今回紹介する「YF−19」と「YF−21」である。この2機は物語の舞台である惑星エデンにおいて行われた「プロジェクト・スーパーノヴァ」と呼ばれる次期主力可変戦闘機(AVF)のトライアル用に開発された最新鋭のスーパーメカニックである。この惑星エデンにて行われた「プロジェクト・スーパーノヴァ」と、「シャロン・アップルのコンサート」という一見まったく接合性のなさそうな事件が、実はイサム&ミュン&ガルドという三角関係という見えない糸で繋がっているというのが何とも面白い。

最初に2機の特徴を簡単に説明しておこう。

YF−19(エクスカリバー)は「マクロスプラス」時代に普及している戦闘機「VF−11」の主開発会社である「新星インダストリィ社」が試作した次世代の可変戦闘機である。超AI制御のアビオニクスを登載し、飛行データーから機体制御を学習することが出来る。つまり、あらかじめエース級のパイロットにて学習を積んだプログラムさえあれば、そのデータのサポートにより未熟なパイロットでもエース級の戦闘能力を発揮出来るのだ。もっともこのシステムは企画段階で「パイロットに違和感を与える」とされた為パイロットの技量に合わせリミッターがかけられ、パイロットの操縦技術の限界範囲内での最高の機動力を発揮するようになっている。

もちろん次世代機の条件であるピンポイントバリアシステムの標準装備や、フォールドブースターの装備も可能であり、反応弾兵器を使用すれば、単機にて敵艦艇へ突入し破壊することが可能である。外観上での最大の特徴は前進翼の採用であるが、その他にもバトロイド形態においてのコクピットの保護を従来のシャッター式ではなく機体内部へ収納する形を採っており、パイロットの生存率を高めている。正に、YF−19は今までの可変戦闘機の集大成的な機体と言えるだろう。

YF−21(シュトゥルムヴォーゲル)は「ゼネラルギャラクシー社」の開発した新世代可変戦闘機であり、最大の特徴は「BDI」と呼ばれる脳波コントロールシステムの採用であろう。このシステムによりパイロットと機体の反応性は各段に向上するが、その制御には非常に高い忍耐力と精神力が必要である。その為非常にパイロットを選ぶ機体である。

その他にもゼントラーディやメルトランディの技術を様々な形で取り入れており、クアドランローの姿勢制御システムを参考としている為、特にバトロイド形態は従来のバルキリーとはかなり異質なイメージを受ける。もちろんピンポイントバリアシステムを標準装備しており、フォールドブースターの装備が可能。19よりも高出力のエンジンを搭載しており、火力も高い為AVFの基本運用構想である敵艦艇への一撃離脱という面ではYFー19より優位にあるが、その反面軽快さ、そしてBDIという複雑なシステムの採用によりコスト面では一歩譲る。

と、まぁだいぶ端折った説明ではあるが、2機の個性分けは理解して頂けたと思う。

ここで注目すべきは、作中この2機が実は搭乗者に併せた個性分けが成されている点である。
それは2機の外観にも見て取れる。大空に対して強い憧れを持つイサムの乗る19のカ前進翼を持つシルエットは彼が憧れるエデンの巨大竜鳥を思わせるし、ゼントラーディの血を引くガルドの乗る21は従来とは異なりゼントラーディ兵器的なシルエットが特徴的である。

更にシステム的にも飛行機を操縦するという行為自体を愛しているイサムの19は飛べば飛ぶ程機動が洗練されていく学習型コンピューターを持つ。対するガルドの21は沈着冷静な彼自身しか操れないBDIという特殊なシステムを持つが、そのシステムは記憶を消し、不安定になっているガルドを象徴するように非常に繊細で、脆い…。

この「YF−19」「YF−21」両機の搭乗者に直結させた個性、設定はロボットアニメの魅力の根源である、「ロボット=自分自身」というものを上手くかもち出しているのだ。

祖父の作った「マジンガーZ」で戦うのは、孫である兜甲児でなくてはならない。
「ゲッターロボ」は、作中でリョウが語るように「俺達ゲッターチームが乗ってこそ本当の力を発揮する」ロボットでなくてはならない。
「ガンダム」は、独房のアムロの言葉、「ボクがガンダムを一番上手く使えるんだ」を裏付ける様に、セイラさんは上手く乗りこなせなかった。

こういったロボットとキャラクターの一体感は、ロボットアニメを構成していくにおいて非常に重要なファクターなのである。この搭乗者に併せた個性分けが上手く機能していたからこそ、クライマックスでの盛り上がりが最高潮に達する。お互い

「ハイスクールのランチ、2回おごったぞ!!」
「俺は13回おごらされた!!」
「しっかり数えてんじゃねぇ!!」

というガキの喧嘩さながらの叫び合いをして、最新鋭のバルキリーに乗っているにも関わらずお互いに拳で語るのだ。特に、ここでもし拳にバリアを集中させる「ピンポイントバリアパンチ」という設定が無く、従来のバルキリー戦のようにハイマニューバミサイルとガンポットのみで戦っていたら、このクライマックスの喧嘩は喧嘩では無くなってしまう。ただの良くある戦闘シーンで終わってしまっただろう。それではこの「マクロスプラス」の魅力は半減してしまうだろう。この演出を踏まえた設定、設定を取り込んだ演出は見事というべき他はない。その演出が正に「イサム&ガルド」の魅力であり、しいては彼等の分身たる「YF−19&YF−21」の1番の魅力なのだ。

ちなみに、私個人としては断然21派なのであしからず。(笑)


戻る