正に等身大

ウラシマ・リュウ
「未来警察ウラシマン」主人公

1970年代から1980年代に数多くの作品を世に送り出してきたアニメーション制作会社の中でも、「タツノコプロ」の存在はやはり大きい。マンガを原作とする作品が多い中、常にオリジナルのエンターティメントを目指したタツノコ作品は骨太でバラエティに富んでおり、どことなく映画的な描写が踏襲され非常にドラマチックである。

そしてタツノコプロと言えば真っ先に思い浮かぶのがお馴染み3悪がコミカルな活躍を見せる「タイムボカン」シリーズだが、その他でも「ガッチャマン」に始まるいわゆる「タツノコヒーロー」達の活躍も忘れてはならないだろう。今回紹介するウラシマ・リュウの活躍する「未来警察ウラシマン」は、そんな「タツノコヒーロー」の後継者として制作された作品である。

ちなみに「ガッチャマン」や「キャシャーン」は天野嘉孝氏がキャラクターデザインを手掛けていたが、本作ではなかむらたかし氏が手掛けている。その為そのキャラクター達がファンに受け入れられるかという心配がスタッフにあったらしいが、私の知る限りこの心配は杞憂に終わっているようだ。

まずリュウのについての説明をしておこう。
彼は西暦1983年から2050年へタイムスリップした16歳の少年で、史上初のタイムスリッパー「ウラシマン」である。その際の「ウラシマ・エフェクト」で超能力を獲得するも、替わりに記憶を喪失し自分の名前すら覚えていなかった為、権藤警部に「ウラシマ・リュウ」という名前を与えられた。その超能力から活躍を期待されて機動メカ分署の機動刑事となるが、実際には持ち前の根性とバイタリティで事件に立ち向かっていた。ネオトキオの影の支配者「犯罪帝国ネクライム」を追ううちに総統フューラーの存在を知り、自分と過去との関わりに悩むようになる…と、かなり端折った説明ではあるが、こんな感じである。

実はこのウラシマ・リュウとネクライム総統フューラーは当初同一人物として設定されており、2人の肩にある同じキズ等伏線も丁寧に張られていた。しかしスポンサーからの「主人公と悪の大ボスが同一人物ではまずい」というテコ入れからこの路線は変更され、2人は「血を分けた義兄弟」として設定し直された。その為この「ウラシマン」のファンの中には「リュウはフューラーとの決戦の後老化して名前の通り浦島太郎となるべきだった」等と言う人もいる。しかし私個人としては本作そのままの結末でも充分満足出来たし、タツノコプロの王道とも言える爽やかな未来志向は実に素晴らしいと言えると思う。

さて、本題である「ウラシマ・リュウ」というキャラクターの魅力に触れて行くとしよう。リュウは、前記した通り16歳の少年として設定されている。しかし昨今のアニメでは、キャラクターが現代の同年代よりも精神的に自立して描かれることが多い為、設定年齢よりも視聴者が捉えるイメージ年齢のほうが高い場合が多い。しかしこの「ウラシマ・リュウ」という16歳の少年は、実に16歳として等身大に描かれている。

16歳という年齢は実に難しい年頃だ。自我が確立し始め、自分自身の世界が作られ始まる。そして肉体的にもほぼ成熟し、見かけにおいては大人との差が殆ど無くなる。大人と子供の丁度狭間、それゆえ非常に精神的に不安定な年頃と言えるだろう。この「未来警察ウラシマン」という作品ではそんな不安定な年頃の少年がもしタイムスリップして未来に飛ばされたら…というifを丁寧に構築しているのだ。

そんな物語設定を背景にしている為か、リュウは「ネアカとネクラが同居したような性格」をしている。いきなり飛ばされた未来世界で過去への記憶を失い、それを分かち合えるのは共に過去からタイムスリップしてきた一匹の猫だけ…そんな中犯罪帝国ネクライムのルードビッヒはあの手この手で作戦を仕掛けて来る。そして未来世界において唯一自分のことを知っている総統ヒューラーの誘惑と、異端である自分を仲間と認め慕ってくれる機動メカ分署の仲間達…その狭間で揺れ動く繊細な16歳の心。この辺の描写が非常に巧みなのである。

そして彼自身の持つ勢いにまかせて突っ走ってしまう血気盛んな部分と、タイムスリッパー、つまりは未来世界における異端としての自分の立場に苦悩する心情、女の子好きで軽薄なリュウと、自分が失った過去、そして未来における自分の立場に思い悩むリュウ、その2人のリュウが見事融合して「ウラシマ・リュウ」というキャラクターの魅力となっているのだ。

そして彼の最大の取柄であり、最大の弱点である「優しさ」…優しくあるからこそ人を思いやれる。しかしルードビッヒが看破した様に優しさは時に甘さとなる。このバランス感覚がまだ実に素晴らしい。
その彼の「優しさ」と「甘さ」を描いたエピソードは名エピソード揃いである。特に下で紹介している第16話「殺し屋グッドラック」はルードビッヒに雇われた殺し屋「ルガーのメイスン」とリュウの対決を描いた「ウラシマン」の中でもかなりハイレベルな名エピソードである。

「トドメを刺せない心、冷酷になりきれぬ心…そいつがアンタの弱点なんかじゃなく最大の強さだってことがやっと分かった…この歳でな。俺を雇った男も充分それを知っているだろう…気をつけろ」

これは対決に破れたメイスンがリュウに言ったセリフであるが、このセリフほどリュウの持つ「優しさ」について雄弁に語ったセリフは他に無いであろう。特にこのエピソードはオススメである。

思えばこの「ウラシマン」という作品、実に魅力的なキャラクターで彩られている。
例えばネクライム側は総統フューラーを始め、悪の美学を貫くルードビッヒ、意外などんでん返しを見せたミレーヌ、コミカルなジダンダ、そして常にプロフェッショナルなウルフ達スティンガー部隊。対するメカ分署側も不幸な過去を背負う熱血警部権藤を始め、リュウの良き相棒であるイナズマクロード、ぶりっ子ながらお茶目な紅一点ソフィア、そしてリュウの心の支えであり非常に良い味を出しているドラ猫のミャー、誰もが個性的で主役を張れる逸材であり、実際上記したキャラクターはそれぞれ主役を張る物語を持っている。そんな中でも主人公としてのリュウの魅力が色あせないのは、彼の16歳としての複雑な心情を巧みに描ききったからに他ならない。

更にこの「ウラシマ・リュウ」というキャラクターは何よりスタッフに愛されていたのが1番の魅力なのだろう。良くアニメ氏のインタビュー等では自らが設定し、描いた主人公をあしざまに否定し、嫌うアニメ監督が見うけられるが、このリュウはスタッフ全員に愛されていたのだ。それはフィルムを見れば一目瞭然である。その愛は演出面で賢著であり、リュウ達は劇中チャップリンに扮したり、人形劇になって見たり、ミュージカル風になったりと画面狭しと大活躍している。スタッフに、そしてファンにも愛されたからこそ本作は変にリアリティにこだわったり、必要以上に小難しくならずにアニメーションらしくいられたのだろう。

私は一部の人からは「ロボットオンリーの人」と思われているフシがあるのだが、この「未来警察ウラシマン」にはロボットは登場しない。放映がロボットアニメブーム全盛の時期であったから、本作の「マグナ・ビートル」がロボットに変形するというウワサがあったが、このウワサは最後まで実現することはなかった。逆説的に言えば、ロボットアニメでもないのに私がここまで絶賛するのだから、それはアナタにとってもかなり面白い作品である可能性は高いのではないかなぁ…と思う。未見の人は是非一度見て欲しい。

この「未来警察ウラシマン」は非常に数多くの名エピソードがあるのだが、最後にその中でも私が得に推すエピソードを紹介しておこう。

3話「失われた時を求めて」
14話「ミャーにも超能力?」
16話「殺し屋グッドラック」
19話「ティファニーで人魚」
21話「入れかわった性格」
26話「ネオトキオ発地獄行き」
29話「指名手配!リュウの首」
32話「トリック1983」
48話「ルードビッヒの最後」
49話「愛と死の超能力」
50話「サヨナラ2050年」


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