ベロでクネクネベチャベチャ…。

グラボイズ
映画「トレマーズ」シリーズ怪物


最近、「エイリアンvsプレデター」なる映画が公開されて久しいが、今まで映画界において様々なクリーチャー…異形の存在が我々に未知なる物への恐怖を仮想体験させてくれている。そんなクリ―チャーの中には「ジョーズ」の巨大鮫のような現実世界の生物が異常成長したものや突然変異をしたもの、エイリアンやプレデターのような未知なる宇宙の住人、ファンタジー世界ではポピュラーなドラゴン…まぁ、フレディやジェイソンのような人間型や、ゴジラ等の怪獣をこういうクリーチャーという名称で一括りにしても良いのかは別として、ともかく様々なクリーチャー、ないしモンスターと呼ばれるモノが存在している訳だ。

そんなクリーチャーというか、モンスターを描いた映画の中で、私がもしナンバーワン作品を選ぶとすれば、やっぱり「トレマーズ」を挙げることになる。この「トレマーズ」という映画の概要を説明すると、平和…というより何もない陸の孤島・パーフェクションバレーに突如現れた地中を進む巨大な怪物「グラボイズ」と町に住む数少ない住人との生き残りを賭けた戦いを描いた作品である。ジャンルというか、ドラマ的なイメージとしては「ジョーズ」が最も近いイメージを持っているだろう。

ただ、この「トレマーズ」という作品は、絶体絶命の危機が描かれており、実際何人もの人間がグラボイズに食われてしまっているのだが、物語の根底は妙に静かで、おおらかな印象すらある。パーフェクションの住人は(一部を除いて)大掛かりな武器を持っている訳ではないし、何せ人口の少ない町…助けを呼ぶ手段も逃げ出す方法も限られている。この八方塞な状態にも関わらず、その荒野しかない、のどか過ぎるパーフェクションの情景も相俟ってなのかなんだか呑気に見えてしまうのがこの映画の魅力なのだ。

その原因の1つは、静かな町を突如襲った怪物・グラボイズには明確な弱点があった、という点であろう。ココで少しグラボイズの特性を解説しておこう。グラボイズは体長10m程もある巨大生物で、体から飛び出た棘と言うか、爪の様な突起を動かして地中を進む。グラボイズには目が無く、その代わり全身で地面の振動で獲物の位置を探知し、獲物に近づいたら口の中にある蛇のような噛み付く舌というか、触手でベタベタと周囲を探り、捕らえた獲物を巨大な牙のある口の中へ引きずり込む。

実はこの「トレマーズ」という映画は続編が作られており、このグラボイズの新たな習性が明らかになっていく。グラボイズは誕生からある程度時間を経過すると体内から小型の生物3体に分裂する。この小型の生物は羽のない鶏の首にグラボイズの口がついている様な形をしており、後にシュリーカーと呼ばれる様になる。このシュリーカーもグラボイズと同様目がなく、代わりに頭部の熱センサーによって敵の位置を探知する。尚このシュリーカーは獲物の熱を探知すると

「んみぎにゃゃゃゃぁぁぁぁ!!」

という独特の鳴き声を上げて仲間を呼び寄せる。

更にこのシュリーカーは満腹になると口からシュリーカーの子供を産み落とす。「2」に登場した女性地質学者・ケイトの弁によると、何でも雌雄同体という奴らしい。ただこのシュリーカーは何分小型であり、更に料理する前の北京ダッグみたいな形なので迫力はグラボイズより劣っている気はするが、群れを成す習性を考えると意外と厄介な気もする。

グラボイズからシュリーカーに分裂し、その習性も大きく変わった訳だが、「3」では更に進化する。シュリーカーも数時間経過する事によって脱皮をし、また新たな形態・アスブラスター(直訳:ケツ噴射)となる。このアスブラスター…地中、地上と来て勘の鋭い方は読めるだろうが…何と空を飛んでしまう。

アスブラスターは鳥のように翼を羽ばたいて空を飛ぶのではなく、空気と反応する発火性物質をケツから分泌し、その爆発力で空を飛ぶ。鳥肉みたいだったシュリーカーとは大きく外見も変わり、どちらかと言うと虫みたいな姿になっている。ちなみにこの形態では体内に卵を抱えているが、シュリーカーの様に満腹になると口から…とはならず、昏睡してしまう。卵はグラボイズの卵であり、その卵をより遠くへ運ぶことが出来るように空を飛べるように進化した、という事らしい。

ちなみに、「4」では幼虫期(?)のグラボイズが登場するが、コチラは1m程度と小柄なので触手でベタベタ…ではなく、地中からジャンプして獲物に襲い掛かっていた。恐らくコレは、「4」の時代設定が「1」よりもかなり前(西部開拓時代)なので、整合性や原点回帰の意味もありシュリーカーやアスブラスターを出す訳にはいかなかったのでこういう形で新しさを出したのだろう。

と、まぁグラボイズという怪物がどんな奴なのかは大体理解して頂けたと思うが、グラボイズの弱点というのは、先ず視覚の代わりに音や振動で獲物を探知する、という点。つまり、その場でじっとしていればグラボイズに探知されることはない、という事。更に、地中を進むという特性上、固い地盤や岩には侵入できない。つまり、高台に逃げ込めばグラボイズはなすすべが無い訳だ。

ココまで説明して、…なんだよ、グラボイズって全然怖くないじゃん。こんなんじゃ「トレマーズ」も大して面白くねぇんだろ?みたいに思ってしまう人もいるかも知れない。ところがどっこい、この「弱点」という部分こそが、この「トレマーズ」のキモでもあるのだ。「2」や「3」はともかく、「1」では当然この未知なる生物に対し、逃げ惑う人々は何の知識、対策方法を持ち得ない。自分らを狙うグラボイズの行動や、偶然にも退治する事が出来た死体から情報を得て、それに合わせた対処方法を編み出していく訳だ。例えば岩の上や家の屋根に避難する、別のところで大きな音を立てておびき寄せ、その間に逃げる…「2」や「3」で描かれたグラボイズの退治方法…ラジコンカーにダイナマイトを積んで走らせ、グラボイズが獲物と勘違いして食いついたら爆破…というモノも、「1」でのパーフェクションで得たノウハウを最大限に生かした方法と言えるだろう。

未知の生物に対し、犠牲を払いながらも対処方法を編み出していく人間に対し、グラボイズも負けてはいない。グラボイズは「2」の時に先カンブリア期の地層から卵が発見され、地球初の高等生物なのでは?という見解が上がったが、実際「高等生物」だけあって、高い知能を持っている。人間が何らかの対処方法を見つける度に、彼等も学習し、獲物を捕らえる為の策謀を張り巡らせるのだ。例えば「1」ではパーフェクションの住人が屋根に避難ししばらくこう着状態に陥った際は、建物の基礎部分をグラつかせて建物ごと倒そうとしたし、流石のグラボイズでもパワー負けしてしまう巨大ブルドーザー相手には落とし穴まで作って見せた。更に最終局面では投げ縄の要領でオトリのダイナマイトを食わせ、仲間を殺した人間達に対し、「もうこの手は食わん」と言わんばかりに口にしたダイナマイトを吐き出して見せた。勿論この知恵をつける、という描写はシュリーカーやアスブラスターに変態してもあり、この人間とグラボイズの知恵比べという部分がこの「トレマーズ」という映画の醍醐味といっても過言ではないだろう。

この知恵比べを印象付ける為なのか、この「トレマーズ」の舞台は本当に何にも無い場所ばかりだ。「1」「3」のパーフェクション、「2」のメキシコ油田、「4」の西部開拓時代のリジェクションにしても、辺りを見渡しても荒野ばかりの土地だし、何より人が極めて少ない。携帯電話など通じる筈も無く、無線が主な通信手段。武器という武器はサバイバルマニアのバートが誇るコレクションがあるが、シリーズを通して役に立った描写は…残念ながら少ない。「1」ではグラボイズの襲撃を返り討ちにしたものの、自慢のコレクションが役立ったのはその時だけで、最終的に役に立ったのは手製のダイナマイト。「2」ではメキシコ軍から銃器、火薬のサポートはあったが、グラボイズはともかく未知の敵シュリーカーに対し有効に活用されたか?といえばそうでもない気がする。更に「3」で対グラボイズ用要塞と化したバートの住居もアスブラスターの襲撃により自爆。最終的に役に立ったのはゴミ捨て場で材料をかき集めた手製のポテト銃…。この、何も無い土地という部分が、あるもので何とかするという形で人間対グラボイズの知恵比べをより面白くしているのだ。

そして一番肝心な部分…グラボイズの見せ方が巧みだったのだ。この「トレマーズ」の一作目は…お世辞にも金が掛かっているような作りではなく、実際低予算で制作された映画だという。しかし、ある意味でこの映画の主役であるグラボイズの見せ方が非常に緊張感を煽る形になっていたのだ。例えば、グラボイズに追いかけられるのを走って逃げるシーンでは、地中を猛スピードで進んでいるようなカットが入ったし、地中から頭を出さず、触手だけ伸ばして獲物を探る様等…未知の生物の生態をこれでもか、これでもかと印象付けてくれる。安っぽく、かっこ悪いハリボテグラボイズも映画の中では非常に生き生きと、らしく人間に襲い掛かっている。この演出があってこそ、続編が作られる程の高い評価を得るに至ったのだと思う。

スピルバーグの出世作「激突!」もそうだったらしいが、低予算でも最大限に面白い、迫力ある映像にしようという努力が成されている作品というのは、少なくとも総制作費ウン億という言葉や、話題性のみにオンブにダッコな作品群よりやはり面白いのだ。視聴者というか、ファンにしたって本当に見たいのは、話題の映画ではなく「面白い映画」だろう。話題性…それはスタッフや配役、出演者は言うに及ばず、技術的なものであったり、○○原作とかそういう部分であったり、お○ぎに「見なきゃ絶対損!!」と言わせて見たり…もっと言えば海外の映画の場合「全米興行収益第○位」とか、「アカデミー賞ナンタラ」とか、そういうワキの部分だけで映画が面白く見られる訳ではないのだ。

ただ、「2」や「3」ではCGが多用されていて見せ方が単調になってしまった印象はある。特に「3」のグラボイズはあんまり触手でベタベタと周囲を探るような事をせず、いきなり地中からドバッと出てきて噛み付くだけになってしまった。「2」に至ってはアールの編み出したラジコン作戦によって吹っ飛ばされて凄まじく臭い肉片を撒き散らす様ばかりが写される。この部分は非常につまらなくなってしまった部分だと思う。実際「1」に比べ「2」「3」の評価がイマイチなのも、こういった部分に原因があるのではないだろうか。新しい技術が出た、色々便利に使えます…でも、それだけじゃ結局ダメなのだ。

総制作費何億という大作ばかりが持てはやされている様にも見える昨今、この「トレマーズ」のような安い制作費で最大限に見せる、楽しませる努力をしている様が伺える作品というのは、映像に独特の味が出てくる。一時期ほど騒がれないが、例えば「FFシリーズ」のようなテレビゲーム等でも先ず「美しいCGムービーありき」になっていて、実際メーカー側の売り文句もそういった部分のみに集約してしまっていた事が少なからずあった。ソレに対し、「でも結局内容が…」と非難している人も多かった訳だ。「美人も3日で飽きる」という言葉があるが、結局そんなムービーなど、幾ら超美麗だろうと一度見てしまえばもうどうでも良くなってしまうのだ。そんなものよりももっと根本的な見せ方…その辺の拘りを、このグラボイズという怪物を介して教えてくれているのが、この「トレマーズ」なのではないか?と私は思っている。

では、これから「トレマーズ」シリーズを見てやろう、という人の為に各シリーズ毎の感想を書いておこう。

「トレマーズ」
陸の孤島・パーフェクションの便利屋コンビ、バルとアールが主人公。
地震学の研究をしている大学生・ロンダやパーフェクションの住人と、グラボイズの死闘を描く…といっても個性豊かで逞しい住人等とのどかな情景のせいで何所と無くノンキ。それでも低予算ミエミエながらも迫力のある演出のおかげで迫力もあり、シリーズ゜最高傑作との呼び声が高い作品。地中に住む謎の生物に対し、様々な戦術を駆使する駆け引きもまた面白い。以降、シリーズにレギュラー出演するマイケル・グロス演じるバートとその妻ヘザーのパラノイアっぷりがキテます。
ものすっごくベッタベタなラストシーンもこの映画なら嫌味に見えない。

「トレマーズ2 グラボイズの逆襲」
グラボイズ絡みでヒトヤマ当てたバルとロンダと違い、騒動以来ツキに見放されていたアールを主人公に、サブキャラとして彼に相棒志願するグラディと、離婚でパラノイアっぷりが更に悪化したバートが登場。舞台はメキシコの油田。
アール考案のラジコン作戦で順調にグラボイズを駆逐していくものの、グラボイズがシュリーカーに変態し窮地に。油田基地の事務所周辺でのシュリーカーとの死闘は、死闘なのになんだかマヌケで実に「トレマーズ」らしい作りに。特に、バートの言動がかなりキテいる。ただ、「1」と比較するとパワーダウン感は否めないか。

「トレマーズ3」
パーフェクションに再び現れたグラボイズに、グラボイズ退治に命をかける我等がパラノイア、バートが立ち向かう。そして彼の脇をグラボイズ目当てでパーフェクションにやって来た起業家のジャックとジュディが固める布陣。「1」「2」を見てきた人向けのセルフパロディ的なネタが多く、「1」では子供だったミンディやメルビンが成長した姿で登場。シリーズでも駄作、との呼び声が高かったりするが、アクションシーンが「インディジョーンズ」の様にテンポ良く続くので気楽に見られて飽きさせない様になっているのはマル。まぁ、「インディジョーンズ」よりはかなり安っぽいのも確かだが…。個人的には結構オススメ。

「トレマーズ4」
舞台を西部開拓時代のリジェクションに移し展開される外伝的物語。謎の殺人事件により閉鎖となった金山の調査に訪れたバートの祖先・ハイラムの、バートとは180度違う性格と、彼の一族が後にパラノイアと変貌していった理由を描いており、グラボイズはハッキリいって端役。コルトSAAを始め、デリンジャーやウィンチェスターといった名銃が大挙登場したりと他の3本とはやや趣が違うかと。「1」に繋がるネタがそこかしこに仕込まれているので、「1」を見た直後に見ると面白いかも。

この他、アメリカではなんとテレビドラマも制作、放送されているらしい。コチラは未見なのだが非常に興味をそそられてしまう。
ともあれ、この「トレマーズ」という映画は、映画というモノが決して「興行成績歴代ウン位」だの「総制作費ウン百億円」「アカデミー賞に3部門ノミネート」なんて売り文句だけでは計れない、というのを教えてくれる傑作である事は間違いなかろう。



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