主に「ルパン対複製人間」より読み取るルパンと不二子、そして次元

次元大介
「ルパン三世」サブキャラクター(原作版は除外して語ります)


今回は、最早「国民的アニメ」と呼んでも差し支えないであろう超人気アニメの、コレまた超人気キャラクターを語っていく。何分、超有名&超人気キャラクターだけあって、語る事に対し些か恐怖心があったりもするのだが、まぁ、書いて見よう。

皆さんご存知とは思うが、今回ネタにする次元大介はモンキーパンチ原作のアニメ「ルパン三世」に登場するキャラクターだ。1971年に1stシリーズの放映が始まり、30年以上経った今でも年に一度テレビスペシャルとして二時間枠のアニメが作られる超人気アニメのキャラクター…それも、1stシリーズ第1話からずっとレギュラーで出演し続けている男だからして、彼の…シケモクを咥え、顎鬚を生やし、帽子を目深に被った黒いスーツ姿、そのズボンに無造作に愛用のリボルバーを突っ込む、という姿は殆どの人が思い浮かべられるだろう。特に帽子は彼のトレードマークとして印象的であり、敵に追われ逃げているシーンでも、脱げそうになった帽子はしっかり掴む、なんて描写も多い。2ndシリーズだったか?のエピソードでは、彼は銃を撃つ際に照準を銃のサイトではなく帽子のツバを使っている、なんて設定が出てきて、彼の命を狙う殺し屋に帽子を奪われ、得意の筈の射撃がちっとも当たらなくなる、なんて事もあった。その帽子にしても、サイズ58.25、ツバの長さ8.6cm、厚さ1.5mm、4歳のゾウアザラシ・オスの腹の皮で出来たものでなくてはならず、おいそれと代用品等用意できない、というモノで大ピンチに陥っていたのが印象的だ。

ただ、帽子のツバで照準を取る、というこの設定は賛否両論あるようで、かつ作中でも徹底されている訳ではなく帽子を脱いだ(脱げた)状態でも超絶な射撃を見せたシーンがあったりする。まぁ、この辺は長期シリーズモノの弊害でもあろうし、帽子のツバで照準、という設定自体も半ば思いつきで取って付けた設定なのだろう。

さて、次元と言えば、やはり射撃である。愛用のリボルバー以外にも、ボルトアクション式と思われるライフル銃や、名作「カリオストロの城」にて用いた対戦車砲と、銃火器なら何でも使いこなすプロフェッショナルだ。得意の早撃ちも0.3秒というスゴ腕である。尤も早撃ちに関しては「ゴルゴ13」の主人公、ゴルゴ13ことデューク東郷は0.17と次元よりも遥か早かったりする。まぁ、コレは元々が殺し屋であるゴルゴと、元殺し屋とはいえ現在は泥棒である次元の差であろう。

さて、ゴルゴには及ばないにしろ、銃の名手には間違いない筈の次元…しかし、実の所彼の銃の扱いに関してはちょっと変な部分もあったりする。次元の愛用する銃はご存知S&WM19。次元のおかげで日本での知名度が高くなったといっても過言ではない銃であるのだが、彼はよくこの銃でファニング…西部劇なんかで見られる、右手で銃を腰だめに構え、左手で撃鉄を連続してコッキングするテクニックを用いるのだ。しかし、M19はダブルアクション…トリガーを引くと同時に撃鉄が連動するダブルアクション機構を備える銃であり、ファニングというテクニック自体、トリガーを引く前にイチイチ撃鉄を起こさなくてはならないシングルアクションのリボルバーで連射をする為のもの…M19ではあまり関係ないものなのだ。尤も、コレは次元というキャラクターではなく、アニメの演出担当の責任であろうが、銃に対してタブー意識が強い日本では無理からぬ事だろう。

ちなみに余談であるが、次元が愛用するS&WM19は、「ルパン三世」と並び、私がまだ小、中学生だった頃盛んに日本テレビの5時代にて再放送されたアニメ「シティーハンター」の主人公、冴羽リョウ(リョウの漢字が出ません)の愛銃、コルトパイソン357MAGとほぼ同時期に市場に出回った拳銃で、どちらも当時最強と謳われていた357マグナムを使用可能な6連装リボルバー、という事でよく比較対象にされる。尤もパイソンの方は「リボルバーのロールスロイス」等と称される通りデザインと仕上げの美しさに定評があったが、その分非常に高価だった為に実用本位で銃を選ぶ層には敬遠されたらしく、M19の方はパイソンよりひと回り小さいフレームが仇となり、当時の金属の熱処理技術では357マグナム使用時に強度的な不安がある、と一長一短であった様だ。この辺はエアガンを始めてちょっと銃に対する知識が増えた程度の私の拙いコメントを読むより、wiki辺りを読んだ方が早いだろう。

しかし、初回放送後に「ルパン三世」と同じ枠にて再放送がループの様に繰り返された「シティーハンター」は原作者の北条司氏によると、アニメ化の際に「テレビで年に1度、スペシャルが作られるようなアニメ」…即ちポストルパンとなる事を目論んでいたらしい。確かに、今では続編(パラレル、という事にされた様だが)であり、香を殺してしまった「エンジェルハート」がある為難しいが、「シティーハンター」そのものはかなり「ルパン的」な要素を持っており、人気次第では本当に取って代わってもおかしくない作品だった事を考えると、このM19とパイソンの構図も何となく因縁深く思えてる。

ともあれ、ガンマンとしての次元に関してちょっと否定的な事を書き連ねてしまったが、「ルパン三世」において銃は然程強力とはいえない描写が多い。最たる礼は五ェ門が銃弾を斬鉄剣で弾き落としてしまうシーンであろう。TVスペシャル等では五ェ門程ではないにしろ、ナイフ等で銃弾を弾き飛ばしてしまうキャラクターが登場したりもするので、戦闘力、という点ではあまり目立たない気がする。そもそも主人公のルパンにしたってやはり得物は銃(有名なワルサーP38ね)であり、かつ腕も確かなものなので余計に目立たない。勿論次元の射撃の腕が直接影響するエピソード…例えば分厚い防弾ガラスを次元がワンホールショットの狙撃で撃ち抜く、なんてのもあるが、五ェ門の斬鉄剣程は印象が薄いのだ。

しかし、それでも次元は高い人気を誇る名キャラクターである事に間違いは無い。今までこうして次元に対して否定的な意見を書き連ねてきた私も、ルパン一味限定であれば、やはり次元がイチオシなのだ。(作中、という括りならば、埼玉県民なので断然銭形のとっつぁんなのだが)中学生の時に、友人とルパン談義に花を咲かせた事があったのだが、ココでの友人達へのアンケートでも、次元は一番人気であった。その理由は「渋い」「ファッションがカッコいい」「クールに見えて情に厚い」なんて理由だったと思う。ただ、そこに居合わせたクラスメイトの女子は殆ど五エ門派で、そういえば私の姉も「ルパン」では五ェ門贔屓だった。何でも、五ェ門は女性に対し純情で可愛い所に母性本能をくすぐられるんだと。

さて、次元の人気の理由とは何か…それは、ハードボイルド的な男の理想像を地で行くようなキャラクターであろう。女嫌いを自称するが、度々女性とのロマンスを匂わせるエピソード(過去の女、危機的状況での出会い、裏切り等)は度々描かれているし、帽子の件以外でもしばし見せた頑なに守る己のスタイル…劇場版第1作でルパンに揶揄されている様に、クラシックな男なのだ。FBIに捕まり、「長ぇ事モンローとハンフリー・ボガードのファンだったが、今日限りだ!!」なんて結構真面目に言ってしまえるところも、正しく男の子が夢見る”渋い男のハードボイルド”ではないか。

ただ、そういったモノは次元の表層的な部分ではなかろうかと思うのだ。次元の真の魅力…それは、相棒であるルパンとの対比にこそある。劇中でも「お前はただのロマンチストだ」的な事を言われているが、不二子の扱い等、一見クールなリアリストに見える次元は実はルパン一家で一番のロマンチストなのだ。対し、相棒のルパンは一見”夢追い人”的な印象を受けてしまいがちだが、実はかなり徹底したリアリストである。コレは特に「ルパン対複製人間」の

ルパン:「俺は夢ぇ…盗まれたからな。取り返しに行かにゃあ。」
次元:「夢…?女の事か?」
ルパン:「…実際クラシックだよ、お前って奴は。」

というやり取りに集約されている。このやり取り、「カリオストロの城」以降のルパン=やさしいオジサマ的構図に染まってしまうと見え難い部分でもあるのだが、コレは

ルパン:「俺は不二子を盗られちまったからな。助けにいかにゃあ。」
次元:「また不二子か?」
ルパン:「…そうだよ、悪かったな。」

という風に判断するのは半分位は正解と言えるのかも知れないが、私はそうは思えない。ルパンという男は、もっと刹那的な男だと思うのだ。ちょっと面白い所から考えていくと、テレビシリーズでも有名な「ルパンダイヴ」という奴がある。ベットに寝ている不二子に夜這いをかけてきた(?)ルパンが飛びかかると同時に縞模様のトランクス一丁になるアレだ。コレを次元に置き換えるとどうなるだろう。彼のことだ、ベットに眠る恋人に対し、いきなり素っ裸になって…なんてのはありえない。目を覚ました恋人に「起こしちまったか?」なんて言ってクール、かつストイックに決めるのが次元のイメージだろう。

では、何故ルパンの場合こうも直接的な行動に走るのか…それは彼の刹那的な部分、リアリストとしての顔が関係している。一般的にはルパンと不二子の関係に関して、ルパンの方が不二子にゾッコン…それを不二子が体よく利用している、という構図だと考えている人が多いと思うのだが、実の所そうではないと私は思うのだ。むしろ、自分が一番的な考え方をしているのはルパンの方で、表層的には不二子にゾッコンに見えるが実はそうでもない、というのがルパンの本質で、むしろ普段は己の為に利用している風に見える不二子の方がルパンにゾッコンなのではなかろうか、と。だからこそ、スケベ目的でルパンダイヴはやるが、いざ本気で不二子に迫られたら逃げ腰になるのではなかろうか。

そういう意味で言えば、ルパンというキャラクターは一種のヒーローなのだ。考えてみれば、一見惚れた弱みで不二子に良い様に利用されている風に見えるルパンは、惚れている、という理由で不二子を探し回る様な描写は案外少ない。更に言えば、ルパンは相棒の次元や五ェ門に文句、苦言を呈されても自分の意思、行動は曲げない。殆どの場合、「しょうがねぇな」的な理由で次元や五ェ門側が折れてルパンの方に合わせるのだ。そういう意味で捉えていくと、クールでストイックに見える次元の方が、ルパンよりむしろ人間的に見えてくる。勿論ハードボイルド的な魅力もあるが、むしろルパンとのやり取りで見せる、人間的な女々しさこそが、彼の本質であり、魅力なんじゃないか…そう思う。

但し、昨今のシリーズでは「カリオストロの城」的な優しいルパンが定着してしまい、ルパンは刹那的なリアリストとしての顔をあまり見せなくなった。その結果、ルパンの比較対象としての次元もまた、渋くて優しいオジサンになってしまい、それはそれで魅力的ではあるのだが、物足りない印象がある。昨今ではその尖がったキャラクター設定を生かし、コメディリリーフ的な部分をも担当する様になった五ェ門と比較しても、次元は些か地味なサポート役に納まってしまった気がする。別に「ルパン三世」はこうでなきゃ認めない!!なんてアナルの狭い事を言うつもりは無いし、そもそも時代がリアリストとしてのルパンを、女々しさのある次元を求めていないのかも知れないが、何となく、物足りない気がしなくはない。

…そんな事もあって、最近はテレビスペシャルにも食指が動かなくなってしまっている私がエラそうな事は言えないのだが。


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