正義とは…。

ロム・ストール
「マシンロボ・クロノスの大逆襲」主人公


人気ゲームシリーズ「スーパーロボット大戦」のおかげもあって、「マシンロボ」に当時無関心だった人にも、「マシンロボ」は「レスキュー」しか見た事が無い世代の人にも、太陽をバックに、高い所から腕組みをしつつ悪党共を見下ろして

「お前達に名乗る名前は無い!!」

と決めてくれるヒーローといえば、やっぱりロム・ストールであろう。
この作品はバンダイの玩具とタイアップする形で制作されたアニメであり、「スパロボ」に参入しているロム兄さんが主人公の物語が第1作「クロノスの大逆襲」で、舞台を移して展開したビーバップハイスクール風味の「ぶっちぎりバトルハッカーズ」の2作品がある。この2作品は葦プロが制作したのだが、平成の世に、ライバルである「トランスフォーマー」の生誕20周年企画「マイクロン伝説」にまるで示し合わせたかの如く復活した新しい「マシンロボ”レスキュー”」は、事実上現在はバンダイの傘下となっているサンライズが制作しており、CGを取り入れて戦いではなく救助をメインテーマとした作風になっている。玩具としては、最近のブロック玩具的な要素が強い「ムゲンバイン」にも「マシンロボ」のブランドが付けられているのは皆さんも御存知のことだろう。

さて、変形玩具の歴史に詳しいマニアは「トランスフォーマー」に対する「マシンロボ」の関係を指して

「トランスフォーマー」の登場に焦ったバンダイが展開した二番煎じ

等と言う人もいる。確かにドチラもロボットに変形する玩具販売用のコマーシャル的な印象がある作品であるし、時期的に見てもそういう匂いは確かにする訳でそう言われても仕方ない部分はあるかも知れない。だが、玩具展開は実は「トランスフォーマー」より「マシンロボ」の方が先であり、アニメ作品としての「トランスフォーマー」と「マシンロボ」の違いも結構明確な形で方向性が変えられているのだ。

先ず「トランスフォーマー」であるが、これは皆さんご存知の通り正義の軍団「サイバトロン」と悪の軍団「デストロン」の長い抗争…というのが物語のベースになっており、アニメ的に見ると両陣営にコンボイ、メガトロン、スタースクリームといった重要なキャラクターは存在するものの、基本的に戦闘自体は集団戦であり、それが言わば主役不在=受け手側が主人公を決められる、という受け手の自由度が高い作品となった事に繋がっている。よく「トランスフォーマー」の主人公はコンボイ、と勘違いしている人もいるのだが、別にコンボイは登場するエピソードが多いだけで劇中で「主人公」と明確に謳われてはいないのだ。そういう要素もあってか、トランスフォーマー達は大抵手に銃を持っているのだが、この銃は命中しても痺れたり傷が付く程度…メインは何と格闘戦なのだ。と、いう事でトランスフォーマーは「戦死者」というモノが極端に少ない作風になっている。

更に、遠い宇宙のセイバートロン星から来た未知の生命体という設定がトランスフォーマーには存在しており、スパイクやカーリー、スパークプラグといった地球人との異文化交流といった要素もあった。例えば地球の音楽に魅了されているマイスターや、スパイクと意気投合し親友となるバンブル…中にはトランスフォーマーと人間の恋みたいなモノまで描かれており、現在SFファンを自称する人の中にこの「トランスフォーマー」を支持している人が多いのも、こういうテーマを扱っていた為であろう。

それに対して「マシンロボ」では「スパロボ」内でも剣狼の導きが云々…等と言わせている通り、集団劇というよりはさすらいのヒーローモノ、といった趣が強い。敵組織ギャンドラーに至っても超エネルギーである伝説のハイリビードを手に入れる為にクロノス星に攻撃を仕掛けているだけで、別にロム達クロノス族といったモノと深い因縁がある訳ではない。物語の展開としてもロムを主軸にした正義のヒーロードラマ…つまり明確な「主人公」が存在する作風なのだ。
そしてバトルシーンにしてみても、先ずは生身(クロノス族もロボットなので生ではないのだが)でのアクション、敵が劣勢になるとボス格登場でロムもケンリュウを呼び出す。更にケンリュウで散々苦戦してから真打のバイカンフー登場…という、戦隊モノといった特撮的なエッセンスが強く、集団バトルというよりは、圧倒的不利な戦力差をもろともしないロム達のヒーロー的な魅力を前面に打ち出している。

更に、「トランスフォーマー」のような異文化交流的なネタは少ない。登場するのはクロノス星の住人かギャンドラーであり、描写がアレなのでそうは思われ難いのだが生身の人間が先ず登場しない。一応クロノス星にも人間型のクロノス族、飛行機に変形するジェット族、車両に変形するバトル族といった種族はあるが、設定的にはともかく物語的にはそれ程重要とは言えないだろう。

物語の優劣は一概に決められないが、少なくともアニメの作劇方法に関してはパクりではないだろう。もちろん「マシンロボ」は「トランスフォーマー」を強烈に意識しているのは平成の復活劇を取ってみても間違いないとは思うが。
予断ではあるが、往年の「マシンロボ」を制作したのは葦プロだが、新生「マシンロボレスキュー」を制作しているのは上でも述べたとおりサンライズ。で、葦プロは何をしていたかと言うと、「マシンロボレスキュー」や「マイクロン伝説」以前に展開していたトランスフォーマー「ビーストウォーズ」の、海外で制作されたCG版の間に放映された「ビーストウォーズU」と「ビーストウォーズネオ」の2作品と、続く「カーロボット」の制作に関わっている。ミイラ取りがミイラ…という訳ではないが、因縁めいたモノを…。更に言えば「トランスフォーマー」の特徴を引き継ぐ形でスタートした「勇者シリーズ」がサンライズ制作だったりする上に、ドラマの内容からすると「マシンロボレスキュー」が「ライバルは『トランスフォーマー』ではなく『勇者シリーズ』」に見えなくもない事を考えると…。

それはともかく、実はこのロム兄さん、「ガンダム以外しらねぇ。マジンガーとかってダサい。」等とのたまってしまう様なリアル主義の傾向がある若い連中にも結構受けが良いらしい。もちろんそれは「スパロボ」だけでの印象であろうし、彼らが好き好んでレンタルビデオ屋で「マシンロボ・クロノスの大逆襲」を借りるのか?と言われると微妙(そもそも古い作品だし置いていない可能性の方が…)だとは思うが、結構「スパロボ」とかがネタにされているサイトでも

「基本的にリアル系しか使いませんが、ロム兄さんはカッコイイので使ってます。」

みたいな事を書いているのを見た事もある。
確かに彼は分かり易い。キャラクターのネタとしての魅力を上げる為、「スパロボ」ではキャラクター設定を虚飾する事が多いのはバーニィのザクマニア化や甲児君のギャグキャラ化を見ればご理解頂けると思うが、そういう虚飾がロム兄さんにはあんまり無い…つまり、アニメでもあんな感じなのだ。キャラクター設定で見てみても正に正義の人であり、自分に厳しい熱血漢。それでいて妹のレイナちゃんを溺愛している節があったり…少年ジャンプ往年のヒーローマンガ主人公のような、正に王道キャラクターと言えよう。上でネタにしている様なカッコツケ度100%の口上にしても、ピンチの時に何処からとも無く現れる…それがラーカイラムの艦橋だったり、秘密主義のNERV本部の屋根の上だったり、ゲームの中でもアスカやらリツコ、ルリ辺りの知能指数が高いと思われているキャラクター群にツッコまれている様に、あまりにも突拍子が無く、理不尽で非現実的な行動だとしても彼がやると何となくハマッちゃうのだ。

そう、理由は簡単。彼がヒーローだからだ。

原作に当たるアニメの場合でもそういうフシはあったのだが、他の作品のキャラクターと重ねる事によって彼の特異性はより引き立つ。例えば同じスーパーヒーローである筈の甲児や豹馬辺りにはその登場のカッコ良さに当てられてしまうし、同じく心情的に孤高のヒーローというポジションからデューク・フリードの共感を得たり…所詮「スパロボ」でのキャラクターアレンジに過ぎないのではあるが、そういったポジションがすんなりハマッてしまうロム・ストールというキャラクターは、これは非常に純度の高い「正義の味方」と言えるんじゃないだろうか。正義とは何かを模索するタイプではなく、その存在自体が彼の場合「正義」なのだ。天空宙心拳の心得とか、父キライの教えとか…そういった「正義の味方」たる理由付けもあるにはあるが、それ以前の問題…彼の行動原理そのものがもう「正義の味方」…ウンコもオナラもしない、というレベルなのだ。

しかし最近の風潮なのか、そんな正義の味方の王道をひた走るロム兄さんの世評に、ちょっとばかり嫌な印象を抱いてしまったりもしている。それは、彼の「正義」がもはやネタとしてしか受け入れられていないんじゃないか?胡散臭さとか、やり過ぎ感をツッコむ…言わばイジリの対象としてしか評価されなくなってしまったのではないか、という思いだ。この世の中、少しばかりニュース番組を見れば、ロム兄さんの言うような絶対的な正義なんて何処にもありゃしない事が分かってしまうだろう。

例えば「世界の警察」を自称する国家が「テロとの戦争」をアピールする為にしばし大統領が「JUSTICE」なんて言葉を口にする。ただ彼等の言葉とは裏腹に、開戦前と開戦後では大してテロの脅威が収まった訳でもなければ、テロの首謀者すら未だ捕らえられていない。その国家の正義に同調した某国の総理大臣は、説明責任という言葉を理解しようともせず自分の意見のみを押し通す子供じみた答弁を繰り返す。
弱き人々の心の支えになる筈の宗教が、その主義主張の違いで殺し合い、極東の島国では新興宗教組織が自らの血迷った教えに基づき地下鉄でサリンを撒き散らすという未曾有のテロを実行し、そこで被害にあって倒れた人に、「何が起きたんですか、大丈夫ですか」とアホ極まりない質問をするレポーターがいた事もあった。

その他、聖職者が援助交際で自分の教え子に生殖行為をした、だの、手を変え品を変え、中越地震まで利用するサギ、一家皆殺し…こんな世の中で「正義」という言葉に何の期待が出来ると言うのか。そう、この世に明確な、万人の為の「正義」なんてものは何処にもありゃしないのだ。

そんな世知辛い世の中だからこそ、せめてフィクションの、空想の世界位、たった一人で世界を救ってしまうような圧倒的な「正義」を楽しみたいじゃないか。想像の、作り物の世界で位、「マイクロン伝説」のコンボイではないが、勝ち残る者が正義ではなく、正義に勝って欲しいではないか。話が飛躍しすぎているかも知れないが、やはりヒーローはヒーローであって欲しい。例え現実の世界で使われる「正義」がとても「正義」等と呼べないような理不尽なシロモノであったとしても、物語の、ドラマの「正義」は誰しもが思い描く「正義」であって欲しいし、ヒーローは絶対的な「正義の代弁者」であって欲しいじゃないか!!

ちょっと話はズレるが、「クロノスの大逆襲」には「ぶっちぎりバトルハッカーズ」の他に、別路線で別の物語を開拓している事を知っている人も多いだろう。それが「クロノスの大逆襲」の人気を支えた妹系ヒロイン・レイナを軸にした「レイナ 剣狼伝説」である。私はコチラは未見なので多くは語れないのだが、何でもこの作品の中でロム兄さんは死んでしまうのだとか…。人気キャラクターであるレイナを引き立てる為、そしてこの「レイナ 剣狼伝説」という作品自体が「マシンロボ」ファンというよりレイナファンへのサービスなのだという事は理解できるのだが、それでも本来の主軸であったヒーロードラマの核であり、象徴の存在が消されるという…コレは考え様によっては「正義の敗北」とは考えられないだろうか。理屈では分かることでも、感覚として薄ら寒い、という事が世の中にはあるが、正にコレがそういう感じのものに思える。勿論、「剣狼伝説」を見ていない上に「マシンロボ」を知ったのも「スパロボ」から、という私ごときにこんな事を言う資格はないのかも知れないのだが。

リアルリアルという割にナヨナヨしたドラマを持つフィクションや、「正義」の欠片も無いダークヒーローも大いに結構!!美少女に萌え萌えしようと乳を揺らそうと、結局は作家の独りよがりに過ぎなくとも別に構わない。ただ、少なくとも大上段で正義を振りかざす…まるでロム兄さんのような正義の代弁者たるヒーローが活躍するようなフィクションが、その存在自体が相手にされない、空虚なイメージしか持たれない風潮だけは避けなければならない。そうでなければ、あまりにも薄ら寒いじゃないか。

さて、最後にちょっとばかしウンチクをば…。
「スーパーロボット大戦MX」のシーン7、第37話「男の戦い」…コイツは言うまでも無く「新世紀エヴァンゲリオン」の超有名エピソード(私は個人的に大嫌いなエピソードだったりするが)をベースとして「ラーゼフォン」絡みのネタを追加したネタな訳だが、ココでNERV本部の危機に颯爽と現れるロム兄さんの口上、

行く手に危険が待ち受けようと、心に守るものあるならば、例え己の命尽きるとも、体を張って守り通す。人それを「漢」という。

という奴だが、実はコレ、原作アニメではロム兄さんではなくお供のトリプルジムが決めたネタだったりする。デビルサターン6の「光あるところに闇あり…」というネタ口上はスパロボでいい加減お馴染みになっているのだが、実はジムやレイナちゃんも口上を言った事がある、と、まぁそんな事で。


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