レイコック、ヒロインを語る?

音無響子さん
「めぞん一刻」ヒロイン

個性的な住人達が暮らす、古ぼけた小汚い下宿屋。そこへやってきた新しい管理人は、目の覚めるような美人だった…。そう、これは高橋留美子原作のドタバタながらもシリアスで心温まるラブコメ不朽の名作「めぞん一刻」の冒頭シーンであり、ここでやってきた管理人さんとは、皆さんご存知「音無響子」さんである。

彼女の人気は未だに根強いものがある。美人でグラマー、それでいて優しくて、でもちょっぴりドジなところがあってヤキモチ焼きで…。どうせ1人暮らしをするなら、響子さんみたいな美人の管理人さんがいるアパートがいいなぁ…なんて妄想にふけったことのある人もいるのではないだろうか?

知らない人の為に少々「管理人さん」について説明をしておこう。音無響子さん、通称「管理人さん」は「疲れた…。」という言葉を残して田舎へ帰った前任の管理人に代わって「一刻館」にやって来る。実は彼女は未亡人で、亡き夫を理想化して想い続けている為新しい恋が出来ないという当時としてはかなり画期的な設定がなされたヒロインである。ちなみに彼女の最初の夫は彼女の学校の教師「惣一郎さん」であり、一方的に熱を上げたのは響子さんの方だった。そしてようやく結ばれるも惣一郎さんは結婚後半年で他界してしまい、20代前半で響子さんは「未亡人」となってしまうのである。

そういった複雑な事情がある為、響子さんを好きになってしまった2人の男「五代裕作」「三鷹瞬」は彼女の抱く亡き夫の幻像に散々翻弄される。ここでキーマン(キーワンか?)となるのが犬の「惣一郎さん」である。この犬のハタ迷惑な行動(酔払って響子さんに襲いかかったり、怪しい目付きでじゃれついたり…)は、特に「管理人と住人」という形ではあるが、彼女と一つ屋根の下で暮らしている五代君にとっては気が気ではない。そんな騒動の中、響子さんのわだかまりも徐々に溶けて行くという訳だ。

ちなみに彼女の「音無響子」という名は、作中の中での彼女の心理状況を良く示している。姓が「音無」、名が「響子」…漢字の意味だけ取れば、音が無いのに響いているという矛盾した名前なのである。その名前の矛盾が響子さんの行動、つまり「亡き夫に操を立てるような態度を取りつつ、五代や三鷹が他の女性と仲良くするとヤキモチを焼く」「どう考えても三鷹とデートをしているのに、五代君にはデートでないと言い張る。」といった矛盾なのである。

この矛盾は「亡き夫への思慕を持ちながら、2人の男の間で心が揺れ動く」という彼女の心理状態そのものなのだ。これが良く現われているのが、三鷹がリタイアした後、こずえちゃんの勘違いから五代くんとケンカになった響子さんが実家に帰ってしまう場面である。実家に帰れば響子さんは「未亡人・音無響子」ではなく旧姓の「千草響子」に戻る。「音無」の姓から解放された響子さんは、ここでようやく矛盾した感情を抱かずに五代クンへ想いをぶつけることが出来たのである。(その形はヒステリーという形であったが…。)

そして一ノ瀬のおばさんの仲裁のおかげで響子さんも「一刻館」へ戻ることになる…が、今度はアケミさんとの一件が誤解を生んで、「茶々丸」で足止めとなってしまう。色々紆余曲折があって誤解は解け、響子さんは遂に「アナタしか抱きたくないんです!!」という五代君の気持ちを受け入れるが、当の五代君は響子さんの「惣一郎さん」という言葉が心に引っ掛かってシッパイしてしまう。

ここで重要なのはここでの響子さんは「一刻館」に戻っていない、つまりは「音無響子」ではなく「千草響子」のままであることである。ここでの響子さんはふんぎりを着ける為、新しい恋に生きる決意表明として過去の自分、つまりは「惣一郎さん」を忘れさせて欲しかったのである。

シッパイしてしまった五代君ではあるが、バイト先に訪ねてきた混乱の原因であるこずえちゃんとの決着をつけ一刻館へ戻る。そこへ待っていたのは「一刻館」へ帰って来ていた響子さん。そして2人は管理人室でお互いの心をぶつけ合い、改めて受け入れあい、結ばれる。

ここでの響子さんはさっきとは異なり「音無響子」である。つまりはここで五代君は初めて惣一郎さんへの想いを含む響子さんのすべてを受け入れ、ようやく心が結ばれたのである。(この事が後の名シーン「あなたをひっくるめて、響子さんをもらいます。」に繋がるという訳だ。)

恐らく前の段階で結ばれてしまったら、あのラストシーンは生まれなかったのではないだろうか?ここでの響子さんの台詞「ずっと言えなかったことがあるんです。本当はね…ずっと前から五代さんのこと好きだったの。」は響子さん自身が新しい恋に生きることへの決意表明と、本当の気持ちを偽っていた過去との決別を意味する重要なものと言えよう。そして、その台詞に続く「何時から?」という五代君の問いに、「忘れちゃった」と甘えて答える響子さんはたまらなく可愛い。「めぞん一刻」屈指の名シーンである。

昨今では「おにぃちゃん」と甘えてくる妹系のヒロインの人気が高まっているが、「カワイイお姉さん」もまた良いものではないだろうか?そんなキャラクターの筆頭がひよこのエプロンで玄関を掃除する「管理人さん」であろう。

余談ではあるが、本当は「何時から」なんだろうか?私としてはやはり「初の大ゲンカ〜五代君骨折」当りだと思うのだが…。


戻る