今はなきテクノスジャパンに思いをはせて

くにおくん
ゲーム「くにおくんシリーズ」主人公


最近だと「大乱闘スマッシュブラザース」、一昔前だと「バーチャファイター」やら「ストリートファイターU」といった、所謂対戦ゲームという奴は中々廃れない。サッカーや野球といったスポーツをベースにしたゲームもそうであるし、「桃太郎電鉄」等のボードゲーム系もコレに該当するだろう。なにより仲間とワイワイ競える、という要素は、1人黙々とやり続けるだけなRPG等と比較すると絶対的なアドバンテージとなる。ファミコン創世記を知っている人ならば、「マリオブラザーズ」の協力プレイで壮絶な殺し合いをした経験がある筈だし、私自身、既に世にはセガサターンやプレイステーションがニンテンドー64等数多くのハイスペック(当時としては)な存在しているにも関わらず、学生時分の研究室で最も熱くなったのはスーパーファミコンの「ボンバーマンU」での4人対戦だった。

そんな私が最もハマり、小学校から中学校時代に全盛を誇っていたのが、今回紹介する「くにおくんシリーズ」だ。恐らく私と同世代の男子でこのシリーズを全くプレイした事が無い、という人はあんまりいないんじゃないだろうか…それ程、ゲーム少年達の対戦熱を満たしてくれた優良シリーズだったのだ。この「くにおくんシリーズ」にはドッヂボール、サッカー、ホッケーといったスポーツモノの他に、通称「ダウンタウンシリーズ」と呼ばれるものがあるのだが、私としてはこの「ダウンタウンシリーズ」の方により思い入れが強いので、今回はコチラをメインに語っていこう。

大本となる「熱血硬派くにおくん」というゲームだが、実はコレ、別に対戦ゲームではなくベルトスクロール式…所謂「ファイナルファイト」の様なゲームだった。その中身も、白ランを纏った不良少年・くにお君がヤクザに捕まった親友を助ける為、新宿駅のホームや電車の中、湾岸埠頭で喧嘩を繰り広げ、組事務所に乗り込んでヤクザを倒す、というものだった。このゲームが一応シリーズの開祖となる訳だが、「くにおくん」がシリーズとして認知されたのは「ダウンタウン熱血物語」からだろう。この「熱血物語」からキャラクターが2.5頭身にディフォルメ化され、前作では割とおざなりだったストーリー部分が強化され、「くにおくんシリーズ」という枠の中に更に「ダウンタウンシリーズ」という枠が出来、一つの流れを作っていく事になる。

「熱血物語」の概要はこうだ。

前作(「熱血硬派くにおくん」)から数ヵ月後、地域でも有数の進学校・冷峰学園に竜一、竜二の「ダブルドラゴン兄弟」が転校して来た。彼等は瞬く間に学園を支配し、数ヶ月で近隣の高校を配下に治めた。くにおのライバルであり、花園高校の番格であるりきは彼等の登場にも「ダブッてる兄弟なんぞ恐れるに足らず(ちなみにりきもダブッているのだが)」と平然としていたが、ある日彼の恋人・真美が冷峰の手の者に拉致され、りきの元に挑戦状が届く。怒りに燃えるりきはすぐに花園高校を飛び出すが、そこでくにおとの衝撃的な再会を果たす…。

このゲーム、基本はやはりベルトスクロール式のゲームなのだが、RPG的な要素もあり、襲い掛かってくる他校の生徒を倒して金を稼ぎ、商店街で買い物してパワーアップを図れる様になっているのだが、このゲームをシリーズ化たらしめたのはそのバトルの面白さだ。殴る、蹴るは勿論の事、その辺に落ちている鉄パイプ、チェーン、カラーコーン、木刀、ゴミバケツ…ありとあらゆる物を拾って、殴って、投げ付ける事が可能なのだ。しかも設定によっては協力プレイにも関わらずお互いの攻撃も「あり」に出来る為、場合によっては物語の進行をそっちのけで殺し合いになってしまったりもする、そのハチャメチャッぷりにある。そして、各キャラクターのリアクションや台詞も面白く、それがザコや中ボスの1人1人ですら個性を出すのに一役買っている。

また、アクションゲームながら世界観がキッチリ構築されており、こんな勢力図もある。流石に「熱血物語」自体をプレイするのは今となってはキツいと思うが、数年前にアトラスからゲームボーイアドバンスにて「ダウンタウン熱血物語ex」としてリメイクされており、必殺技やアクションがパワーアップしている他、ファミコン版には登場しなかったキャラクターが登場したり、行動如何によってシリーズでもお馴染みのごうだ、ごだいといったキャラクターが2人と共闘してくれたりもする嬉しい仕様になっているので、「くにおくん(ダウンタウンシリーズ)」に触れてみたい、というのであればコチラをオススメする。リメイクされてはいるものの、今のゲームに勝るとも劣らない楽しさがあるゲームなのだ。やはり、

にしむら「くにお!てめえなんか ぴゅ ぴゅ ぴゅのぴゅーにしてやるぜ!」
ごうだ「さおり…おにいちゃん また まけちゃったよ…」
おにづか「ど・どそくは… とおってよし!」
やまだ「ぜんこくの やまださんには もうしわけないが おれが あくのおおぼすの やまだだ!」


という一連の名セリフは、ゲームをやって直に体験して欲しいぞ。
で、続いて登場となるのが「ダウンタウン熱血行進曲 それ行け大運動会」だ。このゲームこそ、私の小、中学生時のベストゲームなのだ。このゲームの概要はこう。

冷峰学園の前生徒会長・やまだの悪事をお詫びする為に他校を交えた大運動会の開催を提案する。しかし、学園の新生徒会長に就任したとうどうは、この大運動会を利用して冷峰以外の高校を潰す事を画策し、運動会の競技を過激にし、かつ冷峰の選抜メンバーには超強力なメンバーを揃えた。その為、殆どの高校は大運動会への参加を自体してしまったが、くにお率いる熱血高校、りき率いる花園高校、ごうだがまとめ上げた各校連合チームは参加を表明。この4チームにより、前代未聞の超過激な大運動会が始まる…。

そう、この通り、ゲームシステム等は全くの別物(操作性自体は似ているが)にも関わらず、物語としては連続した作りになっており、前作でもくにお&りきの前に立ち塞がったダブルドラゴン兄弟を始め、ごうだ、ごだい、こばやし、にしむらといった面々が登場している。また、この大運動会の競技内容がまた面白い。

夢見町クロスカントリー
冷峰学園の校門をスタートし、路地裏、民家、屋根の上、公園を駆け抜け、下水道を泳ぎ抜き、夢見町を一周してその順位を競う。勿論、他校への妨害、潰し合い自由。

障害部屋競争
様々な仕掛けの施された部屋を順番に回り、その順位を競う。コチラも他校選手への妨害、潰し合い自由。

棒の上の玉割り競争
2高ずつの2チームに分かれ、2本の棒の上にあるくす玉を先に割った方が勝ち。

勝ち抜き格闘
冷峰学園の校舎側面に作られた特性ステージでのバトルロイヤル戦。リングアウトは失格。

この中でも、特に「かちぬきかくとう」が熱かった。「かちぬきかくとう」では特定の選手が必殺技を使えるのだが、この必殺技は「ストU」等の様にコマンド入力とかの必要は無く、例えばマッハキックならキックボタンを押せば発動(通常のキックは出来なくなる)、棒術スペシャルは木刀を持った状態でパンチボタン、爆弾パンチはジャンプした着地時にパンチボタン、という簡単入力で、当然バトルも必殺技の応酬…というよりハメ合いになってしまうのだが、このゲーム、チームバランスが敢えて悪くしてある。私と同世代の人なら肌で理解していると思うのだが、冷峰学園が各人の能力、必殺技共に圧倒的に有利なのだ。

必殺技を持つのは「花園」ではりき、さおとめ、わしお、しみずの4人だが、わしおはマッハたたき(武器攻撃)、しみずはハリケーンクラッシュ(木刀のみ、しかも役立たず)であり、さおとめのオーラパンチも遠距離攻撃可だが溜め攻撃なのでCPU戦ならともかく対人戦では当て難いという欠点が多い構成で、リーダーのりきは割とオールラウンドに立ち回れるが、マッハパンチは回転が遅く、他のマッハ技に比べてハメが困難だったりする。

「連合」はごうだ、ごだい、にしむら、くまだ、はやみの5人だが、やはりはやみはハリケーンクラッシュ、くまだの人間魚雷もリングアウト狙いにしか使えない。にしむらの溜めパンチも威力はあるが当て難く、ごうだの頭突きスペシャルも接近戦では不利になることもあり、クセが強い。ただ、ごだいは棒術スペシャルのおかげで木刀さえ持てばほぼ無敵と化すが、あくまで”木刀を持てば”とハマれば有利だがクセが強い。

「熱血」に至っては必殺技を持つのはくにお、すがた、ななせの3人だけであり、しかもななせの持つ斜めジャンプして発動のダブルチョップは使い勝手が悪い。すがたの爆弾パンチは使い勝手はバツグンだが自爆の危険もあり、安定しているのはマッハキックのくにおのみ。もりもとのバグ技を考慮しても、いちじょうの様な虚弱メンバーもいて戦力的にかなり不利。

その点、「冷峰」はりゅういち、りゅうじはそれぞれ2種類の必殺技を持つ反則的キャラクターである上に、対人戦で最もリアルファイトに発展し易い最強…いや、最凶技、マッハチョップを持つこばやしがいる。他にもはやさかはマッハたたきを持ち、起き上がりが早いだけで取り得の無い(バグ技はあるが)おとなしですら一応のーてんチョップという技を持つ。唯一必殺技の無いもちづきはその分足の速さが全キャラクターの中でダントツ、というスキの無さ…リアルファイト防止の意味で、ローカルルール「冷峰使用禁止」というのが仲間内で成立していた所も多い筈…それ程のバランスなのだ。

ただ、「熱血行進曲」の場合はこのチーム毎のバランスの悪さが逆に面白かったのだ。「冷峰禁止」といったローカルルールを用いない場合、勝敗自体は最初のチーム決めのジャンケンで決まってしまう場合が殆どではあるのだが、冷峰の強さを逆手にとって、初心者やヘタクソへのハンデとする事も出来るし、逆にそこそこ使える奴が使った場合は冷峰vsその他という構図が生まれたりもする。その辺の「受け手がどうとでもしてしまえるバランスの悪さ」が「熱血行進曲」の最大の強みだったのだ。キャラクターの強さというものもキャラクターそのものの性能の優劣ではなく、使うプレイヤーの上手さが重要となる訳で、やりようによっては最弱キャラであるいちじょうでも大物食いが可能なのだ。勿論、かちぬきかくとうの全試合にこばやしを出してマッハチョップでハメ続ける、というような事をやってしまうと流石にリアルファイト勃発となってしまうが、つけ入るスキのあるりゅういち、りゅうじ攻略戦なんかはかなり燃えるバトルとなるのだ。

しかし、続く「はるかなる金メダル」は「ハイパーオリンピック」的な競技(それでもハチャメチャだが)となった事で多人数プレイの魅力が失われてしまった上、水泳バトルロイヤルにおける「ぴらにあ」の様にアイテムで勝敗が決まってしまうケースもありイマイチで、最終作である「熱血べーすぼーる物語」はくにおではなく、彼を兄貴分として慕う人気キャラ・すがたを主人公に据える等冒険作ではあるのだが、出来の方はイマイチ。「熱血べーすぼーる」では今までパッケージ等の絵とゲームのグラフィックが全然違う事で有名だったりゅういち、りゅうじ兄弟の顔グラフィックがパッケージ拠りになったが、やっぱりりゅういち、りゅうじの顔グラフィックはあのクールな眼差しじゃないとなぁ…。(笑)

と、いう事で主に「ダウンタウンシリーズ」を解説して来たが、もう一つの軸であったスポーツモノも、ルールからして原型のスポーツを崩したハチャメチャな展開とアクションが面白く、かつ殆どの作品が簡単操作で馴染み易い、という優秀なゲームなのだ。オープニング等で寸劇的に語られるストーリーもバカバカしいが面白く、ゲーム自体のバランスそのものは決して良くは無いものの、プレイヤー側がどうとでも出来るフトコロの深さがあるゲーム…今尚熱心なファンがおり、携帯アプリやニンテンドーDS等でリメイクや新作が作られたりするのもうなづけるシリーズなのだ。

ただ、「くにおくんシリーズ」がフィーチャーされたのはゲーム業界がファミコンからスーパーファミコンに移ろうかという過渡期でもあったのが、「くにおくんシリーズ」を展開していたテクノスジャパンの寿命を縮めたのかも知れない。看板作品であった「くにおくんシリーズ」以外の人気作品を中々生み出せず、スーパーファミコン登場後も割と頑張ってファミコン用ソフトをリリースしてくれていたので私の様にスーパーファミコンを中々入手出来なかった者にはかなりありがたいメーカーではあったが、それが逆にスーパーファミコンへの移行をも遅らせた原因にもなっている感はあった。「くにおくんシリーズ」の魅力の一端であった筈の2.5頭身のディフォルメキャラクターが見せる痛快なリアクションが、キャラクターグラフィックをリアル体形化してスポイルしてしまったりもしている。結果、スーパーファミコン全盛期には「くにおくんシリーズ」自体が下火となってしまい、更にテクノスジャパンも自社ビルの建設費が経営を圧迫して倒産してしまう…。

ただ、「くにおくんシリーズ」の世界観、ゲーム性自体は今現在展開しているゲームと比較しても決して遜色ないものだと私は思うし、実際問題として、ゲーム自体の楽しさ…それも仲間を集めてワイワイやるという用途であるなれば、今現在リリースされているゲームよりも「プレイヤー側でどうとでも出来るフトコロの深さ」のおかげで優秀な部類にすら入ってしまえるんじゃないかとさえ思う。このシリーズの版権は現在ミリオンが所有しており、リメイク的なものは作れても「熱血物語」的な続編的ゲームは作り難いのかも知れない。ただ、くにおやりき、ダブドラ兄弟、ごうだ、ごだい、さおとめ、にしむら、すがた…このまま放置してしまうには惜しいキャラクターと、フトコロの深い世界観…こいつを放置プレイして腐らせておくのは、勿体無さ過ぎると思うのだなぁ、コレが。


戻る