刑事アクションドラマの復活を!!

本城慎太郎
「刑事貴族2」&「刑事貴族3」


最近、刑事ドラマが少なくなって久しい。特に、銃撃戦をバンバンやって、パトカー等を何台も爆破してくれる様な豪快な作りの刑事ドラマは皆無と言える。昨今の刑事ドラマと言えば、「踊る大捜査線」の様な刑事をヒーローとして描かないコメディ路線のモノや、ちょっと前に(一応)終了した藤田まこと主演の「はぐれ刑事純情派」の様な人情モノ路線が殆どである。特に、「はぐれ刑事純情派」は藤田まことの現代劇の代表作ともなっている他、元公安委員長に

「これからの警察は安浦(「はぐれ刑事」の主人公)の様な警官を育て、大事にしなくてはならない。」

等と言わしめる程、理想的な刑事像として世に認められている存在であろうし、コレに私も異論を挟むつもりはない。と、いうか、私自身「はぐれ刑事純情派」のファンでもある。そして「はぐれ刑事」と入れ替わりシリーズ化した人気の刑事ドラマ「相棒」にしても、まるで「刑事コロンボ」の様に犯人を追い詰める杉下右京と、人情味のある亀山薫、というダブル路線であり、「太陽にほえろ」や「西部警察」の様なアクション要素は殆ど無い。

確かに、鹿児島県議員選における鹿児島県警の「踏み絵」騒動やらストーカー警察官の拳銃を用いた無理心中、その他諸々の”警察の不祥事”という現状が報道されており、フィクションで描かれる警察以上に現実の警察の方がダーティで、しかも徹底している印象すらある。それ故の規制を恐れたのか、昨今では警察の不祥事をネタにしたようなドラマも減っており、刑事ドラマにしても、派手にバンバン撃ちまくるようなシロモノは作り難いのだろう。あ〜、無駄に撃ちまくってたタカとユージ(「あぶない刑事」)とか、得物がショットガンなのにスコープをつけて狙撃をする大門団長(「西部警察」)なんかが懐かしいなぁ…。

ただ、そういった人情路線、ひいては「踊る大捜査線」の様な、あたかも「おまわりさん達もサラリーマンと変わらないんですよ」的なネタにしても、リアルな警察を描いている訳ではなく、一般的に刑事は平時には銃を所持していない、といった誤解にも繋がっている。そもそも、「西部警察」等は人情派刑事ドラマの代表格「はぐれ刑事純情派」のキャッチコピー

「刑事にも人情がある。犯人にも事情がある」

とはまるで正反対で、犯人側の主張がかなりボカされており、ただただ凶悪さを強調された犯人組織を、コレまたバイオレンスな正義の警察が徹底的に追い詰める、という構図になっている。これはフィクションとしてはかなりディフォルメが施されたもの…最後、悪代官の屋敷に乗り込んで見栄を切り、バッタバッタとぶった斬る、というのとある意味同じ…思想的なもの、犯人側の”理由”というものを敢えて薄く描く事により、ドラマをより分かり易くしている。基本的には勧善懲悪であろうし、特にハイテクパトカーを駆使する「PART3」のノリは刑事モノというより戦隊モノのノリに近いとすら言える。…それでも最近やってくれないのだ。バンバン撃ちまくってドンドンぶっ飛ばす様な刑事ドラマが。物心ついた時に「太陽にほえろ」「西部警察」を見て、思春期に「あぶない刑事」を見て育った私には大変寂しい事ではあるのだが。

今回紹介する「刑事貴族」は、刑事ドラマが人情路線やコメディ路線になるほんのちょっと前に放送されていた日本テレビの刑事ドラマだ。私が学生の頃などは夕方4時代は日本テレビで、「あぶない刑事」かコレ、TBSで「水戸黄門」か「大岡越前」が再放送、というのがお決まりだったので、私と同じかそれ以上の世代には有名な刑事ドラマであろう。この「刑事貴族」、「太陽にほえろ」から始まる刑事ドラマの黄金枠にてスタートし、「『あぶない刑事』の2倍面白い!」なんてキャッチフレーズで放送が始まった。ただ、上の考察タイトルを見ても分かるとおり、今回メインで語る本城刑事はこの時点では登場していない。主演は「あぶない刑事」等でお馴染みの館ひろしで、ハードなアクションだけでなくキャラクターのアクの強さ、軽妙なやり取りが支持されていた同作品とはうって変わってハードボイルドな部分が徹底して強調されており、いつもはバイクを使って車の運転はしない、というのが館ひろしのキャラクター(コレは自動車免許を持っていなかった為)の通例だったが、「刑事貴族」では黒いムスタングマッハ1(アメ車)…それも運転席側がボコボコになっているモノに乗って犯人を追い詰める、というのが基本ラインだった。

ちなみに、タカの時はS&Wのリボルバーを二挺…というスタイルだったが、「刑事貴族」の牧刑事ではガバメントを愛銃としており、以降の氏の出演作品でもガバメントを使うケースが多くなっている。ただ、この牧というキャラクター、かなり館ひろしのクール&ワイルドというイメージに合ったキャラクターではあったものの、何と1クールそこそこで殉職してしまい、後任として郷ひろみ演じるアメリカ帰りの風間が登場するもインパクト自体は弱く、地味な印象があった。そして、「刑事貴族」は出演者、路線を大幅に変更し始まったのが「刑事貴族2」…ココで、満を持して、水谷豊演じる本城刑事の登場となる訳だ。

この本城刑事、館ひろしが演じた牧とは違う意味で面白いキャラクターだった。愛用の謎の黒い小型車とノーネクタイ(かしこまった席では蝶ネクタイを使う)、そして独特の言葉使いが印象的で、新生代官署の若手刑事を引っ張る中堅刑事でありながら、時として若手以上に暴走してしまう熱い男…推理力、洞察力に優れ、拳銃の腕も確かではあるものの、やや間が抜けた所もあり、地井武男演じる係長(タケさん)に小言を言われている事も多い…ハード路線だった「刑事貴族」とは明らかに違う事を印象つけていた。本城刑事の存在こそが、「刑事貴族2、3」の核であもあろうし、彼自身の人気も高い。特に彼の口癖

「あ〜お恥ずかしったらありゃしない」

は真似した事がある人も多い筈だ。

ちなみに、本城刑事の愛車である謎の黒い小型車…私の学生時代、この車の正体についてクラスメイトに尋ねられた事があった。彼はミニ・クーパーを改造した奴?なんて言っていたが、この車、バンデンプラ・プリンセスというイギリスの小型高級車である。英語のつづりではバンデンプラ”ス”なのだが、スは敢えて発音しないのが通なのだ。この車、小型のロールスロイス、なんて呼ばれていた事でも有名で、ヨーロッパの富豪がロールスロイスのセカンドカーとして使っていたケースが多く、ホテルのボーイもメルセデスよりこのバンデンプラに乗った客を優先していた、なんて逸話もあるんだとか。エンディングで、無人で走り出すこの車を追いかける本城刑事の姿も印象的だった。

ついでに、本城刑事が使っていた小さな拳銃はデトニクス.45オートという銃で、コルトガバメントをデトニクス社がコンパクトにしたモデル。そのサイズや形状からトイガン(ガスブローバック)にするのが困難、と言われていたが、つい最近、エアガン最王手の東京マルイから満を持して発売された。銃マニアにはコンパクトガバメントの草分けとして有名な拳銃ではあるが、位置付け的には「敢えてコレを選ぶ理由が少ない」という…ややマニアックな匂いのする拳銃なのだ。実際、東京マルイがコレをリリースする、という話を聞いた時、「何でデトニクスなの?」と意外に思った人も多かったそうな。確かに、マルイのM92F、デザートイーグル、グロック、というベタな傾向がミエミエの路線の中ではかなり意外なチョイスであろう。どんなのだったか思い出したい、見てみたいという人は「東京マルイ デトニクス」で検索すれば引っ掛かるので確認を。

本城刑事のキャラクターにも代表されるように、「刑事貴族」と「刑事貴族2」以降では明らかに路線が異なる。その為、1のファンと2、3のファンとで完全にクッキリ分かれてしまっている。

ファッションや愛車への拘り等は、牧や風間に比べ”貴族的”に映りもする本城であるが、そのキャラクター性に関して言えばむしろ軽妙な部類であり、タイトルの”貴族”もやや浮いてしまっている印象がある。孤高の牧、スマートな風間と比較すれば、むしろ庶民派にすら映る。若手刑事と本城のやり取り等は、むしろ「あぶない刑事」のノリに近かった印象はあるし、ハード路線の象徴とでも言うべき刑事の殉職も無く、徹底したハード&バイオレンス、という感じではない。しかし、確かに面白いのだ。

その理由の一つが、個性的な刑事達のキャラクターであろう。宍戸開演じる村木刑事(タク)は本城とコンビを組む度にひどい目に遭い、田中実演じる原田刑事(ミノル)はマジメで堅物だが恋愛小説好きだったり、寺脇康文演じる藤村刑事(リョウ)は元ヤンキーで刑事になる前は様々な職業を経験している異色の刑事、と、割と当時は有名と呼べる程ではなかった若手俳優が演じる若手刑事達のキャラクター、そして彼等を強引に引っ張ってムチャな捜査をする本城刑事、という構図が面白かったのだ。特に、本城と若手刑事のやり取りは非常にコミカルであり、必要以上に肩肘張らずに見られる気楽さを番組に与えていた。この番組の共演者は仲が良い事でも知られているが、その現場の雰囲気がそのままドラマにも反映されたのだろう。特に、本城とリョウのコンビは現在シリーズ化している人気刑事ドラマ「相棒」でも右京&薫にて復活しており、「相棒」には右京の元妻で居酒屋の女将として高樹も出演している事を考えると、キー局は違うが「刑事貴族2」の同窓会的にも見えてくるし、そういえば右京のファッションセンスや「変人」っぷりには本城に通じる部分があるし、薫の方に至っては殆どリョウのキャラクターと変わらない。ちなみに「相棒」での水谷豊のオファーは、先に出演が決まっていた寺脇康文の強い推挙があった為、とも言われている。

結果として、「刑事貴族2」は人気を博した訳だが、「刑事貴族」は「2」から「3」に移る際、本城が瀕死の重傷を負う。牧、岩田刑事の殉職が「刑事貴族」で前例としてある為、「3」での主役交代かと思われたが、結局本城は死の渕から生還、「3」も主役続投となる。この際、何時もは本城に小言を言うのがお約束となっていたタケさんが、

「もう同僚に死なれるのはまっぴらですよ」

なる発言をしている。コレは本城というキャラクターを生み出したスタッフ達共通の思いだったのかもしれない。確かに、リアリティとハードさを強調できる上、無理なく新規参入の刑事を出せる、という事で「太陽にほえろ」から刑事物語の言わばお約束として定着していた「殉職」…実は、「2」のラスト以前、2クール終了時点で本城が殉職してしまうエピソードが撮影されていた、なる噂もあったりする。これが事実であるならば、キャラクターとしての本城は2度、生死の渕を乗り越えている、という事になる。当初、「刑事貴族」の主人公は彼ではなかった訳で、「2」以降の路線変更の件も含め、唐突な登場の仕方をしたキャラクターでもある。しかし、恐らく私と同じ世代の人間にとって、「刑事貴族」=水谷豊(本城)というイメージは間違いなく強い筈。つまり、それだけ本城が記憶に強く残る刑事だった、という事でもあり、もしここで本城が殉職してしまっていたら…「相棒」における杉下右京の存在は無かったんじゃないだろうか。本城が生き残ったという事は、ある意味で「刑事貴族2」が刑事ドラマの王道となった事の証明…というのも言い過ぎでは無い筈だ。

そんな訳で、確かに記憶に残る刑事ドラマとしての人気を得た「刑事貴族2」「3」ではあるが、「3」の末期はかなり視聴率的には苦戦を強いられていた様だ。これは「はぐれ刑事純情派」「さすらい刑事旅情編」といった人情モノの刑事ドラマが幅を利かせ始めた頃でもあり、そういう意味ではこの「刑事貴族」は刑事ドラマとしての過渡期に制作された作品と言えるだろう。そして「刑事貴族3」終了後に始まった「はだかの刑事」も、人情路線とアクション路線の間で作風が確立出来ず、支持を得られないまま単発で終わってしまっている。もし、「刑事貴族3」終了時もまだハードなアクションで刑事ドラマが続けられていたら、もしかしたら今とは違った刑事ドラマの現状があったのかも知れないが、コレはタラレバの世界だろう。言いたいが…言うまい。

そして現在、冒頭でも触れたように、娯楽性を突き詰めて分かり易いドンパチをやってくれる刑事ドラマはほぼ全滅状態…その一方、「はぐれ刑事純情派」の終了で人情モノ主体の刑事ドラマも力不足になりつつある。国の、公の起こす事件、隠蔽、癒着…その他諸々の影響もあるのか、正義を貫く刑事ドラマなるものの存在意義がやや薄れてしまっているのかも知れない。業界内にもそういった刑事モノを扱う事に一種のタブーみたいな雰囲気があるのだろう。フィクションがフィクションとして、お遊びがお遊びとして通用しなくなった、それだけ、世知辛い世の中になってしまった…と言えるのかもしれない。

だが、だからこそ見たい。正義の為なら鬼となる、悪に対し妥協する事の無い…そんな一種のヒーローとしての警察官や刑事達の姿が。


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