それは私のちまきだ。

色丞狂介
「究極!!変態仮面」主人公


マガジンやジャンプといった、いわゆる少年向けマンガ雑誌史上において、上村純子先生の「いけない!ルナ先生」や「1+2=パラダイス」といった、連載途中から有害図書認定を受けてしまった作品以上に書店でコミックスを購入し難いマンガ…それが今回紹介する色丞狂介を主人公とする学園ヒーローコメディマンガ「究極!!変態仮面」である。

そういえば、発禁処分を食らって相当な年月が経過した数年前に、R指定扱いで「1+2=パラダイス」が復刊した際に、上村先生がPTAだの教育委員会だの…そういった類からの圧力によって自分の作品が青少年の育成に悪影響を及ぼすというレッテルを貼られ、有害図書認定を受けて打ち切られた時の心情を後書きにて書いていたのを覚えているが、なんとも…。

…私は何を隠そう結構好きだったんだよなぁ〜エロ以前にギャグマンガとしても十二分に面白かったもの。ルナ先生の何でも死刑に結びつけちゃう超誤解フローチャートとかね。
もちろん、イエロー○ャブ辺りのグラビアアイドルの如く、先端の露出は徹底的に拒む「ラ○ひな」のような半端モンより全然エロエロで、思春期だった私のハートにダイレクトに響いたしな!!(やたら力説)

イカンイカン、本題に戻ろう。
この「究極!!変態仮面」のコミックス1巻を例に挙げるが、表紙で描かれているのは主人公の狂介を向かって左、ヒロインの愛子ちゃんを右側に配し、ド真ん中に描かれているのは変態仮面の勇姿…そう、女性のパンティを顔に被り、ブリーフの右側のゴムを左肩、左側を右肩に掛けた、例の「ちまき」を強調するレスリングスタイル…。

いや、コレはエロマンガの疑いが掛けられるとかそう言うこと以前に、見た目からして恥かしいでしょ?もっともこの恥かしい表紙は、作者のあんど慶周氏自らもネタにしていたので、コレは結構本人が好きでやってたのかもしれないが。

このマンガ、あの(どの?)週間少年ジャンプで「ドラゴンボール」や「ジョジョの奇妙な冒険」と肩を並べていた事もあるマンガなので、知名度はあって人気も…少なくとも私の周辺ではあったのだが、今では語る人もあまりいない作品ではある。確かに、ご時世に合わせて当時の超人気ゲーム「ストリートファイターU」のキャラクター・春麗にクリソツで、御色拳なるバカバカしい拳法を操る春夏なんてキャラクターがいたり、大方のファンの予想を裏切って最終的にヒロインの愛子ちゃんとはくっつかなかったりと微妙な部分は多いし、物語自体もドラマ性なんて皆無…その特異なスタイルから記憶には残るかもしれないが、歴史に名を残すような高尚さは持ち合わせていない作品…このマンガの大ファンである私ですら、そう思ってしまう。

しかし、深いテーマや壮大なドラマなんかなく、後に感慨深い余韻なんて全然味わえなくとも、気楽に読み始めて大爆笑出来る…そんなマンガがあったって良い筈だ。そういった手放しで笑えてしまうマンガ、という部分にのみ限定すれば、この「変態仮面」はかなり高評価を挙げられる作品だと思う。

先ずは、主人公・狂介の変身するスーパーヒーローの特異性である。
作者であるあんど慶周氏も語っているのだが、この変態仮面のコンセプトは、「もし、平和を守るスーパーヒーローがどうしようもなくカッコ悪かったら…」というものであろう。変態仮面の姿形だけを取って見れば、顔にはパンティ、例の「ちまき」、足には網タイツ…うん、ただの変態である。彼の既に他界している父親は警察官(ダーティハリーそっくり)で、母親・魔季はブティックを経営する傍らSMクラブで女王様のアルバイトをしている。つまり、狂介は父親から熱い正義感を、母親からは熱いロウソクで感じてしまう変態の血を受け継ぎ、正義のヒーロー・変態仮面として覚醒したのだ。

何とも情けなく、カッコ悪い姿…しかし、彼が事件の臭いを嗅ぎつけると、悪党共は彼の前に平伏し、必ず悔い改めるのだ。
彼独特の決めポーズや、「お前の目の前だ」と悪党を追い詰めていく爽快感、そして数々の華麗(?)な変態秘奥義が見物のアクションシーンはユニークだし、独特のスタイルで悪を退治する変態仮面の姿は妙にバカバカしくって面白い。基本がシモネタな為どうしても人を選ぶ傾向があるマンガだが、エンターティメント重視と考えればA級の洗練された魅力こそ無いが、B級の荒削りで破天荒な魅力には富んでいる。彼に助けられた愛子ちゃんの言葉を借りれば、

ヘンタイだけど…ヘンタイだけど…ス・テ・キ

といった所か。
そして、そういったバカバカしくも面白おかしい変態仮面の活躍の影に隠れがちなのだが、この「究極!!変態仮面」というマンガはコマの使い方が非常に巧みなのだ。

例えば第1話、愛子ちゃんと知り合った後の狂介の自宅でのシーン。母親と二言三言話した後、狂介が父親の遺影に今日の出来事…不良に絡まれていた愛子ちゃんを助けた事を自慢げに報告するのだが、最初のコマでは狂介と父親の遺影のみなのだが、次のコマでは狂介の後ろ…画面で言うと手前にハイレグレオタードと網タイツの足が…更に次のコマではボディスーツを着込み、バラムチを持った女の首から下が描かれる。そして次のコマでは女王様の格好をした母が、「おだまりっ!!」という言葉と共に息子にバラムチを振るうのだ。そしてその後、父親の血筋ばかり強調して自分の血筋を忘れている狂介に問い詰める母親がアップで描かれ、ようやくココで「母37歳 アルバイトでSM嬢もしている」という説明が入る。

何気なく流してしまいそうな一幕ではあるが、こういったコマの使い方というか、間の取り方が非常に巧みなのだ。
他にも、変態仮面が悪党を成敗した後に周囲の視線を気付き、少し間を空けてから「さらば!!」と走り去っていくシーン等も、この間の使い方というか、静と動の使い方の上手さが感じられる。

派手で奇特な変態仮面というキャラクターに一見依存しているかに見えがちな本作ではあるが、実は細かい部分での間の取り方も絶妙だったりするのだ。以前ココ「外伝」にて紹介したナルシス・ナニーニの登場する「ボンボン坂高校演劇部」もそうであるのだが、一見ネタや勢いだけで評価が決まってしまいそうなドタバタギャグ路線のマンガこそ、実はストーリーマンガ以上に「間」が重要になって来る。この「変態仮面」に限らず、人気のギャグマンガには必ずその作品や作家独特の「間」を持っていて、それが一見どうでも良いようなシーンに味わいを持たせている。それは静と動の使い分けであったり、セリフとセリフの間…正に漫才でいう所の「間」であったりとそれぞれ異なるが、そういった持ち味が作品の評価の根底を支えているのである。

もちろん、この「究極!!変態仮面」の見所は、変態仮面というマンガ史上でも稀に見る奇特なヒーローのバカバカとくも面白おかしい大活躍ではあるのだが、この作品の持つ独特の「間」とか、そういった部分に注目して読んでも面白いんじゃないかと思うぞ。いや、別に評論家ぶるつもりはないんだけどもね。

余談だが、この「究極!!変態仮面」のコミックスには読み切りで掲載されたバージョンも収録されているのだが、コチラの特別読み切り版では、連載版では遂に誰にもバレる事が無かった変態仮面の正体が大金玉男(「だいきんたまおとこ」ではなく「おおがねたまお」)の姦計により愛子ちゃんにバレてしまい、窮地に陥っている。この読み切りで、公衆の面前でパンティを被って変身する狂介は何となく悲壮感があってカッコ良かったぞ。(笑)

あ、また狂介についてはあんまり書かなかったな…まぁ、いいか。

最後に、蛇足になるが、変態仮面は「Aiko」の刺繍が頭部に位置する事からも分かるとおり、前部を上、後部を下にパンティを被っているのだが、一部のマニアの間で伝説となっている人気ゲーム「超兄貴」の田丸浩史氏が書いたコミカライズ版によると、ケツの方を頭に持って来た方が被り易いんだとか。

…あ、私は試したことが無いので分からんぞ。
「ちまき」を実現しようとしてブリーフを破いてしまった事はあるが。(笑)


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