死を呼ぶ恐竜

デスザウラー
トミー「ZOIDS」シリーズ


先ず断っておこう。私はこの「デスザウラー」を所有していた事は今だ1日として無い。
子供の頃の私は純粋にお金が無かった事もあるのだが、何よりも堪え性が無い奴だったのでお小遣いを貯めて大物ゾイドを買ったりも出来ない性分だったのだ。

当時私が持っていたモーター駆動ゾイドと言えば、誕生日に買ってもらった「シールドライガー」と「ゴジュラスMK-U」ぐらいなモノだったのだ。だからこそ、小遣いをコツコツ貯めて大型の「ウルトラザウルス」を買った友人が物凄く羨ましかった記憶がある。

さて、アニメ版しか知らない若い世代や当時「ゾイド」に興味がなかった人にはサッパリになってしまうのだが、私が初めて購入したゾイドは「アクアドン」…超初期にラインナップされていたカエル型ゾイドであった。以降は少しブランクを設けて「マルダー」とか「スネークス」「ヘルキャット」「ツインホーン」といった小物を買っていた記憶がある。いわゆるバトルストーリーで言えば一番「ゾイド」に熱中していた時期はゴジュラス無敵時代からゼネバス帝国滅亡辺りまでである。

ただ昔からそういった設定を追っかけるのが比較的好きだった私は、当時発売されていたバトルストーリーをジオラマで見せてくれる「ファンブック」にも手を出していた。私の家はオモチャは比較的買ってもらえなかったのだが本ならば割と買ってもらえたので、小物キットしか買えない分知識で補填しようとそりゃあもう真剣に読み漁った記憶がある。そんな「バトルストーリー」を読んでいた私の眼に一際輝いて見えたのが今回紹介する「デスザウラー」だったのだ。

一応私の近所ではヘリック共和国側が正義の味方、ゼネバス帝国側が悪役という風潮があった。実際上記した「ウルトラザウルス」を持っていた奴なんかは徹底して共和国側ゾイドばかり買っていたし、他の友人も「サーベルタイガー」等の見た目からカッコ良いゾイドならともかく、小型ゾイドに関しては殆ど共和国サイドのものばかり持っていた。

そんな中で私はナゼか数多くの帝国側小型ゾイトを所持しており、仲間内では帝国サイドのゾイド好きとして知られていた。そんな私は遊びの際はいつも悪役となるハメになり、愛すべきマルダーを始めとする私の小型帝国ゾイド達はひたすらやられ役に回されていたのだ。

…なんか…悔しかったんだよなぁ。

そんな帝国寄りのゾイド少年だった私に転機が訪れた。それこそが「デスザウラー」との出会いである。
バトルストーリーで、デスザウラーはロールアウトした直後に数十隊のゴジュラスと戦い、ものの数分で全滅させてしまう。そして勢いに乗った帝国はデスザウラー部隊を擁してヘリックの首都を陥落させてしまう。
そのデスザウラーの圧倒的な強さにシビレたと同時に、自分の好きな帝国サイドのゾイドでありながらこのデスザウラーに、そしてその象徴たる大口径の荷電粒子砲に堪らない恐怖を感じたのだ。

実際のキットのギミックもそのイメージを崩す事がなかった。
オモチャ屋に飾られていたデスザウラーが荷電粒子供給ファンを回転させながらノッシノッシと歩く姿は正に威風堂々。またゴジュラスと同様眼の部分に発光ギミックが施されていたが、この眼が横棒一本の無表情というのがこのデスザウラーの冷酷ぶり、無慈悲ぶりを強調している気がして恐ろしかった。

テレビアニメ化した際も悪の大ボス「破滅の魔獣」として登場した事からもそのキャラクターとしての濃さが証明されている通り、当時このデスザウラーのキャラクターは今まで大スターとして君臨していたゴジュラスやウルトラザウルスを完全に追い落としてしまう。デスザウラーはゾイドワールドにおいて王者として君臨し、「マッドサンダー」に破られるまで一つの時代を築いたのだ。

そして、上記した「ファンブック」のジオラマストーリーで私が何度も何度も読み直したエピソードも、やはりデスザウラーが深く関わっていたエピソードであった。そのエピソードとは、ヘリック大統領と帝国軍人フランツの壮絶な決闘を描いたものだ。

共和国サイドが対デスザウラー用として開発した下半身はウルトラザウルス、上半身はゴジュラス、そして背中にサラマンダーの翼とゴルドスのレーダーの4コイチという壮絶な改造ゾイドに共和国大統領が自ら親衛隊長のローザと共に乗り込み、帝国屈指のプロフェッショナル・フランツ大尉の改造デスザウラーと戦う…今考えると国の最高責任者たる大統領自らが決闘まがいの危険を犯したりと無茶な部分を感じてしまうが、少なくとも当時の私には最高のおとぎ話であった。

なんにせよ、決闘を行う2体の改造ゾイドが凄まじかった。
共和国の4コイチゾイドは「ケンタウロス」と命名されており、ゴジュラスの格闘能力、ウルトラのパワー、サラマンダーの飛行能力、ゴルドスの電子戦能力を全て備えるバケモノ。武器もゾイドらしからぬ巨大な弓矢で、コレが荷電粒子砲並の破壊力を秘めたシロモノだという。
アニメのガーディアンフォース編でレイブンの愛機ジェノブレイカーを見た時私も正直「ゴテゴテし過ぎだよなぁ…」と思ったものだが、実は幼少時代にもっとゴテゴテしたゾイドを知っていたのだなぁ…。今改めてケンタウロスを見ると、ジェノブレイカーなんて全然ノーマルだよ、うん。

対するフランツ大尉の改造デスザウラーは通称「デスドッグ」と呼ばれるもので、本来二足歩行のデスザウラーを四足歩行にして機動力を高めている。四足の安定性と走破性でノーマルのデスザウラーが運用できない山岳地帯での戦闘も得意としていた。
またこのデスドッグはデスザウラーの象徴とも言える荷電粒子砲がオミットされており、替わりに大口径のビーム砲を腹部に装備している。それも連射が出来ず、供給ファンという弱点を持つ荷電粒子砲は乱戦では役に立たないというフランツのプロフェッショナルな考えによるものだった。そんな2大凶獣が繰り広げられるバトルは大迫力で、いわゆるジオラマブックにも関わらず堪らない臨場感とスリルを味わえたものだ。
う〜ん…私も純真だったのだなぁ。(笑)

そして2000年を前にしてのゾイド復活。
テレビアニメとしてスタートした「ZOIDS」は昔のバトルストーリーをそのままやるのではなく、ちゃんと主人公を据えた冒険物語を展開している。そのせいもあって旧来のバトルストーリー派には不評だったようだが、最近リアル調と称して蔑ろにされ続けてきた「愛機とパイロットの絆」というネタを前面に押し出した作りに好感が持てた。もちろん物語にもちゃんと見せ場があったし、何より丁寧に作られていたという印象が残っている。この辺は「大惨事」を参考にしていただきたい。

そしてデスザウラーもきちんと悪役としての存在感をアピールしており、第1部の最終話「帝都炎上」で描かれた供給ファンから空気中の静電気を集め、荷電粒子砲で破壊し尽くす様は、昔ジオラマブックを見て思い描いていたデスザウラーの姿そのものだった。
もっとも「完全体」としてガーディアンフォース編の最終話に登場したデスザウラーは、その破壊が惑星規模で大き過ぎたせいもあってかイマイチ迫力が薄く、むしろデススティンガーの方が「終焉の使者」のキャッチコピーそのものの働きをしていた気もするが…。

ただやはり大ボスとしてデスザウラーを持ってきたのは

「ああトミー…アンタ分かってるよ」

と思ってしまう。デスザウラーはバトルストーリーでは共和国の対デスザウラー用決戦ゾイド・雷神「マッドサンダー」に成す総べなくやられてしまうし、私がゾイドから離れた後はそのマッドサンダーすら破壊する重力砲を装備した「デッドボーダー」、そしてデスザウラーを超える戦闘能力を持ち空爆まで可能な最凶ゾイド「ギルベイダー」等新型が次々とリリースされている。決してデスザウラーは最強という訳ではないのだ。

それはメカニカルな部分での設定でも同様で、「デスザウラー唯一の弱点である荷電粒子供給ファンを止めればゴジュラス等にもチャンスはある」という設定が存在していた。だからこそデスザウラー攻略の為の様々な作戦がジオラマブックでも展開していたし、上でも書いているウルトラザウルスを買った友人も、デスザウラー攻略作戦を練って1人悦に入ったりしていたのだ。

実はこの弱点こそがデスザウラーの魅力だったのではないだろうか?
「ゾイド」というオモチャには一応バトルストーリーがあったものの、それは新製品を活躍させたりする為という要素が強かったように思える。つまり勝手に改造してオリジナルゾイドを作ったり、勝手にパイロットの設定を考え、そのパイロットのバトルストーリーを想像したりして楽しめたのだ。私もスケッチブックにヘタクソなオリジナルゾイドの絵を描いていた時代もあったし、強引極まりない改造でせっかくのゾイドをオシャカにしてしまい途方に暮れた事もある。
アニメにも

「ゾイドには無限の可能性がある」

なんてセリフがあったが、正に想像力次第でいくらでも楽しめたオモチャだったのだ。

そしてデスザウラーは強大な力を持つが只一つだけ弱点のあるゾイド…つまり当時の私のようなゾイド少年が、自らの分身たるゾイド乗りにいかにデスザウラーを攻略させるかという課題を提示したゾイドでもあったのだ。だからこそその弱点を強調し、その弱点すら生半可な事では落せない事を容易に想像出来るようデスザウラーの供給ファン周辺には武装が集中していたりもする。

こういった部分があったからこそ、共和国寄りの少年達はその難関をいかに突破するかを考え、私のような帝国寄りの少年は共和国寄りの少年が立案する作戦にいかに対処するかを考えて遊ぶ…そう、デスザウラーの存在は「ゾイド」というオモチャを知的玩具並の遊びを提供してくれたのだ。

一時は私も設定バカに成り下がった事もあるが、やはりオモチャもアニメも遊べてナンボだと思う。そんな楽しみを教えてくれたのが「ゾイド」であり、デスザウラーという存在だったのだ。

アニメ化からの流れとして、その大ボスたるデスザウラーも数年前再販された。限定で「ブラッディデスザウラー」と呼ばれる真紅のデスザウラーも存在しているらしい。しかし私は購入しなかった。

純真な(?)ゾイド少年だった頃のようにお金が無かった訳でもないし、あのデスザウラーを実際に作り、動かし、遊びたいという気持ちがあったのは事実だ。それでも購入には踏み込めなかったのだ。
ナゼなら、少年の頃の私同様、デスザウラー、正確にはデスザウラー唯一の弱点である荷電粒子供給ファンは私にとって友達が率いる共和国軍の攻撃から守り抜く為の存在で、決して自ら操ってはいけない存在なのだ。


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