ヒーロー宮内の真骨頂!?

早川健
「快傑ズバット」主人公

「ウルトラマン」「仮面ライダー」等、巷に溢れる特撮作品の中でも、一際怪しく輝く一つの作品がある。

「快傑ズバット」

この名前を聞いただけで胸がズキュゥゥゥゥゥン!!と来てしまう人は間違いなくビョーキだ。

この「快傑ズバット」という作品の骨格はこうだ。
親友である飛鳥五郎を殺した犯人を探してさすらいの旅をする私立探偵「早川健」は、飛鳥の残した設計図を元に強化服「ズバットスーツ」を開発し、自らがそれを身に着けることにより「快傑ズバット」に変身、悪の犯罪組織「ダッカー」と戦うのだ。
これだけだと、ただのありふれたヒーロー作品なのだが、「快傑ズバット」はココからが異常なのだ。
敵組織「ダッカー」は日本全国の暴力団やヤクザを支配する極悪非道の組織である。が、この組織は「ショッカー」や「デストロン」とは異なり、怪人や怪獣を中核とした作戦を展開したりはしない。なんと、この組織の構成員は生身の人間ばかりなのだ。「ダッカー」の構成員は一人一芸を持つツワモノなのだが、外見上は飽くまで生身の人間なのである。そんなフツー(とは言い難いのだが)の人相手に早川健は自分だけ超人に変身してしまうのである。

そんな卑劣なヒーローに立ち向かうダッカーも、とんでもなく変な組織だったりする。首領自らが、「幸せそうな奴は誰だろうと皆殺し!!」等という理不尽な事を平気で言ってしまうのだ。

首領がこのようなイ○レポンチであるからして、毎回ズバットと戦う用心棒達もヒトクセどころか120クセくらいある凄まじい連中である。変身する卑劣なヒーローに対し、用心棒達は毎回自分の特技を駆使して戦うことになるのだが、その特技がヘンテコなのである。いや、最初の頃は「居合抜き」「ナイフ投げ」「中国拳法」といったものの達人であったのだが、次第に「ハスラー」「ゴルファー」「トランペッター」「料理人」とどんどん違う路線に走ってしまうのである。挙句の果てに、35mmフィルムを武器にするカメラマンや、手榴弾をつり竿で飛ばす釣り名人、尺八型ボウガンで攻撃を仕掛ける虚無僧等など…どんどん変な方向へひた走るのだ。こんな変人と戦う早川健こと快傑ズバット…確かに変身でもして顔でも隠さなけりゃやってられないかも知れない。

こんなトンデモな敵の中でも、そのトチ狂いっぷりが一際目立つのが女用心棒「レッドドラゴン」であろう。バス停で順番を割り込もうとしたのを子供にたしなめられ、「私に逆らって生きている人間はいないよ!!」等と凄んでしまうのだ。渋谷や池袋辺りにいるチーマーか?アンタは…。(苦笑)挙句の果てに、「行くよ!!ズバット!!」と見栄を切っている時に十字剣を投げつけられて、呆気なくやられてしまうのだ。いやはや、なんともはや…。(苦笑)

更に作中に登場するゲスト脇役達も奇人、変人揃いだ。例えば癌の特効薬を作ろうとして毒薬を作ってしまう医者や、山奥の丸太小屋で1人高性能爆弾を研究開発している科学者、たった30分の放送の間に4回も襲われる女(CMやオープニング、エンディングを考慮すると、約5分に1回のペースである)等など…変な奴ばっかり出て来るのだ。

こうして、主役、敵、脇役という悪夢の変人ジェットストリームアタックが完成する。このトリプルアタックによって、視聴者は「快傑ズバット」の訳の分からない変な魔力に引き込まれてしまうのだ。

そんななんでもアリな世界がナゼかちゃんと一つの作品に落ちついてしまった原因こそ、ヒーローバカ「宮内洋」演じる早川健、即ち「ズバット」の魅力に他ならない。

「ズバッと参上、ズバッと解決、人呼んでさすらいのヒーロー、快傑ズバット!!」

自らの素性をいきなり「ヒーロー」と名乗ってしまう辺り、やはりヒーロー宮内らしい豪快な名乗りである。この辺の強引さは、後の世では某美少女戦士が自らを「美少女」と決めつけてしまう辺りに引き継がれているような気がしないでもない。

口上からして変なズバットであるから、戦いっぷりも相当に変である。先ずはズバットではなく早川健の時に、敵の用心棒との…所謂「日本一対決」がある。敵の用心棒が現れると、やっとあいでなすったとばかりに

「○○の用心棒○○、だが○○の腕は日本で2番目だ!!」

等と言い放ち、相手用心棒が「俺以外に日本一がいると言うのか!!」と凄むや、今度は人差し指と中指を立てた手を自分の顔の前でチッチッチッ…と振り、その指で帽子のつばを押し上げ、不敵な笑みを浮かべながら親指で自分自身を指す…ここの一連の演技が何ともキザったらしい事!!ただこのキザったらしい演技が、逆に宮内氏の手にかかると非常にカッコよく、魅力的に見えてしまうのだ。(笑)

そこで相手に凄いワザを披露させ、自分は相手よりもっと凄いことをやってのけてしまうのだ!!このとんでもない技がまた絶品!!このとんでもない演出は、肝心要のズバット自身の格闘シーンよりも遥かに印象的になっている。ちなみに双葉社「快傑ズバット大全」に掲載されたインタビュー記事にも、当時ごっこあそびをしていても「快傑ズバット」の場合真似するのはズバットの真似ではなく、皆帽子を被って早川の真似をしたんだそうな。確かに、チッチッチッ…から始まる一連の演技、一生涯に一度でも良いから実生活でも使ってみたい、なんて思ってしまうのは私だけではあるまい。(笑)

どんな些細な事でも絶対に一番じゃなきゃ気が済まない奴…それが快傑ズバット…というより早川健のキャラクターなのだ。
思えばこの「何でも一番じゃないと嫌」という性格、早川健を演じるヒーローバカ役者「宮内洋」氏の性格を反映したものなのかも知れない。

更に、最終回では脱力必死な展開が見られる。最終回の詳細はネタバレになるので書かないが、早川健は最終回にしてやっと親友を殺したのが敵組織ダッカーであることに気が付くのだ。つまり、これまではただ行きがかり上ダッカーと戦っていたに過ぎないのだ。もっともこのムチャクチャっぷりも「ズバット」の魅力ではあるのだが。

ちなみに「仮面ライダーV3」の風見志郎等数多くの特撮ヒーローを演じた宮内氏だが、ファンの中ではこの「快傑ズバット」こそ最も宮内氏らしいヒーローだという意見がある。ズバットの「何でも一番じゃないと嫌」という性格は、宮内氏の「主役のヒーローじゃなきゃ嫌」という役者としての意地(?)に通じる部分がある。例えば、「秘密戦隊ゴレンジャー」ではアカレンジャーではなくアオレンジャーのオファーが来た際、「主役じゃなきゃヤダ」とごねた為、アオレンジャーに「佐々木小次郎的なキザなキャラクター」という新機軸が打ち出された。しかも「仮面ライダーV3」の風見志郎は本郷、一文字に続く三番目の仮面ライダーで、「ゴレンジャー」のアオレンジャー新命明に至っては5人いる内の一人。宮内氏にとってはこのズバット…早川健こそが、初の「自分のキャラクターを全面に出せる」ヒーローだったのではないだろうか。そう考えると氏の「ズバット」への思い入れは良く分かるし、そこから生じる役者根性(?)がこのズバット、つまりは早川健というキャラクターに凝縮されていると言えるだろう。

この宮内洋氏の「ヒーローとは?」という哲学的なテーマの一つの答えとして、この「快傑ズバット」は存在するのだ。とあるインタビューにて、宮内氏はこんなことを話している。

「ヒーロー番組とは、教育番組に他なりません!!」

つまり、見ている少年少女が親と子の関係、目上の人との関わり方といった社会的道徳を学んでいくものなのだという。だから、宮内氏の演じるヒーローは番組の中で立ちションどころか、タバコを吸うシーンすら無い。この彼の独特の信念は「快傑ズバット」にも色濃く出ている。
例えば、劇中早撃ちが得意な用心棒と早撃ちの技を競うシーンにて相手のタバコを使うシーンがあるが、飽くまで自分の能力を誇示する為の小道具として使っているだけで、火はつけているが吸ってはいない(コレは本人談/実際は所謂「金魚」まではしているので、微妙な気はするのが。)のだ。

特撮作品は、ロボットアニメと同様PTAからの評判はすこぶる悪い。現に「ウルトラマン80」の放映時に、PTAの役員が劇中ウルトラマンが何回パンチを繰り出し、キックを放ったかを詳細にレポートにまとめ、いかに特撮作品が暴力的で俗悪かを教育委員会に訴えたというような事が起きている。

しかし、本当にそういった団体が指摘するようにヒーローを描く特撮作品は総じて低俗で暴力的、教育上宜しくないものなのだろうか?「ウルトラマン」や「仮面ライダー」等の特撮作品に少なからず影響を受けた我々だって、一部を除いては健全に育ってちゃんとした大人をやっている。つまらないレポートを書く努力をするなら、宮内氏や藤岡氏のように健全に特撮というジャンルに取り組んでいた人を知るべきだったのではないだろうか?私にはそう思えてならない。

そんなヒーローバカの魅力が、早川健というキャラクターには詰まっている。


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