ダース・ベイダーのお風呂

KITT
「ナイトライダー」スーパーカー

何とも耳に残る特徴的なテーマ曲。美しい夕日に包まれた荒野を、砂塵を巻き上げて疾走する漆黒のマシン。そしてお馴染みのナレーションが物語の幕開けを告げる。

「陰謀と破壊と犯罪の渦巻く現代によみがえる正義の騎士」

「ナイトライダー」…80年代の半ば、アメリカから日本にやってきて大人気を誇ったテレビドラマである。今回紹介する「KITT」はそのドラマに登場する、正に夢のスーパーカーなのだ。

この「ナイトライダー」という作品の概要は、オープニングでナレーションが教えてくれる通り「陰謀と破壊と犯罪の渦巻く現代によみがえる正義の騎士」の物語である。その騎士であるマイケル・ナイト(デビット・ハッセルホフ)は元警察官のマイケル・アーサー・ロング。彼はとある産業スパイ事件を追跡中、自分の親友であるタニアが事件の黒幕であることを知ってしまう。その為部下を殺され、自らも顔面に重症を負った。そんな彼を救ったのが「ナイト財団」の総帥ウイルトン・ナイトであった。顔を整形した彼は以降ウイルトンの養子として「マイケル・ナイト」を名乗り、相棒のKITTと共に巨悪と戦うのだ。

ちなみにこの「ナイト財団」、公に出来ない軍や国家の機密に関しての捜査を行う機関で、警察や軍隊のような権力を持っている訳ではない。その為に開発されたのがマイケルの良き相棒「KITT」である。「KITT」とは「Knight Industries Two Thousand」の略であり、日本では「ナイト2000」と紹介されていた。そしてこのKITTは任務の特異性から考案された数々のハイテクとギミックで武装されているのだ。その一端を紹介しよう。

外見上でも最大の特徴となっているフロントの赤く輝く「レーダー」及び「センサー」
ボデイに凄まじい頑強さを与える「分子結合殻」
緊急回避用のジャンプギミック「ターボブースト」
追跡者をスピンさせる007からの伝統ギミック「オイルモード」
文字通りの「火炎放射モード」
エンジン音を完全に消す「サイレントモード」
レーダーやセンサーを無効にする「ジャミングモード」

そして「新ナイトライダー」冒頭にて、分子結合殻を分離させる溶液を浴びせられ特殊装甲車「ジャガーノート」にスクラップ状態にされるも、新たな仲間RC3等の協力で復活を果たし、

ボデイ形状を変化させ、驚異的なスピードで悪を追い詰める「スーパー追跡モード」
スーパー追跡モード使用時の緊急制動用の「EBS」
さらに、オープンカーに変形する「Cボタン」

等、様々な新装備を加え活躍するのだ。ちなみに本来「KITT」は車に登載された高性能コンピューターのことで、擬似的な人格も備わっているのだ。

そしてこの「ナイトライダー」の魅力の80%以上は、劇中でのマイケルとKITTの軽妙なやり取りであると私は断言する。(特に、回線の故障で西海岸風のノリになったキットが普段の知的な口調とは打って変わった「Heyマイキー、今日もノリノリでいこうぜぇ!!」等と言う西海岸風のノリノリ口調になる件は絶妙!!)熱血漢のマイケルに対し常に冷静で理知的なKITTという構図が、非常に面白い。

そしてこのKITT、マイケルとのドライブ中にゲームをしたり、クイズを出し合ったり、好きな音楽について意見を交わしたり、アメリカンジョークを飛ばし合ったり…果てまた人間界における様々な問題点についても相棒であるマイケルと語り合うのだ。しかもそれが1人の「KITTという人間」からの意見ではなく、あくまで「1台の車として」の意見である所が面白い。

例えば整備不良の中古車をなんとか売りつけようとする店員が客をペテンにかけているのを見たKITTは、客の目の前でその中古車を故障させてしまう。そんなやり取りが数回続いた後、遂に店員は客に「この車は整備不良の故障車です。」と正直に話してしまう。するとその客が「レース車両のベース用に丁度良いから」とその中古車を購入するのだ。マイケルだけでなく、他人、それもKITTを普通の車としか認識していないような人とのやり取りが非常にユニークなのだ。

こういった「自我を持つ車」はサンライズの「サイバーフォーミュラー」に登場する「アスラーダ」をはじめ様々な作品に登場するが、その中でもこのKITTが極めて記憶に残るのはやはりこういった細かいやりとりが原因なのだろう。

そしてこのKITT、「人命を最優先する」というプログラムを組まれている為に決して人は殺さない。それは相棒のマイケルも同様である。

一応設定でも「公に出来ない軍や国家の調査が主の為、警察や軍隊のように武力や特権を持っていない」とされているが、これはアメリカンドラマ特有の心遣いであろう。思えば「特攻野郎Aチーム」も銃は用いるが人殺しはしなかった。

「冒険野郎マクガイバー」でも銃は使わず科学的な知識を用いて窮地を乗り切っていた。銃の所持を認めてはいるものの、こういった部分から銃を否定しているのが何ともアメリカという国を象徴している気がしてならない。「ナイトライダー」では本編でもこの設定を生かし、「自分の安全を最優先する」というプログラムを組まれたKITTのプロトタイプ「KARR」と2度に渡る戦いを描き、よりこのテーマを印象的にしているのだ。

さて、余談ではあるが、整形後のマイケルの顔はデボン曰く「若い頃のウィルトンそっくり」との事だが、実はウィルトンの息子でアフリカの刑務所に服役中の「ガース」と同じ顔にされたのだ。このガースも本編で何度か登場している。ちなみにこの批評のタイトル「ダース・ベイダーのお風呂」は整形後意識を取り戻したマイケルが初めてKITTを見て言った台詞である。


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