書くと思ってたでしょ

戦車道
アニメ「Girls und Panzer」の基本設定



さて、今回は恐らくそのハマりっぷりからどうせいずれ記事を書きやがるだろうと予想されていたであろう作品「ガールズ&パンツァー」についてのコラムである。以前から「大惨事」の方には「コレはロボットアニメじゃねぇだろ」という作品も取り上げて来た訳だが、流石に今回はそれは出来んだろ…という事で今回は「偏愛録」にて書く事に。

ただ、タイトル…といっても本来であればキャラクター個々の魅力を書きつづる筈の「偏愛録」ではあるが、タイトルだけ使ってそのキャラクターにはロクスッポ触れていない…という記事が少なからずある訳で、今回誰かしらキャラクターをタイトルに採用した所でそのキャラクターのファンにとって不本意な記事になる…という事で今回はキャラクターの名前は挙げず、本作の骨子である「戦車道」というモノについて考えていく…というスタイルにしようと思う。(一応書いておくと、個人的イチオシキャラは、「やだもー」だったりする)

先ず、「ガールズ&パンツァー」に関して言えば、基本的なヒットの理由とかは先んじて「一話一会」や「クローズアップ」に書いた通りだろう。細部に渡って拘った戦車のアクションシーンや、一見奇異にしか見えない世界観をエロやグロといったモノに頼らず実にオーソドックスな構成でキレイに纏めた脚本、そして真剣そのものながら「お遊び」は忘れない演出、と、たった1クールのアニメながら見どころが多い作品である。その拘りが行き過ぎて1クール作品にも関わらず2度も総集編を挟んだ挙句、最終2話が尺が足りなくなって3ヶ月後…という、本来プロ失格と断罪されてもおかしくはない事態になったにも関わらず、その作品の質の良さ故ファンからの支持は保たれ、遅れて放送となった11、12話も大好評を博す…と、物語と同様正に大団円、という結果となった。しかも、その好評からOVAと劇場版の制作が決まる他、放送中は勿論のこと、放送終了後も御当地となった大洗町の人々が様々なアイデアで盛り上げ、現在進行形で続く御当地アニメによる町起こしの成功例として各メディアでも取り上げられている。

ココでこのヒットの要因を追記するとすれば、この「ガールズ&パンツァー」が、自分で色々と調べたりする事で面白さが倍増する作りになっている、という点。
例えばこんな流れが考えられる。

1.二話で主人公や仲間の乗る戦車の名前が分かった。
2.その中で歴女チームの戦車「3号突撃砲」が平べったくてカッコ良い。色々調べてみよう。
3.ググったら、3突は3号戦車の車体を流用した戦車…いや、厳密には戦車ではなく歩兵支援用の自走砲の一種。砲塔が無い代わりに製造費が安く、強力な大砲を積める、車高が低く抑えられる…なるほどなるほど…。
4.そうなると実際はどのように使われのかが気になる。もう少し調べてみよう。
5.歩兵支援用なので戦車兵ではなく砲兵が運用していて、歩兵支援に大活躍。ベースの3号戦車の生産が終わっても作り続けられ一説には第二次大戦のドイツで最も活躍した車両、なんて言われている。砲塔が無いので機動戦には不向きなれど、車高の低さを生かした待ち伏せ戦術で大活躍…。
6.あ、4話で薬局の影に隠れて一両やっつけたのってこういう事なんだなぁ。でも車高が低いメリットをノボリ立てて台無しにしちゃってやられてたっけ。(笑)
7.:結構戦車って面白いなぁ。他のチームのも調べてみようかな?


…まぁ、実際にあった事例、という訳ではないのだが、こんなパターンでこの作品…というより戦車自体に興味を持った人って多いのではないだろうか。だからこそ、昔のMMブームに少年期を過ごした出戻りオヤジモデラーだけではなく「ガルパン」がキッカケの新規戦車モデラーが大量発生して戦車模型特需となったのだろうし、今年の富士総合火力演習の応募が11万人オーバーで倍率約20倍、という事態にもなった…勿論、特に後者は全て「ガルパン」のおかげ、という訳ではないとは思うのだが、本作の人気キャラクターである秋山殿のコメンタリ―入り陸自DVDが異例の大ヒット、という事も鑑みれば、結構な影響を与えたのは間違いないだろう。

元々ミリオタ畑で戦車のアニメだから注目していた、という層ならいざ知らず、この作品を然程期待せず視聴した結果、面白そうだから調べてみる、すると理解が深まるとより愛着が湧く…というパターンで本作にハマった非ミリオタなアニメオタクというのも多くいると思うのだ。コレはある意味オタクの性質を上手く使った作戦、と言えるのかもしれない。逆に言えば、だからこそ端っから戦車に興味を持てない、ないし、1話の砲塔視点や4話の回り込みゼロ距離射撃辺りで戦車に興味を持てなかった、という人は、それがもう作品そのものの評価に直結してしまい、以降も平行線となったのだろう。それでキャラクター側にも魅力を感じられないと言うなら、もうこの作品は切るべき、としか言い様がない。

つまり今でこそ誰それがカワイイ、とか言われてはいるものの、間違いなく本作のキモはキャラクターではなく戦車なのだ。本作にパンチラやポロリといった要素が監督により禁止された事や、キャラクターデザインが昨今のオリジナル作品としては地味なのもコレが大元の理由なのだと思う。

もっとも、1クール作品にしてはという枕詞付きではあるが、キャラクター描写はきちんとしている。恐らく、戦車押しだけではココまでのヒットは無かったであろう。これはある意味結果オーライと言えなくもないが、実際の所は脚本や演出において戦車以外にも手を抜かなかった事が結果論的にはなっているが、評価に繋がったのではなかろうか。戦車というものは、その特性上嫌でもキャラクターが多くなってしまう。それをチーム編成である程度色分け、特徴づけをして、キャラクターの顔は覚えられなくてもなんとなくチームカラー的なイメージで印象付けられる様にしたのが先ず良かった。本来であるならば失態な筈の1クールで2度の総集編、というのもキャラクター描写にとってはフォローとなったのも結果オーライだったのかも知れない。実際この総集編でキャラクターや世界観への理解が深まった、という意見は結構多かったりするのだ。更に、中盤以降は目立たないキャラクターにもそれなりに個性、活躍の場が与えられ始め、おおよそのキャラクターに印象に残るシーンや台詞が与えられる事になる。それまで地味な印象しかなかった澤ちゃんの見せた最終回での活躍で一気にファンになった人も多い筈だ。

元々は戦車好きのスタッフが集まって、戦車のアニメが作りたい!!というのがこの作品の発端の筈。本来であるならもう戦車で一点突破型な作風にしてしまい、その他の要素でしかないキャラクター描写はないがしろにする様なスタイルでも、少なくともミリオタやメカ好きな層には受けたかも知れない…そこを、ある程度ではあるが一般性を獲得できる程度に作品の間口を広げたのは、やはり大成功、と言えるんじゃないかと。

さて、話を元に戻すが、戦車の詳細なスペックや各戦車の主砲の貫通力等に説明が無い、という不満を持った視聴者に関しても「調べるともっと面白い」というのは同様だったりする。そもそも、実際問題として「ガルパン」という作品を理解する上で本当に必要な知識、というのは実は基本的にそんなには無い。砲に関しては径がデカい方が強い、砲身が長い方が強い、という程度のレベルで良いし、装甲に関しても正面が一番強くて側面や後ろ、上は弱い。ついでに垂直より斜めになってた方が弾を弾き易い、という程度で良いのだ。

よくよく考えてみれば、例えば「ガンダム」とかだって、別にビームライフルに関して何メートルで何ミリの装甲板を貫通可能、なんて数値的なスペックが劇中で描かれていた訳ではない。そこは演出の一環として、

「戦艦並のビームだとぉ!?」

なんて僚機を撃破されたキャラクターに言わせたりで説明している訳で、それは本作においては素人が殆どの大洗の中で数少ない戦車知識保有者である西住殿や秋山殿が会話の流れで簡単な説明している、というのと一緒なのだ。

更に、戦車のスペック等に関しては劇中で既に「演出上の嘘」があるので、基本はデカい奴は硬いが遅い、小さい奴は速いが軟い、程度の理解でも問題なかったりする。ミリタリー方面への特化はしておらず、「戦車良く分からんけどカッコ良い西住殿カワイイ」でも良い作りな訳だ。ただ、調べれば調べる程「あ、あのシーンってこういう事だったのか」というのがそこかしこに出てきて面白かったりする。それこそ「3突の放った弾が4号に命中したのに白旗が上がらなかった理由」とか、「八九式がサンダースのフラッグ車に至近距離で遭遇したのに逃げの一手を選んだ理由」、「9話で当たっても白旗が出る筈がない機銃を撃たれただけでプラウダのフラッグ車が転回して逃げた理由」とかが分かって来るのが面白い。そういう意味で言えば、悪い言葉でいえば「ガルパン」という作品は戦車のスペックに関わる部分に関しては意外な事にむしろ言葉足らずなのだ。いや、だからと言って説明を放棄した訳ではなく、作品につきあう上で本当に最低限な部分以外の説明は端折った、という事なのではないか。つまりは、戦車に関する知識を「ひけらかす」のをやめたのだ。

恐らくスタッフも承知していたのだと思うが、戦車に関する知識を作中で視聴者に理解させようとした所で尺が足りる筈もない。唯でさえ1クール作品で少ない尺に、そういった説明に追われて面白さ、楽しさを見失うのは本末転倒…これを逆手にとって、「知識を無駄にひけらかさない」…興味を持ったら自発的に調べる、という風に仕向けたのではなかろうか。コレが、ミリタリーの知識に疎いアニオタがミリオタに作中での描写や演出、戦車に関する知識を教えてもらう、という様なスタイルになり、ネットの掲示板やブログが盛り上がった理由にも繋がり、更にそれが本作の支持を広めた原因にもなったのだろう。

一方で調べて得た知識を裏切る展開も用意する。例えば11話でのマウス登場。ネット上で視聴者が予想していたマウス攻略法は、「自損するのを待つ」とか「足が遅いから逃げ回って相手にしない」といったモノ。でも出来あがった絵は、あの奇天烈な作戦。ファンの予想や想像の上を行くものを見せてくれている訳で、このおかげで結果より経緯が面白い作品になっている。コレはサンダース戦での無線傍受に対しての携帯で連絡やプラウダ戦の包囲網突破&フラッグ車への奇襲も同様だろう。これが直接的にバカスカ撃ち合うだけで終わらない魅力に繋がっている訳で、更に西住殿の名指揮官っぷりや各面々の頑張りがより引き立てられる、という訳だ。

今まで色々書いてきたが、総じて言えるのは「露骨な手抜きがない」点。コレが、支持される最大の理由なんじゃないかと。だからこそ、非難されて然るべき遅延騒ぎもむしろ期待に繋がった、というのは言い過ぎか。

さて、「ガールズ&パンツァー」にはある種テンプレート的な批判文句がある。「戦争する車=戦車、人殺しの道具であるから不謹慎」という奴だ。しかしコレ、テンプレート的な文句な割に、実の所的外れだったりもする。この手の意見というか、文句に関してはスタッフの中でも織り込み済み、想定内だったのか劇中でも分かり易い反論がなされている。そう、ケイの

「that`s戦車道!これは戦争じゃない。道を外したら戦車が泣くでしょ?」

という言葉がソレだ。戦争を、殺し合いを描きたくなかったからこその戦車「道」であり、スタッフが描きたかったのは戦車を使った戦争ではなく戦車そのもの。スタッフの多くが「戦車好き」だからといって、それがイコール「戦争好き」という訳ではない。子供好きな人はロリコン、母親と仲が良い男はマザコン、なんて決めつけてしまうのと同じ位、少々短絡的ではなかろうか。

だからこそ、「ガルパン」には殺伐としたモノは徹底して排除している。言って見れば、故・ジャイアント馬場さんの言葉ではないが、「明るく、楽しく、激しい」をモットーとして物語を展開したからこそ、戦車に対する殺伐としたイメージを作中から払拭する事が出来た訳だ。そもそも、人がバタバタ死ぬ様な殺伐とした陰惨な戦争モノをやりたければ、それは戦車に拘る必要はない。いや、アニメや漫画といった物にとっては戦争モノ…つまりはミリタリーにすら拘る必要すらない。重ね重ね言うが、「ガールズ&パンツァー」は先ず戦車ありき、戦車を魅せる事を目的とした作品だ。戦車という良く分からないシロモノの動きの面白さ、カッコ良さを戦車に興味がない層にも見てもらおうとする場合、戦車の持つ殺伐としたイメージはむしろマイナスであろう。

この手の…「軍靴の音が…」「帝国主義の…」というのも同様なのだが、こういう批判は、結局の所、「気に入らない」「否定したい」という結論ありきで作品を自身のイメージで都合よく描き変えてしまったモノに聞こえてしまう。こういう発言をする類の人には「見てからモノを言え」といっても無駄なのだろう。結論に固執した挙句、作品を文字通り「見れない」のだから。

最後に、「戦車道」とは結局何なのか、というと、ココで思い出したいのはアントニオ猪木のこの言葉。

「この道を行けばどうなるものか、危ぶむなかれ。危ぶめば道は無し。踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ。行けば分かるさ。」

この精神であろう。
これは、本編だけでは大雑把なルールしか提示されないのも、戦車道がスポーツではなく、その名の通り武道として発祥した事にも繋がる。柔道や剣道とある意味一緒で、スポーツ化してルール化されてはいるものの根っこはスポーツではない部分…即ち勝敗よりも大切な物がある。それは即ち「道の追及」。本作の場合もコレは一緒。大袈裟に言えば、戦車で戦う事により各キャラクターの行動や言動が、結果としてそれぞれの戦車道という名の「道」となる…という事なんじゃないかと。だからこそラストでみほに「やっと見つけたよ、私の戦車道」と言わせているのだろうし、外伝的漫画「リトルアーミー」を読むとより感慨深く感じられる形になっている訳だ。。

そういう意味で言えば、一見奇をてらった「戦車道」という設定は、実の所本作における重要なキーであり、かつ最大の舞台装置になっている事が分かる。そんな作品に惚れた我々だからこそ、得た知識、持ちうる情報を「こんなの無理、ウソ」ではなく、「こういう理由なんじゃないか」という方向で使いたいよね、と。例えば本作なら、キビキビ軽快に走り回る八九式に対し、

八九式があんなに速く走れるワケねぇ

で終わらせるのではなくて、

設計は古くとも、中身に関してはレストアの際に新造品に交換とかしてる筈。パーツの工作精度とか使われる金属の強度そのものとか色々な面で開発当時より技術が進歩しているんだから、そういったものと中身を交換するだけででも案外化けるのかも。現に自衛隊が復元した八九式の動画とか見ると結構機敏に走ってるし、戦車道が一般的な「ガルパン」の世界観なら、そういうパーツの復元やレストアの技術に関してもノウハウが確立されていて進歩してるんじゃないかな?

なんて想像するのに使う方が楽しいよね、と。
知識や情報を物語という枠で生かすのであれば、物事を頭ごなしに否定する事に使うよりも、一見荒唐無稽なネタをどうやって成立させられるか、という方に使う方が絶対楽しい筈だし、それがオタクの矜持…即ち「オタク道」なんじゃないか、とね、思う訳ですよ、私は。

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