正義の味方が石を投げられる!!勧善懲悪を否定した作品。

無敵超人ザンボット3

1977年 全23話 サンライズ 名古屋テレビ系放送
声の出演:大山のぶ代、森功至、松尾佳子、永井一郎、野島昭生、他

簡単解説
300年前、宇宙の破壊者「ガイゾック」に故郷を滅ぼされたビアル星人は宇宙船で地球に逃亡。人類に混ざって生活していたが、ついにガイゾックは地球にも攻撃を開始した。ビアル星人の子孫である「神ファミリー」は先祖の残した戦闘メカ「ザンボット3」を駆り地球を守る為に戦うが…。


なんといってもこの作品のポイントは「神ファミリー」の設定にある。解説に記した通り、彼等はかつてガイゾックに滅ぼされた「ビアル星人」の生き残りである。「UFOロボ・グレンダイザー」のベガ星に滅ぼされたフリード星の王子「デューク・フリード」に近い設定であるが、比較的すんなり地球人に受け入れられたデュークと異なり、神ファミリーはガイゾックの攻撃に対し「地球を守る為」に戦ったのにも関わらず、地球人から石を投げつけられてしまうのだ。

しかし彼等「神ファミリー」は、ガイゾックの攻撃が始まる以前から周囲に「変人」扱いを受けている。何せガイゾックと戦おうにも、先祖の残してくれた戦闘兵器はすべて海の中や山の中に隠してあるので、それを発掘しなくてはならない。その為親戚一同で宝捜しまがいのことをやっているから近所の皆さんからは完全に「山師」扱いを受けているのだ。真面目に働いている人から見れば彼等神ファミリーは、何ともバカバカしく、イカサマ臭い連中に映っていたのだろう。

そしていざガイゾックとの戦いでは、主人公の「神勝平」が街の中でメカブーストと戦った為街中に甚大な被害が出てしまう。互いの飛び道具の流れ弾は家々を破壊し、剣で斬られた腕が船や民家を押しつぶす。挙句の果てにメカブーストを倒せばその爆発は周囲に多大な被害を与えてしまうのだ。おかげで前々から神ファミリーに対して良い印象を持っていないご近所の皆さんの怒りはピークに達し、「お前等がいるからガイゾックが来たんだ!!お前等は地球から出ていけ!!」と石を投げつけられてしまうのだ!!

地球を守る為に命懸けで戦った神ファミリーは、守った地球の人々に厄介者扱いを受けてしまう…確かに地球を守ってもらっても、その為に自分の家族や財産を失った人はそのことを素直に受け入れることなど出来はしない。こんな極めて暗い物語が、「子供向けロボットアニメ」として平然と放映されたのである。この点から考えれば、「ザンボット3」は俗に言う「リアルロボット」なるジャンルの草分けと言って良いかも知れない。あの「機動戦士ガンダム」より2年も早く放映されているにも関わらず、ここまでリアルな戦争を見せてくれているのだから。

だからといってロボットアニメとしての面白さを蔑ろにはしていない。ザンボット3は「ザンバード」「ザンブル」「ザンベース」の「♪三つのメカが一つになって〜」完成するロボットアニメの王道を行くメカであるし、勝平の乗るザンバードは単体でも「ザンボエース」というロボットに変形することが可能なのだ。そしてそのザンボエースの武器「ザンボマグナム」は各種のオプションパーツを装着することによりグレネードランチャーの装填やライフルへの転換が可能な設定、映像的見栄え共に斬新な武器で非常にカッコ良い武器であった。もちろんザンボット自身も額の三日月型アンテナから発射された三日月がメカブーストを取り囲み、光を1ヶ所に集中させて攻撃するという幻想的な必殺技「ザンボット・ムーンアタック」を始め多種多用なカッコ良い武器を持っている。しかしそういった魅力的な「スーパーロボット的エッセンス」を持ちながらも、展開する物語は凄まじく根暗なものである。

例えばなぜ普通の子供がメカを巧みに操ってしまえるのか?というロボットアニメ永遠のお約束についても「睡眠学習」という設定を持ち込んでいる。しかしこの催眠学習は本人の意思など完全に無視して行われた一種の「マインドコントロール」なのだ。劇中「ザンボット3の操縦には若い反射神経が必要」などと言い訳が語られてはいるが、「メカの操縦方法の他に恐怖心を取り除く」という睡眠学習は完全に人道を踏み外している設定と言えよう。

地球を守る立場の神ファミリーがこうであるから、対するガイゾックも各地で誘拐した大量の人間に爆弾を埋め込んでから解放するという凄まじい無差別テロを始めたりする。勝兵のガールフレンド「ブスペア」のアキも人間爆弾に改造され、勝平の部屋で爆死(!)する他、「誰にも迷惑をかけたくない」と人間爆弾同士で人里離れた山中に移動する最中「俺まだ死にたくねぇよぉ!!」と絶叫しながら爆死する等、回を重ねる毎に暗く、ヘヴィーな展開になっていくのだ。

そして最終局面ではガイゾック基地に突入する為ザンブルの宇宙太とザンベースの恵子が特攻爆死。更にガイゾックの正体はガイゾック星人の作った平和維持コンピューターであることが発覚し、「ビアル星も地球も悪の心に満ちているから滅ぼす」と語り出す。

ヤケになった勝平は道連れ覚悟でコンピューターを破壊し、その勝平をかばう為にキングビアルも轟沈…勝平以外全員死亡という凄まじく暗く、壮絶な結末を迎えることになる。この結末は監督を務めた富野由悠季氏の必殺技「皆殺しのバラード」の最初の発動と言えよう。この結末は「機動戦士Vガンダム」まて延々と富野氏の作品根底に流れ続ける日本人、いや人間への不信感、不安感が賢著に出ているといえるのではないだろうか?

今でこそ常套手段となった「勧善懲悪の否定」というテーマをこれほどまでに明確に打ち出した作品というのは、やはりこの「ザンボット3」が1番であろう。近年で同じく「勧善懲悪の否定」をテーマ(?)にした作品「機動戦艦ナデシコ」が「ゲキガンガー」という劇中劇を利用して遠回しに目安箱に入れるに留めたのに対し、この「ザンボット3」ではあまりにもストレートに直訴している。この当りのストレートさ、潔さといったものの持つ破壊力は相当なモノである。「甘ったれたロボットアニメなど見たくない!!」という辛党ロボットアニメファンや、ガンダム以降の「リアルロボット」しか見たことの無い世代のファンに是非見て欲しい作品だ。


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