ドラクエブームに乗った「チョーオモシロカッコイイ」作品

魔神英雄伝ワタル

1988年 全45話 サンライズ 日本テレビ系放送
声の出演:田中真弓、林原めぐみ、西村知道、山寺宏一、伊倉一恵、他

簡単解説
小学4年生の「戦部ワタル」が授業で作った粘土のロボットに金龍の魂が憑依し、ワタルは「ドアクダー」によって征服された異次元世界「創界山」に召還されてしまう。ワタルは救世主としてロボット「龍神丸」を操り、この世界を救うべく冒険の旅に出る。


この「魔神英雄伝ワタル」は、87年の「機甲戦記ドラグナー」を最後に終焉を迎えた「リアルロボットブーム」により、ロボットアニメそのものが衰退していった時代の作品であり、アニメファンの興味はロボットアニメではなく、「週間少年ジャンプ」等のマンガ原作のアニメや、「ファミリーコンピューター」の普及に連れ高い人気を博した「ドラゴンクエスト」といったTVゲームに集中していった。

この頃のロボットアニメは低年齢層向けの「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」や、「マシンロボ クロノスの大逆襲」等かあるだけで、その風潮はあの「機動戦士ガンダム」ですら「BB戦士」「元祖SDガンダム」に代表されるSD(スーパーディフォルメ=頭身を低くしてコミカルなアレンジをしたもの)に路線を変更したほどである。もっとも「ガンダム」のSD路線は少々とっつき難いリアルサイズの「ガンプラ」を小学校低学年でも親しめるようにする等なかなかの功績を残しており、SDガンダムを扱った劇場アニメが作られる等人気も高かった。そのSDキャラの人気に便乗する形で制作されたのが、この「魔神英雄伝ワタル」なのだ。

ちなみに、サンライズはこの「ワタル」以前にもSDキャラの登場する「超力ロボ ガラット」という作品を制作している。この「ガラット」はキャラクターデザインを芦田豊雄氏、脚本を小山高生氏が担当し、最初はSD形態だが最終的にはカッコ良いロボットに「ガラット」変形するユニークな作品で、「どすこい姉妹」といった遊びの要素もふんだんに盛り込まれた秀作であったが、「リアル」なロボットがもてはやされた時代であった為か視聴率的にはあまり良くなかったようだ。そして偶然とは恐ろしいもので、本作「ワタル」でもキャラクターデザインを芦田豊雄氏、脚本を小山高生氏が務めている。両氏にとって「ワタル」は「ガラット」の仇討ちの作品なのかも知れない。

更に、「ワタル」が放映されていたのはちょうど「ドラゴンクエストV」が発売された時期に重なり、その爆発的ヒットによりRPG的な「剣と魔法のファンタジー世界」がより身近になってきた頃でもある。本作「ワタル」でもこのRPG的な要素をふんだんに盛り込んでいるのだ。まず物語の舞台である「創界山」は7つの階層に分かれており、それぞれの階層を激変させている「ボスキャラクター」がいる。そのボスキャラクターを倒すことで、ワタル達は次の階層へ進むことが可能になるのである。これはイベントを消化しないと先に進まないというRPGの要素をうまくロボットアニメの設定に取り入れたものといえるだろう。このように「ワタル」は当時のヒットに繋がる2つのキーワード、「SD」と「RPG」を非常に上手く利用した作品であるのだ。

「ワタル」の魅力はそれだけでは終わらない。簡単解説でも触れているが、ワタルの乗るロボット「龍神丸」はワタルが学校の授業で作った粘土のロボットに、創界山を司る「神部七龍神」の内の一匹「金龍」の魂が宿ったものなのだ。この設定はリアルロボットの台頭により忘れ去られていた「僕のロボット」という感覚をもう一度復活させた魅力的な設定といえるだろう。(この感覚は同時期に放送されていた「トランスフォーマー」にも感じられる。)

そして戦闘中では金龍がワタルに盛んにアドバイスをしており、2人で会話をし、励まし合いながら戦うのだ。似たような演出は「蒼き流星SPTレイズナー」でもあるが、生身の人間であるエイジに対し、レイは機械的な面を全面に押し出していた。(実際機械なんだが…)それに対して金龍は実に生身の人間(実際は龍なんだが…)的な演出で描かれている。このワタルと金龍、つまりは「龍神丸」が助け合いながら戦っている様がこれもまたリアルロボットの台頭で感じられなくなってしまった「ロボットと主人公の一体感」を強烈にアピールしてくれるのだ。

この「ワタル」は流行の要素をいち早く取り入れる斬新な部分と、ロボットアニメの初心に立ち返るという非常に保守的な部分が渾然一体となった言わば「温故知新」ロボットアニメなのである。その他にもワタルと旅を共にする「剣部シバラク」が愛機「戦神丸」を毎回公衆電話から呼び出す「もしもし戦神丸?」のシーン等お約束的な魅力バツグンの演出や、忍部ヒミコ(私の知り合いにも熱狂的なファンが何人かいる林原めぐみ氏が声を当てている)のハイテンションな言動など、妙にノリが良く、それでいてギャグとシリアスがしっかりと噛み合っている作品なのである。

こういった魅力的な部分から本作「魔神英雄伝ワタル」は小学校低学年層を中心にヒットを飛ばし、この時期のロボットアニメでは珍しくシリーズ化までされた。このヒットは俗に言う「ショタコン」のお姉さん達をも巻き込み、子供達は「オモシロカッコイイ」SDロボットに夢中になり、お姉さん達はライバルキャラクター「虎王」に黄色い歓声を上げるという非常にバランスの取れたヒットをした作品であると言えよう。

ちなみに、この「ワタル」は「超時空要塞マクロス」に続いてファミリーレストランチェーン「すかいらーく」とのタイアップCMが作られている。このこともヒットの要因だろう。

本作もシリーズ化しているので、下に紹介しておく。

「真魔神英雄伝ワタル 魔神山編」
1989年
本編の外伝的ストーリーを見せるOVA。この作品では竜王丸達が「メタルジャケット」で武装している。また正義魔神の「雷王丸」もチョイ役で出演している。

「魔神英雄伝ワタル2」
1990年 全46話
テレビシリーズ第2弾。「新星龍神丸」を筆頭に仲間の魔神の頭に「新星」がついてパワーアップしている。更に新星龍神丸は後半で飛龍形態に変形する「龍星丸」に進化する。その他「鬼輪伴宙太」と「忍神丸」といった魅力的なゲストキャラクターが多数登場する。

「魔神英雄伝ワタル〜終わりなき時の物語〜」
1993年 全3話
OVA作品。

「超魔神英雄伝ワタル」
1997年 全51話
新しい敵「アンコクダー」とワタル達の戦いを描く。本作の龍神丸は超力変身によって「獅子龍神丸」「鳳凰竜神丸」「剣王竜神丸」「月光龍神丸」「白虎龍神丸」に変身する。また鳥さんこと「クラマ」に変わり新キャラクター「スズメ」と「鳥神丸」が登場する。ちなみに本作だけはスポンサーがタカラではなくバンダイになっている。



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