本格的なSFパロディ

トップをねらえ!

1988年 ガイナックス制作OVA 全6話
声の出演:日高のり子、佐久間レイ、若本規夫、川村万梨阿、矢尾一樹、他

簡単解説
人類が宇宙へ進出するまでに進歩した未来。地球は巨大宇宙生物群の脅威にさらされていた。この脅威に対抗するため、人類は無敵のロボット兵器を生み出す。その名は「ガンバスター」。
 コーチによってそのパイロットとしての資質を見出されたノリコは、厳しい特訓、ライバルとの熱い戦いを乗り越え、宇宙へと飛翔する。


本作、「トップをねらえ!」は近年「新世紀エヴァンゲリオン」を制作し、ヒットさせたガイナックスが「エヴァ」以前に世に送り出したSFロボットOVAである。そして、「エヴァ」で監督を務めた庵野氏が監督をした作品であることも踏まえると、本作と「エヴァ」は丸っきり方向性が異なる作品であるが、ある意味では兄弟作品と言えるのかも知れない。

さて、「トップをねらえ!」であるが、タイトルを読んで字の如しで少女マンガ系スポ根「エースをねらえ!」と、戦闘機パイロットの青春を描いた映画「トップガン」という全く繋がりの無さそうな作品を、ロボットアニメという手法を用いて合成した作品である。この作品のタイトルの意味は第1話から雄弁に語られている。つまり、大雑把に本作のスジを言うなれば、

「少女が努力と根性でコーチのしごきに耐え、宇宙怪獣との戦いを得て成長していく…でもやっぱり恋にも憧れちゃう…女の子だもん!!」

なんて所だろうか?(なんか最後は鮎川こずえになってしまったが)
ジャンルとして言えば、不条理系とでも言うのだろうか?ブルマーの美少女が鉄下駄を履いて特訓をしたり、マシーン兵器でグラウンドを走ったりと、なんともシュールなネタが展開されていくのだ。
そして、メカニック描写や戦闘演出においてはいわゆる「アニパロ」という手法が用いられており、古今東西のSF、ロボットアニメ、特撮のオマージュやらパロディが満載で、知っている人は知っている…でも知らない人は何がなんだかサッパリ分からないようなネタまで封入されている。

しかし、上記したようなネタは必ずしも万人に受け入れられるネタではない。こういった手法から来るオタク臭…例えば若本規夫と佐久間レイが「男と女のラブゲーム」をデュエットしたりといったネタや、無意味に乳をさらけ出すノリコやユング…こういったモノから本作を拒絶してしまい易い傾向にある。
昨今の様に、「宇宙刑事ギャバン」のミミーのような、なんの脈略も無しにスキあらばパンチラを見せ、それが当たり前になっているような作品がゴロゴロ溢れているような状況では無かったことも、一見さん的に「トップをねらえ!」という作品に触れた視聴者が不快感を感じる一因になっているのだろう。

それでも、現在の「トップをねらえ!」という作品の評価は決して低いものではない。コレは私だけでなく、世間一般の評価も同じなのではないだろうか?
先ず第一に、本作のアニパロ演出は「アニパロ」という手法の危険性をちゃんと省みている点である。同じく、アニパロという手法を用いた作品が陥り易い穴…パロディではなく「イヤミ」にまで発展して笑わせるどころか嫌われるという危険性を理解して演出しているという点だ。パロディという手法でモチーフベースを斬るようなマネはせず、知っている人は楽しめるが、知らない人でも問題なく済む…まして、原作をしっている人間も思わず笑ってしまう…コレこそが「トップをねらえ!」のアニパロのスゴイところであろう。

コレはスタッフの中に「アニパロはパロディであって、原作の否定ではない」という事が周知徹底されているからこそ出来たのであろう。アニパロという手法を使ってやたら攻撃的になっていたり、もはやそれが全てに優先され最終的にオタクにしかついていけなかったりといったことが無いのだ。確かにそれでもオタク受けを狙っている印象は拭えないが、OVAという当時はアニメオタクぐらいしか興味を持たなかったジャンルの作品であることを考えれば問題ない部分であるんじゃないだろうか。

そしてもう一つ、この「トップをねらえ!」という作品はアニパロといったオタク向けのネタとは別に、しっかりとした柱で作品を支えていた点も忘れてはならない。
本作の中に多数登場する亜光速、リフティングボディといったSF系の用語の中に、「ウラシマ効果」というモノがある。「ウラシマ効果」と言っても、別にそれはタイムスリッパーに元の時代に戻る事が出来る超能力を与えるというものではない。(コレじゃ「ウラシマン」だ)

ココでいう「ウラシマ効果」とは、地球とは時間軸の異なる遠く離れた場所で時を過ごす事により、地球の人間では30年経った時間をたった数時間で過す事によって時間の流れに取り残されるというような所か。
宇宙にて生活するノリコは、地球で生活する沖ジョ時代の同級生で親友・ヒグチキミコとは違う時間軸で生活する事になる。話数を重ねる毎にちゃんと歳を取り、結婚し、子供までもうけるキミコに対し、同じ年齢である筈のノリコは沖ジョ時代とさして変わらない姿のまま…。

この部分が「トップをねらえ!」という作品の核であるのだろう。親友のキミコだけでなく、最終的にはパートナーであるお姉さまとも時を隔ててしまうノリコ…変わってしまう周囲にたった独りで取り残されるノリコは、周りには明るく振舞ってはいるものの、そういった自分の置かれている状況に孤独感を感じている。そんな彼女が宇宙怪獣との決戦に勝利し、地球に帰還すると地球に「オカエリナサイ」という灯が…!!このラストシーンも、物語の骨格としてアニパロとは別のテーマを置いたからこそ光る技である。
本作を

「最初見た時はオタクっぽくて嫌いだったけど、改めて見るとスゴイと思った」

という意見を良く耳にするが、コレもこの部分があったればこそなのだろう。この評価の変化は少なくとも、どこかのヒゲロボットに対する「最初はカッコ悪いと思ったけど、良く見るとカッコイイ事に気が付いた」というメディアに捻じ曲げられた意見ではないのだろう。

最後に、ロボットアクションである。
「機動戦士ガンダム」以降、リアルと称して手持ち火器の撃ち合いに終始してしまうようなロボットアニメばかりになってしまったが、本作ではそういった手法でバトルを演出してはいない。ガンバスターはかつてのマジンガーZやゲッターロボのように鉄の拳と鋼のボディを駆使して暴れまわるのだ。
更に、ガンバスターは登場シーンも迫力満点!!敵の猛攻を受け各部から煙を吐くヱクセリヲンの第7甲板から腕を組んでせり上がって来るその威容は正に威風堂々。「無敵のロボット兵器」の名に偽り無いカッコ良い登場シーンだ。

コレはリアルロボットが蔓延していた時代では逆に新鮮に映ったのではないだろうか?重量感溢れる巨大ロボットの格闘は大迫力で、正に「ロボットプロレス」である。本作のような魅せ方をするロボットが当時現われなかったら…リアルロボットの小難しさに対する飽きによって、ロボットアニメというジャンルが完全に滅んでしまっていたかも知れない。

「スパロボ」等の影響で、「エヴァ」から「トップ」に入ったファンも多いと思う。実際に私もそういったファンの1人なのだが、良く見ると演出手法などに「エヴァ」との共通点がいくつか見られる。黒地に白の明朝体なんて「トップ」でもしばし見られた手法だ。妙に凝った最終回というのも共通していると言って良いだろう。
この「トップをねらえ!」の最終回は、ナゼかモノクロで展開され、止め絵で繋いでいく紙芝居のような演出を使っている事で話題に昇ることが多い。シンジ君がパイプ椅子に座って「なぜ殺したの?」なんて問い詰められる「エヴァ」と同様に、魅せ方への工夫が感じられる。

…しかし、面白いかどうかは全くの別問題だ。本作の最終回で使ったモノクロ紙芝居なんてひたすら見難いだけのシロモノのように感じるのは私だけなんだろうか…アレじゃ、何やってるか全然分からんぞ!?


戻る