仮面の下の涙を拭え

宇宙の騎士 テッカマンブレード

1992年 タツノコプロ制作 全49話 テレビ東京系放送
声の出演:森川智之、松本保典、林原めぐみ、子安武人、鈴置洋孝、他

簡単解説
連合宇宙暦192年、謎の生命体・ラダムによる侵略を受け、軌道エレベーター基地・オービタルリングを占拠されてしまった地球。襲来するラダム獣やラダム樹の調査をしていた外宇宙開発機構…通称スペースナイツのアキとノアルはある日、ラダム獣と互角以上に戦う謎の魔人と遭遇する。その魔人…テッカマンに変身する事が出来る正体不明の記憶喪失の青年は「Dボウイ」と名付けられる。果たして彼の正体とは?そして彼がラダムを憎悪する理由とは?


さて、今回は「テッカマンブレード」である。この作品、主人公のテッカマンブレードをサポートするぺガスという自立型ロボットや、ソルテッカマンなるパワードスーツ型の兵器が登場したり…挙句の果てに何故か人気ゲームシリーズ「スーパーロボット大戦」に参戦したりはしてはいるが、基本はwikiなんかでも強調されている通り「新造人間キャシャーン」や「科学忍者隊ガッチャマン」と同様タツノコお得意のSFヒーローモノである。「じゃあ何で『大惨事』で取り上げるんだ」と思う人もいるかもしれないが、ウチには似たような形で「アムドライバー」を記事にしている前例がある事だし、まぁ、いいじゃないか、という事にしておいて欲しい。

ちなみに、本作の大元は「宇宙の騎士テッカマン」という作品のリメイクであるのだが、一部の設定以外は全くの別の作品となっており、直接的な関連は持たされていない。実は「スパロボW」にて「テッカマンブレード2」共々本作と共演したOVA作品「デトネイターオーガン」もモチーフは元祖「テッカマン」であり、「オーガン」を見たタツノコのスタッフが触発されて生まれた企画が本作「テッカマンブレード」だったりする。この辺、スパロボ世代は「オーガン」より先んじて「スパロボJ」にて初参戦していた為に「テッカマンブレード」の方が先、と勘違いされている節もあったりする。余談だが、元祖「テッカマン」はSFモノやロボットアニメとしては珍しく、「ルパン三世」やクリント・イーストウッドの吹き替えで知られる故・山田康雄がレギュラーキャラクターの声を当てていた事でも知られている。

さて、この「テッカマンブレード」は昨今は先述した様に「スーパーロボット大戦」シリーズへの参戦等で、リアルタイムで視聴していないであろう世代にまである程度の知名度はあるものの、本来は然程有名とは言えないタイトルだった。私自身、「スパロボ」以前からそのタイトルこそ知ってはいたが、基本的に注目していた訳でもなく未視聴であった訳だが、その原因は、本作の放映枠に一因があるかも知れない。本作はテレビ東京系での放送であるが、地方によっては当時大人気だった「美少女戦士セーラームーン」の裏番組…東海地方などでは更に「まんが日本昔ばなし」も裏番組であった事もある他、放送枠自体もコロコロと変更されていたそうな。コレでは4クールという長い放送期間に最後まで付き合えるかどうかも怪しい位だろう。

更に言うと、本作の作画の荒れっぷりも凄いモノがある。メカのディテールがビミョーに違う…なんて事はまぁ、この頃の作品にはありがちと言えばありがちなのだが、「マシンロボ・クロノスの大逆襲」同様主要キャラクターの顔がまぁ、毎回毎回違っている。この作画、「マシンロボ」の様に実験的な意味合い…言わば「作画アニメ」とかマニアが言ってくれる類いのモノではなく、むしろ「崩壊」一歩手前…という有様なのが泣ける。タツノコは「超時空要塞マクロス」でも作画崩壊の汚名を残しているが、本作でも一部のエピソードでは気合の入った作画だったりもするのだが、全般的に見ると作画に関しては低調…落第コースと言えるかも知れない。

ただ、作画の酷さを打ち消すだけの魅力も持っている。それは物語の壮絶な展開と、作品の持つ悲劇性であろう。世界観もメカフェチのオカマ・レビンやムードメーカー的なミリィといったコメディリリーフ的な役割のキャラクターは存在するものの、基本はカチカチな硬派路線である。後年、品の無い(ファンの人失礼)作風を自らウリにして連発していたあかほりさとる氏がシリーズ構成と脚本を手掛けているとは思えない程、本作はハードかつヘビーな展開を見せる。特にテッカマンブレードことDボウイの抱える悲劇ったら、只事ではない。

父親は自分を救う為に死亡
倒すべき敵は肉親や親しくしていた知人
敵となった双子の弟に執拗に狙われる
人の心を持ったまま再会した妹が自分を守る為にかつての肉親達の手にかかって死ぬ
変身により徐々に肉体が崩壊していく上、30分以上変身し続けると自我を失い暴走してしまう
進化によるパワーアップで肉体の崩壊は克服できたが、代わりに脳を蝕まれ徐々に記憶を失う事になる

…正に、後期主題歌にある

♪これ以上〜う〜しなう〜ものなど〜もうないから〜

を地で行く、「不幸なアニメ主人公選手権」なるものがあったなら間違いなくダントツ1位であろうこの不幸っぷりが、悲劇という名のバックボーンとしてハードな物語を引っ張り続ける。そういう意味ではDボウイという主人公自体が、それでもう作品自体の骨格となっている、という事であろう。思えば、Dボウイに関してもラダムに関しても視聴者には全く情報が与えられぬまま開始した物語が、その展開が進行していくにつれ徐々に見えてくる…という作りになっている。そのDボウイ…いや相羽タカヤが視聴者…劇中では自分に想いを寄せてくれている大切な女性であるアキに全ての感情を吐露する…というのがクライマックスの直前、「時の止まった家」のエピソードだろう。戦闘シーンゼロ、という異色のエピソードながら、これはDボウイの悲劇の総括として、見どころのあるエピソードとなっており、その後に続くテッカマンエビル…相羽シンヤとの決闘を上手く盛り上げてくれる。

但し、クライマックスでのブレードとエビル…タカヤとシンヤの闘い…コレがシンヤ役の子安氏の熱演もあって大いに盛り上がった半面、最終決戦である筈のブレードとオメガ…兄・ケンゴとの闘いがややイマイチ盛り上がりに欠けるものになってしまった感はある。物語の構造上、シンヤとの決着をオメガの後には出来ないのは分かるのだが、シンヤとの対決と決着が盛り上がり過ぎてしまって、最終決戦のインパクトに陰りが見えてしまった部分は残念に思う。まぁ、シンヤと対決後に和解、共にオメガと…なんて流れでは「テッカマンブレード」らしくないので仕方ないと言えば仕方ないか。

ちなみに子安氏は「テッカマンブレード」当時、大変なスランプに陥っていて引退も視野に入れていたらしい。しかし本作でのエビルが言わば立ち直るキッカケになったそうで、雑誌等のインタビューで「今まで演じたキャラクターの中で思い入れが強いのは?」等という質問に、テッカマンエビルを挙げる事も多いんだそうで。

最後に総括となるが、作画の酷さを除外すれば、物語を牽引する主人公の悲劇っぷりといい、硬派かつハードな展開等見どころが多い正に隠れた傑作と呼ぶにふさわしい本作ではあるが、些か4クールというのは長過ぎる気がしたのも事実だ。私自身が2クール枠に慣れてしまっている事もあるかもしれないが、4度も挟まれる総集編も含め、序盤や中盤でやや間延びしてしまった印象はある。もっと濃密に尺を縮めてやった方が、その不幸っぷりも怒涛の展開となって盛り上がった様な気がする。とはいえ、物語としての完成度は十分に高いのだがそれだけが惜しい気がする。

尚、日記の方を見ていた人ならご存じとは思うが、私は本作を北米版のDVDにて視聴したのだが、コレには映像特典が入っていて、それは兄との宿命の対決に敗れたエビルことシンヤが兄タカヤへコンプレックスを持つに至った経緯とその結末を描いた「燃えた時計」と、アキがテッカマン化した経緯を描いた「テッカマンブレード2」へ繋がる「ミッシングリング」というエピソードだった。「燃えた時計」の方は面白かったが、問題は「ミッシングリング」の方で…私は、全身ボロボロなままのDボウイに騎乗位で罵るアキなんか見たくなかったぞ、と。(苦笑)

…そういえば、私の中学時代の友人に、弟が双子の奴がいて、その双子の名前が…確か「シンヤ」と「タカヤ」だった。いや、実の所「シンヤ」の方は間違いないが、「タカヤ」の方はホントに「タカヤ」だったのか記憶があやふやだったりするのだが、もし2人とも「シンヤ」で「タカヤ」だったとしたら…何処かで

「俺達は双子だ。元々一つだったものが二つに分かれたんだ。どちらか片方だけが生き残ればいい…生き残ればなぁー!!」

とか言って骨肉の争いを繰り広げていたりしたら、どうしよう。(苦笑)


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