ワルの香りのするヒーロー達

真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日

1998年 ダイナミック企画「真ゲッターロボ」制作委員会、エアーズ 全13話OVA(エモーション15周年記念作品)
声の出演 麦人、日高奈留美、石川英郎、内田直哉、飯塚昭三、他

簡単解説
月でのインベーダーとの最終決戦から数年…死んだ筈の早乙女博士が復活!!「ゲッタードラゴン軍団」を率い人類に対し反旗を翻す。事態を重く見た政府は「早乙女殺し」で永久囚人となっていた「あの男」を再びゲッターに乗せるが…。


今ではすっかり人気ゲームソフトの仲間入りを果たし、アニメ等の版権作品とゲームをタイアップさせる手法の成功作と言える「スーパーロボット大戦」は、「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」といった作品に実際に触れた事が無い世代へも、こういった古き良き名作への知名度を高め、「ガンダム」が出てくるから、という理由で「スーパーロボット大戦」をプレイし始めた様な若い世代が、ゲームをキッカケにこういった作品に興味を持つキッカケを作ったとも言えるだろう。但し、この「真!!ゲッター」がリリースされた頃にはまだDVDなどは普及しておらず、映像ソフトもVHSやLDが主流であった。

勿論アニメのビデオやLDは当時リリースされてはいたが、些か高価であり、気軽に購入には踏み切れない。だからといって、レンタルビデオ等ではそういった古いロボットアニメの場合は扱っていない事も多く、ゲームで興味を持ったとはいえ今程かつての名作を気軽に視聴できる環境には無かった。そんな時代に登場したのが、この「真!!ゲッター」というOVAだった。

OVAという奴は正直アニメファン以外にとっては敷居が高い。ソフト自体の値段も割高であったし、何よりマイナーな文化と言えた。そんな中、この「真!!ゲッター」は第一巻を¥1,500というリーズナブルな値段で発売した事がまず衝撃的と言えるだろう。しかも、当時やっていたバンダイ系のテレビアニメでも頻繁にCMが流される等、それまではアニメファン…オタク以外には然程知られていなかったOVAというジャンルの間口を広げ、オタクと非オタクのボーダーラインを引き下げるのに一役買ったといえるだろう。以降、バンダイビジュアルはダイナミック系ロボットアニメのOVA化に精力的に動くようになった。この「真!!ゲッターロボ」はその記念すべき(?)一作目、という訳だ。

さて、本編について触れていこう。先ず、皆さんの中に「デビルマン」の漫画を読んで見て、テレビアニメ版とまったく違うダークな展開に驚いた人はおられないだろうか?

そう、ゲッターロボも「デビルマン」と同じように、コミック版とテレビアニメ版で大きく設定が異なるのである。テレビの子供向けに製作されるには、あまりにダークな展開な為かそれとも同じモノを作っても仕方がないと考えたのか、諸説は数有れ「ダイナミックプロ」の漫画がアニメ化する際大きく設定を変更するのはよくあることなのである。(何もダイナミックに限ったことでは無いが…)

「真!!ゲッターロボ」について書く前に、「ゲッターロボ」におけるコミック版とテレビアニメ版の違いに少々触れておこう。テレビ版の流竜馬は浅間学園のサッカー部主将、神隼人は同学園の一匹狼、巴武蔵は同学園の柔道部主将(車弁慶は転校生で野球部主将)という体育会系の布陣に対し、コミック版の流竜馬は空手家であった亡き父の遺影を持って、父を蔑ろにして来た道場主催の空手大会に殴り込みをかけた帰りに早乙女博士にスカウトされ、神隼人は学生運動の過激派のボスであり政府要人を自らが支配する「隼人の校舎」で計画する。巴武蔵は…フツーに大雪山で柔道の特訓をしていたが、その特訓の最中退化させられた人間に襲われるもコレを返り討ちにして逆に手なづけている。特に原作版での隼人の描写は凄まじく、隼人の校舎にて臆病風に吹かれた手下を「目だ、耳だ、鼻!!」と制裁する姿など、ネット上でも色んな所でネタにされている。このように、コミック版で描かれるゲッターチームの方がダークというか、ハードな生き方をしており、ワルの香りがプンプン漂ってくるのである。(でも、武蔵はやっぱりギャグ担当)

「真!!ゲッターロボ」は、このダークさを受け継いでいるのである。冒頭で人類に反旗を翻す早乙女博士、自分を墜とし入れた者への復讐に燃える竜馬、敷島と手を組んで何かを策謀している隼人、そして過去を引きずりこだわり続ける武蔵と弁慶…。最初からこの暗さ、ダークな雰囲気で視聴者にインパクトを与えている。ちなみにこの前半の3話は「今川秦宏」氏が監督を務めていたのだが、ここでも今川監督らしい演出の旨さが存分に発揮されている。しかし、何らかのイザコザがあったらしく以降は監督を降板し、テロップ等でも名前を確認出来ない。(一説には、たった3話でとんでもなく制作費を使ってしまったかららしい…。)

その監督降板劇もあってか、4話以降は少々趣を変えた展開になる。舞台もいきなり1〜3話までの13年後となっており、世界観も激変してしまう。この辺りがこの作品の評価を微妙な物にしてしまっている感は否めない。今川氏の手掛けたあのOVA「ジャイアントロボ」の激しいノリを知る者としては、「Gロボ」ばりのナンデモアリが「ゲッター」で展開されたらさぞ凄まじい作品になっただろうと思ってしまうのだが、その点は非常に残念だ。

ちなみに本作での敵はインベーダーとされており、原作やテレビアニメ版の恐竜帝国や百鬼帝国は存在しない。ただ、主人公(?)のゴウと共に敷島博士が生み出した人工生命体としてゴールとブライは出演を果たしている。ちなみに、ゴウ自体は勿論「ゲッターロボ號」の主人公、一文字號がモデルであるが、過去経歴正体不明の謎の男、という設定と、寡黙な性格とビジュアルイメージから何となく「装甲騎兵ボトムズ」のキリコ・キュービィを思わせる。

メカに関しては、「ゲッターロボ號」にて活躍したクジラやBT、アメリカ軍のステルバー等が活躍する他、真ゲッターにしてもこの作品においてのみ、トマホーク以外のサイト(鎌)、ランス(槍)といったバリエーションを持っている。また、中盤では月に飛ばされた竜馬がゲッター1を独自にチューンナップしたブラックゲッターが登場し、バイオレンスヒーローアクションとはかく在るべし、という派手な戦闘シーンを演出してくれる。更に最終局面で登場する真ドラゴンは原作ファンなら思わず「そう来るか!!」と唸ってしまう姿で登場する等、見所は多い。勿論目まぐるしく合体、変形を繰り返すゲッターらしいアクションもあるので、その辺も注目したいところか。

但し、肝心要の竜馬、隼人、弁慶が再び駆る事となった後半の真ゲッターは、ストナーサンシャイン等の見せ場はあるものの、結局は「真ドラゴンの護衛用」程度に落ちぶれ(?)てしまっており、原作に見られた「全身必殺技」という圧倒的な迫力が足りない。目的も立場もバラバラになっていたチームが再集結し、再びゲッターを駆る…というシチュエーションには燃える物があるのだが、真ゲッターの終盤の扱いには少々疑問符が残る。ゴウ、ケイ、ガイの「號」チームが真ゲッターを使っていた時のアクションともっと差別化し、「やっぱりゲッターはコイツ達じゃねぇと!!」と思わせるだけの映像の強さが残念ながら無いのだ。序盤で竜馬が乗ったゲッター1や中盤のブラックゲッターの方は、原作よりの激しく迫力ある戦闘アクションを見せてくれただけに、この部分はことさら残念である。この部分をファンが「真!!ゲッターロボ」の欠点と指摘するファンは少なくなく、「ゲッターチーム(竜馬、隼人、弁慶)=最強」という印象を持っているコアなファンほどこの演出にはガックリしてしまったのだろう。

それでも迫力ある演出やダークヒーロー的な竜馬達の存在もあって、楽しんで見ることが出来る作品ではある。あんまり褒められたモノではないが、ながら見というスタイルで見る分には、練られた脚本やら張られた伏線なんてものは無い…訳ではないが別に効果的に使われているとは言い難いので、その点では非常に使い勝手の良い作品でもある。しかし、それでもやっぱり「今川監督版ゲッターも見たかった…。」と感じてしまう私もいるのである。別に唸らされる脚本や、感動するシーンなんてものは存在しないが、肩肘張らずに気楽に見る分には充分な佳作といえるが、今一歩の所でノリ切れない部分も少なからずある、という訳だ。ネット上等での評価が割とビミョーな所にあるのも、こういった「つまらなくはないが…」という部分から来ているのかも知れない。

まぁ、「スーパーロボット大戦」等で真ゲッターに興味を持った人には、他の「ネオゲッター」や「新ゲッター」よりはオススメ出来る。「ネオゲッター」は何分尺が足りず、一方の「新ゲッター」には真ゲッターは登場しない上に物語自体も石川賢先生のマンガを知っていないとノレない部分があるから、という消去法からのオススメではあるのだが。

蛇足だが、この作品には「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」「ゲッターロボ號」のワキ役がチョイ役で登場(愛犬ロボすら名前が登場している)するので、そういった観点で見てみても良いかも知れない。また、コミック「ゲッターロボサーガ」シリーズの「真ゲッターロボ編」に、この作品のプロローグ的物語が描かれている。その他、「真ゲッターロボ外伝〜月面十年戦争 戦慄の予感〜」というドラマCDも発売されていた。こちらも要チェックだ。

ま、何だかんだ言ってもキライじゃないんだが、万人に勧められるか?と言われると…ねぇ!?


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