広がる…というより迷走中の世界観

超機人龍虎王伝奇

2003年 双葉社 全2巻 原作 寺田貴信 作画 富士原昌幸

簡単解説
超機人…古代中国で造られたという巨大な機械人形…そんな子供でも信じない話を真に受け、大陸で発掘作業を行っている者がいる。この情報を得た大日本帝国は、清国に諜報員・稲郷隆馬を派遣する。圧倒的な力を持つとされる超機人とは?またそれを発掘している者たちの目的とは何か。人気ゲームソフト「スーパーロボット大戦」に登場するロボットを描いたサイドストーリー。


さて、今回は「龍虎王伝奇」である。これはこのタイトルをクリックしてしまう人ならご存知の事とは思うのだが、ゲーム「スーパーロボット大戦α」におけるスーパー系主人公の後期搭乗機として初登場した龍虎王(虎龍王)を巡るサイドストーリーである。一応説明すると、龍虎王(虎龍王)は超機人である龍王機と虎王機の2体が合体した姿で、龍王機が上になると龍虎王、虎王機が上になると虎龍機になる、という分かり易いロボットだ。こういった合体形式は「トランスフォーマースーパーリンク」や「ダイガンダー」等でも見られるシステムだが、この龍虎王には他のスパロボオリジナルメカと比較しても割と設定が詳細になっており、元々それ単体で一個の世界観を持つ「魔装機神」程ではないにしろ、独自、固有の展開が考えられる存在だった。

一応、「α」のスーパー系、リアル系主役メカはどちらも主人公(とリュウセイ、アヤ)が持っていた「念動力」なる素質に影響される設定だったが、リアル系主役機のヒュッケバインMK-3と比べると、龍王機、虎王機それぞれが意思を持っており、それぞれが認める念動力者でなければ操縦する事が出来ず、またこの2体はパイロット無しでも自らの意思で行動できるが、真の能力を発揮するには強力な念動力者が必要、とされており、よりゲームのキーでもあった念動力というものとの関連が強く設定されており、そういう意味ではよりキャラクター性が強い、とも言えるだろう。

で、この龍虎王と虎龍王はゲッターロボばりにそれぞれの形態での得意分野や特性がハッキリしている。龍虎王形態では空を飛べる上に水中戦にも対応しており、遠距離戦にも対応可能。更に強力な必殺技を持つがエネルギー消費が激しく、回避能力は高くない。一方の虎龍機は空こそ飛べないが機動力があり、分身の術で回避能力も上々。更にエネルギーロスの少ない必殺技を持っているが、欠点として遠距離対応の武器が無い。2体のキャラクターがハッキリしているので、ザコ戦は虎王機でダメージ&エネルギーロスを抑え、ボス戦になったら龍王機で強力な必殺技を叩き込む、という風に使い方が考え易いユニットなのだ。更にリアル系のヒュッケバインMK-3とは異なり、主人公とその恋人が2人乗り(=1機の出撃で精神コマンドが2人分使用可能)なのも強力なメリットだろう。

そんなこんなで便利なユニットだった事もあるのか、龍虎王は「α」シリーズでは「外伝」以外の全て(「第3次α」も正確に言うと出てくるのは真龍虎王だが)のタイトルで登場する事となり、ある意味象徴的なロボットとなった。勿論、スパロボのオリジナルメカ&キャラ全員集合の「オリジナルジェネレーション」にも「2」にて参戦しており、プロデューサーの寺田氏としても思い入れのあるメカと言えるのかも知れない。

さて、本題に入ろう。このマンガが連載されていたのはスーパーロボットマガジン…そう、現在は休刊しているロボットアニメ版「ガンダムエース」的雑誌である。そしてこの作品もまた、「ゲッターロボアーク」と同様雑誌自体の消滅によりデッドエンド状態…一応と第2部の序章までで終わっている。寺田氏のコメントには、機会があったら是非続きを…という言葉があったが、現実的にはちとキビシイと言えよう。第一部完、で中断となった作品が第二部が作られる事と言うのは稀…私が知っているのはジャンプに連載されていた「影武者徳川家康」が後に「SAKON」というトンデモマンガになってしまった事くらいか。

それはともかく、このマンガ…スパロボのサイドストーリーという形態からか、このマンガだけを読んでも、正直大して面白くは無い。いや、第2部までキチッと描ききれていればこの評価は変わったのかもしれないし、実際に隆馬、文麗、孫光龍や龍虎王の紹介を兼ねたプロローグ的な第1部と比べ、第2部の方がスパロボから離れた部分でのオリジナル要素が増えるのでまだ”読める”ものになった気がするし、ハッキリ言ってしまえば第1部だけならホントに読み切りのサイドストーリー程度の印象しか残らない。そういう意味で言えば、「ゲッターロボアーク」と同様打ち切りが残念な作品である。

思えば第1部は序章としては中々に良い布石の張り方をしているのだ。例えば最初に敵として隆馬&文麗の前に立ちはだかるグリムズ一派が実は真の敵にしてみれば捨石同然だったり、真の敵であるバラルと龍虎王の関係、そして孫光龍…伏線をキチンと張った上で、隆馬&文麗の時代としての決着も果たしている。ちなみにクライマックスでの2人と孫光龍の問答は、割とまんま「第3次α」のクスハ編のイベントにて再現(というより使いまわしと言うべきか?)されている他、同ゲームでの真龍王機の戦闘デモは、構図その他をこのマンガでの戦闘シーンをモデルにしていると思われる。おっと、話が横道に逸れてしまったが、第2部への期待を持たせるだけのツカミはキチッと成されていたのだ。それだけに、途中でどん詰まりになってしまったのは惜しい。機を得て後に続編を書いたとしても、脚本、作画共にモチベーションのズレ、意識のズレはある訳で、趣味、嗜好の変化というのも影響する。そういう意味で言えば、今後機会があったとしてもそれは微妙な結果になってしまう可能性が出てしまうからだ。

ただ、この手のサイドストーリーが作る世界観が広がってしまい過ぎると、逆に本家「スパロボ」の世界観が迷走してしまう気がしなくはない。先ず、この「龍虎王伝奇」であるが、第1部の主人公である隆馬&文麗の子孫(あのドサクサでいつ…というのはヤボか/笑)である飛麗が主人公となり、その相方は雀武王にて隆馬達の前に立ちはだかったグリムズ家の末裔であるエドワードとなっており、「伝奇」においては龍虎王は念動力云々より「血」を重視している気がする(といっても飛麗&エドワードは作中で龍虎王には搭乗していない)のだが、そんな龍虎王が「α」で選んだのは稲郷とも蚩尤塚の守護者とも、はたまたグリムズ家とも関係が無いクスハとブリットである。ココに違和感が生じてしまうのだ。まぁ、厳密に言えば「α」の段階ではクスハ&ブリット以外のアベック(死語)も龍虎王に乗せる事は可能だったが、以降のシリーズや「OG2」では正規パイロットとしてクスハ達が選ばれているので他はとりあえず無視して、だが。

いや、ホントの事を言えば、この「伝奇」よりも先に「α」がある以上、「伝奇」を読んで「α」にて龍虎王に選ばれたクスハ&ブリットに違和感を感じるのは変な話ではあるのだが、「α」シリーズはともかく、「OG」の方には隆馬の子孫であろうシリュウ・トウゴウなるキャラクターが出ていたり、グリムズ家の者も登場する。シリュウに関しては爺様であるし、グリムズ家のアーチボルトは超機人絡みのネタもあるにはあったが、むしろエルザム(レーツェル)やライといったブランシュタイン家との因縁をメインでネタにされていた。蚩尤塚の守護者に至っては全然関係者は出てこない。何だかこの構図が、隆馬&文麗と龍虎王の戦いを見てしまうと…何だか念動力の有無だけで操者を選んだようで、「ドライになっちまったな…」なんて思えてしまうのだ。まぁ、コレは先に述べたように順番が逆な感想でもあるのだが。

もっとも、クスハやブリットにしたって元々が「α」用に作り起こされたキャラクターではない訳で、それを考えると「伝奇」を見た後の違和感も仕方が無いのかな、とは思う。ただ、「伝奇」云々とは関係なく、ブリットをシリュウ(ゼンガー)に弟子入りさせる、というのは…キャラクター設定履き違えな気がする。隆馬の様に龍虎王に乗るならともかく、薙刀やヌンチャクを武器とし、しかも正に乱撃と言うに相応しい必殺技を用いる虎王機のパイロットに一の太刀で全てを決する示現流は無いだろう。思うに、最も似合わない組み合わせだ。しかもこの設定を生かす為なのか何なのか、「第3次α」では龍虎王が虎龍王に竜王破山剣を譲り、それを虎龍王が自ら鍛え直し…となっているが、おかげで虎龍王が何の面白味もないロボットに成り下がってしまった気がする。色々な武器で袋叩きにするのが虎龍王の魅力だったのに…。

さて、最後に総評をしておくが、スパロボで超機人が好きな人にはまぁオススメする。元々ターゲットもそういうファンなのだろうし、「α」シリーズをクスハメインでプレイしていた人には特に楽しめるだろう。ただ、第2部の序章で話がぶち切れ状態なので強くはオススメ出来ない。まぁ、その後の第2部の展開も設定画集に少しネタになっているので、どんな風に展開するつもりだったのか想像するのも一つの楽しみ方か。

で、ついでに書いておきますが、「OG3」を企画していてそこに真龍虎王を出すのなら、朱雀機、玄武機はパーツのみではなく、それぞれの操者を設定して欲しいんですよ。で、その操者は「2」でブリットとライバル関係になっていたユウキ&カーラ、なんてのが面白いかと。まぁ、「OG」は金をかけない寄せ集め企画っぽいので4神合体で朱雀、玄武メインの形態ってのは考え難いか…。ならば、龍虎王だけでなく雀武王も出すとか…。他の「α」主人公には専用機(デフォルト時の搭乗機)が設定されているのに、ユウキ&カーラはホントなら縁がない「A」出身のメカだったりして不憫なんですよ、ええ。まぁ、不憫と言い出したらイルム&リン以外の「第4次」主人公達の方がヒドイのだが。


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