何所へゆくのかゲッター線…。

新ゲッターロボ

2004年 早乙女研究所制作 OVA 全13話
声の出演:石川英郎、内田直哉、梁田清之、有本欽隆、本田貴子、他

簡単解説
鬼は実在した。その残忍かつ人知を超えた脅威に対し、未知のエネルギー・ゲッター線研究の権威である早乙女博士は、そのゲッター線を用いた巨大ロボット・ゲッターロボを開発した。だが、ゲッターの強大なパワーを制御できる者はいなかった。時をおかず、早乙女研究所を襲う鬼…。その時、1人の男がゲッターの操縦桿を握る。その男の名は、流竜馬!!


さて、今更感はあるが今回は「新ゲッターロボ」である。いきなり言い訳がましい事を言ってしまうが、当サイトでは基本的に作品評をアップする場合時期は考慮しない事にしている。基本的に作品が終了した後、というスタイルではあるのだが、ウチの場合、他所のブログとか批評・解説サイトに比べると作品評をアップするのが非常に遅い。なぜ遅いのかと言えば、基本的にリリース直後に作品を見ている訳ではない事、そして私が本業を抱えていてその忙しさに左右される事、最後に、自分の中である程度自分がどう思ったのかを整理出来るまで時間がかかる、という事。そういう意味でいえば、今回の評もご他聞に漏れず時期に関しては完全にタイミングを逸している。「遅い。終わったらすぐやれ!!」という意見もあるかも知れないが、まぁ、いいじゃないか。

ともかく、今回の「新ゲッターロボ」も、今までの2作品…「真!!(チェンジ)」「ネオゲッター」と同様基本的な演出は石川賢先生の原作イメージを強く感じさせる作風ではあるのだが、両作品と同様、氏の原作マンガのアニメ化でもなければ所謂「サーガ」に組み込まれるようなスタイルではなく、基本的にはそれ一個で独立した作風…例えは悪いかも知れないが、原作の流れを「ガンダム」における宇宙世紀とするなれば、「真!!(チェンジ)」から始まるOVAは「Gガンダム」や「ガンダムW」と考えるのが最も分かり易いかもしれない。

そういう事で、先ずは前2作と今回の「新ゲッター」の比較から始めよう。
私は「真!!(チェンジ)」の作風は言うなればOVA版の「ジャイアントロボ」的なイメージを持っている。元々ある世界観は敢えて描かず、そこに生きているキャラクターのみを役割を変えて全員集合させる、という意味でかなり両作品のイメージは似ているだろう。OVA版「ジャイアントロボ」は「ジャイアントロボ」と名乗ってはいるものの、その実横山光輝キャラクター全員(ではないが)集合的な部分が強い。バビル2世とその下僕、サリーちゃんとパパ、赤影…どこかで見たようなキャラクターが、何時もとは違う役回りを演じている…ある意味セルフパロディ的な部分があった訳だ。それに対して「ネオゲッター」は往年の東映えいがまつり的なイメージ…普段競演する筈も無いヒーローが手を結び…という展開を、もし「ゲッターG」が開発されず「號」の世界に移行したようなパラレルワールドでそれぞれのキャラクターの持ち味を生かした「お祭り」的なお遊びをウリにした作品と言えるだろう。

ま、その辺の詳しい話は「大惨事」のそれぞれの作品の項に任せるとして、ではこの「新ゲッター」はどんな位置付けなのか?という事になる訳だが、実はコレ、ある意味「ゲッターロボ」の現代風リメイク的な印象があるのだ。相変わらず主人公は竜馬、隼人、弁慶の何時もの3人組な訳だが、メインで描かれるのはやっぱり竜馬…何でも企画段階で最初から流竜馬を主人公とした新しい「ゲッター」を作る、という目論見があったらしいが、今回は前2作品とは違い完全にメインが竜馬に限定されている印象がある。勿論他の2人もアレンジが加えられており、原作マンガでは隼人は学生運動の過激派グループ「革新派」のリーダーだったが、今回はテロリストのリーダーとしてゲッター線に目をつけ、早乙女研究所を襲撃する。もっとも優れた頭脳と残虐性、冷徹さと凶気を併せ持つ隼人のキャラクターの演出ネタ自体は、早乙女博士が竜馬に向けて刺客を向け、ゲッターを制御しきれるかを見極めたネタと同様、原作エピソードをなぞった様になっている。まぁ、コレは原作ファンへのサービスであろう。

ココで面白いのは弁慶のポジション。今回の弁慶は「武蔵坊弁慶」…奇しくも源義経に仕えたとされる強力の破戒僧と同じ名前なのだが、実はこのネーミング、ゲッターロボの3号機パイロット、巴武蔵と車弁慶の名前を合体させたものなんだそうだ。キャラクター的にも女好きでスケベ…登場シーンからして村を襲撃して捕まえた村の娘とパコパコと…。更に、早乙女研究所に迎え入れられてからも一応ヒロイン格(っても他には頼光しか女性キャラクターがおらんのだが/笑)のミチルの目の前でいきなりイチモツを披露する等、何時もの武蔵とも弁慶とも違う…独特のキャラクターになっていて面白い。今までの3号機パイロットは何だかんだ言いつつチーム一番の常識人だったので、このギャップも印象的。物語でも中盤でパラレル平安時代に飛ばされる複線でもある刀を持っていたりと今まである意味「いるだけ」的なムードメーカーではない所も色々と想像の幅が広がってよい。

さて、肝心の作風であるが、原作版の「ゲッターロボ」のリメイク的な印象が強いものの、敵も「ゲッターG」の百鬼帝国ではなく「鬼」…しかもその敵の正体、黒幕が分かっていない等今までの「ゲッター」と比較しても目新しい部分は多い。中盤でパラレル平安時代に飛ばされても、その世界観が他の石川賢的トンデモ時代劇的な世界観を引き継いでいるので、そこに竜馬達ゲッターチームやゲッターロボが大暴れしてしまってもあんまり違和感は無い。いや、コレは私が「ゲッターロボ」以外の石川賢作品を読んだ事があるからかもしれない訳で、そう考えるとこの「新ゲッターロボ」という作品も、ある意味で石川賢作品のセルフパロディ的な部分があると言えるのかも知れない。

そう考えると最後、ラスボスとして登場した4体の神も、「虚無戦記」辺りに登場する神の軍団「ラ・グース」といったモノに非常に似たイメージがある。一応私の知る限り、「ゲッターロボ」はそれ自体がシリーズとして一種の「サーガ」を形成しているので、石川賢先生のもう一つのライフワークと言えるであろう「虚無戦記」とはあまり関連性が無かったのだが、ココへ来て、OVAという氏の手からは少し離れた所で、「虚無戦記」との邂逅を果たそうとしているのかなぁ〜という印象を先ず持った。この「新ゲッター」は、今までも出る度に「原作テイスト」と言われてきたOVA版「ゲッター」の中でも最も石川賢氏のニオイが強い…いや、キツイと言っても過言ではない作風だ。それはバイオレンスなアクション描写やそこかしこに出ている品の無いネタ(流石に下痢は無かったが/笑)でもその印象が強いのは分かってもらえると思う。それなのに「ゲッター」らしいのか?と言われると…ビミョーな気もして来るのだ。

それは「ゲッターロボ」の世界観が云々とかそういうレベルの話ではなく、バイオレンスさとかそういった面ではむしろ原作ゲッターしている位…いや、言うなれば「『ゲッター』っぽくない」というより、「『虚無戦記』っぽい」のだ。先に述べた4体の神やらパラレル平安京といったネタからもそう感じるのだが、一番のポイントはやはり、この「新ゲッター」は流竜馬1人に特化している、という点がそう感じさせるのかも知れない。「ゲッターロボ」はメインは確かに竜馬であり、號であり、拓馬だったものの、それぞれに隼人や武蔵、弁慶、翔、剴がおり、獏やカムイがいた…この3人のチームが主役というポイントは頑な押えられていたのだ。しかし今回は完全に竜馬メイン。ゲッターロボのアクションにおける見せ場と言えば、1から2に、2から3にと目まぐるしく合体を繰り返す、スピーディかつトリッキーな戦闘シーン…しかし今回は主役=竜馬の方程式のおかげで思いの外このような合体をウリにしたアクションを見せてくれないのだ。特にそれを強く感じたのは終盤、チームで唯一ゲッターに選ばれた竜馬は、他のメンバーの手を借りずとも圧倒的なパワーを見せ付ける…でも、コレじゃ「ゲッター」としてはイカンのじゃなかろうか。もっともこの件に関しては、クライマックスでは竜馬自らがゲッターに魅入られた自分を否定してくれるのだが、このエピソードに限らず、ゲッター1ばかりが画面に出張っている印象は否めない。この部分は非常に残念だと感じた。勿論、キチッと見せる時は2、3の活躍も見せてくれてはいるのだが。

総論になるが、「虚無戦記」と「ゲッター」の邂逅というか、「ゲッター」というより…という部分に関しては、人を選ぶネタでもあり、また何時もの「ゲッター」を期待した人にとってはダメに映る部分といえるかも知れないが、幸い私は「虚無戦記」や「魔獣戦線」といった作品に触れているのでむしろ面白く見られた。ただ最後の4体の神や安倍清明といった悪役キャラクターに関しての説明があまりにも放り投げ過ぎなので、石川賢氏のファンではなく「ゲッターロボ」のファンだ、という人には分かり難いきらいはあるだろう。アクションに関しても全般的には悪くは無い…むしろ爽快なのだが、ゲッターらしい戦闘を見せてくれたのかというと…上記した様な事もあり少し疑問も残る。遂にゲッターの申し子たる流竜馬が主役の「ゲッター」が!!という期待と裏腹に、竜馬が主役として突出している事の弊害もまた多く出てしまっている…そんな印象がある。

今までのどの「ゲッター」とも違う和風アレンジを施し、明確な敵を打ち出さず、「鬼」の伝承を物語に絡め謎解き的な要素も加えている…面白い要素も多かったのだが、その興味をそそる部分…例えば武蔵の守り刀・童子切丸といった複線が最終的に消えてしまっている点や、「鬼」の正体を探るという謎解き部分に関しても、最後はうやむやな形で「さあ!!竜馬の戦いはまだ続く!!」的な投げ方をしてしまっているのは残念だ。最もこの部分…というかゲッター線の目的云々というのは原作側でも答えが未だ明確にされている訳ではないので、そういう点でも石川賢先生っぽい作風、と言えるのかも知れないのだが…。

…「アーク」もドラマの内容は違えど終わらせ方はかなり近いモノがあるしなぁ…まぁ、コチラは連載誌の消滅の影響が大きいのだろうが。

ともあれ、今までのOVA「ゲッター」の中でも、この「新ゲッター」はかなり異端と言える。そのおどろおどろしい雰囲気や、バイオレンス描写が好き…もしくは石川賢作品のファンならは引き込まれるだろうが、そうでないと少々他のOVA「ゲッター」に比べ敷居が高めな印象は受ける。コレで「新ゲッター」の続編みたいなのが作られるとすれば評価もまた変わってくるだろう。何と言うか…結構あからさまに次回がありそうな雰囲気を漂わせていたし…。

でも、今度やるなら今度こそ竜馬も隼人も號も…恐竜帝国もインベーダーも出てこない、完全な「新作ゲッター」ってのを映像作品で見たい気もするのだが…。
新キャラ&新メカが難しいというなら、「ゲッターロボ大決戦」に出て来たゲッター斬の女ゲッターチームで一本作ってみるのも面白いと思うんだが…今度は別方面に行ってしまいそうでもあるな、このネタじゃあ…。(苦笑)



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