♪生まれる時代を〜間違えた〜の〜さ〜(泣)

機甲創世記モスピーダ

1983年 タツノコプロ 全25話 フジテレビ系放送
(イエローのライブを収録したOVA「Love Live Alive」も存在)
声の出演:大山尚雄、島田敏、土井美加、室井深雪、鈴置洋孝、松木美音、他

簡単解説
地球を制圧した謎の生命体「インビット」に対し、火星を中心にした地球連合軍は2度に渡り「地球奪還作戦」を決行する。しかし大半が地球降下前に壊滅されてしまう。地球降下の際インビットに婚約者を殺された青年士官・スティックは、軍用バイク「モスピーダ」を拾った少年レイに出会う。2人は仲間を集めながら敵の拠点「レフレックスポイント」を目指すが…。


まったくもってマイナーな「機甲創世記モスピーダ」であるが、実はこの作品、あの学研がメインスポンサーを務めたという非常に珍しいロボットアニメであり、場合によってはあの「超時空要塞マクロス」の後番になったかもしれなかった作品でもある。そして「マクロス」からの影響は非常に強く、それは「可変戦闘機レギオス」の設定に賢著に見られる。

このレギオスは「マクロス」のバルキリーのファイター→ガウォーク→バトロイドという3段階変形というスタイルを継承し、それぞれをアーモファイター→アーモダイバー→アーモソルジャーと呼称している。またこのレギオスは見ていると股関節が痛くなってしまいそうなバルキリーの変形とは異なり非常に納得のできる変形システムを持ち、そのシステムを忠実に再現した玩具類(イマイ化学、学研が制作していた)も素晴らしい完成度を誇っていた。(しかし、本編の視聴率が不振であったため売れはしなかった)その他にも変形(というより「装着」するといった感じなのだが)するバイク「ライドアーマー(モスピーダ)」といったユニークなSF設定が多く、非常に魅力的である。

但し、このライドアーマーとレギオスの存在が逆に本作の設定をちぐはぐなものにしている部分がある。レギオス登場のおかげで活躍の場が限定されてしまったライドアーマーに関しては、もうインビットからひたすら逃げ惑うと言う非力な印象ばかりが残ってしまっているし、逆に股旅モノとすればレギオスはそれ相応の大きさを持った戦闘兵器であり、それをジープで引っ張りながら旅をする、というのはいささか奇妙な気がしてしまう。レギオスが戦闘機ではなくジープや装甲車なら主人公達の移動手段にして戦闘の要、として説得力が出ると思うのだが、戦闘機をズルズル引っ張りながらのバイクの旅、というのでは違和感を強く感じてしまう。

そんなちぐはぐな面ばかり目立っている本作ではあるが、面白く見られる部分も少なくない。特に敵の「インビット」は設定、演出共に力が入っている。インビットは「生命の可能性を追及して宇宙を旅する種族」であり、自らを完璧な生命体に進化させるのが目的なのである。そして本来インビットはその星での生命体としての可能性を吸収し尽すと、再び自ら旅に出てしまうのだ。しかしその進化を追い求める行為も人類からすれば「侵略」であり、当然の如く故郷を取り返そうと闘いを挑む。そうなれば当然インビット側も応戦する…つまり、お互いのことをもっと良く知り合えばムダな戦闘は避けられたのである。この設定が後半のテーマとなり、物語を引っ張り続けるのである。

またインビットの演出もユニークである。「モスピーダ」世界のエネルギーであるHBTを感知し執拗に主人公達を追い詰めていく様は、さながら映画「プレデター」のバケモノである。追跡シーンでの赤い目の部分の3連カメラを輝かせる演出は「ガンダム」のモノアイ、「ボトムズ」のターレットレンズ同様効果的に用いられており、大変印象的である。しかし視聴率不振ということで放送期間が短縮され、そのユニークなSF設定を存分に生かしきれぬまま最終回を迎えてしまっている。非常に残念でならない。ちなみにこのHBTはアルファベットを1つずつずらすと「GAS」となるが、コレは映画「2001年宇宙の旅」に登場する人間に反旗を翻すコンピューター「HAL」がやはりアルファベットを1つずつずらすと「IBM」になる、という遊びと同じである。

ただその25話という短い時間ながら、キャラクターは非常に丁寧に描かれている。(ちなみにメインキャラクターは「新造人間キャシャーン」等と同様ファイナルファンタジーシリーズで有名な天野嘉孝氏が手掛けている)特に仲間1人1人の「過去」を垣間見せるエピソードはどれも秀逸であり、物語を彩るゲストキャラクターも大変魅力的である。

特にインビットに殺されるのを恐れた人々の悲しい行動は人間の心の弱さを切々と訴えており、それを前向きに打破しようとする主人公達と見事なコントラストを描いている。この「モスピーダ」のキャラクターは誰しも「過去」や「弱さ」といった自分の人生を自分自身で背負っており、インビットの制圧の元で皆必死なのである。そういった丁寧な人物描写が物語に深みを与えているのだろう。

またこの作品、音楽に対する思い入れは半端ではなく、「カウボーイビバップ」に先んじて各話サブタイトルに音楽用語を用いている(「ビバップ」の場合は洋楽からの引用が多いが)他、主題歌「失われた伝説(ゆめ)をもとめて」とエンディングテーマ「ブルーレイン」はゴダイゴのタケカワユキヒデ氏が作曲しており、背景の映像も合わせてロボットアニメ屈指のカッコ良さである!!また「ブルーレイン」は作中イエローの女声を当てていた松木美音氏(と、アンディ氏)が歌い上げるブルース(!!)で作品の持つ独特な大人のイメージを踏まえた名曲(この批評のタイトルもこの歌の詩のフレーズである)である。放映時間が朝方である為、エンディングテーマがブルースというアイデアはスポンサー等から大反対を受けたらしいが、このエンディングなくしては「モスピーダ」の魅力は半減(言い過ぎかも)していたであろう。

そして「Love Live Alive」(ちなみに本編と異なりイエローの声をはねおか仁氏が声を当てており、OVA発売記念として実際にライブも行っている)では主役となったイエローの歌声も忘れてはならない。彼は第1次地球奪還軍の生き残りであり、軍人狩りから逃れるために女装したキャラクターである。また、インビット制圧下では「さすらいのシンガー」として名の知れた美女(?)なのである。彼の歌は劇中でも効果的に用いられている。

このイエローは「ロボットアニメ初のメインオカマキャラクター」(でも物凄くカッコ良い)であり、「マクロス7」の熱気バサラ率いる「ファイアーボンバー」に先駆けて物語上で大規模なライブを行っている。また「あしゅら男爵」以来(?)の2人1役キャラクターでもあり、その声の入れ替えも効果的に演出に取り込んでいた。そしてOVA「Love Live Alive」では主役に昇進し、迫力のライブシーンを本編の名場面と共に見せてくれる。ちなみにこのライブシーンの演出には、前記した天野嘉孝氏のイラストを止め絵でつなぎ、効果的に演出している。まぁ、面白いか?と言われればハッキリ言ってツマラナイのだが。(苦笑)

しかし今作はそういった魅力的な部分を存分に表現することが出来ないまま放映が終了してしまっている。一部で熱狂的ファンを獲得していたものの、逆に侮蔑的にこの作品を酷評した人も決して少なくない。妙に「マクロス」を意識し過ぎたのかレギオスの存在が本来の主役メカたるライドアーマーの魅力を大幅に阻害している印象があるし、上で述べている様に股旅モノとしてもちぐはぐな部分を目立たせてしまっている。個人的にはレギオスのデザインはバルキリーより好みだったりするのだが、設定上でのポジショニングが完全にズレている気はしてしまう。更に非難の矢面に立つ事も多い非戦闘要員である家出娘・ミントの行く先々での失恋もコメディリリーフとはなっておらず…いや、彼女のやたらとハイテンションで騒々しいキャラクターが割とシリアスな展開を続ける物語において逆に邪魔な存在になっている部分がある。

更に、本来であればもっと物語での扱いは重要であるべき筈…人類とインビットの関係における言わばキーパーソンとなる筈だったヒロインのアイシャや人間体インビットのソルジー等は、途中打ち切りによる弊害でもあるのだが、結局中途半端なままで終わってしまっている部分が強く、そういう意味ではせめて後1クール、ゆっくりこの作品を楽しみたかった気もする。そういう意味で言えば、本作は名作でも迷作でも駄作でもなく、ただひたすらに惜しい作品だと言えないだろうか。

最後に、アメリカでは「超時空要塞マクロス」「超時空騎団サザンクロス」そして本作「機甲創世記モスピーダ」を一つの物語にした「ROBOTECH」という作品が作られている。この作品は第2部「THE SOUTHERN CROSS」(超時空騎団サザンクロス)のキャラクターを「マクロス7」のミレーヌに先駆けて「マックス&ミリア」の子供として描いており、本作の「レフレックスポイント」も「Robotechnology」というゼントラーディの遺産という設定になっている。この「ROBOTECH」はリアルな戦争(?)を描いた作品として大ヒットを飛ばし、コミックスやTRPGなども作られたという。

また、すっかりアニメファンからも忘れられた存在かと思われていた「モスピーダ」であるが、2004年にアメリカのトイナミ社から「ロボテック」玩具展開の一端としてレギオスの非変形フィギュアの他、生産数限定のマスターピースブランドにて完全変形のレギオスを発売している。但し、日本国内ではタツノコプロとビックウェストの利権闘争のとばっちりを受け、「ロボテック」の公式サイトからの通販は利用出来ず、大手ショップが第三国経由で輸入したり、渡米した際土産物として国内に持ち込まれたものが出回る事態となっている。また、2007年になりシーエムズコーポも可変レギオス&ドレッドの発売を発表した他、旧イマイの可変モデルの金型を所有する青島文化教材社も新世紀合金レーベルにて可変レギオスの発売を企画している。

幾ら旧アニメがリバイバル的にリメイクされたりする昨今とはいえ、こんなド・マイナーな「モスピーダ」のメカまでリリースされるというのは、何気に「モスピーダ」も結構支持されていたんじゃないか、と思えて来る。いや、実際そうそうバカにした作品じゃないと思うぞ。


戻る