カイザー版「マジンガーZ対暗黒大将軍」

マジンカイザー 死闘!暗黒大将軍

2003年 光子力研究所制作 OVA
声の出演:石丸博也、内川藍維、家中宏、斎賀みつき、立木文彦、他

簡単解説
突如として現われ、世界を一瞬にして恐怖に陥れたミケーネ帝国の首領・暗黒大将軍。機械獣より遥かに強力な戦闘獣を率いる7つの軍団にマジンガー軍団が、ビューナスAが、そしてグレートマジンガーまでもが倒れていく。だがその時、甲児はゴーゴン大公の執拗な追撃を受け、身動きが取れずにいた。このまま人類は滅亡してしまうのか?


OVA「マジンカイザー」の続編であり、「真!!ゲッターロボ〜地球最後の日〜」を祖とする復活版ダイナミックロボットアニメの第4弾となる作品がこの「マジンカイザー死闘!暗黒大将軍」である。今回の「死闘!暗黒大将軍」は、ロボットアニメムービーの中でも傑作と誉れ高い東映まんがまつりの「マジンガーZ対暗黒大将軍」がモチーフになっているのは言うまでも無いだろう。

この復活版ダイナミックロボットというのはゲーム「スーパーロボット大戦」の人気が少なからず影響していると思われるが、こういった「昔の名前で出ています」系の作品の出現が、元の作品を知る者とスパロボから知った新規ファンとの間に摩擦が生じさせているというのは「マジンカイザー」の所で触れている。コレについての当サイトにおける解答は、そんな物はどうでも良いことで、問うべきは作品そのものが面白いかだ、というシンプルかつ本来であればノーマルな見解だ。出てしまったモノに「認める、認めない」と論議した所で、そこに存在しているのだから意味が無い。意味があるのはそれをそれぞれが支持するか否か?だ。

さて、この「死闘!暗黒大将軍」は先ほども述べた様にOVAの「マジンカイザー」の続編ではあるのだが、物語の内容はかなりベクトルが違っている。「マジンカイザー」という作品…特に前半部分はコミカルなネタをふんだんに用いた作劇であったのだが、コチラの「死闘!暗黒大将軍」はカリカリの硬派路線を狙っている。コレは、「真!ゲッターロボ」がシリアスよりで人を選ぶ作風になってしまったのを教訓に、「ネオゲッター」ではかなり破天荒なノリでコミカルな要素が強くなったのと丁度対照的だ。確かに「マジンカイザー」でも序盤のコミカル…というか軽々しいノリが後半でシリアスな路線(若干、だが)にシフトしてしまう事に違和感を受けてしまう傾向にあり、この時点で路線変更を得てして狙っていたと考えられる。

そして今回のテーマである、現代版「マジンガーZ対暗黒大将軍」というモノであるが、この「マジンガーZ対暗黒大将軍」というネームバリュー故に、「ネオゲッター」の様なお祭に徹するような事は出来なかったのだろう。「マジンガーZ対暗黒大将軍」は、マジンガーZからグレートマジンガーへの主役ロボ交代を描いたエピソードの草分けとして知られ、この映画をライブで視聴した世代には未だにコレをバイブルとしているファンも存在する。それほど人気、完成度共に高いモノに「死闘!暗黒大将軍」は挑もうという訳だ。そして、それ故に作品を「マジンカイザー」の続編とする事が、現代版「マジンガーZ対暗黒大将軍」を作るに当ってネックとなっている部分は多い。その代表例が、「マジンカイザー」の続編という点や、「マジンカイザー」という作品内で既にマジンガーZからマジンカイザーへの主役機交代劇は果たされてしまっている点である。

先ずは「マジンカイザー」の続編という点だが、コレは別にOVAだから悪いとか、安易な続編だから悪い、という訳ではないし、「マジンカイザー」の完成度云々という話でもない。それは、「マジンガーZ対暗黒大将軍」には人気テレビアニメ「マジンガーZ」があったという事実である。

先ほど述べた様に、「マジンガーZ対暗黒大将軍」という作品は今もって高い評価を受ける劇場作品ではあるのだが、実はその評価はテレビアニメ「マジンガーZ」があってこそのものだ。テレビにて、機械獣のどんな攻撃にも耐える超合金Zの強靭さを始めとする巨人・マジンガーZの圧倒的な力というモノをを視聴者に印象つけておかなければ、超合金Zを易々と貫く戦闘獣の登場の迫力、危機感はかなり薄れてしまう。普段は圧倒的な力を持つマジンガーをいとも簡単に屈服させる戦闘獣という、物語の引き込みがなければ、続くグレートマジンガーの登場にカタルシスが生まれないのだ。つまり傑作と誉れ高い「マジンガーZ対暗黒大将軍」の評価も、実はそれ単品の評価ではなく「マジンガーZ」で視聴者が感じたであろうマジンガーZに対する先入観があってこそのものなのだ。

そう考えると「マジンカイザー」という作品は少々弱いのだ。その原因の最たるものが、既に「マジンカイザー」で描いてしまっている主役ロボの交代劇である。「マジンカイザー」の続編となる「死闘!暗黒大将軍」の舞台は、既にマジンガーZが存在するという前提になる。つまり、「マジンガーZ対暗黒大将軍」で描かれた

「凄いロボットだ。君の名前は何ていうんだい?」
「グレートマジンガー。マジンガーZの兄弟さ。」

というようなネタではドラマが成立しなくなってしまう。そこには既にマジンガーZは存在せず、グレートはカイザーのパートナーとして存在してしまうからだ。そういう事で、「死闘!暗黒大将軍」は現代版「マジンガーZ対暗黒大将軍」として制作されながらも、作劇的にはまったく違うモノにせざるを得ない。そこで出てきたのがタイトル通りのマジンガーZと暗黒大将軍のガチンコバトルである。この2人、「マジンガーZ対暗黒大将軍」ではタイトルとは異なり直接対決はしていない。それがかえって暗黒大将軍に大物としての風格をもたらしたのだが、直接対決がないという事で「タイトルに偽りあり」と評されたのも事実である。

そんなファンの期待に答える形となったのが、今回の「死闘!暗黒大将軍」であろう。そして、直接対決への期待を繋げる意味での甲児達の逃亡劇、そしてその中で次々と倒れていく仲間という演出になった訳だ。
そして、この「次々と倒れていく仲間」という部分にも力が入っており、冒頭、タイトルを待たずに散っていくローリィ&ロールの乗るミリオンαが甲児達の退路を確保する為散っていく様や、もりもり博士が甲児達を逃がす為に敵もろとも自爆する様を描き、甲児&さやかの逃避行から転じたマジンカイザー登場という演出に一役かっている。

そしてマジンカイザー光臨のシーンも、ボスボロットの体内に隠されたカイザーパイルダーで宇宙から射出されるカイザーとドッキング。群がる戦闘獣をいとも簡単にねじ伏せるという、古典的ながらも効果的な演出で視聴者の気分を盛り上げてくれる。この辺りは今までのOVA「ゲッター」で得たノウハウが生きているといえる。

そんなこんなでいやがおうにも期待が膨らむ暗黒大将軍との決闘だが、確かに暗黒大将軍の強さは描かれているし、ロボットプロレス的なアクションも大迫力…なのだが、妙にあっさりと、しかもベッタベタな形で決着がついてしまうというのはどうだろう。思えば七大将軍も全滅し、結局ミケーネ帝国は滅んでしまっている。確かにこの「死闘!暗黒大将軍」という作品だけで全て決着をつけようとしたのかも知れないが、個人的には傷つきボロボロになりながらも立ち上がるカイザーを宿敵と認めた暗黒大将軍が、

「貴様のその気迫に免じて今回は引いてやろう。また一つ楽しみが出来たわ。フハハハハハッ!!」

等と余裕を見せ、部下と共に一時退却するような作りにした方が、ベタではあるが盛り上がったのではないだろうかと思う。あまりにも一気に地球を制圧してしまったが故に、ミケーネの強さが今一歩伝わらず、苦肉の策なのか味方キャラクターが苦戦する様も描いてはいるのだが、肝心の暗黒大将軍の強大さ、魅力が描ききれずに終わってしまっている印象があるのだ。それならば、無理に決着をつけてしまう事も無かったのではないかなぁ…と思う。もっと突き詰めて言ってしまえば、むしろ「マジンカイザー」の前に「死闘!暗黒大将軍」をやってしまうべきだったんじゃないか?とまで思えてしまう。もっとも、そうなると本作は単なる「マジンガーZ対暗黒大将軍」の現代版アレンジになってしまうかも知れないが、もうちょっとナントカ出来なかったのかなぁ…と思ってしまう。

それと、今回グレートは7大将軍の内のスカラベス、アンゴラスを相打ちながらも倒す活躍を見せるが、ビューナスA(カイザー版からテレビアニメ版にデザインが戻っている)はハーディアスに一方的にやられるだけ。見せ場といえば、ジュンの戦闘服が破れ、谷間が露になる所ぐらい…って、コレはビューナスではなくジュンの見せ場だな、ウン。その他マジンガー軍団といいつつミリオンαの他2体しか登場せず、しかも大した活躍をせぬまま破壊されてしまっていたり…この辺り、もう少し見せ場をあげても良かったんじゃないかなぁ…と思ってしまうんだが、どうだろうか。ボスボロットもゴーゴン大公をイジメただけだったし。

エンディングでロボットジュニアが登場したりして次回も何かしらやるのかも知れない雰囲気はあるが、そうなるとオリジナルの敵とマジンカイザーが対峙するのだろうか?個人的に見たかったのは、実はDrヘルでもミケーネでもない新たな脅威に立ち向かうマジンカイザーだったりするのだが。


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