「マジンガーZ」の底は果てしなく深いのだ

「マジンガーZ(桜多吾作版)」 
1972年 原作:永井豪 作画:桜多吾作  双葉社 全5巻


簡単解説

バードス島にて発掘された古代ミケーネ人の遺産である巨大ロボット…機械獣による世界征服を企む悪の科学者Dr.ヘル。彼と共に機械獣を発掘した科学者・兜十蔵はヘルの野望を阻止する為、自身が開発した強靭な金属・超合金Zのボディーと数々の必殺兵器を搭載したスーパーロボット・マジンガーZを開発する。十蔵の孫である兜甲児は祖父からこの強大な力を託され、Dr.ヘルの野望を打ち砕かんと戦う決意をする。


さて、今回は大分前に記事にした「桜多版グレートマジンガー」に続き、時系列的にはその前身にあたる作品、つまりは「桜多版マジンガー」を取り上げたい…と、その前に私とマジンガーについての…まぁ思い出話みたいなものを先ず語りたいと思う。興味ないかもしれないが、まぁ付き合って欲しい。

私は掲示板等でも「マジンガー」をはじめとする自分がまだ生まれる前の作品を擁護し、むしろ自分自身が所謂「原体験」として持っている筈の作品…それは例えば「ガンダムシリーズ」だったり「エヴァ」だったりする訳だが、こういった作品に対してやや斜に構えた様な物言いをするケースが結構ある…ええ、子の事に関してはちゃんと自覚しているのだよ。

その理由…というのを懐古主義、と片付けるのは違う。なぜなら世代的な問題で、私はそれらの作品の多くを自分で原体験として持ち得る筈がなく、今回の記事に関連する「マジンガーZ」に至っては、東映まんがまつり版…言わば「劇場版マジンガーシリーズ」には一通り目を通してはいるものの、テレビ放送版に関しては実は数話しか視聴出来ていなかったりもする。この手の作品にハマるパターンとしては、先ずゲームの「スーパーロボット大戦」で興味を持ち、映像ソフトが無い、または入手困難なので漫画版を探したり…といったものがある訳で、このパターンで出会い、直撃したのはもう言わずもがな、石川賢先生の「ゲッターロボシリーズ」な訳だ。しかし、今回の核である「マジンガーZ」との出会いに関してはそれよりもずっとずっと前の事だったりするのだ。

その出会いは幼少期…確かまだ私が幼稚園に通っていた頃まで遡る。当時の私はロボットアニメよりは自動車が好きな子供として近所でも有名だった。この辺は「変愛録」の「ロマンのマスター」の項で確認して欲しいのだが、そういう訳で当時遊ぶ玩具と言えば、トミカやチョロQ、当時としても懐かしい部類のスーパーカー消しゴムといったものだった。つまり、まだ目覚める前、という訳だ。(苦笑)

そんな中、大工の親父が施主から私の為に一つのケース貰って来てくれた。そのケースの中には、ランボルギーニやフェラーリ、マセラティーといったスーパーカーや、ポルシェ935-77ターボ等のシルエットフォーミュラーやグラチャンマシンのカード(というよりブロマイド的な大きさだった)と、様々な大型トラックの絵が描かれた四角いメンコが大量に入っていた。そのケースの中に直径15cm以上はあったであろう、やたらデカいメンコが二枚だけ入っていて、それに描かれていたのが、マジンガーZだったのだ。

その絵柄はダブラスM2と戦うマジンガーの雄姿だったと記憶している。恐らくはアニメのオープニングを元にして作られたものだろう。ちゃんとロゴも入っていたしパチモンの類では無かったと思われるのだが、当時はクルマ大好きな私…当然、マジンガーZのメンコなんざ邪魔者だった筈なのだが、そのメンコに描かれたマジンガーZはアニメのそれと同様に、フロッタージュで陰影が入れられた迫力満点なものであり、当時としても所謂リアルロボット全盛期…テレビとかでよく見るカッコつけた類のリアルロボットにはない、何と言うか荒々しい姿がとにかく目を引き、異物である筈のそのマジンガーのメンコも、スーパーカーカードやトラックのメンコと共にケースから取り出しては並べたり、眺めたりして大切にしていたのだ。

このカードとメンコ…全部で100枚近くはあった筈で、「サーキットの狼」に出ていたスーパーカーは殆ど(残念ながら肝心なロータスヨーロッパは無かった。ロータスエリートはあったのに)網羅していたし、グラチャンマシンに至っては、マーチやシェブロンの他に紫電なんてレアなモノも混ざっていた。大型トラックやマジンガーのメンコにしても、メンコ遊びとかは一切しなかったので子供が遊んでいた…というか眺めていたのだが、まぁ子供の手にあったにしては、汚れなどもなく程度は良かったと思う。小学校低学年の時に、実家を新築するドサクサで行方不明(多分、捨てられちゃったのだろう)になってしまったのだが、今まだ持っていたら…結構お宝になっていたんじゃないかとも思えてしまい、何とも悔しかったりする。

…大分話が横道にそれてしまったが、これが私とマジンガーの邂逅である。そして、「第三次スーパーロボット大戦」にて再会を果たすのだが、この頃のスパロボ…所謂ウィンキーソフトの頃のスパロボは、ご存じの事とは思うが、何か恨みでもあんのか?と言いたくなる程スーパー系は冷遇されていた。スーパーロボットは必殺技の攻撃力こそ高いが、ガンダム系キャラクターに比べて2回行動可能になるレベルが遅く、命中、回避率は悲しくなる程低い。しかも、システム上コッチの攻撃は命中率80%でもザコに避けられるのに、敵の攻撃は20%とかでもバカスカ当たる…という理不尽仕様なのでやってられないレベル…特に、マジンガーZは序盤で唯一「必中」が使えるので序盤は良いが、中盤以降は完全にベンチウォーマーだった。この辺のマジンガーのポジションが、後に「マジンカイザー」の登場に繋がったのは古参のスパロボファンには常識であろう。

そんな中、何故かスーパーファミコンにて発売されたのが、その名も「マジンガーZ」…そのまんま、アニメ版をベースにした横スクロールアクションゲームだった。このゲーム、バンダイが出していたのだがバンダイらしいキャラゲー…という程度の出来だった。ストーリーのデモとかは凝っていたものの、肝心のアクションゲームとしての出来はイマイチ…何しろ操作性が悪く、マジンガーの必殺武器も威力はあるが射程が短過ぎて使えないブレストファイヤーを始め、どれもやたらエネルギー消費が激しく殆ど役に立たない。もっぱらそれぞれLRボタンに割り当てられたロケットパンチが頼みの綱だが、原作を再現して両手を飛ばしてしまうと通常の格闘攻撃が出来なかったり…というゲームで、世間一般ではクソゲーのレッテルを張られているゲームだ。

ただ、私は何故かこのゲームにハマりにハマった。この手のアクションゲームが下手ながら嫌いではなかった事も理由の一つだが、ホントに自分でもよくワカランが、とにかくハマった。攻撃方法が3パターンに変化するDr.ヘルも苦戦しつつも何とか倒し、ミョーにあっさりしたエンディングも見た。そういえば、コレも制作はウィンキーだった様な気がする。どうりでバランスが悪い訳だ…。

そんな訳でこのゲーム、アクションゲームの中でも難易度は割と高かった気がするがそれは決して理不尽なレベルではなく、やり込めばちゃんとコッを掴める様になっていたのが良かった。このゲームのおかげで、作品としての「マジンガーZ」を知らずしてマジンガーZというスーパーロボットに妙な愛着というか、思い入れが芽生えた訳だ。アニメをキッチリ見ていやしない私がこんな事を言うのはアニメの「マジンガーZ」を原体験として見ている世代にとっては憤慨モノなのかも知れないが、コレもイレギュラーながら立派に物事にハマる経緯の一つだとは思う。

…で、肝心の「桜多版マジンガーZ」だが、実はジャンプにて連載されていた永井豪氏の漫画の方は人気が高かったにも関わらず未完になってしまっているのは有名な話。一部では同時期にマガジンにて連載されていた「デビルマン」を重視したせいだとも言われているが、そういう意味ではキッチリ完結…どころかアニメとも永井版とも違う形で「グレンダイザー」まで突き進んで完結した桜多版の意義は大きいだろう。特徴としては先ずアニメ版ではパラレル扱いとなっているジェットスクランダーの登場を描いた「マジンガーZ対デビルマン」、グレートとの引き継ぎを描いた「マジンガーZ対暗黒大将軍」といった東映まんがまつりでのエピソードも扱っている点であろうか。

そして注目すべきは、アニメではDr.ヘルへの絶対的な忠誠が印象的なあしゅら男爵。コチラの「桜多版」では宿敵・兜甲児と共に異次元に召喚されて、地球人を食糧化しようと地球進攻を企む半漁人・チップカモイ食い止めるために甲児君と共闘するというオリジナルエピソードや、超兵器を入手しDr.ヘルに反旗を翻す展開があったりとかなり独自なものになっており、アニメやゲームでの印象とは大きく異なっている。また甲児自身もラスト、新たな敵・ミケーネとの戦いで瀕死の重傷となり、父・剣蔵によりサイボーグ化される、という展開もあるが、コチラは以降の「桜多版マジンガーシリーズ」では触れられておらず、結局は無かった事扱いの様だ。

そして何故か自衛隊がクローズアップされている面があり、妙に出番が多くなっている。その活躍ぶりも破天荒で、何と米軍から「ちょろまかした」という核爆弾でピグマン子爵を倒してしまったりもしているのだ。なお、自衛隊の指揮官である岡部は続編である「桜多版グレートマジンガー」にも続投しており、グレートが日本を追放された際は研究所の面々と行動を共にしている。

しかし、かなりハードな路線となった前回紹介の「桜多版グレート」とは違い、「桜多版マジンガー」は割と少年漫画的なコミカル路線が基本ラインとなっている。特に、マジンガーZに乗ってDr.ヘルと戦っているせいで高校を留年してしまい、腫れものに触るかのような対応を取られたり、敵の罠にはまり本能むき出しになってしまいミサトに襲いかかって引ん剥いてしまったり…そんな甲児君は見たくなかった気もするが、アニメや原作に囚われないユニークなエピソードは多い。

そして肝心なのは、戦う事に迷いを感じたり…というスパロボ等では描いて貰えない甲児のナイーブな一面をキッチリ描いてくれている事だろう。勿論、ボスとの友情などもそこかしこで描かれており、特にボスの描写に関してはコメディリリーフに留まらない部分も多い。普段は三枚目なボスが、ゴーゴン大公に陥落寸前にまで陥った光子力研究所から決死の覚悟で出撃する直前に、先の戦闘で全身打撲となり意識の回復しないさやかに別れを告げ、頬にキスをして

「へへへ…ごめんよ。で、でもおらぁ、もう心のこりはねぇぜ、へへへ」

と謝るシーンなんて、同じ様なシチュエーションにおいて「ヒロインのはだけた胸を見て一発抜いてしまう(厳密には「そうとれる描写」)主人公」みたいなのには爪の垢煎じて飲ませたい位のカッコ良さ…正に「男の純情」という奴ではなかろうか…って、そういえば件の作品、現在劇場4部作としてリメイク中な訳だが、旧劇場版のやり口、終わらせ方等は、よく富野御大の「イデオン」とかと比較されがちだった訳だが、何の事は無い、今回紹介している「桜多版マジンガーシリーズ」にそっくりなんだよな。と、いう訳だからして、その作品のファンは「マジンガー」とかに対して「底が浅い」とか言っちゃうのはちゃんちゃらおかしいって事になるわな。

とにもかくにも、そういう訳でこの「マジンガー」から始まった「桜多版マジンガーシリーズ」は、独自の展開を続け傑作と呼び声高い「グレートマジンガー」、そしてトンデモナイ大風呂敷となった「グレンダイザー」へ続く訳だ。シリーズ最初の作品であるが故に、「グレートマジンガー」の様なハードさや、「グレンダイザー」の様な凄まじい展開こそ見られないものの、物語の完成度自体は決して低くない。間違いなくロボット漫画の傑作のひとつなのだ。

そんな訳で、「マジンガーZ」は決して底が浅い作品などでは無い。アニメ版をちゃんと見ていない私の様なファンからしても、一度キチッとした形で物語に触れたのであれば、きっとリュウセイの様に

「マジンガーZを馬鹿にする奴は甲児が許しても俺が許さねえ」

等と思う事うけあい…そんな「マジンガー」へのキッカケとして、全面的におススメ出来る作品が、この「桜多版マジンガー」なのだ。

…さ〜て、残りはいよいよ問題作、「桜多版グレンダイザー」ですな。


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