腰の無い磁石ロボット

マグネロボ ガ・キーン

1976年 東映動画制作 全39話 テレビ朝日系放映
声の出演:古川登志夫、杉山佳寿子、内海賢ニ、柴田秀勝、北浜晴子、他

簡単解説
地球を狙うイザール星人の攻撃が始まった。彼らの侵略を予測した地球システム研究所の花月博士は、原子力と磁流波エネルギーを動力源とするマグネロボ・ガ・キーンと移動要塞ゴッドフリーダムを完成させていた。北条猛と花月博士の娘・舞は、それぞれマグネマン・プラス、マイナスとしてガ・キーンの核となり、イザール星人の送り込む合成獣を叩きのめす。


さて、「マグネロボ ガ・キーン」である。
この「ガ・キーン」で第2弾となる「マグネロボ」であるが、このシリーズはシリーズの開祖たる「鋼鉄ジーグ」からタカラの発売する玩具「マグネモ」とのタイアップが図られていた。この「マグネモ」というオモチャは従来の超合金を1歩進めた企画であり、関節部にし込まれた球体マグネットによって手足などを取り替えて遊ぶ事が出来るものである。つまり、この「マグネロボ」の謳い文句たる「磁石の力」というのもこの「マグネモ」に由来しているのだろう。シリーズは「鋼鉄ジーグ」から始り、タツノコ制作の「ゴワッパー5ゴーダム」、続けて東映制作の「マグネロボ ガ・キーン」…最後の作品「超人戦隊バラタック」となる。

またいきなり余談になるのだが、この「マグネモ」は最近再販がかけられた様で、最近流行りの玩具等を扱うリサイクルショップ等でも良く見かける。相場は再販品なので1万円を切る価格で出回っているようだが、放映当時に発売されたものはその3倍ぐらいで店頭に並んでいるのを見た事がある。
ちなみに「鋼鉄ジーグ」の玩具の版権はタカラが取得していた訳だが、プラモデルはかの「合体シリーズ」として青島文化教材社が発売している。このアオシマ版「合体ジーグ」は背中にスクランダーを背負っていたり、「合体」の宿命で生首戦闘機になったり…果ては支援戦闘機ビッグシューターまでビルドアップするというアオシマナイズ溢れるシロモノである。

しかし本家マグネモよりも遥かに安価であり、「マグネモ8」シリーズでは動かなかったヒザ関節の可動など、プレイバリューに関しては抜群のオモチャであったという。この「合体」やタカラの「ミクロマン」、そして近年では「ZOIDSBLOX」等、この手の有形ブロック玩具というのは案外廃れないネタなのだなぁ…確かに自分でオリジナルを創造していくという作業を遊びに取り入れるのは、所詮受身の作業でしかないテレビゲーム等より飽きられ難いのかもしれない。

さて、すっかりオモチャ談義に花が咲いてしまったがココからが本題である。
この「ガ・キーン」の最大の見所といえば、やっぱりその奇天烈な合体(変身?)シーンである。先ずこのガ・キーンのパイロットはオープニングテーマにもある通り、猛と舞、2人の男女が核となる。そしてそのプロセスがモノスゴイのだ。

先ず、移動要塞ゴッドフリーダムのブリッジにある搭乗用エレベーターにて猛が「マグネマンプラス」、舞が「マグネマンマイナス」に変身する。そして猛はバイク「スピリット」、舞は戦闘艇「エンジェル」に乗り込み、別口から射出される男性型ロボ「プライザー」、女性型ロボ「マイティ」にハイルドオン(要するにパイルダーオン)する。
そして現場に急行、合成獣相手に連携して戦う事になるのだが、如何せんこのプライザー&マイティは小型の為パワー不足…合成獣を倒すどころか、足止めする事すらやっと。
そんな苦戦する2人に花月博士から「合体して戦え」という指示が入り、移動要塞ゴッドフリーダムからガ・キーンパーツがシュートされる。射出を確認した猛と舞はそれぞれ「スイートクロス!!」の掛け声と共にプライザー、マイティから飛び降り、お互いの腕を組み合わせ、向い合い、回転して六角形のパネルを2つ並べたようなパーツに変身する。そしてそのパネルが射出された胴体パーツに張り付き、ビルドアップ…そしてガ・キーン合体完了となる。更に決め技のプラズマ光線シュートの際はプライザー&マイティを両腕に取りつけるし、中盤からは大車輪アタック、バリアントアンカー、シャベルパワー、重戦車と怒涛のパワーアップが図られてそれはもう大忙しなのだ。

中盤から搭乗用エレベーターを使わずに、腕時計に呼びかける事でマグネマンに変身できるようになるのだが、それにしてもこのガ・キーン登場までのプロセスは凄まじい。特に男女合体というパターンは当時としては稀な存在であり、せいぜい「ウルトラマンA」の北斗と南ぐらいではなかろうか。もっとも、「ウルトラマンA」の場合は怪獣ごっこに女の子が参加する事が稀な為、ごっこ遊びをやりにくいという事で途中で南に「月星人」という設定をアトヅケして最終的には北斗の単身変身に落ちついてしまっている。こういった影響がなぜ「ガ・キーン」には起こらなかったのか?といえば、その理由はロボットアニメは特撮と同じくごっこ遊びをするにおいて、生身ではなく機械なので媒体としての「玩具」の存在が大きい為であろう。

そして、作劇の方法も同じ男女合体を用いながらも大きく異なる。「ウルトラマン」の前提で正体は秘密というオキテが存在する「ウルトラマンA」は、必然的に主人公2人にスポットが集中する事になり、それがヒーローの孤高としての存在感を高めているのだが、「ガ・キーン」はむしろヒーローモノというよりも「群像劇」的な要素が強い。

主人公の一人、北条猛は武道家の父に反発し、一人で武者修業の旅を続けていた青年だ。そんな彼の目標はイザール星人の侵略から地球を守る事ではなく、飽くまで「武道家としてオヤジを超える」事。そんな彼だからこそ、花月博士に才能を見込まれたもののゴッドフリーダムのクルーと馴れ合う気はさらさら無く、自分の目的の足を引っ張られると組織に束縛される事を嫌ってしょっちゅう仲間と衝突する。父親に反発、という部分もそうであるが、このストイックで一匹狼的な性格は先代主人公の司馬宙に通じるものがある。そして、宙と同様に猛にも「孤高ゆえの脆さ」を抱えており、この欠点がドラマにアクセントを与えている。

そして、所長の決定とは言え自分勝手で協調性など皆無な猛に対し、同僚の独、太、天才の3人は彼は不満を持っている。そしてそれは少なからず合体のパートナーである舞も同じ事だった。そんな彼等がイザール星人の繰り出すあの手この手の作戦に翻弄され、苦戦しながらも勝利し、少しずつお互いを受け入れ合う。実力はあるが馴れ合えない性格から脆さを抱える猛を、仲間である舞や3人組が受け入れる事によって補完する…だから「ウルトラマンA」とは違い、「ガ・キーン」は共に戦う仲間達が物語に占める比重が大きいのだ。

そんな彼等ゴッドフリーダムのクルーの群像劇をより一掃引き立てたのは、ガ・キーンのバトルシーンでは無いと私は思う。それはイザール側の諜報員の活躍である。彼等は的確な行動で常にゴッドフリーダムの弱点を突き、何度も猛達を窮地に追い込む。ある時はガ・キーンへの合体を阻止する為に猛と舞を引き離しにかかったり、コアとなる2人を暗殺しようとしたり…果てはゴッドフリーダムの感謝祭にもぐり込み、艦内に爆弾を仕掛けたり…この地道な行動が、まるでボディブローのようにジワジワと効いて来るのだ。コレほど敵側の諜報活動が印象に残る作品もあんまり無いのではないだろうか。

最後になるが、東映作品って語感を大事にしたイカすネーミングが結構多いと思う。
この「ガ・キーン」を始め、「ズバット」とか「ビビューン」とか…。


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