最新鋭バルキリーを使った大喧嘩

MACROSS PLUS

1994年 ビッグウエスト OVA 全4話(劇場板「MOVIE EDITION」もある)
声の出演 山崎たくみ、石塚運昇、深見梨加、兵頭まこ、林原めぐみ、他

簡単解説
ゼントラーディのボルド艦隊による地球襲撃から30年を経たAD2040年。地球から10数光年を隔てた惑星・エデンのニューエドワーズ基地にて「AVF(次期主力全領域戦闘機)」のトライアルが行われていた。そこへYF−19のテストパイロットとして「イサム・ダイソン」が転属される。だが、彼が基地に赴くと、そこには彼が良く知っている男が競争相手であるYF−21のパイロット務めていた。ガルド・ゴア・ボーマン…かつてのイサムの親友であり、またライバルでもあった男…。


この「マクロスプラス」は、
「心を持ってしまった人工知能を巡るラブストーリー」」
「ヒロインのコンサートへどちらが先に着くかを賭けた、若いパイロット2人の空中レース」
「有人戦闘機全面撤廃条約の発行前日に出撃する老兵と、最初で最後の戦いに挑む若いパイロットが織り成す最後のドッグファイト」
という3つのアイデアプランをなんとか一つの作品として映像化しようと制作された物語なのだという。

その為か従来の「マクロスシリーズ」とは一応時間軸が繋がっているものの、本編とは異質の印象を受ける。それはキャラクターデザインが美樹本晴彦氏ではなく摩砂雪氏が務めていたり、作中の歌姫が生身の人間ではなく「バーチャロイドアイドル」に変更されている点からであろう。

また本来バルキリーは大気圏内外で運用可能という設定があるのだが、「マクロスプラス」のバルキリーはテレビシリーズとは異なり大気圏内での活動をメインに描写されている。それはバルキリーで「翼のある航空機」の魅力を描きたかった為、敢えて大気圏外での描写や演出を押さえたのだという。その演出方法が人間が古来から持つ大空への憧れ、言わば「大空賛歌」とでも言うべきものをうまく表現しており、特に「MOVIE EDDITION」の冒頭にて、前進翼のYF−19を模した手で自分の航跡をシミュレートする描写は大変ユニークである。

さて本編であるが、イサムやミュン達の愛憎劇の裏で「AVF(Advanced Variable Fighter 次期主力全領域戦闘機)」のトライアル「プロジェクト・スーパーノヴァ」が行われているという設定がある為、イサムの「YF−19」とガルドの「YF−21」の設定が非常に密になされており、搭乗者に合わせた個性分けも徹底している。

例えば、自称「ダルメシアンハイスクールの暴れん坊」の主人公イサムの「自由を好み束縛されるのを嫌う」という性格設定に合わせ、高性能の学習型コンピューターを搭載しているが、そのコンピューターに自分のクセを覚えさせるまでは凄まじいじゃじゃ馬ぶりを見せるYF−19。

それに対しゼントランディーの血を引く為、自らの闘争本能を無理やり抑え付けているガルドには「BDI」という脳波により機体をコントロールし自らを機体に直結するシステムを持つが、そのシステムを正確に運用するには並外れた忍耐力と精神力が必要なYF−21。

デザイン面でもその設定のこだわりは現われており、前進翼の採用やバトロイド形態ではコクピットをシャッターではなくボディ内部に収納することによって保護するといった新たな試みを用いているが、外見はあくまで「バルキリー」的なデザインをしているYF−19に対し、設定でも「クアドラン・ローの姿勢制御システムを参考にしている」とあるように外見も「ゼントラーディ、又はメルトランディの意匠」を継承しているYF−21となっており、2機、いや2人の個性分けに貢献しているのだ。

いわば19はイサム、21はガルド自身なのである。その設定を存分に生かしたのがクライマックスのマクロスシティでの対決であろう。

「いつも人の後ろばっかりチョロチョロ着いて来やがって!!女の尻でも追っかけてろってんだ!!」

というイサムの叫びから始まる大喧嘩。2機の背後に発生するソニックブームによりビル群の窓ガラスは砕け散り、ファイター→ガウォーク→バトロイドと目まぐるしく変形し、ミサイルや銃弾を相手に向けて撃ちまくる!!そして漢同士の喧嘩の基本である拳を使った殴り合い(一応、生の拳ではなく「ピンポイントバリア」を拳に集中させるシステム「ピンポイントバリアパンチ」であるのだが)を超高性能バルキリーで展開するのである!!
そして2人が絶叫し合う台詞は

「ハイスクールのランチ、2回おごったぞ!!」
「俺は13回おごらされた!!」
「しっかり数えてんじゃねぇ!!」

というまんま「ガキの喧嘩」の台詞なのである。イサムもガルドもドラマ部分では割と「自立した大人」として描かれている。しかし、物語のクライマックスで繰り広げられるのはイサムとガルドのこだわりを解決するための「ガキの喧嘩」なのである。だからこそ2人の喧嘩はバルキリーらしい銃撃戦ではなく「殴り合い」でなければならなかったし、バルキリー同士ではあるものの「殴り合い」だからこそこの喧嘩を結末も含めて、なんとも清清しいモノとして描くことが出来たのであろう。

この「イサムVSガルト」の喧嘩から続く「無人戦闘機X−9ゴーストバード」戦、そしてラストシーンまでは「愛・おぼえていますか」にてその戦闘演出を「板野サーカス」とまで絶賛された「ミサイル芸術家」板野一郎氏の演出と、バックに流れる「シャロン・アップル」の歌声(菅野よう子氏が手掛けている!!)は正に必見である!!

バーチャロイドアイドルがどうだとか、イサム、ガルド、そしてミュンの三角関係がどうだとか、マニアとしてはそういった設定に走ってしまい易い。故に、本作はその二面のみに評価が偏りがちである。しかし、私個人としては、「マクロス」の輝&美沙&ミンメイの三角関係の伝統に則った「イサム&ミュン&ガルド」の三角関係や、バーチャロイドアイドル「シャロン・アップル」といった要素は飽くまで二次的なものであると思えてならない。

そんなものよりもまずはこのクライマックスの男同士のプライドを賭けた壮絶な殴り合い、この「ガキの喧嘩」こそが「マクロスプラス」の一番の見せ所なのだ。その見せ方は正にロボットアニメの王道であり、本分をまっとうしたものだと思う。


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