板野サーカスの真髄

超時空要塞マクロス 〜愛・おぼえていますか〜

1984年 ビックウェスト 劇場公開作品
声の出演:飯村真里、長谷有洋、土井美加、神谷明、ケント・ギルバート、他

簡単解説
大ヒットしたTVアニメ「超時空要塞マクロス」の劇場版作品。本編の1話から27話までを完全新作で作画したもの。(詳しくは「超時空要塞マクロス」の項参照)劇場版作品の常で輝と知り合う以前にミンメイがアイドルとしてデビューしているなど、TV本編とは微妙に設定が異なる。


さて、今作「超時空要塞マクロス〜愛・おぼえていますか〜」は80年代に数多く作られたテレビ本編の編集作品なのであるが、「機動戦士ガンダム」の劇場版3部作などと異なりTV本編の1話〜27話のみのストーリー構成となっている。(後半がカットされた理由は「超時空要塞マクロス」の項参照)そして多くの部分の設定を変更しているのでTV本編を見ていた視聴者は少し違和感を覚えるかも知れない。

そしてこの作品の見所は、何と言ってもそのメカ描写と「ミサイル芸術家」板野一郎氏の手掛ける戦闘演出であろう。TV版でもずば抜けた描き込み量で名を馳せた「マクロス」である。それが劇場版にて完全に新しく作画されて緻密になった戦闘シーンはもはや芸術と言っても過言ではあるまい。そんなメカが画面狭しと動き回り、バルキリーはクルクルと変形しまくり、敵味方共にミサイルや機銃を撃ちまくる。

特に「伝説巨神イデオン」時代から垣間見られたミサイルの描写は凄まじい。納豆のように糸を引いてしつこく敵に追いすがる様は大迫力であり、その戦闘シーンの持つ凄まじいまでの迫力には終始興奮させられっぱなしである!!特にラストシーン、ボドル旗艦との総力戦は凄まじいまでのカタルシスに溢れているので、メカファンは正に必見である!!板野氏はこの作品「愛・おぼえていますか」で一躍名を上げ、その演出方法を「板野サーカス」と絶賛されることになったのだ。

しかし劇場版の常であり、登場するメカニックの数が本編に比べて極端に少ないのは残念である。特に本編で「味方殺しのカムジン」が乗った名機「グラージ」、そしてマクロスにおける陸戦担当の「デストロイド」等はおおむねカット。本編でやたら数が出ていた「リガード」すら最初の戦闘のみの登場で、デストロイド・モンスターやアーマードバルキリーはホントにチラッとだけ登場するだけに終わっている。

ゼントラーディは「ヌージャデルガー」ばかりが目立っていて、「グラージ」や「リカード」等は巨大異星人の乗る完全な人型ではないメカニックとして人気を誇っていた割には扱いが悪い。せっかく気合の入ったメカ描写であったのに、メカが殆ど1種類では物足りなく感じてしまい少々残念である。しかしそれを踏まえても大迫力の映像なので是非確認して欲しい。ラストの総力戦、フリフリのアイドル衣装を着て「愛・おぼえていますか」を熱唱するリン・ミンメイもある意味凄まじいのだが…。

テレビ版の展開がなんともちんたらしており、せっかくクライマックスで強烈な盛り上がりを迎えたにも関わらず、その余韻を自らでぶち壊すようなダラダラとした引き伸ばしのせいか、「マクロス」という作品を低く見る傾向があるのは否めないと思う。今現在語られる「マクロス」のイメージが、リン・ミンメイとバルキリーに集約されてしまっているのも仕方ない部分がある。
制作したスタジオぬえは自社制作以外のアニメ作品を好き勝手に散々酷評していた事で有名だが、それをウザッたく思っていたアニメファンにはこの「マクロス」に対しろ、逆に

「いつも他人のアニメをクソミソに言っている制作会社が作ったとは思えない作品」

等とイヤミを言われていたぐらいなのだ。「マクロス」というアニメの名前を知っていても、内容までは知らない人が多いのも、実は裏を返せば「物語」として「マクロス」を楽しんでいた人は殆どいなかった、という事なのだろう。

その点、劇場版である「愛・おぼえていますか」は、テレビ本編でダラダラと27話を費やした物語を2時間程度に圧縮した作品であるのだから、その濃さは追って知るべし、と言った所か?
むしろ、テレビ本編をダラダラと見返すという時間的、肉体的労力を消費するのであれば、劇場版で一気に見てしまったほうが「マクロス」という作品に限っては正しい楽しみ方なのかもしれない。そういう意味では、この劇場公開は大成功と言えるだろう。
テレビ本編をダラダラと見たせいで飽きてしまうなら、コチラの劇場版を見た方が良い。特に劇場版らしく気合の入った最終決戦はトリハダものの大迫力だし、特に拘らなければ充分過ぎるエンターティメント作品として仕上っているのだから。

さて、本編の内容であるが、基本的にはTV版の設定を一部変更したものなので、あえてここで説明する必要も無いだろう。(そもそも上記した通り「マクロス」という作品はストーリーを追っていく作品とは私にはどうしても言い難いのだし)強いて言えば、「リン・ミンメイ」の女っぷりがTV版に比べ上がっていることであろうか。輝と知り合ってからアイドルになったTV版と異なり、「愛・おぼえていますか」ではミンメイは最初からスーパーアイドル(輝も大ファンだったという描写がある)になっている。その為日常生活でのミンメイのわがままぶりの描写が軽減され、閉鎖ブロックに閉じ込められたシーンや深夜のデートで見せる「小悪魔」ぶりが引き立っている。

逆にミンメイの恋のライバル「早瀬美沙」は輝と飛ばされた地球でのヒステリックな描写が目立ってしまっている。その為「美沙とミンメイどっちが好き?」という質問に「TV版なら美沙、劇場版ならミンメイ」と答える御仁もいるくらいである。最も、当の輝クンはやっぱり今回も「遠くの薔薇より近くのタンポポ」を選ぶのだが…。


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