硬派SF物語から「世紀末覇者伝説」へ

蒼き流星 SPTレイズナー

1985年 全38話 サンライズ制作 日本テレビ系放送
声の出演:井上和彦、江森浩子、梅津秀行、鹿股裕司、広瀬正志、他

簡単解説
1996年、人類の宇宙進出が本格的に始まって数年、遂に人類はその開発の手を火星にまで伸ばしていた。地球から国連宇宙局の火星体験学校生徒第一陣が到着したその日、異星人グラドスによる奇襲攻撃が開始される。グラドスと地球人の混血児である主人公「アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ」は人型機動兵器SPTレイズナーに乗り、地球が狙われていることを告げる。
「ボクの名はエイジ。地球は、狙われている!!」

蒼き流星SPT レイズナーOVA

1986年 サンライズ 全3本OVA
声の出演:井上和彦、江森浩子、梅津秀行、広瀬正志、塩沢兼人、他

簡単解説
「Act−1 エイジ1996」

テレビシリーズの第1部に当る、火星脱出を目指すエイジとコズミックカルチャースクールの生徒達の戦いをまとめたもの。
「Act−2 ル・カイン1999」
グラドス占領下を描いたテレビシリーズの第2部をル・カインをキーポイントとして再編集したもの。
「Act−3 刻印2000」
テレビシリーズの37話と最終38話の空白を埋める形で作られ、物語の真の結末を描く。


今でこそ本作「蒼き流星SPTレイズナー」という作品はテレビゲーム「スーパーロボット大戦」やら、非ガンダム作品のリアルロボットをフィーチャーしたプラモデルシリーズ「R3」、パームアクションやハイブリッドアクションフィギュアといった立体モノのおかげで比較的若い世代にも知名度があるが、リアルロボットブーム末期の作品という事もあり、それまではその他大勢と共にあんまり振り返られる事は無かった作品だと思う。非常に硬派な物語と高いドラマ(路線変更後はやや話が違ってくるが)は評価が高く、ゴステロ様の人気を差し引いても、ちゃんとファンに支持されていた作品なのだ。それは裏番組に当時流行していたおにゃん子クラブの「夕焼けニャンニャン」という強力な番組を抱えながら、平均10%前後の高い視聴率を記録していたのがその証拠だろう。

それもその筈、本作は「ダグラム」「ボトムズ」「ガリアン」とタカラスポンサーの枠で良作を輩出してきた高橋良輔氏が監督を務めた作品であり、スポンサーのバンダイから「『ガンダム』っぽいものを…」というオファーを受けて制作された、言わば「高橋版ガンダム」的な存在なのだ。そういえば本作の主役メカであるレイズナーも、カラーリングこそドラえもんみたいだがキャノピーの奥にある顔はかなりガンダム的な意匠になっている。

但し、本家「ガンダム」と比較してバンダイから発売されたプラモデルは総じて出来が…キットとしての当時の水準はクリアしていたのかも知れないが、作画よりでもセル画よりでもないどっちつかずなプロポーションや、レイズナーの一番の特徴たる頭部コックピットの処理、更には「重量感を出す為」とダイキャストで作られたレーザードライフルはその効果以前に重さに関節が持たないというポカもあったりと売り上げは芳しくなかった様で、直接の原因ではないのだが、打ち切りの要因の一つではあったと考えられる。もっとも、公式では「元々2クールだったのを4クールに延長したが、最終的には3クールまでの延長となった。よって打ち切りではない」的な見解があるらしいが、コレはヤ○ザの理論であろう。実際、唐突過ぎる終わらせ方にはファンの非難が集中し、キー局の日本テレビの親会社である読売新聞の投書欄にもこの打ち切りに対して非難する投書が掲載されたりもしたそうだ。当時からこんな事やってんだな、バンダイって。

さて本題。まず、この「レイズナー」で特筆すべきことは、時代設定が放映された時期からさして離れていなかった点であろう。上記したデーターを見てもらえば分かる通り、本作が放映されたのは1985年、そして本編でグラドス人が攻めてきたのは1996年とされている。そう、たった11年しか離れていないのである。

更に言ってしまえば、今現在既にその設定された時代を追い越してしまっているのである。そしてその時代背景も現在とは大きく違ってしまっている。なんと1996年には火星に国連と米ソの基地が存在しており、国連宇宙局から一般人(それなりに訓練は受けているのだろうが)である子供達が「火星体験学校」と称して派遣されているのである。放映当初は「10年後」ということでそれなりに説得力があったのだが、まさかソ連が崩壊してしまうとは夢にも思わなかっただろう。

しかし「放映された年の10年後」という物語設定は面白い形で作品に現われている。それは物語冒頭のグラドス奇襲の場面である。不意に攻撃を受けたアメリカはその攻撃がソ連のからの攻撃と、ソ連はアメリカからの攻撃とお互いに勘違いをして、挙句の果てにお互い報復ミサイルを撃ち合うのである。「レイズナー」が放映された1985年当時、米ソはいわゆる「冷戦」状態にあり、お互いの国に対しての牽制の意味を含んだ軍備拡張が盛んだった。この「未知の敵からの攻撃を勘違いする」という冒頭の展開は、冷戦というものの危険性を訴えたものとも考えられるのではないだろうか。そういった意味で考えれば、結果的に「グラドス人は攻めてこなかったね。」等とマニアの間でツッコまれてしまった設定も無駄なものではなかったと思える。

更に、オープニングも当時としては非常に画期的なものであった。歌そのものは特筆すべきことは少なく、映像も曲にあわせてテンポ良くつながれたカットで構成されているだけなのだが、なんと歌の間奏部にその回のハイライトシーンが挿入されているのだ!!これが非常に効果的に挿入されている為、本編への期待が否が応でも高まってしまうのだ。しかもビデオ録画した際などは、オープニングを少し見れば本編の内容を思い出せるという非常に便利なものなのだ。主演している声優にとりあえず主題歌を歌わせる昨今のアニメに、是非見習って欲しいアイデアである。但し、この演出は主題歌「メロスのように〜LONELY WAY〜」を歌っていたAIRMAIL from NAGASAKIには好意的には受け取ってもらえなかったらしいが。

さて、こういったワキの部分ばかり注目が行ってしまうが、この「レイズナー」はメカニック、キャラクター共に非常に斬新な設定を設けている。まずメカニック設定であるが、この主役メカ「レイズナー」はなんだか「ドラえもん」を思わせるカラーリングなのだが、グラドスの他のSPT(Super Powered Tracer)とは一味違う。SPTは搭載されているサポートコンピューターのバックアップにより複雑な行動をも可能にしているのだが、レイズナーには「レイ」という高性能コンピョーターが搭載されており、このエイジとレイのやりとりが非常に丁寧に行われているのだ。(操縦者を殺したくないエイジは、レイにコクピットを避け手足を狙撃させたりする。)この辺のやりとりは87年から日本でもテレビシリーズ放映が始まった「ナイトライダー」(アメリカでの公開は82年)や、後の「サイバーフォーミュラー」等を思わせる演出であり、デビット達ズブの素人がエイジのレクチャー程度でSPTを操縦出来てしまう事に対する良い理由付けとなっている。

そして、後半登場するMF(Multi Form:バックパックを搭載しない簡易SPT)等の設定もユニークである。また、戦闘アクションもクルクル動き回る独特の演出がなされている。「マクロス」と「ボトムズ」の戦闘アクションを足して2で割ったようなものと言えば想像し易いかも知れない。そのクルクルという動きが劇中にうまく融合して、レイズナーらしさとなっているのである。但し、レイズナーを始めとするSPT、死鬼隊機やガンステイド等のMF、スカルガンナー等の無人機を指すTS(Terror Striker)といった区分が効果的に使われていたかというと、実際は一緒くたにされてしまっていたのは残念ではあるが。

更に「V−MAX」の設定である。これはレイの後ろに隠されたシステム「フォロン」が搭乗者の危機に反応して、搭乗者の意思に関係無く周囲の戦略的脅威を排除するものである。これは「ピンチになるとパワーアップ」というスーパーロボット的なテイストと、「そのせいで姉の恋人のゲイル先輩を殺してしまう」というリアルロボット的悲劇を融合させた見事な設定と言えよう。更に中盤で「フォロン」がエイジの存在をグラドス創世の秘密を象徴する者と認め、「V−MAX」を託すなど物語そのものにも積極的に組み込まれているのだ。こういった豊富なギミックを持つ細かなメカ設定や、登場するメカニックに物語上での明確な立場を与える手法は「装甲騎兵ボトムズ」で一躍名を上げた高橋良輔監督の真骨頂と言えるだろう。

そしてキャラクター、まず主人公である「エイジ」の設定である。「敵側と地球人との混血」という設定は「超電磁マシーンボルテスV」等に見られ、それほど珍しいものではない。「搭乗者を殺したくないから手足を狙う」というのも「重戦機エルガイム」のダバや、「超時空要塞マクロス」のマイクローン化したミリア等、やはり珍しいものではない。では何がユニークなのか?それは、エイジが「リアルロボット的テイストを盛り込んでいる作品では珍しい、自分から行動を起すタイプ」であるにも関わらず、「状況にはひたすらいじめられる」という点である。

「地球は、狙われている。」と警告に来たはいいが間に合わず、行きがかり上行動を共にすることになった火星の国連基地の生き残りにはさんざんいじめられる。特に目の前で親友を殺されたデビットはストレートに怒りをエイジにぶつけるし、彼以外も戦闘状態という危機感から気を休めることも出来ず、エイジに無言の圧力をかけるのだ。更にジュリアとの一件でゲイルに恨みを持つゴステロ様にはしつこく狙われ、上記した通り「フォロン」が「V−MAX」を発動して姉の恋人であるゲイル先輩を殺してしまう。挙句の果てに実の姉ジュリアまでが恋人ゲイルの仇を討つために攻撃を仕掛けて来るのだ!!(ジュリアは、レイズナーのパイロットがエイジだと知っている。)

自分が信じて行動した結果が、彼にとってはすべて裏目に出てしまうのだ。そしてようやく地球に着くもグラドスの作戦は既に始まっており、戦いを止めるよう訴えても宇宙人のスパイ扱いをされ捕らえられてしまう。更に物語上で3年間のブランクを設けた番組後半でも姉が新興宗教の教祖になるは、サイボーグになって復活を遂げた「ゴステロ様」にもしつこく狙われるは、グラドスと地球両星のキーマンとなる「刻印」なる謎の遺跡が出てくるはで散々ストーリーに翻弄される。ロボットアニメ史上でも、有数のいじめられっこ主人公と言えるのではないだろうか。

しかしユニークな設定を数多く設けた本作もスポンサーの都合により打ち切りの憂き目にあっており、3クール目突入時と同様、またしても唐突な終わらせ方になってしまっている。後半が1クールに短縮され、後半では描ききれなかった穴を埋める為に制作されたのが、物語の総集編と真の結末を描く「蒼き流星SPTレイズナー」のOVAシリーズである。これも「機動戦士ガンダム」の劇場版作品と同様ダイジェスト的な意味合いが強い為、これだけ見ても多少の理解力を必要とするもののなんとか概要は掴めるのではないだろうか?

「Act−1 エイジ1996」と「Act−2 ル・カイン1999」はテレビシリーズの再編集なので、特にここで語るべきことは殆ど無いと言って良いだろう。詳しくは「大惨事」の「蒼き流星SPTレイズナー」の方を参考にして欲しい。しかし「Act−1 エイジ1996」はエイジとゲイル先輩の2人の関係をメインに描いている為、物語の影の主役「ゴステロ様」が登場しない。コレは非常に残念だ。

しかしその穴埋めなのか、ゴステロ様は「Act−1 エイジ1996」の最後に描かれる「Act−2 ル・カイン1999」の予告にて「ヒャーッハッハッハッ…俺は人殺しといじめがだぁ〜い好きなんだぁ!!」と凄まじいセリフを吐き大活躍してくれる。そしてもちろん「Act−2 ル・カイン1999」では予告通り大暴れしてくれるので一先ずはご安心を。ちなみに「Act−2 ル・カイン1999」のラストに描かれる「Act−3 刻印2000」の予告ではアーサー君がばっちり(?)キメてくれるのでこちらも要チェックだ。

そしてやはり特筆すべきは「Act−3 刻印2000」である。この作中であまりにも話が飛んで理解に苦しんだテレビシリーズ37話「エイジVSル・カイン」と最終38話「歪む宇宙」の穴を埋め、真の結末を描いている。特に「強化型レイズナー」の開発秘話や、「グレスコの死」の謎が描かれているのでチェックせねばならない所だろう。

そしてラストシーン。仲間の元へ帰って来るエイジと、帰って来た彼を迎える仲間達、特にエイジに対し火星の頃から淡い片思いを抱いていたアンナは真っ先に彼に抱きつき涙する。そして彼女を受け入れ、優しく彼女の涙を指で拭うエイジ…そしてその映像が後期エンディングテーマ「LA ROSE ROUGE」のサビ♪抱きしめて〜に被っていくという見事な演出はハリウッド映画もかくやのクサさであるが、やっぱり感動的なシーンである。

この「レイズナー」を始め、80年代中盤は数多くのロボットアニメが途中打切りの憂き目に遭ってしまっている。本作の場合は視聴率や玩具戦略といった事以前に、不慮の事故によりスポンサーがCMの放送を自粛した事が直接的な打ち切りの原因らしいが、こと視聴率、玩具売上不振というスポンサーサイドの都合によってちゃんとした結末を迎えられなかった作品は多く、「ガンダム」のようにブランド名を持っている作品を除外すれば、まともに終わった作品の方が少ないかも知れない。ただそんな打ち切られてしまった作品の中にもキラリと光るモノを持っていた作品はあった…その中の1つがこの「レイズナー」だと思う。

質問を受けたV−MAXについて
V−MAXとは、機体にダメージを受ける等搭乗者の生命に危険が及んだ時にサポートコンピューター「レイ」の奥に潜む「フォロン」が起動し発動する危機回避システムのことで、機体を磁気波と不活性ガスで包み、戦闘空域外に強制離脱させる。その際、搭乗者の意思とは関係無く周囲の戦略的脅威を排除しようとする。発動時に放出されるガスにより機体が蒼く輝くので「蒼き流星」と呼ばれる所以となる。尚、V−MAX発動後は各部を開放して機体を冷却しなくてはならない。
V−MAXは「レイズナー」の他ル・カインの「ザカール」、更にマンジェロの専用MF「ガッシュラン」にもDrニゾン考案の新式V−MAXが装備された。尚ザカールの「V−MAXスーパーチャージ(別名レッドパワー)」とはV−MAX発動中に燃料強化剤を投与することにより、V−MAX115%出力「レッドゾーン」に突入するものである。
ブースト機能を搭載したロボットは数有れど、その機能に対し物語上での存在意義を明確に与えられたのはこのレイズナーの「V−MAX」が最初ではないだろうか?


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