見守る目

機神兵団

1993年 全7話OVA 銀河帝国、AIC制作
声の出演:藤田淑子、鶴ひろみ、古川登志夫、広中雅志、川村万梨阿、他

簡単解説
第二次世界大戦下の中国大陸、軍の組織に両親を殺された少年・大志は、列車での闘争中エイリアンの襲撃を受ける。そこで大志を助けたのは、巨大ロボット・機神兵団であった。機神を動かす謎の機械「モジュール」を巡る、関東軍、ナチス、エイリアンの攻防戦が今、始まる。


さて、今回もメジャー作品とは云い難い「機神兵団」を紹介する。と、いっても、本作はSF作家として知られる山田正紀氏の人気小説を原作とし、OVA用にアレンジした作品であり、ロボットアニメファンならいざ知らず、SFファンの間ではそれなりに知られた存在なのかもしれない。ざ〜っとこの作品について書いているサイトを探したり(と、いってもザルな探し方なのだが)した所、語られている事と言うのが非常に少ない。視聴したが語るほど面白いとは思わなかったのか、はたまた視聴した人自体が少ないか、どっちなのかは分からないのだが、そもそも「機神兵団」で検索してもむしろ原作小説の感想の方が多くヒットしていた事を考えると、やはりコチラのOVAに関しては然程知られてもいないのかも知れない。そういう意味で、このOVA版のみを視聴し、かつ原作小説等について調べもしていない程度の私には、この作品に対し感想を書くのは難しい作品、といえる。

本作は本格SF小説の映像化、という形で世に出たが、その実登場するメカデザインや時代考証については否定的な意見も多かった気がする。私自身はSF的な知識、センスなど皆無なのだが、この作品に関して言えば、SFなのか?と聞かれれば、違うんじゃない?と思ってしまう。世間一般のSFっぽさというのを私はこの作品からはあまり感じなかったのだ。まぁ、SFに対しての造詣が全く無いといっても過言ではない私が、そんな理不尽な事を決め付けられるのか?といえばそれはビミョーな訳だが、SFを支持している層からも、決してこのOVAの評判は良い訳ではないらしい。特に、あさりよしとお氏等は当時、「アニメージュ」誌上で散々このOVAに対して酷評しただけで収まらず、自らの作品「宇宙家族カールビンソン」に割とあからさまな機神兵団のパロディ「奇人兵団」なるモノを登場させたりしているそうだ。アマならいざ知らず、プロがそこまでやるか?(苦笑)

もっとも、本作の私自身の感想は?と言われると…困る。非常に困る。
設定は、人気小説のモノをそのまま持って来ている訳だからそりゃ魅力的だ。機神の力をそのまま武力に利用しようと画策し暗躍する新開と関東軍、祖国復興を夢見て日本人として屈辱に耐える藤嶋、エイリアンと結び、独自に巨大人型兵器・装甲騎士を開発…そしてそれに立ち向かう機神兵団、と、設定だけならSFなのかも知れないが、その見せ方、展開に関しては集団活劇というか、そんな印象がある。ただ、それでいてこのOVA版「機神兵団」は主人公が鷹村大志という少年にほぼ固定されている。アクションシーン等では白蘭花等が大志を食う活躍をしてのけるものの、それでも主人公…というより、物語を紡ぎ出して行く存在は大志なのだ。この作品の最終話タイトルが

「少年よ、大志を抱け!」

なのもコレを裏付けている気がしないだろうか。
最終的には大志自身も機神の操縦者となるのだが、別に圧倒的な強さを見せたり、大活躍、とはならなかった。ココに本作の弱さがある気がするのだ。思えば、「未来少年コナン」のコナンにはラナが、「機甲界ガリアン」のジョジョにはチュルルがいた。それは時として守るべき対象であり、時として共に戦う仲間である。本作にはそのポジションが不在なのだ。一応、機神兵団と大志が関わる以前に深く付き合っていたジャックを始めとする孤児達の存在があり、それが中盤意外な形で再会、離別、邂逅という常套パターンを踏んだりもしているが、それだけではやっぱり弱い。

大志とほぼ同じ視線の高さで物事を見て、語り、笑い、泣く…そういう存在がやっぱり必要だったのではないか。私自身は原作小説なり、「少年キャプテン」で連載されていたマンガを読んだ事はないのだが、展開自体が原作小説しは全然違うオリジナルストーリーなのだというし、大志自身もOVAオリジナルキャラクターなのだという。つまり、原作と外れるから…という形でオリジナルキャラクターなりを入れられない、という理由ではないのだろうが、それならそれで、せっかくオリジナルキャラクーをメインに据えるなら、思い切って大志と同世代の兵団員を設定してしまうか、そもなくばもっとジャック達の重要度を上げた方が相乗効果で大志の見せ方も決まってくるし、大志というキャラクターの立ち位置も確立出来たのではないだろうか。大志の行動を時に優しく、時に厳しく見守ってくれる大作、白蘭花、公彦といった存在が魅力的である一方、何だか主役である筈の大志が宙に浮いてしまった印象を受けるのも、上から見守る存在はいても、共感し共に行動してくれる存在が無かった…この事が理由の一つとして挙げられる気がする。そういう意味で、大作達の助けで誤解が晴れた後のジャックと大志の信頼、仲間意識というのは物語がクライマックスに突入していたので、描かれるシーン自体が少なかったで効果的とは言い難い気もするが、大志の主人公としての魅力を高める意味では良かったと思うのだが。

その大志の立ち位置が不安定だったせいか、物語自体も本来集束していかねばならない筈の後半に程、歪が生じてきてしまった印象がある。物語冒頭では機神兵団、そして大志にとって敵ともいえる存在であったエバが心変わりした理由にキチッとした説明が物語上で成されている訳ではないし、もっと言えばナチス幹部のハンスが藤嶋に対し言い寄った理由、新開がエイリアンに取り込まれる程力を欲した理由…そう、理由の説明が無いまま、物語だけがバタバタと音を立てて走り抜けてしまった…そんな印象があるのだ。

勿論魅力的な要素もある。モジュール奪回に向けての機神兵団の作戦はひしひしと伝わる緊張感があったし、雷神の初登場時など、14mとロボットアニメにおける身長設定では中の下…ダグラムよりは大きくてガンダムより小さい程度なのに、ビル(そんな高い建物があった訳でもないが)をもなぎ倒しそうな大きさと、重さ…そしてそれから印象づけられる強さを描ききったシーン…そして機関車や飛空挺から各機神が発進する様…モジュールが起動し、モーターが回り、真空管が割れ、ウィンチで架台が巻き上げられる…という一連のシーンも、起動コードを入力したらすぐに飛び出せるような近未来タイプのロボットにはない、アナログ的な魅力を付加するのに一役買っている。そういえば、雷神を操縦している白蘭花がコッチのハンドルを回し、コッチのレバーを引き、そのスイッチを入れ…と的確ながら忙しなく手足を動かしていたのも、コンピューター制御でレバー一本でバンッ!!というロボットにはないアナログな魅力だ。時代も違えば別に水蒸気をブシュー!!とやったりもしないが、演出的に言えばスチームパンク的なアナログな面白さがある。昨今のロボットアニメを見慣れた人にとってはかえって新鮮にも見えるんじゃないだろうか。

但し、メカ描写に関しては…両手を挙げてバンザイする訳にも行かない。この作品には陸戦型の「雷神」、水陸両用の「龍神」、空中戦用の「風神」という3体(最後に一体追加されるが)があり、対するナチには装甲騎士が量産されつつある。最終局面ではこれ等の機神が大暴れ…するにはするのだが、その暴れっぷりは1話での重々しさ、巨大感がウソの様に、のっぺりとしていてそれでいて味が無いというか…。待望の新機神も、装甲騎士を相手に大活躍!!…とは行かず、むしろ終止劣勢。結局新開の装甲騎士を押えたのは今まで他の二体に比べ全然活躍していなかった龍神の魚雷…う〜むぅ…何と言うか、物語のまとまりの無さを象徴するかのような結末だった気がしないでもない。

更に言えば、この手の…人気ノベルのアニメ化、人気漫画のOVA化といったパターンにありがちな傾向で、説明を放り投げてしまっている部分も少なくない。毎度この部分に私は噛み付いている気もするが、2クール以上のテレビシリーズならいざ知らず、話数が圧倒的に少ないOVAではここで勝負が決まる。そもそも原作そのもののアニメ化ではない、というこの作品が、「私達は原作ファンしか相手にしません」と言い切ってしまうのは違う訳だ。それにしたって原作ファンの心情を放り投げて「とりあえず映像化はやってあげましたよ」というのでは返って不評をかうハメになるだろう。

思うに…マジメに作り過ぎちゃったんじゃないか?というのが結局の所私の感想だったりする。良い所は目に付くんだけど、総評としては結局???で終わってしまう…そんな作品だ。作画も安定している訳ではないし、キャラクターデザインに関しても若干古臭さを感じてしまう気がする。もっともキャラクターデザインに関しては「それが味」とフォローする事も出来る訳だが。

そんな中で唯一コレだけは、と言えるのは、上でも書いた大志を見守る大作、白蘭花、公彦の3人が大志に対して見せる、優しい眼差しであろうか。ちゃんと褒め、ちゃんと叱る理想的な兄貴(姉貴)とでも言うべきか。特に、独断専行し兵団を危険に招いた大志に平手打ちをし、彼が非を認めるや途端に微笑む公彦の姿などは、良い意味で印象的だった。

しっかし…褒めてるんだか駄目出ししてるんだかワカラン記事になってしまった…いや、ビミョー故にこの手の記事を書いてもビミョーに陥ってしまうと言うか、何と言うか…。(苦笑)


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