イデオン?いえいえ本格派青春群像劇です。

無限のリヴァイアス

1999年 サンライズ全26話 テレビ東京系放送
声の出演 白鳥哲、保志総一朗、関智一、桑島法子、丹下桜、他

簡単解説
西暦2137年、「ゲドゥルト・フェノメーン」と呼ばれる太陽の異常気象が発生。噴出したコロナのフレアが太陽系の半分を「ゲドゥルトの海」に沈めてしまった。
全人口の1/4が失われたこの大惨事から80余年、地球と火星の間にある航宙士養成所「リーベ・デルタ」が何者かによって襲撃される。生命の危機にさらされた「相葉昂治」達487名の学生を救ったのは、養成所に秘匿されていた謎の巨大航宙可潜艦「リヴァイアス」だった。


本作「無限のリヴァイアス」は、今作がサンライズ作品初参加となる黒田洋介氏と谷口悟郎監督が「20世紀中に作っておきたかった」と語っていた物語で、最近では珍しい宇宙船を舞台にした本格派青春群像劇である。

しかし私の書いた上の解説を見て、何となく聞いたことのある設定だと感じる人もいるのではないだろうか?そう、1982年に富野巨匠が世に送り出した問題作、「伝説巨神イデオン」のストーリー展開に酷似しているのである。「謎の敵に攻撃され、そこにあった謎の宇宙船で逃げ回る」正に「イデオン」の最初のシーンである。しかしこちらは「イデオン」と異なり、決して「息苦しい」作品とはならなかった。それはこの作品があくまで「青春群像劇」というジャンルにこだわった為ではないだろうか?

この作品は一応現在から遠くない未来を舞台にしてはいるが、作品内に描かれるキャラクターは現代の若者そのものである。主人公「相葉昂治」はもめ事を好まず、周囲とうまくやっていける「いい子」、しかし時折貯め続けたストレスを爆発させ、自分でそれを制御することができない。彼の弟「相葉祐希」はそんな兄に反発し、衝突を繰り返すが何故か兄の傍から離れない。そんな2人の幼馴染「蓬仙あおい」は表面上は彼等2人の保護者を演じているものの、徐々に自分の道を歩き出す2人に寂しさや不安を抱えている。そして、彼等と行動を共にする優等生「尾瀬イクミ」も、皆に好かれる優等生的一面の影に、暗く潜む心の傷を抱えている…。

このメインキャラクターの4人だけでも、現在10〜20代前半の若者は「何となく自分に似てるかも」といった感情を受ける筈だ。そういった「等身大の若者達」が、宇宙船での漂流という事件の中で次第に自分の感情、本性を剥き出しにしていく…。これは現代社会に生きる若者への強烈なメッセージであると言える。本来自分達を保護、管理してくれる筈の大人が存在しない船内では、すべてを自分達でこなさねばならない。そういった協力せざるを得ない環境においても、やはりそれぞれの利害や感情が絡み、「暴力」「略奪」「私刑」等が蔓延してしまう。これは、現在を生きる若者の立場そのものなのである。

そういった物語の展開を受けてのクライマックス、「俺が、俺でいるために…。アイツに伝えたいことがあるんだ…。」このシーンの描写は思わず胸が熱くなる程のメッセージが込められているのである!!

そして、「リヴァイアス」最大の特徴である「ゲドゥルト・フェノメーン」と呼ばれる独特のSF設定である。ゲドゥルト・フェノメーンとは本作では西暦2137年に起きた太陽のコロナフレアがほぼ地球の公転軌道面に沿って噴出し、太陽系全体を覆ってしまった現象の事を指す。この現象によって地球の南半球は壊滅し、約17億もの人々が犠牲になった。

このゲドゥルト・フェノメーンによって宇宙に現われたコロナフレアの海「ゲドゥルトの海」は火星の半分と木星、及び天王星の1/3を飲み込んでいる。このゲドゥルト・フェノメーンの再発に備え、その危機から人類を救う為に開始されたのが物語の裏の部分で語られている「ヴァイアプロジェクト」である。

このヴァイアプロジェクトとはゲドゥルトの海に生息する重力発生能力を持つ「ヴァイア」という群体珪素生物の能力に着目して進められた計画で、現在「黒のリヴァイアス」を含む6隻の「ヴァイア艦」が建造されているのだ。このヴァイア艦は宇宙線とプラズマが飛び交い、更に異常重力が発生している為通常の宇宙船では航行不可能なゲドゥルトの海でも航行が可能なのだ。それを踏まえての本作のオープニングアニメで、宇宙空間を背景にリヴァイアスが波飛沫を上げてゲドゥルトの海から浮上する様はたまらなくカッコ良い。この「ヴァイアプロジェクト」に関わる大人達が、リヴァイアスの少年少女の行動に大きく関わって来るのだ。

しかしこの作品、そういったユニークなSF設定やお約束キャラクター(「裸男」ラダンや、「マクロス7」の「花束の少女」的な着ぐるみ少女等)に目が行きがちだが、テーマ性、メッセージ性もふんだんに盛り込まれている非常に丁寧に作られた作品であり、決して「イデオン」の焼き直しではない。ただ惜しむらくは放送当時アニメ界で蔓延した「エヴァンゲリオン的演出」が残念でならない。しつこいまでの「ネーヤの独り言」シーンなどはその最たる例といえるだろう。そういった演出に走らなくても「青春群像劇」として充分完成された秀作といえると思うのだが…。

また、本作のオープニングテーマ「dis」(歌、有坂美香)は今風の曲調ながら、物語のイメージにピッタリマッチした良い曲なので、一度聞いて見て欲しい。更に、本作のシリーズ原案を務めた黒田洋介氏と、キャラクターデザインを手掛けた平井久司氏のコンビは新たに「スクライド」という作品を手掛けている。こちらも本作「リヴァイアス」とは一味違う魅力を持っているのでチェックして見たら如何だろう。


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