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スーパーロボット大戦IMPACTコミック 衝撃騎士団

2002年 コミックス全1巻 環望 著

簡単解説
テレビゲーム「スーパーロボット大戦IMPACT」の主人公、キョウスケ・ナンブとエクセレン・ブロウニングを中心としたコミカライズ。シナリオのキモであったキョウスケ&エクセレンとアルフィミィのエピソード他、ゲームとは外れた形での外伝的エピソードが掲載。


さて、今回は今は亡き「スーパーロボットマガジン」に連載されていた環望氏の「衝撃騎士団」である。ちなみに読み方はそのまま「しょうげききしだん」だはなく「インパクトナイツ」なんだそうで。スーパーロボットマガジンからの紹介は「ゲッターロボアーク」「龍虎王伝奇」に続いて3本目となるが、今後も一応「ビクトリーファイブ」等も書く予定だ。スパロボマガジン自体には当時興味が薄く、出張先であまりにもヒマだったので一冊買ったきりだったのだが、後になって色々とこの雑誌から出たマンガ等を紹介しているのを考えると、当時ちゃんと立ち読みくらいはしとけば良かった、と密かに後悔していたりもする。

ちなみにこの本の著者である環望氏は同シリーズの「α外伝」のラスボスメカ・アウルゲルミルを担当している。やはりスパロボマガジンにて「龍虎王伝奇」を連載していた富士原昌幸氏も同ゲームのスレードゲルミルをデザインしていたりと、やはりタイアップ的な雑誌だっただけあり縁が深い様だ。ちなみに環望氏は「第二次α」をベースとしたマンガ「ロストチルドレン」を描いており、コチラは未完で終わってしまっている。「ロストチルドレン」は「α外伝」に登場したマシンナリーチルドレンが主人公で、その主人公の名前は「OG2」にて名前がチョロッと出て来たりする。

ともあれ、この「衝撃騎士団」自体は簡単解説で書いている通り、ベースの「IMPACT」をプレイした人間にとってはお約束のネタが続くので、ファンには嬉しい仕様…と言えなくも無いのだが、正直ゲームでやったネタはゲームをプレイすれば良いだけの話であるからして、別段特筆するような事も無い。もっとゲームでやれなかった、スパロボアンソロジーなんかで描かれるようなネタを重視したほうが個人的には面白かったような気がする。いや、この「衝撃騎士団」にも2つほどマンガオリジナルのエピソードが封入されており、何気にコレが面白いのだ。

それが、今回メインで紹介する第2話「僕の故郷は戦場だった」と、第3話「無名兵士ユージン・コズラウスキーの戦争」の2編だ。
「僕の故郷は戦場だった」は、地上組と宇宙組が合流する前のエピソードとして描かれており、地上から獣戦機隊と甲児達(ゲームではマジンガーかグレートを選択になっている)がHLVでラーカイラムに合流した直後の話だ。木星船団のジュピトリスに乗る父に会う為に、地上から甲児達の乗るHLVに隠れて密航してきた幼い兄弟を父親の元へ届ける、というものなのだが、ココで忍の口から語られる幼い兄弟の言葉…(以下ネタバレ注意)

まだ…お母さんが生きていた頃…「お兄ちゃんの小さい頃はとても平和だったんだよ」って言ったら、「平和」って何?って妹が聞くんだ。
戦争の無い世界の事だって教えたら「そんなの嘘だ」って笑うんだ。
おかしいだろ、一年戦争…グリプス戦役…そして今…妹が生まれてから戦いが途切れた事がないから…妹は平和ってものを知らないんだ…

という、背筋がゾクッとするような重みあるセリフが出てくる。確かに「スーパーロボット大戦」というゲームは厄介な事に多種多様なロボットアニメを一つの世界に封じ込めているゲームだからして、争いの耐えない世界が繰り広げられている。それを「燃える」だの何だのと楽しんでプレイしてしまう我々平和ボケの日本人は案外忘れてしまいがちだが、実の所、ゲームではなく現世でもこんなセリフを言ってもおかしくない環境で生活している人々が間違いなくいるのだ。たかがスパロボ(失礼)のマンガごとき(失礼)ではあるが、この言葉の持つ意味は大きいだろう。いや、スパロボというゲームとはいえ戦争を楽しんでしまう題材でこのセリフを言わせたからこそ、逆に効果的に聞こえるのかもしれない。

このセリフ、ポイントはもう一つある。甲児君にしろ、大介さんにしろ、ダンガイオーチームにしろ…そしてシャアにしろ、親や家族を奪われ、故郷を捨てて戦っている。ザンボットチームにしろ、スパロボではあまり描かれないが、原作では神ファミリーは女子供以外全滅という終わり方をしている。つまり、彼等がこの幼い兄弟に感情移入、自己投影してしまうのは理解出来る。しかし、原作は勿論、スパロボでも家族云々に関するエピソードが描かれない「ダンクーガ」の忍に、この兄弟の言葉を代弁させているのが上手い部分だ。忍というキャラクターが、単に描かれなかっただけだったとしても家族を奪われる苦しみを解さない…言わば我々読者に近い位置にいる存在として、その彼にこのセリフの重さを語らせるからこそ、我々にもズシッと重く圧し掛かるのだろう。コレ…非常に上手いキャラクターの使い方と言えるんじゃないだろうか。

まぁ、その後の展開は確かに燃える展開ではあるが、些かベタ過ぎるキライもあるので割愛するが。

そしてもう一つのエピソード「無名兵士ユージン・コズラウスキーの戦争」であるが、コチラは環氏自ら後書きで書いている通り、巨大な力を持ちながら欲得もなく、名誉さえ省みずただ人々の為に戦い続ける少年への憧れ…ストレートな表現をすれば、我々がロボットアニメを愛する理由であり、またそれは「スパロボ」をやる理由でもある訳だが、それをガンドール隊を影ながら支援する無名兵士ユージンに投影したエピソードだ。彼は我々と同様スーパーロボットに乗って戦う流竜馬、ひびき洸、剣鉄也、葵豹馬に憧れを抱いている若い兵士だ。そんな彼が、ガンドール隊のピンチを救う為、たった1機の旧式ジム(カスタム)で百鬼帝国の軍団を迎え撃つ、というこれまた燃える展開になっている。

百鬼帝国の尖兵たるメカザウルス(原作とは違い、ゲームでは恐竜帝国のメカザウルスを百鬼帝国が戦力として使っていた)を決死のトラップで食い止めるも、百鬼メカに追い詰められ、ジムは大破…そんなピンチに颯爽と現れ、百鬼メカを撃破し去っていくガンドール隊のスーパーロボット達…夕日を背景に去っていくスーパーロボット軍団から、彼らの危機を救う為奮闘してくれた勇気ある仲間に対し発光信号が…くうぅぅぅぅぅっ!!良い!!ベタっちゃあベタだが、やっぱりこういうのって良いのだ!!(力説)

話は若干ズレてしまうが、スパロボの「第4次」とかの時はオリジナル主人公に明確な設定が無く、顔グラフィック、名前、生年月日、性格もデフォルトの組み合わせもあるが、ゲーム上でもロンド・ベル隊に配備された新型メカを駆る新兵、という程度で自由度があり、それこそ自分の名前と生年月日を入れてモロに自己投影させる事も出来た訳だ。それ即ち憧れのあのヒーローに名前を呼んでもらえる、という事でもあり、個人的には気恥ずかしくてあんまりやれないのだが、面白い要素だったと思う。しかし、「オリジナルジェネレーション」として主人公のキャラクターが明確化され、主人公キャラクターとはいえそういった喜びは見出せなくなってしまった様に思える。もっとも名前が固定されていないと、ヒロイン等との戦闘時の連携なんかで名前が呼べない、という欠点があるのは分かるのだが、この「無名兵士ユージン・コズラウスキーの戦争」の抱いた憧れ、最後憧れのヒーローに仲間と認めて貰えた喜びというものが理解出来てしまう私には、「オリジナルジェネレーション」対応のオリジナル主人公も良いけど、こういった部分を満たせる要素も残して欲しかったなぁ…と切に思う。

でも、環氏も後書きで書いているがユージンはまだ良いよな、ジム乗ってるし。
でも私なら百鬼メカに追い詰められたらあっさり命乞いしちゃいそうだけど。(苦笑)

後、ラストシーンでキョウスケとエクセレンが子供が出来て女の子だったら…という話をしているが、彼等の思いは分かるものの、それが将来子供にとって重荷になりゃしないか、という気はした。感動のシーンに水を差していると言われればそれまでなんだが。



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