「ダンガイオー」の兄弟分

大魔獣激闘 鋼の鬼

1987年 OVA AIC・徳間書店制作
声の出演:古川登志夫、井上和彦、荘真由美、玉川紗己子、阪脩、他

簡単解説
親友であるハルカの「助けて欲しい」という手紙が気になり、ある事故により離れていた古巣の軍事研究所の島に戻って来たタクヤ。しかし、異次元との通路を開く研究に没頭するハルカは亜空間の破壊の意思に取り込まれ、巨大ロボットを具現化、研究所を破壊し始める。それを止める為にタクヤがとった行動は…!?


さて、今回は「大魔獣激闘 鋼の鬼」である。と、いってもウチのサイトに来る人の中でも正直この作品はあまり知られていないかも知れない。今現在、DVD等の映像ソフトは存在するが、お世辞にもメジャーとは言えない作品ではあるが、実はこの作品、ある意味当時のOVAの中でもそこそこ人気がある「破邪大星ダンガイオー」の兄弟分とも言える作品なのだ。この作品、元々はこの作品のメインスタッフである平野俊弘氏、会川昇氏、大畑晃一氏が企画していた「大魔神我」…なんでも「マジンガーZ」のリメイク的な企画だったらしいが、この情報が漏洩し、まだ根回しもロクに終わっていない状態で一部のアニメ誌に掲載され、それが元で著作権等の問題が生じ、ポシャって、その代替的な意味合いで制作されたのが「ダンガイオー」と本作らしい。この「大魔神我」の企画に参加していた面々は両方の作品にメインで参加し、「ダンガイオー」にはロボットアニメとしての魅力、「鋼の鬼」にはドラマ性を受け継がせたんだとか。あ、「らしい」「だとか」を連発している事から察しているかもしれないが、私自身、この作品の存在を知ったのは最近だったりする。

確かに、「ダンガイオー」の方はドラマ部分に関しては放り投げっぷりも甚だしい形となっており、お世辞にも面白い脚本ではなかったものの、ネタとしては王道とでも言えるネタを踏まえつつ、ロボットアクション部分に関しては素直に「カッコよさ」を前提に制作されており、結果としてもそれなりに評価をされているのだが、コチラの「鋼の鬼」に関しては…尺の問題も勿論あるのだろうが、「大魔神我」から受け継がせたとされるドラマ性に関して…正直説明不足で素直にのめりこめない印象がある。はっきり言ってしまうが、ドラマが面白くないのだ。

プロットとしては、異次元と現世を繋ぐ通路を作り出してしまったハルカがその異次元の”破壊の意思”に取り込まれ、実験に用いた次元転移砲に取り憑いた”怒鬼”に取り込まれてしまい、それをタクヤが研究所を離れるキッカケとなった実験により異次元より召喚された謎の物質…異次元ロボット”鋼”に乗り込む、というモノ…監督を務めた平野氏は本作を制作するにあたって「アニメで怪獣映画を作りたい」と語っているのだが、確かにエッセンス的な意味で言えば、「鋼の鬼」という作品は怪獣映画的なノリとなっている。

それ故か、この作品…約60分の作品だがその大半がアクション性の薄いドラマパート(謎解きパート?)になっており、鋼と怒鬼の決戦はホントに最後の最後のみになっている。そしてその最後のバトルにしても…怪獣映画的なものでも何でもなく、フツーのロボットアニメ…それも出来の悪い部類のモノに過ぎなくなってしまっている。怒鬼の方は背中に異次元への通路である暗黒球を背負っている特異なデザインは確かに怪獣的ではあるものの、ひたすら突っ立ったまま暗黒球からの電撃攻撃をするだけ…ゴジラの様にノッシノッシと歩き回り、熱線を吐いたりビルに組み付いたりしろ、とは言わないが、このゴッドマーズより動かないアクションでは…正直萎えてしまう。そしてタクヤの乗り込む鋼の方も、何もしていないうちから勝手に苦戦している様になってしまっている有様…ダメダメだ。コレならスーパーロボット軍団とドラゴノサウルスとの対決を描いた「決戦!大海獣」の方が、よっぽど怪獣映画的だろう。

ロボットアニメとは一味違うモノをやりたい、という意味で「怪獣映画」を標榜とするなれば、もうちっと工夫をして欲しい。例えば怒鬼の暴走を食い止めるのはタクヤの乗る鋼ではなく、タクヤやリーズ達が協力して展開する作戦であったり、鋼を起動させつつもタクヤ達が操れる訳ではなく、怒鬼と鋼を対決させ時間を稼ぎ、再び衛星ビームを使って次元を開き、2体を異次元に返す、なんて形にした方が、こんな中途半端なロボットアニメにはならずに済んだのではないだろうか。監督の平野氏は

「アニメと実写を比べてしまえば、アニメの方が質感や量感では劣っています。けれども、アニメが実写と同じ様な画面を作る必要はまるでないのだから、違った形で迫力あるもの見せる事は必ず出来るはずだ。」

等と語っているが…正直、その違った形というモノが今までのロボットアニメに毛が生えた…いや、著しく円形脱毛症があるシロモノだというのなら、正直ガッカリだ。そういう意味で言えば、美少女モノからの脱却を目指してか、本作はキャラクターデザインを平野氏ではなく恩田尚之氏が手掛けており、美少女のエロで売る、という作戦にも出なかった本作だからして、本編の面白さを構築出来なければ、アニメ史の中に埋没してしまうのは致し方なかろう。やろうとしていること自体は面白い事なのかも知れないが、結局出来上がったシロモノがコレでは…いやはや。

平野氏お得意の美少女&単純明快ロボットアニメである「ダンガイオー」と、慣れない事をやり、敢えて難しくしてしまった「鋼の鬼」…後世…つまりは今の2作品の評価はなんとも、皮肉な結果になってしまっている気がする。

そういえば、ハルカとリーズの会話にナゼか懐かしさを覚えたんだが…あ、「美味しんぼ」の山岡&栗田さんなんだなぁ…。(笑)


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