リアルの真意

機動戦士ガンダム

1979年 サンライズ 全43話 名古屋テレビ系放送
声の出演:古谷徹、鈴置洋孝、池田秀一、井上遥、鵜飼るみ子、他

簡単解説
宇宙世紀0079、地球から最も遠いスペースコロニー・サイド3は「ジオン公国」を名乗り地球連邦に対し独立戦争を挑んだ。戦いは苛烈を極め、開戦から数ヶ月で全人口の半数を失った。サイド7に住む連邦の技術士官を父に持つ少年アムロ・レイはコロニーに攻撃を仕掛けたジオンのモビルスーツ「ザク」を、連邦の開発した新型MS「ガンダム」に乗って撃退する。以後、アムロはガンダムのパイロットとして戦争に巻き込まれていく…。


今尚絶大な人気を誇るロボットアニメ界の筆頭、「ガンダムシリーズ」の記念すべき最初の作品である。以後ガンダムがシリーズ化されていくにつれ、ファンの間では「ファーストガンダム」と呼ばれ、一種神聖化されている。また、設定において初めて軍の兵器体系に組み込まれたロボットであり、以後ロボットアニメ界に「リアルロボット」等と呼ばれるジャンルを確立した。さらに人物の精神面までを非常に丁寧に描写しており、そういった物語のリアリティがファンに支持され劇場版の公開と共にプラモデル、世に言う「ガンプラ」が大ヒットし社会現象にまでなったことは皆さんご承知のことと思う。

しかしそんなことを語っているサイトはネット上にいくらでも存在するので、今回は趣向を変えて「ガンダム」とスーパーロボット界の雄「マジンガーZ」と対決(!?)という形を取らせてもらう。

早速ではあるが、項目ごとに2作品の設定、演出を比較して見る。

1.出撃方法
光子力研究所の汚水処理場から「マジィィィィン・ゴォ!!」と飛び出すマジンガーZ
ホワイトベースから「アムロ、ガンダム行きま〜す!!」と出撃するガンダム
2.性能比較「攻撃編」
機械獣をコテンパンにやっつける「ロケットパンチ」「ブレストファイアー」とさまざまな超兵器を装備するマジンガーZ
ザクなど一撃で墜とす「ビームライフル」や「ビームサーベル」といった数々の新兵器をあやつるガンダム
3.性能比較「防御編」
「超合金Z」のボディは機械獣の攻撃など寄せ付けない「黒鉄の城」マジンガーZ
「ガンダニウム」(ルナ・チタニウムってのは後付けの設定です。ここでは別にどちらでもいいですし)の装甲によりザクマシンガンなど受け付けないガンダム
4.仲間達
共に闘うはおっぱいミサイルの「アフロダイA」と、やられ役の「ボスボロット(ボス、ヌケ、ムチャの3人乗り)」マジンガーZ
中距離支援の「ガンキャノン」と、何故かよく狙われる長距離支援の「ガンタンク(序盤では2人乗りで、主にリュウとハヤトが乗っている)」がガンダムのホワイトベースの仲間
5.弱点を克服するバワーアップパーツ
マジンガーの空を飛べないという唯一の弱点を克服させた紅の翼「ジェットスクランダー」
ガンダムの行動半径の拡大と移動時間の短縮に貢献した「Gパーツ(Gアーマーのこと)」

…あれあれ?リアル志向の元祖である筈の「ガンダム」であるのだが、比べれば比べるほど「マジンガーZ」に代表される「スーパーロボット」的な設定、演出をされているのが判ってしまうではないか!!そう、「機動戦士ガンダム」は「リアルに戦争を描いた」、「ロボットを見事に軍事体系に組み入れた」等と言われてはいるものの、フィクションである作品の設定上でのウソの数自体は「マジンガーZ」等の「スーパーロボット」と大差ないのである。むしろ複雑な裏設定を抱えている分、ガンダムの方がウソの多い作品であるかもしれないのだ。

つまり、「リアル路線」の開祖と言われている「機動戦士ガンダム」ではあるが、根本的な部分では非常に「スーパーロボット的」であり、ロボットアニメとしてのプロセスにかなり忠実なのだ。

上記した類似点以外にも「水爆ミサイルを叩き斬る」「いざとなれば殴り合いを行う」といった演出はリアルとは程遠いモノである。しかし逆に言えばだからこそ敵MSにも明確な個性が与えられ、「通常機の3倍のスピードで迫るシャア専用ザク」「稲妻を背景に登場するグフ」「ガンダムハンマーを受けとめるゴック」といったケレン味を見せ付け敵の強大さ、迫力に説得力を持たせることが可能だったのである。

このことはキャラクター設定にも当てはまる。本当にリアルなキャラクターを作るのであれば、シャアの仮面など何の意味もなさないしなにより不自然である。しかし敢えて「仮面の美青年」と設定しビジュアル的なインパクトと個性を打ち出すことにより、彼の過去といった設定を彩ることが可能となったのである。こういったリアルチックな部分とスーパーロボット的な部分の絶妙なバランスこそ、「ファーストガンダム」の魅力なのではないだろうか?

「ガンダムこそリアルだ!!」というファンの評価に乗せられて、リアルでないロボットは「子供向け」なんて言われていた時代もあったが、「ガンダム」も「マジンガーZ」も所詮同じ穴のムジナ、そう、ロボットアニメなのである。決して「リアル=現実」ではないのだ。この事は全ての「ガンダム」という作品を語るにおいて、決して忘れては行けない重要なキーワードであると私は断言する。

しかし、続編である「Zガンダム」以降はファンの生み出した「リアル」という虚像に向かってひた走ってしまうことになる。そのため敵MSに対するケレン味も薄味であり「敵の新型か?」なんて登場したものの、その回であっけなく撃墜されてしまったりする演出が多くなってしまった。それはそれで面白い作品もあるのだが、リアル志向のロボットアニメだけでなく派手で熱血なスーパーロボットアニメも好きな私としては少し寂しい気がしてしまう。


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