衝撃スクープ!!流竜馬に隠し子がいた!?

ゲッターロボアーク

2002年 石川賢 作 双葉社 全3巻(一応「第一部」とされている)

簡単解説
竜馬、號、メシア・タイールの乗った真ゲッターが恐竜帝国の女帝ジャテーゴを倒してから幾年月。地球には一時の平和が訪れていた、3人のパイロットの命と引き換えに…。だが、平和な時代はゆっくりと確実に崩壊の兆しを示していた。早乙女博士の跡を継いだ神隼人の元、流竜馬の息子・拓馬、人と恐竜帝国のハーフであるカムイ、メシア・タイールの弟・山岸獏が運命に導かれたかの如く集い、早乙女博士の遺産「ゲッターアーク」を駆り、謎の敵「アンドロメダ流国」に立ち向かう。


さて、今回は最早サーガと言っても差し支えないほどの固有の世界観を持つ「ゲッターロボ」の最新作「ゲッターロボアーク」である。最もOVA「新ゲッターロボ」の方が後発ではあるのだが、原作者たる石川賢氏自らが手がけており、かつ他の作品と共通の世界観を持つ作品ではこの「アーク」が最新である。

この「アーク」の物語の舞台は上の簡単解説でも述べている様に「ゲッターロボ號」の数年後である為、ゲッターに導かれてしまった竜馬を始め、旧作のメンバーの続投は隼人と敷島博士以外なく、新規キャラクターがメインとして据えられている。しかし物語としては中盤で恐竜帝国が登場する他、今回の敵勢力「アンドロメダ流国」がブライ大帝率いる百鬼帝国のルーツである等、正にサーガの総括的な「繋がり」が色濃く描かれている。但し、この「アーク」を連載していた雑誌「スーパーロボットマガジン」自体の休刊により、お世辞にもキッチリ完結させたとは言いがたい…非常にフラストレーションの溜まる終わらせ方になってしまっているのは残念なところであろう。本当に…本当にこれから!!という時にばっさりと終わってしまっているので、ファンの殆どは他の雑誌なり何なりでこの「アーク」をキッチリ最後まで見たい、と考えているだろう。それほど残念な形でこの「アーク」は終わっている…いや、終わらされているのだ。

ただ、前作からの流れ…言わばサーガとしての繋がりを重要視し、非常に上手くドラマに絡めているので今までの原作「ゲッター」を知っていれば知っている程深読みが出来るので面白い。しかし個々における設定ではいささか首を傾げたくなる部分も少なからずある。その最たるものが流竜馬の息子・拓馬の存在であろう。一応彼の親父である竜馬は「號」のクライマックスでゲッターの意思と一緒に火星まで飛ばされ生死不明…ゲッターに取り込まれた、と考えるのが妥当。拓馬が生まれたのは恐らく「真」のエピソードで「二度とゲッターに乗らない」と決めた竜馬が早乙女研究所を去った後であろう。拓馬が母親との思い出を回想するシーンで彼の母親が回想(わ、分かり難いな/笑)では「號」に竜馬が初登場した際に来ていた道着を着ていたのがそれを裏付けているのだが、ならばナゼ竜馬は奥さんや息子を放り出して山奥で貧乏道場なんぞやっていたのか…ココが不可解な気がする。まぁ、拓馬自身の方は身篭っている最中に竜馬が生死不明に、という事で竜馬自身は拓馬の存在すら気が付いていない、という説明でも納得できるが、こと奥さんの方は…まぁ、押しかけ女房的に竜馬に付きまとっていただけ、と考えるならそのあまりの口やかましさに辟易した竜馬が彼女から逃げた…とは十分考えられるな、うん。

その辺の重箱の隅をつつくような事を言えば、早乙女博士の最後の遺産たる主役ロボ・アークの存在も微妙な所はある。少なくとも早乙女博士は真ゲッターを完成させた直後から、もうアークを作っている様な流れになるし、「真ゲッター」の世界観の段階で既に博士の助手的ポジションにいた隼人がなぜ「號」の段階でアークの存在を知らなかったのか?という話も出てくるが、コチラはアークの開発時期はドラゴンの暴走事故の後、地下の研究室で1人篭る様になった早乙女博士が密かに開発していたもの…もしくは図面だけ引いていた、とも考えられる。むしろそう考えなければアークを開発した理由とか、なぜ隼人がアンドロメダ流国の襲来に備える事が出来たかとかも説明できないだろう。

まぁ、この辺はマンガ自体なり石川先生なりに説明を求めるより、繋がりの整合性とかは各自ファンが勝手に想像して盛り上がっちゃったほうが楽しいだろう。想像できる余裕、という奴だ。なんでも理屈つけて説明、設定すれば良いというものではないし、ソレに泥濘しすぎて失敗している例などほら、我々のすぐ身近に転がっているじゃないか。

さて、一応メジャーになり過ぎた真ゲッターより強い、というゲッターアーク…それにしてはあんまりそう感じさせる描写は無いのだが…であるが、今回のゲッターの3形態、アーク、キリク、カーンはそれぞれサンスクリット語で大日如来、阿弥陀如来、不動明王を表す。神の名を冠する一方で、フォルムは真ゲッター以上に悪魔然としているというか、ダークな印象がある。口には牙、指には爪…頭部にはデビルマンの様な羽根がある。最も武装の方はアークは斧、キリクはドリル、カーンは怪力と今までのゲッターを引き継いではいるが、他のどのゲッターよりおどろおどろしいというか、禍々しさがある。ただ、活躍の頻度から言えば未来に飛ばされてからは未来の人間が過去の人間を殺すと未来世界にどのような影響が出るか分からない、という理由からアークはゲッター軍団のサポートを受けるのだが、このサポートが…最早サポートではなく庇護になっていて、ゲッター軍団の悪魔の様な強大さにインパクトを奪われてしまっている感は否めない。現実世界では「噛み付き」というワイルド過ぎる技や、「サンダーボンバー」なる固有必殺技を披露したりもしたが、後半の描写のおかげで真ゲッター程の迫力が出ていないのは残念だ。デザインは個性的で良いと思うのだが、主役の筈のアークが暴走する物語に喰われてしまった印象があるのだ。ちなみに恐竜帝国側からハチュウ人類のゲッターロボ「ゲッターザウルス」も登場しアークと共闘するが、残念ながらコチラも活躍頻度が弱く、初登場の時位しか見せ場が無かったのも残念だ。

それはともかく、アークの持つ禍々しさというのが作風にも直結したのか…この「ゲッターアーク」、中盤以降、なんとも複雑な感情を誘発するような作りになっている。ネタバレなのは承知で書くが、ハチュウ人類と人間のハーフであるカムイが隼人の元にいる事から、拓馬と出会う以前に隼人が恐竜帝国とコンタクトを取っていた事は簡単に想像出来るし、その流れから仇敵同士といえる人類と恐竜帝国が手を結ぶ…というのもまぁ、納得がいく流れであろう。そしてそこに至る経緯としてカムイの過去といったエピソードや、拓馬とカムイの母を巡る一連のエピソード等、ゲッターの魅力の一端でもある主人公達3人の友情というか、絆というものが構築される…ココまでは今までのゲッターを知る人間には予想できる流れであろう。

ただ終盤…未来世界に飛ばされてからはこのお約束的パターンにヒビが入る。それが、今まで「真」の時等で描かれていたゲッターエンペラー…「アーク」においてはゲッター軍団」たる未来の人類の登場だ。その語り部として武蔵指令が登場し、アークチームにゲッター線のもたらした人類の未来の一端を説明する。この武蔵指令、姿格好はモロに巴武蔵な訳だが、実はエンペラーの記憶から作られた人造人間であり、戦死してもすぐ次の武蔵指令が同じ記憶を受け継いで起動する。何気ない事ではあるが、この「エンペラーの記憶から抽出」という部分に、ああ、ゲッターは武蔵の事を、ハチュウ人類から人類を守る為に共に散った相棒を忘れていなかったんだな…と、ちょっと感慨深かった。まぁ、彼の記憶から同じ顔形の人形を作る、というのは歪んだ愛情にも見えるが。(苦笑)そんな彼は拓馬やカムイに「人類はゲッターという神に選ばれし宇宙唯一の生物」即ち人類が宇宙を支配させる為にゲッター線が人類を選んだ事を語る。そして、彼らの言う「外敵」を圧倒的な力で消滅させていく…。この流れに、少なくとも「アーク」より前に「號」を読んでいる人間にとっては違和感を覚えてならない筈だ。

これが、「號」のラストで隼人の「これから何が起こるんだ。」という問いに対し竜馬が答えた「すばらしいこと」なのだろうか。

そう、ココでのゲッター軍団はむしろ「悪」に見えるのだ。それは肝心のアークに乗っていた拓馬やカムイにしても感じた違和感なのだろう。母の復讐という、拓馬にとっての本懐はあまりにも呆気なく達成され、ゲッター軍団の…未来の人類に誰よりも戦慄したカムイに至っては恐竜帝国でクーデターを起こし、ゲッターの野望を阻止せんと行動する。今まで「アーク」を読んできたファンには、カムイの出生とその不幸…ハチュウ人類と人間の混血であるが故、どちらからも疎外された苦しみを知っている。そして、拓馬と共に未来の人類の…カムイいわく「おぞましい未来」も見ている…そう、読者としては、カムイ側にも感情移入出来てしまうのだ。

従来の「トカゲも鬼も皆殺し」という「ゲッター」とはやや違う…奇妙な違和感が「アーク」にはある。そしてその違和感こそが、「號」以降石川氏が描いてきた「ゲッター」の一つの答えの提示にも思える。だからこそ、余計「アーク」という物語を今回の様な中途半端な終わらせ方にしないで、キッチリ完結…というより最後まで見せて欲しい、と感じてしまうのだろう。「起」が隼人と拓馬、そしてアークとの出会い、「承」を人類と恐竜帝国の協力、「転」を未来のゲッター軍団とするならば、「結」があまりにサラリと流されてしまっているのだ。本当に、本当に「これから」という所で終わってしまっている。そういう意味でいえば、この「アーク」は爽快感なんか無く、むしろ読み返せば読み返すほどフラストレーションが溜まってしまう作品になってしまっている気がする。

私は読みたい…たまらなく読みたい…「アーク」の続きが物凄く読みたい…。


戻る