鉄巨人の星

機甲界ガリアン

1984年 サンライズ 全25話 日本テレビ系放送
(OVA「大地の章」「天空の章」「鉄の紋章」も存在する)
声の出演:菊地英博、渕崎ゆり子、平野文、加藤精三、速水奨、他

簡単解説
惑星アーストのボーダー王国が機甲兵を使うマーダル軍の強襲を受けて陥落し、国王は死亡、王妃はマーダルに囚われてしまう。家臣のアズベスは生まれたばかりの王子・ジョジョを連れボーダー城を脱出する。ジョジョは12歳になったとき、白い谷の族長の娘チュルルと共に白い谷に眠る伝説の鉄巨人「ガリアン」を見つけ、仲間と共に打倒マーダルの念に燃える。


「太陽の牙ダグラム」「装甲騎兵ボトムズ」に続く、高橋良輔監督によるロボットアニメの第三弾である。富野由悠季氏監督の「聖戦士ダンバイン」と同様中世のようなファンタジー世界を舞台にしていることから、この2作は何かと比較されることが多いようだ。それが原因なのか、心無いマニアの間では「パクリ」等と言われているが、この「ガリアン」は「ダンバイン」とは設定、演出面、更に世界観においても明確な違いが打ち出されている。有機的なラインで軽快に空を飛ぶオーラバトラーに比べ、「ガリアン」で描かれる「機甲兵」は「鋼鉄の鎧」として描かれている。正に「鉄巨人」の異名の通り、その重さからくる迫力、大きさから来る威圧感が丁寧に構築されているのだ。

また「ダンバイン」におけるオーラバトラーはショット・ウェポンが作った工業製品であるのに対し、こちらの機甲兵は現在のアーストの科学では生産することが出来ない前アースト文化の残した発掘されるオーバーテクノロジー兵器なのだ。よって台数には当然限りがあり、主役機「ガリアン」のような高性能機となると数体しか存在しない。その為、高性能機は必然的に優れた戦士にのみ与えられることになる。この辺りが最終的にはレプラカーンやライネックといった高性能オーラバトラーまで一般兵が扱っていた「ダンバイン」の世界とは異なり、機甲兵が持つ一種の騎士、あるいは戦士の持つ武器としての存在感となっているのであろう。この両者の違いは、完全な別次元である「バイストンウェル」と、架空のものながらも一つの惑星である「アースト」という物語の舞台、世界観の違い故であろう。

しかし本作での1番の魅力は機甲兵のそういった設定ではない。何といってもジョジョの敵役であるマーダルの魅力に尽きる。彼は作中「謎の男」として描かれ、アースト星においてはかなりイレギュラーな存在として描かれている。これはネタバレになってしまうのだが、マーダルは実はアーストの人間ではないのだ。彼の故郷「ランプレート」はアーストよりも遥かに進んだ科学力を持っており、ランプレート星のある銀河はなんと銀河レベルでの文化連合が形成されているのだ。

しかしマーダルは「平和」の名の元に行われている完全管理によって人間の感情すら奪うことに疑問を持ち、敢えて故郷に「戦争」を持ち込み、人間性の復活を図ろうとしていたのだ。つまりマーダルはアーストでも、そして故郷ランプレートでもイレギュラーな存在なのである。しかしそれでも自分自身の信念と崇高な最終目的を持って行動する彼は、主人公であるジョジョよりも遥かに魅力的に映るのだ。彼の1人の人間としての魅力、自分自身の部下だけでなく、自分の首を狙う敵のジョジョまでもを成長に導くその度量の広さは、ある意味で「完璧な父親像」と言っても良いのかもしれない。ジョジョはボーダー城陥落の際に実の父親を失っているが、マーダルというもう1人の父親と戦うことによって人間として、1人の男として成長出来たのではないだろうか?

しかしこの印象、マーダルの声を当てていた加藤精三氏の印象が強い為なのかも知れない。加藤氏は以前スポ根作品の傑作「巨人の星」の星一徹役を演じている。そのイメージが、マーダルの持つ父親的存在感を見事に高めているのであろう。思えば星一徹も、飛雄馬がプロ入りしてからは彼の敵となり大いに実の息子を苦しめ、成長させた。その印象がやはりマーダルの存在感を魅力的に演出する一つの要因になっているのは間違い無い。何せ、マーダルも夜空の星を指差し「あの星を見よ!!」等とやってしまうのだから。流石にその後ジョジョと抱き合って男泣きするシーンは無かったが。(笑)

物語の方はジョジョが仲間達と共に捕らわれている母を助け、王国再建を目指すヒロイックファンタジーとして展開するが、後半で上記したマーダルの真の目的が発覚してからは、俄然SFのテイストが強くなっていく。しかし今まで様々な伏線を張り、マーダルの魅力と主人公ジョジョの成長を丁寧に描いてきたおかげで、急激な変化に驚きこそあれど違和感は少ないというのは特筆に価する。「ダグラム」「ボトムズ」と意欲作を世に送り出した名監督「高橋良輔」氏の手腕を改めて再認識させられる演出といえるだろう。

また、ヒルムカの元恋人で同僚のウーズベンを始めとする文化連合の人間は薄い緑色(ジムカスタムみたいな色といえば分かり易いかも)のテカテカしたボディスーツを着込んでいるのだが、コレが何とも大昔のSFなんかで描かれる未来人を彷彿とさせる。この未来人達がマーダルの命を受けたハイ・シャルタットの部隊に蹂躙され、抵抗する事すら理解出来ぬまま次々と殺されていくシーンは非常に薄ら寒さを覚える。混沌こそが人間の根源であると訴え、騒乱を故郷に持ち込むことを「人間性の復活の為」とするマーダルを我々視聴者が否定出来ないのは、この無機質で正に「生きる屍」となったランプレートの民を見せ付けられたからで、古典的なその薄緑色のボディスーツといった容姿をした未来の人類像が、なんとも他人事で無い気がしてしまうからなのではないだろうか。

一般にロボットアニメといえば「ガンダム」の富野氏の知名度が圧倒的に高い。しかし、もし富野作品、もしくは「ガンダム」しか知らないのであれば、この「ガリアン」を始めとする高橋監督作品を見ることをオススメする。必ずやアナタは認識を改めるだろう。

さて、この「ガリアン」の特徴としてもう一つ挙げておこう。それは、最終回のエンディングにおいて、物語から数年を隔て成長したジョジョやチュルルの姿(恐らく結婚式だろう)を描いているという点だ。今でこそ作品のラストで後日談を描くことは珍しくないが、当時はこういった演出は以外と稀であった。この細かな気配りが、物語の結末に暖かい余韻と、深みを与えてくれるのだ。

しっかし、最終回でのガリアンの扱い…もう少し何とかならなかったのか…不憫だ…。(泣)

さて、OVAの方ではあるが、「大地の章」は第1話から第13話までの前半、つまりはジョジョとガリアンの出会いから母に会うために鉄の城に旅立つまでを描いており、「天空の章」は第14話から最終話まで、ジョジョとマーダル軍の戦いがアーストを離れて全銀河に飛火していく部分を描いた総集編となっている。

そして「鉄の紋章」はテレビシリーズとは設定が異なるオリジナル編となっており、各キャラクターの設定も本編とは大きく異なっている。ヒルムカはマーダルに抵抗する鳥一族の女リーダーとなっており、マーダルも顔つきはアスベスのものになっており、ジョジョやハイ、チュルルは彼の養子という設定になっている。

「鉄の紋章」の魅力は何と言っても本編ではガリアン以外の機甲兵をデザインした出淵裕氏が全ての機甲兵をよりスタイリッシュにリファインしている点であろうか。特に本編では唯一大河原デザインで変形、合体システムを持つガリアンだけが世界観から剥離された印象があったのだが、コチラの「鉄の紋章」ではより騎士の甲冑然としたデザインにリファインされており、世界観を統一している。

特に邪神兵の禍禍しいデザインは見事で、蛇のような半身をグネグネと躍らせつつ鉄巨人(作中ではガリアンとは呼ばれない)に襲いかかる様は迫力満点だ。
もちろん鉄巨人とマーダル軍の機甲兵との殺陣も迫力充分。バックに音楽を流さず、金属同士が接触して軋む音を効果的に当て、機甲兵の重々しさ、金属感をより一層引きたてている。

「ボトムズ」とは異なり本編と絡まない上に時間的にも90分程度とやや短めなので、物語的には正直言ってさほど見るべき点は無い「鉄の紋章」ではあるが、殺陣の迫力を楽しむ分には申し分無いと思う。
そう言えば序盤に描かれる鳥一族の谷、何となく「風の谷のナウシカ」の風の谷や、「ボトムズ」のクエント人の村をイメージさせられるのだがどうだろうか?


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