あなたは、そこにいますか

蒼穹のファフナー Dead Aggressor

2004年 XEBEC制作 全26話(+年末スペシャル「RIGHT OF LEFT」)  テレビ東京系放送
声の出演:石井真、喜安浩平、松本まりか、荒井里美、白石稔、他

簡単解説
太平洋に浮かぶ平和な孤島・竜宮島に突如現れた未知の生命体・フェストゥム。一見美しくさえ感じる金色の侵略者により平和だった島は一瞬で戦場となる。島の人々はフェストゥムと戦う為に組織されたアルヴィスのメンバーであり、敵の襲来により島は武装した要塞へと姿を変える。そんな中、14歳の少年・真壁一騎は司令官の息子で幼馴染の皆城総士に促され、巨大ロボット・ファフナーに搭乗してフェストゥムと戦う。混乱のまま一騎は聞く。「俺達は何処へいくんだ」…総士はその問いにこう答えた。「楽園だよ」


はい、「蒼穹のファフナー」である。この作品、基本的にはマイナーな作品であるのだが、歌詞の一部が「空耳アワー」(もしくは「往年のボキャブラ天国」)ののネタではないが、

ココア、ソーダ、クエン酸

と聞こえる事でも有名なangelaの歌う主題歌「Shangri-La」は聞いた事がある人も多い筈。なぜなら、あの大いに盛り上がった2009年の第二回WBCの日本代表の試合の際、当時人気だったパチンコ「CR蒼穹のファフナー」のCM曲として毎試合流れていたからだ。聞くところによると、あまりに特徴的な歌だったせいか、このCMからこの「蒼穹のファフナー」というアニメに興味を持ち、視聴に至った…という人もいるんだそうな。…と言っても、実は私、あれだけ盛り上がったWBCは第一回にしても第二回にしても一試合も見ていなかったりする。基本的にスポーツ中継はプロレスかボクシング位しか見ないのだ。

そんな訳で、私が「蒼穹のファフナー」を見たのはWBCとかよりずっと後。本作の続編にあたる劇場版「HEVEN AND EARTH」の公開に当たって東京MXにて毎夜二話連続放送をしていた時にたまたま長い事出張していて、コレで大いにハマった、という訳だったりする。先んじて書いている「一話一会」の記事にもある通り、「ファフナー」の本放送の際にはこのサイトにも「面白いんでおススメです」的な書き込みやメールを頂いた事もあったのだが、折しも「ガンダム種」と時期が被っていたのが悪かった。「種」に関しては、当初から「好き好んで見てなどやらん」的な事を公言していたのだが、もう撤去してしまった某コンテンツを本格的にやっていた時期でもあり、それに乗っかったつもりなのか、メールにしろ掲示板への書き込みにしろ…「けしからん『種』を叩いてくれ」などのたまう人が続出してしまい、かなり辟易していたのだ。その頃の心情と言ったらもう酷いもので、好きだった筈の「リヴァイアス」や「スクライド」にすら、平井キャラデというだけで拒絶反応が出かかっていた時期でもあった。流石に、一般ではバリバリ言われていて目立たないが実は氏がメカデザイン担当の「ダンクーガ」とかは平気だったのだが、「ファフナー」の場合、主人公の一騎からして目の下に描かれる斜め線を無くしてしまえばシン・アスカだろ…というレベルの絵だったのでハナッから拒絶反応があったのだ。ま、この辺は「一話一会」でも書いているので重複ではあるが。

更に、世間で「ファフナー」がよく評されている通りにこの作品に漂う「エヴァのパクり」臭も、私を作品から遠ざけた一因だ。私はご存じ…かどうかは知らないが、「エヴァ」が大嫌いだ。そして「エヴァ」以後に乱立した「エヴァっぽい手法」という奴も同様に嫌いなのだ。トドメに、何かと「コレって『エヴァ』のパクりじゃん」なんてしたり顔で言う奴は「エヴァ」という作品そのものより大嫌いだ。まぁ、確かに「ファフナー」には露骨に「エヴァ」を意識してるだろ、と勘繰りたくなる部分は多々あったりするのだが、ともかく当時はそういう私の二大アレルギーがピークに達していた時期だった…と思っていただければ、まぁ本放送時に本作に興味を持たなかった理由として適切かと思う。

しかしね、はい、ワタクシが間違っておりました。(苦笑)

この作品における侵略者・フェストゥムは体の99%をケイ素で構成するシリコン生命体であり、個体という概念が無く、全体で一つの意志を構成する生命体だ。彼等は人間に「あなたは、そこにいますか」と問いかける。この問いに「はい」と答えると彼等に同化され、「いいえ」と答えると彼等に攻撃される。この辺の設定や中盤以降に描かれるフェストゥムとの共存の可能性、といったモノが、存在論とかコギトエルゴスムだのといったモノに絡めた哲学的なテーマの一端云々とも言われており、本作を「哲学的」といわしめているらしいのだが、私は正直この辺にはあまり興味が無く、注目もしていなかったりする。

本作におけるポイントは、「一話一会」の記事にも書いているが、「大人の存在」にあると思うのだ。昨今ありがちな作風…と言える程私は最近のアニメとかを見ちゃいないのだが、物語に大人が不在になってしまっている作品という奴が目につくような気がする。メインターゲットの視聴者と大して変わらない世代のキャラクター達が苦闘を繰り広げ…というのは昔からあるネタではあるのだが、昨今そういった未成熟なキャラクターを導く存在をキッチリ設けずに…言葉は悪いがガキだけで進行してしまう物語が多過ぎる気がするのだ。その点、「ファフナー」という作品は大人という存在を実に上手く配置している。各キャラクターの親達が「親」という漢字…木の上に立って見る…ではないが、時に甘さを感じさせながらも子供達を見守り、成長に導く一方で、子供達を利用しようとするミツヒロや狩谷、へスターやバーンズのようなポジションも配置している。ここが上手い。

そして、そんな大人達に見守られ、自らの意思で成長していく子供達の姿こそ、本作のキモではなかろうか。

命令の為に自らの命も省みないカノンに、何時も「いなくなりたい」と思っていたかつての自分を見て必死の説得をする一騎
同化された甲洋が目覚めた際、彼を変わらぬ仲間として大人達から守ろうとする一騎達
大好きな「ゴウバイン」を描いているのが自分の父である事を知り、親友を守る為に強くなる事を誓いゴウバインマスクを脱ぐ衛
自分が何もできなかったのは大切な人に自分が守られていたからと知り、笑顔で出撃する真矢
咲良の同化、衛の死により一度は逃げたが、自分を守って母ちゃんが死んだ事で再び一騎に勝負を挑み、遂に一本取る剣司
仲間からの友情や容子の愛情を受け、島に自分の存在意義を見出し、戦いから帰ったら母と呼ばせてほしいと容子に告げるカノン

といった具合に、竜宮島の子供達は苦闘を乗り越え仲間達と共に成長を遂げる。この成長ぶりは一己の人間として「自立」していく姿とも言えるのではないだろうか。特に、この辺の描写は後半に多い訳だが、本作「蒼穹のファフナー」は中盤以降、シリーズ構成及び脚本が山野辺氏から「マルドゥック・スクランブル」等で知られる冲方丁氏に交代になっており、そこから面白くなった…と評される事が多いのだが、これは終盤にかけて子供達のフェストゥムとの苦闘や悲劇と共に、言わば日常パート的な彼等の温かい日常を丁寧に描いたためではないかと思う。「冲方脚本になってから女の子キャラクターが可愛くなった」という評価もあるが、それもコレが理由だろう。日常パートの温かさ、明るさがあるからこそ、彼等の苦しみも悲しみもより映える…という、これは脚本(と演出)の妙、だろう。思えば、序盤翔子の件然り然り、甲洋の件然りでいわゆる鬱展開…とでもいうべき流れが強調され過ぎた為、そちらにばかり比重が置かれ、日常パートでの明るさといったモノが上手く機能出来ていなかったのかもしれない。

更に、本作の妙…と言えば、ラストへの盛り上げ方にも注目したい。マークニヒト登場の経緯、その伏線の張り方も良かったし、何より本作の「蒼穹のファフナー」というタイトルの「蒼穹」って何ぞや?という部分に回答が出るのもカッコ良い演出だ。そして出撃前に各パイロットがそれぞれ作戦について説明していく流れも、「誰も死ねない、全員で生きて帰る」という作戦の主旨を強調していて良い。更に、イドゥンが駆るマークニヒトに決定打を与えたのが、主人公の一騎ではなくヘタレを返上した剣司、というのも憎い演出だろう。ついでといっては何だが、普段は割ともっさりしていた戦闘シーンだが、ラストの蒼穹作戦はかなり頑張っていたと思うぞ。

ただ、真矢に関しては…「一話一会」の方にも書いたが、最後帰還するマークザインを迎えに行った際、一騎に抱きつく位の事はさせてあげたかったな、と思うんですよ。彼女が遠慮したのは翔子に対してなのか、はたまた総士に対してなのか…コレで、本作のヒロインは総士、というのが決定的になっちゃったんだと思うんだよなぁ。(苦笑)

最後に、「RIGHT OF LEFT」についても書いておこう。
コチラは本編の前日談であり竜宮島へのフェストゥム襲来の一年前の物語となっており、ある意味本編以上の悲劇的な物語が展開される。タイトル「RIGHT OF LEFT」にも「去りゆく者達の権利」という意味合いが込められており、その通り、続く者達へ繋ぐ物語となっている。コチラの主人公は一騎達の一つ先輩にあたる将陵僚(まさおかりょう)と生駒祐未となっているが、本編の主人公である一騎や翔子達が顔見せ程度に登場しており、本編ではあまりに呆気なく死んでしまった蔵前にもスポットが当てられている。

コチラは前日談なのである程度独立した作品として見れなくもないが、やはり視聴するなら本編を見てからをおススメしたい。本作を本編以上とする評価があるが、本編あっての「RIGHT OF LEFT」という前提条件を外すと、やや展開が早く分かり難いかも知れない。

ま、何ともまとまりがない記事になってしまった気もするが、無条件でおススメ出来る作品の一つである事は間違いないぞ、と。


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