うーん…何が何やら…。

新世紀エヴァンゲリオン

1995年 ガイナックス 全26話 東京12チャンネル系放送
声の出演 緒方恵美、三石琴乃、林原めぐみ、宮村優子、山寺宏一、他

簡単解説
西暦2000年、南極に大質量隕石が落下(表向きは)し未曾有の大惨事「セカンドインパクト」は起こった。それから15年が過ぎ、ようやく復興の兆しが見え始めた頃「使徒」と呼称される正体不明の巨大戦闘兵器群が襲来する。予測されていた「使徒」の襲来に対抗すべく人類は「汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン」を開発。そのパイロットには3名の少年少女が選ばれた。人類存亡という重過ぎる責任を背に、少年達の闘いは今始まる。


数年前、この「新世紀エヴァンゲリオン」はTV放送されたアニメとしては近年異例のヒットを飛ばし、たかが半年足らずの間に何回も再放送がされた特異なロボット(?)アニメである。そのムーブメントは「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」に継ぐものとして一般に「オタク」と呼ばれる人々以外にも認知されたのは周知の事実であろう。

しかし、私はこの作品を初回放送の途中から見始めたのを皮切にトータルで3回視聴しているのだが、全然面白いとは思えないのである。その物語上にて展開されるわけの分からない専門用語、つまりは「死海文書」だの「アダムとエヴァ」だの「人類補完計画」だの、そういった劇中何ら説明が成されない割に登場キャラクターの口からしつこく連呼されるキーワードの難解さ(嫌味です)と、そのあまりにも救い様が無い、誰も救われないグロテスクな物語がなんとも鼻についてしまうのだ。今回の「エヴァ評」は、何で私が「エヴァ」という作品を嫌っているかを書こうと思う。

だから、上記した劇中の専門用語について知りたい方は、ブームの際に数多く出版されていた各種ムック本が今ではブックオフ等でそれこそ山積みになっているのでそちらで調べて頂きたい。

前記した通り、「エヴァンゲリオン」という作品は近年では異例の大ヒットを記録したテレビアニメであり、ブームが最高潮に達したのが本放送終了後という経歴の為「『ヤマト』『ガンダム』に次ぐ第三のムーブメント」等とマスコミ等各メディアで盛んに取り上げられた。コレだけ世間で好評を得たのだから面白い部分も多く存在するのは確かなのだ。

例えば、そのロボットアニメとしての芝居の段取の仕方である。

舞台は第三新東京市、
そこに得体の知れない「使徒」と呼ばれるモノが攻めて来る。
迎え撃つのは父親の作ったエヴァンゲリオンに乗ったシンジ君。

コレを「マジンガーZ」に置き換えると、

舞台は富士山の麓の光子力研究所、
そこに打倒マジンガーを目指してDrヘルの機械獣が攻めて来る。
迎え撃つのは祖父が作ったマジンガーZを駆る兜甲児。

そう、かなり酷似しているのだ。それに、エヴァンゲリオンは非常に丁寧にプロセスを踏んだ発進シーンを見せる。つまり、ロボットアニメとしては異端と捉えられがちな「エヴァ」は、実はリアルロボットの開祖と呼ばれ一大ムーブメントを生んだ「機動戦士ガンダム」と同様に正統派ロボットアニメの定石をキチンと踏んでいるのである。

もう一つ、従来の肉感的なヒロイン達とは一線を画した「折れてしまいそうなほど華奢(それでいてナイスバデイ)なヒロイン達」は見事アニメファンのハートを射止め、今尚ガレージキットやフィギュアの新作が作られる程の人気を見せている。この部分も人気を構築した重要なファクターなのは間違いが無い。だからこそ登場するヒロイン達の性格設定も、「気さくなお姉さん」「感情の起伏が無い少女」「高慢でワガママな美少女」「クールな女科学者」「潔癖症の生真面目娘」「意地っ張りな純朴少女」といったいわゆる「オタク受け」する性格が設定されている。

そして、主人公であるシンジ君やヒロイン達の「魅せ方」というものも斬新であったのだ。トラウマ持ちの主人公シンジ君は、キッカケは沢山あるのに急変していく状況に振り回されて精神的に成長をしない。さらにヒロイン達は物語終盤にかけてじょじょに精神的に追い詰められていく。この非常に不安定な部分が、作中描かれるキャラクターと同じ世代の少年少女の心情を掴み、そういった要素が昔アニメファンをやっていた大人達を呼び戻す土壌となっているのだろう。

特に、繊細な美女、美少女が精神的に病んでいって、追い詰められ、どんどんダメになっていく様は「美少女が殺人鬼に追い詰められていくスプラッター映画」のようなサディズムとエロスを視聴者に体感させるものであり、背徳的で斬新な演出であると言えよう。

では、これほど多くの魅力的(悪趣味ではあるが)な要素が多い「エヴァ」を私が嫌いな理由とは何なのだろう?私が庵野秀明氏というクリエイターを勝手に嫌っているというのもぶっちゃけてしまうと理由の一つなのだが、それでは作品を嫌う本当の原因にはならない。

私が嫌いな理由、それは「エヴァ」に見られる庵野氏の逃避である。この「エヴァ」という作品、とかく後半のグロテスクっぷりが話題になってしまうが、本当の意味で物語を丁寧に構築していたのは前半部分なのである。

前半部分ではロボットアニメとして中々に熱い展開が繰り広げられている。使徒とシンジ君の出会い、そして最初の戦いで見事に「人造人間エヴァンゲリオン」の特徴、そしてその特異性を描ききっているし、アスカの初登場の際で完璧に彼女の存在感を構築した手腕など、さすが天才庵野秀明と賞賛するに値する出来であると思う。そしてミサトやアスカとの生活、ケンスケやトウジとの友情を描きゆっくりとではあるがシンジ君の心の病気が癒されく…そんな展開を期待させてくれているのだ。言って見れば、前半の「エヴァ」は私にとっても充分に面白い作品だったのだ。

しかし、第壱拾九話「男の戦い」にてその評価は一変する。急速にグロテスクさ、陰湿さが激増してしまうのだ。ココこそが私が「新世紀エヴァンゲリオン」を極めて厄介に感じる部分なのだ。
一応、当初から「エヴァンゲリオン」という作品には「世にはびこるオタク達への警鐘」というテーマが庵野氏から授けられていた。しかしそれは至極正当に描かれる筈であり、間違っても後半に見られるようなグロテスクな展開にはならなかったのではないだろうか。更にこの「男の戦い」というたった1話こそが、劇場版公開の際の記者会見にて庵野氏に「オタクなんて大した連中じゃない」等という発言をさせた元凶なのだ。

この第壱拾九話「男の戦い」はその目まぐるしい展開と、唯一シンジ君が自分から初号機に乗って戦ったことで知られる。「男の戦い」という話は、フォースチルドレンとして選ばれた親友トウジが自分の目の前で成す術も無く殺されてしまった。それを逆恨みしたシンジ君は初号機のパイロットを辞めることを決意する所から始まる。そこへやって来た最強の使徒。零号機は戦闘不能、初号機はレイを拒絶し起動しない。残るアスカ&弐号機も使徒に成す術も無くやられていく…。状況を目の当たりにしたシンジ君は思い悩む。

そこへ現われるのは加持。彼はシンジ君に「何をすべきか?」を諭す。この加持がシンジ君に語りかけた下り、つまりは「オレはここでスイカを育てる事しか出来ない云々」というセリフこそが、庵野氏がオタク共に伝えたかったメッセージ…つまり「オタク達への警鐘」だったのだ。しかしそれを受けて初号機に自主的に乗ったシンジ君がどうなったかは皆さんもご存知のことと思う。物語終盤にて遂に庵野氏がメッセージを分かり易く視聴者に発したか?と思うのも束の間、直後に物語中で最もグロテスクなシーンにてそれを打ち消してしまうのである。

つまり、庵野氏はこの「男の戦い」までにオタクに対して

「コイツ等に何を言ってもムダだ。」

という事を理解してしまったのだろう。その結果何をしたかというのがこの「男の戦い」に集約しているのだ。今まで構築してきた伏線を度外視してまでも、とりあえず的に自分の訴えたいメッセージを作品に封入し、その直後そのバカなオタク共が求めたグロテスクな描写を行い以降は決して正面から向き合おうとはしなかったのだ。だからこそ「死海文書」「アダムとエヴァ」「人類補完計画」といった類のワケのわからない専門用語でオタク共をピエロに貶め、最終回も丸っきり自己啓発セミナーを模写したようなものにしてしまったのだ。

しかしコレ、あまりにも無責任ではあるまいか?「オタク達への警鐘」も、鳴らさなければ飾りにしかならない。いや、庵野氏は自分自身の勝手な判断で警鐘を鳴らす努力すら捨て去ってしまったのだ。そんな逃避をやらかしておいて「オタクなんて大した連中じゃない」等とはあまりに自分の作品に対して傲慢で、ファン達に対してワガママな言い分であろうか!!

「自分の作品の本質が理解されない」…違う。それは作家として、クリエイターとしてのエゴだ。理解されないのではなく、自分の言葉が足りなかったのだ。そりゃ当然だ。確かに前半ではゆっくりながら丁寧に警鐘を鳴らす準備をしていた。しかしその一方でオタクが泣いて喜ぶような「死海文書」「アダムとエヴァ」「人類補完計画」なる専門用語を乱立させているのだからこれは明らかな「よそ見」と「言葉足らず」である。

思えば、そんな専門用語ばかり並び立てる庵野氏自身が氏の言う「大した事が無いオタク」に過ぎなかったのではないか?「エヴァンゲリオン」…クリエイターに、そしてファンにまで翻弄されたこの作品は、思えば哀しい作品だったのかも知れない。

で、オマケであるが、この「新世紀エヴァンゲリオン」を制作したガイナックスは、昨今「エヴァ」のキャラクターをオフィシャル公認で脱がせて再び一儲け企んでいる。つまり、「エヴァンゲリオン」で荒稼ぎしたガイナックスは今度は「エロンゲリオン」で小遣いを稼ごうとしているワケだ。一時は時代と寝た「エヴァ」という作品も、たった数年で落ち目のアイドルになってしまったのだ。

この展開に私は興味が無いので口を挟まないが、ただこの場を借りてガイナックスに一言だけ言っておきたい。

「今度は儲かっても脱税すんなよ!!」(苦笑)


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