本家を昇華した魅力的な設定

機甲戦記ドラグナー

1987年 全48話 サンライズ 名古屋テレビ系放送
声の出演:菊池正美、大塚芳忠、堀内賢雄、藤井佳代子、小杉十郎太、他

簡単解説
西暦2087年、月面に本拠を構える「統一帝国ギガノス」の指導者ギルトール元帥は全人類は一部の優秀な人間によって支配されるべきと提唱し、地球に侵攻を開始する。組織力と科学力に優れるギガノスは瞬く間に地球の7割を支配下に置く。劣勢に立たされた地球連合軍は、ギガノスから亡命した科学者・プラート博士の協力により「D兵器」を開発するが…。


本作「機甲戦記ドラグナー」は、当時「ファーストガンダム」を現役で見ていない若いアニメファン層の為に企画した作品で、「新たなるガンダムの創造」を目標に制作された作品である。その為「ファーストガンダム」に極めて近い設定を持っている。

例えば本編のライバルキャラクター「マイヨ・プラート」はギガノス軍の若きエースであり、「ギガノスの蒼い鷹」という異名を持っている。更に彼の妹リンダは彼の父親プラート博士と共に地球連合に亡命し、主人公達と行動を共にしている。そう、このギガノスの蒼い鷹は「ジオンの赤い彗星」に極めて近い設定を持ったキャラクターなのだ。もっとも、キャラクターのイメージとしてはシャアというよりも「0083」のアナベル・ガトー的ではある。まぁ、マイヨの場合、尊敬する指導者が物語中ではタカ派ではなかった為か、ガトー程の狂信っぷりや過激さはないのだが。ともあれ、この「ドラグナー」にはその他にも主人公側のチームが3機編成であったり、ギガノスの選民思想や指導者交代劇など他にもガンダムにそっくりな設定やエピソードを多数持っている。

そういえば、「ガンダム種」の主役メカであるストライクガンダムが持つアーマーシュナイダーというナイフは元々は「ドラグナー」にてD兵器に標準装備されていると設定されていながら一度も劇中で使われる事が無かったモノを流用したんだそうな。それ以外にも、背面に装備するフライトユニットの存在等、「種」のメカ設定には「ドラグナー」からの影響と思われるモノが散見している。元々「ドラグナー」自体、「ガンダムを知らない世代へのガンダム」的なテーマで制作された作品であるが、その設定の一部が本家「ガンダム」の方に時代を経て流用されている、というのは面白い。

しかし、この「ドラグナー」は只の「ガンダムのモノマネ」では終わっていないのだ。「機体のコンピューター制御」や「コンピューターへのパイロット登録」といったアイデアを作品中にうまく取り込み、「普通の少年達がメタルアーマーに乗る」という設定に説得力を持たせている。但し、同じくサンライズ制作である「蒼き流星SPTレイズナー」のエイジとレイの会話の様に戦闘描写のキモとしては描かれておらず、D−1、D−2、D−3それぞれのコンピューターに「クララ」「ソニア」「マギー」と名前までついているが表立って活躍したのは電子専用であるD−3搭載のマギー位であり、クララやソニアは大して活躍して…ソニアに至っては劇中セリフを発したのも一回だけ、となってしまっている。この辺はもう少し工夫というか、演出面に反映した方が面白かったと思う。

また、上記した3機編成というものも「白兵戦主体のD−1」、「遠距離支援用のD−2」、「電子戦サポート用のD−3」とし、ガンダムの「ガンダム」「ガンキャノン」「ガンタンク」よりも説得力があるものに昇華されている。特に「D−3」の設定は今までのロボットアニメには無かったものである。このD−3はレドーム(飛行機に付けられる円形の巨大レーダー)状の頭部を持ち、偵察、索敵、情報収集、そして電子戦を担当する。その設定を生かし本編でも「敵基地のコンピューターへのハッキング」や「敵の誘導ミサイルをジャミングし、撃った敵に返す」など大活躍するのだ。また本作はD−3の他にもD−1用の頭から被る強化パーツ「キャバリアー」、主人公達の乗るプロトタイプよりも性能が上の量産機「ドラグーン」等、ガンダムのモノマネでは終わらない魅力的な設定を数多く持っているのだ。

更に、所詮は試作機に過ぎないD兵器が、量産型メタルアーマーのドラグーンの開発成功によりお役御免となり、解体が決まった際に見せたケーンの…行きがかり上仕方なくとはいえ今まで生死を共にしてきた相棒が破棄される事に抵抗…あれ程嫌っていた軍に残ってまで解体を阻止する姿など、当時のリアルロボットアニメでは珍しくキチンと「戦場で共に戦う相棒としてのロボット」に対する愛着が描かれており、その点に関しては好感が持てる。

そして忘れてはならないのが中盤から登場する「ギガノスの汚物」こと「グンジェム隊」である。優れた組織力を誇るギガノス軍の「はみ出し者」であり、作中でも好き勝手に暴れてくれる魅力的(?)な連中である。自分達のためなら平然と味方でも罠にかけるその姿は、「蒼き流星SPTレイズナー」に登場した「ゴステロ様」を彷彿とさせる。また彼等のメタルアーマーは独自にカスタマイズされており、

「青龍刀」で何でもぶった切るグンジェム大佐の「ゲイザム」
ちょうちんゴリラことゴル大尉の「スタークゲバイ」
チェーンソーを振りまわす紅一点のミン大尉駆る「スタークダイン」
犯罪者が軍服を着ていると揶揄されたガナン大尉の「スタークガンドーラ」
ホログラムにて敵をかく乱するナルシストなジン中尉の「スタークダウツェン」

等、非常にキャラクター性が強くなっている。
しかしこういった破天荒なキャラクターは、本家「ガンダム」では活躍させられなかったであろう。それは「ガンダム」、特に「逆襲のシャア」までの作品には「ニュータイプ論」というものが付きまとってしまう為である。しかし「ファーストガンダム」の序盤から中盤、まだ「グフ」や「ズゴック」等と戦っている頃なら可能性はあるのかも知れない。「シャリア・ブル」や「ララア・スン」が出てくる前、つまりは「ガンダム」が「ニュータイプ論」ではなく「ドラマ」として魅せていた時代である。逆に言えば、この「ドラグナー」はこの頃の「ガンダム」的な人間ドラマの魅力が味わえるということだ。

他にも、マイヨに心酔するギガノス少年隊の「プラクティーズ」、ギガノス首都から派遣されたコーキングガンを使うスゴ腕の特殊部隊「ゲルポック隊」等、マイヨを陥れギガノスの全権を握るも小者感ばかり目立つドルチェノフ、といった魅力的なキャラクターも少なくないが、主人公達の魅力に関しては…少々描写が足りない。もうとことんお気楽な連中であり、主人公の筈のケーンも対グンジェムの為になんとも簡単過ぎる修行にて見切りを会得してしまう等、ご都合主義的な部分が強過ぎる。一方、ライバルであるマイヨの方は、ギルトール暗殺の濡れ衣をドルチェノフに着せられて以降、明らかに主役に取って代わっており、余計にケーン達3人組の印象は薄くなる。そのせいか、マイヨの人気は作品内でも高く、彼に心酔するプラクティーズも、マイヨに対する献身的な言動からか放映当時も所謂ヤオイ的なネタの標的にされたりもしている。

特にクライマックスにおいても美味しい所をさらっていったのは大穴のミン大尉であったりと、いよいよ持ってケーン達が「いるだけ主人公」になってしまった。この辺は基本コミカル路線を続けて来た代償なのかも知れない。「ZZ」でも序盤のコミカルさがウソの様に後半はシリアスな展開に変わっていたが、リアルロボットを標榜とする作品にてコミカル路線にて押し通すというのは、「リアルロボット」というジャンルのファンにとっては望んでいなかった形なのかもしれない。

「ドラグナー」という作品自体、映像ソフト等に恵まれなかったせいかロボットアニメファンの中でも「よく覚えていない」存在だったが、映像ソフト云々以前に、主人公達の影の薄さ、唐突でちぐはぐな展開から印象に残らなかったから、という部分も少なくないんじゃないだろうか。

最後に、本作の後期主題歌とエンディングテーマは、現在バラエティアイドルとして活躍している山瀬まみが歌っている。「Zガンダム」の森口博子といい、この時代はデビューしたてのアイドルが主題歌を歌うケースが多かったのだ。


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