OVA全盛期に

破邪大星ダンガイオー

1987年 AIC制作 全3話OVA
声の出演:荘真由美、神谷明、岡本麻弥、松井菜桜子、青野武、他

簡単解説
宇宙最強の兵器「ダンガイオー」を駆る4人のサイキック戦士、ミア、ロール、ランバ、パイ。宇宙海賊バンカーによって記憶を消された彼等は、各々の過去と未来を取り戻す為、バンカーと戦う決意をする。破壊、略奪、そして裏切り…広大な宇宙の至る所で悪の限りを尽くすバンカーの追撃と、次々と繰り出される刺客達…終わることのない戦いの中、彼等は何を見るのか。


ここ、「大惨事」の「魔神英雄伝ワタル」や「覇王大系リューナイト」でも述べた通り、80年代後半は「機動戦士ガンダム」から始ったいわゆる「リアルロボットアニメブーム」が終焉を告げようとしていた時代である。この頃は正に「ロボットアニメ冬の時代」と言っても過言では無いだろう。本作「破邪大星ダンガイオー」はそんな不遇の時代に産声を上げた。

ちなみにこの「ダンガイオー」は、漢字に直すと「弾劾凰」である。この「弾劾凰」というタイトル以前は「大宇宙合体ロボ・ミルエット」なる恥かしいタイトルが候補として挙がっていたと言う。それに不満を感じた大張氏が、「ダンクーガ」でボツになった「弾劾凰」というタイトルを提案したのだという。思えば大張氏の絡む作品、「断空我」にしろ本作「弾劾凰」にせよ、そして監督を務めた「オーディアン」の主役メカ「龍牙(ドラゴンファング)」にしろ、ナゼか漢字表記のものが多い。暴走族並の当て字ではあるが、個人的には中々にカッコヨイと思ってしまう。

本作を語るにおいて、先ず最初にこの作品が今までロボットアニメ界をリードしてきた「リアルロボット」のアンチテーゼ的な位置付けで企画されている事に注目したい。
ここで触れておかねばならないのはやはり「何故リアルロボット路線が受け入れられ難くなったのか?」という事であろう。皆さんご存知の通り、「機動戦士ガンダム」という一つのエポックメイキング以降、戦争と、それに巻き込まれる若者達を描いた「リアルロボット」と呼ばれる作品群が乱立することとなる。この「ガンダム」の登場により、アニメーション、それもロボットを戦わせるという教育上は宜しくないとされるジャンルが始めて市民権を得たと言っても良い。

しかし、それに続けと言わんばかりに乱立したリアルロボットアニメ群も素晴らしい作品達であったか?と言われればそうでもない。ガンダムとは別次元で独自の路線を生み出した「装甲騎兵ボトムズ」や「超時空要塞マクロス」のように、ガンダムほどではないにせよ現在も根強い人気を持つ作品もあるが、その殆どが今現在テレビゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズで語られる程度である。

その理由は、当時一部の凝り固まったガンダムファンによって盛んに言われていた「こんなの、ガンダムのパクりじゃん」と言う発言にも答えが見られる。つまり、リアルロボットとして展開する作品群全てが「リアルロボット」としてのお約束、つまりは形式に縛り付けられて自由度を無くしてしまうジレンマに陥っていたのである。要するに、「リアルロボット」を見続けてきたファンには最早どんなリアルロボットを持ってきても全て「前の作品の亜流」にしか見えなくなってしまっていたのだ。

そんな中ヒットしたのが「ファミリーコンピューター」に代表されるテレビゲームである。このテレビゲームの判り易いエンターティメント性が、「わざわざ小難しいアニメなんか見なくてもいいや」という感覚を助長した。思えばこの批評の冒頭で名前を出した「ワタル」や「リューナイト」は、今までのリアルロボット路線を脱し、いち早くテレビゲームの長所をアニメーションに取り入れて成功した例と判断出来るだろう。

本作、「ダンガイオー」はそんなリアルロボットに対し、昔ながらのロボットアクションを魅せる事により従来のエンターティメント性を取り戻そうとしたのだ。その為本作のスタッフは20代の若いクリエイターが多数参加している。そんな彼等の「俺達が廃れちまったロボットアニメに再び火をつけてみせる」という意気込みが見られるのだ。それは、メインメカデザインに「マクロス」の河森氏の名前があるが、最終的なメカはすべて当時売り出し中の若手アニメイター、大張正己氏がクリンナップしていた事からも明かである。

この大張氏は本作以前に「ダンクーガ」でも高い評価を得ており、最近では「銀装騎攻オーディアン」の監督を務めている。他にも本作に参加したスタッフには、「破壊魔定光」の大畑晃一氏、「ああっ女神さまっ」の合田浩章氏等、現在も一線で活躍しているアニメーターがいる。彼等の今現在の作品を創る原動力にあたるのが、この「ダンガイオー」なのだ。

だからこそ線の多い、どちらかと言うとリアルロボット系のデザイン(特に合体前の戦闘機形態などバルキリーを思わせるデザインである)が成されている主役メカ「ダンガイオー」は、その容姿に似つかわしくない肉弾戦を展開するし、その戦闘の最中「サイキック・ウェィィィィィィィブ!!」等と必殺技の名称を絶叫してくれるのだ。

ちなみに一応主人公はミア・アリスという地球出身の少女なのだが、合体後のダンガイオーを操縦するのはチーム唯一の男、ロール・クランである。このロールを演じたのは神谷明氏、「ゲッターロボ」の流竜馬を始め、数多くのロボットアニメのヒーローを演じて来た人である。このキャストもそうだが、この「ダンガイオー」にはかつてのロボットアニメの懐古主義のようなものが漂っている。しかし、それは新しい流れをも踏まえた懐古主義なのだ。

そして本作の同期に、ガイナックス制作の「トップをねらえ」があるが、この「トップをねらえ」もアニパロという形でエンターティメントを確立しつつも、やはり「ダンガイオー」と同様かつてのロボットアニメへの郷愁があった事も忘れてはならない。つまり、本作や「トップをねらえ」の存在が、「リアル」という虚像に躍らされたロボットアニメにエンターティメントとしての本分を思い出させた…というのは誉め過ぎかもしれないが、今のような「スパロボ」による懐ロボットネタの復権に関しても、「リアル路線」へのクサビたる本作のような存在の影響は少なからずあったのではないだろうか。

本作「ダンガイオー」は物語的には決して洗練されてはいない。そして劇中でうやむやになってしまっている設定(例えば、ミアのサイキック能力の謎がイマイチ物語に絡んでこなかったり等)も多い。更に言ってしまえばミア達女性キャラクターの戦闘服がハイレグレオタードという露出度の高い格好である等エロスを利用してオタクに媚びているような印象さえあり、どちらかと言うとイビツであざとい印象さえ受けてしまう。作品としては決して優れているとは言えないし、ドラマ的に見ても尺が短すぎる印象は拭えないだろう。

しかし少なくとも本作には、ロボットアニメをエンターティメントとして真っ向から描ききろうとした当時の若手クリエイター達の気概と意地が感じられるのだ。それが本作「ダンガイオー」最大の魅力であり、ウリなのではないかと思う。

ちなみに、本作の第1話ではアニメソングの巨頭であり、本作の主題歌「CROSS FIGHT」も歌っている歌手の水木一郎氏と堀江美都子氏か声優として参加している。特に水木氏は本作が吹替え初体験だったというのでこの辺りをチェックして見ても良いかも知れない。


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