ハードボイルド・バトリングワールド

装甲騎兵ボトムズ外伝 青の騎士ベルゼルガ物語

小説(朝日ソノラマ文庫) 全2巻+「K‘」「絶叫の騎士」 はままさのり著

簡単解説
アストラギウス銀河を二つに分けた百年戦争が終結し、「ボトムズ」…最低野郎と呼ばれたAT乗り達はAT同士を闘わせる「バトリング」という賭け試合に生計を求めていた。俺、「ケイン・マクドガル」もその1人だ。だが、俺が戦争で荒廃した街から街へ、「青の騎士(ベルゼルガ)」を駆る目的は一つ。俺を「仲間」と呼んだ男、シャ・バックを惨殺した「黒き炎(シャドウフレア)」を探し出し、倒すことにあった。


この小説は、高橋良輔氏が監督を務め大人気を博したロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」のオリジナル・インサイドストーリーである。しかし本編との関連は極めて希薄であり、「絶叫の騎士」におけるアストラギウス銀河の結末も本編とはまったく異なるストーリー展開を見せる。そしてボトムズ本編のウド編で少しだけ描かれた「バトリング」と呼ばれるATによる格闘試合を描き話題になった作品である。もっとも原作に当たるアニメの第1クールに見られたような、アンダーグラウンド臭のする地味な賭け試合というより、プロレス的な興行としてのバトリング、というイメージが強かったりもする。ちなみにこの「ベルゼルガ物語」はタカラが発行していた玩具を中心とした季刊情報誌「デュアルマガジン」にはままさのり氏が書いていたものがベースとなっている。

さて、この「青の騎士」を語る上で真っ先に出てくるのはなんといっても「青の騎士」の名の由来でもあるAT「ベルゼルガ」であろう。そもそもこのATはボトムズ本編のクメン編にてクエント人傭兵「ル・シャッコ」が使用していたクエント人専用のATである。ちなみにクメンでのシャッコ機はWPと呼ばれる湿地戦用であり、クエント星では砂漠戦用のDTの旧式機にフィアナが機乗している。

この「ベルゼルガ」はその騎士を彷彿とさせるヒーロー然(あくまでATとしては、であるが)としたフォルムと、左腕に装備した盾に仕込まれている白兵専用武器「パイルバンカー」で本編放映時から人気の高かった機体である。「パイルバンカー」とは火薬(テレビ版では圧縮空気)の爆発により鉄槍を敵ATに突き刺すという非常にカッコ良い武器(ゲーム「フロントミッション」に登場する「シャープパイル」は正に「パイルバンカー」である)であり、この「ベルゼルガ物語」でも「青の騎士」の必殺武器としてだけでなく、物語のキーポイントとして描かれている。この「青の騎士」はそんなベルゼルガをカスタマイズしたATなので当然カッコ良いのだ。

そしてもう一つ、主人公「ケイン・マクドガル」の魅力も忘れてはならない。物語の展開は彼の戦友であり、自分を唯一「仲間」と呼んでくれた男、そして「バトリング」の師匠でもあるクエント人「シャ・バック」の仇「黒き炎」を捜し、やがて「異能結社」の陰謀に巻き込まれる…というもので、そんなに設定としては新しいモノではない。

しかし、主人公のケインの魅力がそれを見事に補っている。彼はロボットアニメ、特に「リアル志向」の作品によくありがちな「偶然から闘いに巻き込まれ、以後いやがおうなしにロボットに乗り続ける」という巻き込まれ系のキャラクターではない。彼は圧倒的なパワー(マッチョ、という意味ではない)で自らの世界を切り開いていく豪腕と、少しのことでは壊れない頑強さの持ち主なのである。

こういった設定の主人公は今現在、他のジャンルの作品はともかく「ロボット関連」の作品には極めて稀である。そして彼は常に一匹狼的であり、他人に媚びることはしない。比べて良いものかは判らないが、「北斗の拳」における「ケンシロウ」的な高潔さを持っているのである。そんな「ケイン・マクドガル」という一匹狼が「黒き炎」を追って数々の修羅場をくぐり抜いて行く様はやっぱり爽快なのである。

そしてこの「ベルゼルガ物語」では、ボトムズ本編にはなかった愛機への執着や一体感と言ったものもキチッと描いており、それによりATにケレン味が生まれているのである。本編のストーリー展開ならともかく、今作の「バトリング選手」という主人公の位置付けや「青の騎士」が元々シャ・バックの機体であることなどを考えればこういった設定を設けて正解であろう。だからこそ「リアル志向ロボットの雄」であるATベルゼルガを「マジンガーZ」から引き続く「人の限界を遥かに凌駕する己の分身」として描くことが出来たのだ。そういった細やかな配慮、設定があったからこそ「黒き炎」との決闘を大迫力で描けたといえよう。

また「バトリング」に関する設定もユニークなものが多く、特に「青の騎士」「黒き炎」「死の伝令」「陽気な悪魔」といった各キャラクターのリングネームは非常に秀逸であり、「バトリング」という世界観をより魅力的にしている。

この「青の騎士ベルゼルガ物語」は、最初に述べたとおりボトムズ本編との繋がりは希薄であり、アストラギウス銀河の歴史の結末も本編のものとは全く異質である。そのことが「コアなボトムズマニア」に攻撃を受ける原因になってしまっている。しかし、私は純粋に物語を読んでいけばこれほど迫力があり、魅力溢れるロボット小説というものは他に無いと断言出来る!!

ちなみに、小説や活字が苦手な方はプレイステーション用ゲームソフト「装甲騎兵ボトムズ外伝 青の騎士ベルゼルガ物語」をプレイして見ることをオススメする。「バーチャロン」や「アーマードコア」を思わせるロボットアクションゲームであり、自分でATをカスタマイズすることが可能である。(選択によってはケインがラスボスに!!)

また作中のキャラクターがイベントで登場する他、ゲームオリジナルのワキ役達も魅力一杯なのでチェックして見て欲しい。また、主役機「青の騎士」を始め「ベルゼルガ物語」のオリジナルATが各メーカーからガレージキットとして発売されている。こちらも要チェックだ。


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