「さぁ、ツッコめ!!」模型界の黒歴史

ザ☆アニメージpart1 超銀河伝説バイソン

1980年 有井製作所、代々木アニメイション(現代々木アニメーション学院)
プラモデル「ザ☆アニメージpart1」付属のおまけマンガ

簡単解説
西暦2300年、すでに地球はギド帝国の独裁者ピラト提督に支配されていた。しかし、多くの人々はその支配に対し、反感を募らせていた。かつて地球の殖民星計画に貢献したカーネル博士は地球を脱出し、ギド帝国の野望を打ち砕く為、密かに各星から同士を集い反撃の機会を伺っていた。そこへギド帝国の親衛隊であるベン・レイコック中佐」の魔の手が伸びる!!


この作品(?)は「劇場版機動戦士ガンダム」から始まった「ガンプラブーム」の際に発売された、いわば「ニセガンプラ」に付属していたおまけマンガである。この「ザ☆アニメージ」という商品、最近までまったく知られていなかったのだが、竹書房から「超絶プラモ道」(はぬまあん著)が出版され、メジャーデビュー(?)を果たしている。
もっとも、「超絶プラモ道」に掲載された事で、今までは棚の奥で埃をかぶっていたコレ等のいわゆるバッタモンキットが模型店やマニアショップ、更にはインターネットオークション等でも不当なまでに高額で売買されてしまうという困った結果になってしまったのだが…。「超絶プラモ道」の著者であるはぬまあん氏も、別にそういう趣旨があってこの本を書いた訳ではないだろうに…どうも、商品の適正価格という奴が何処かへ行ってしまったような気がしてしまう。

「ニセガンプラ」とは言うものの、原作が無い分デザインに自由が効くので当時発売されていたガンプラよりも遥かに関節の可動範囲が広く、本家に先駆けて「握り手」の他に「平手パーツ」を付属させたなかなかの優れものなのである。この関節の多さと可動範囲を利用して、アニメ誌「OUT」では本家ガンプラに「ザ☆アニメージ」のキットにジャーマンスープレックスを食らわす写真が掲載されたぐらいである。

しかも最初から金型を使いまわすことを視野に入れているので開発費も極めて安価だったらしい。何せ、頭と腕のパーツを変更しただけの続編「ザ☆アニメージpart2重装甲バトルコマンド編」(こちらはダグラム風)がある位である。

上記した金型流用以外にも、原作なんかないから版権を取得する必要も、版権の使用料を払う必要もなく。更には版権からのキット監修なんて面倒もないので非常に短期間でタマ数を揃える事が可能だったのである。その為購買側には殆ど似たデザインになってしまうので不評をかうが、少なくともメーカー側にはオイシイ路線だったのかも知れない。他にも有名な逸話として、現在もアクションフィギュア等で有名な「海洋堂」が、ガンプラコンテストがキット不足なので仕方なくこの「ザ☆アニメージ」でコンテストを開いた等、正に、社会現象にまでなった「ガンプラブーム」の黒歴史といった存在なのである。

しかしどうだろう?どう考えても当時放映されていたアニメを夢中になっている子供達が「間違えて買っちゃった」という事がそんなに多くあったのだろうか?確かに「ザ☆アニメージ」シリーズや、やはりこちらもニセガンプラと呼ばれる東京マルイの「モビルフォース・ガンガル」は箱絵のデザインからして「ガンダムのプラモデル」っぽく見せようとしているのだが、如何せんそのデザインのギャップは目に付く。恐らく、会社帰りのお父さんが「ガンダム」好きな息子の為に買おうとして間違えてしまうという程度のものなんじゃなかったのかと思うのだが…。もっとも私は当時まだ「アンヨは上手」であった為経験したワケでもないし、リサーチをしたワケでもないのでコレ以上の事は言えないのだが…。

しかし、この「ザ☆アニメージ」がどうしょうもないただのバッタモンか?と言われれば決してそうとは言い切れない部分がある。それは「メーカーオリジナル」という点である。
アリイ模型という会社は、潰れてしまった「イマイ模型」と版権を取得した「超時空要塞マクロス」のキットをリリースしていた事で知られる。当然この「ザ☆アニメージ」が模型店に並んだのはそれより少し前の事だ。
「機動戦士ガンダム」登場後、「1/144ガンダム」のヒットという思いがけない事態から本来は「ベストメカコレクション」というレーベルの中の一つとしてしかリリースが予定されていなかったガンダムのキット…いわゆる「ガンプラ」を一つのシリーズとする。皆さんご存知の通り売れに売れまくった「ガンプラ」に気を良くしたバンダイは、以降サンライズのロボットアニメの版権を殆ど独占するようになる。
そんな中、同じくサンライズ作品の「太陽の牙ダグラム」のスポンサーであるタカラがガンプラに対抗してダクラムのプラモデルを展開する。この展開がまた凄く、ヘリコプターやらコンバットアーマー輸送用のトレーラー等まで色々とリリースされたのだ。

ここに、キャラクターキットのバンダイ対タカラという構図が完成し、この構造はタカラが模型部門から完全撤退するまで続く事になる。一方他のメーカーは有力企業に人気作品の版権を押さえられてしまい、「青島文化教材社」が「伝説巨神イデオン」の版権を取得し、そこそこの人気を博した程度である。
ここで「アリイ」といった模型メーカーは発想の転換を図る。ここで生まれたのが「ザ☆アニメージ」シリーズなのだ。

メーカーオリジナルであるから版権に関わるコストや手間はかからない。たとえファンが「ガンプラの箱に似せる」というようなあざとい真似を非難しようとも、メーカーにとっては非常にオイシイのである。
そして、イマイがそんな「ザ☆アニメージ」に「ニセガンプラ」として以外の存在感を付加しようとしたのが、「存在しないアニメのキャラクター商品」という部分である。

この「ザ☆アニメージ」シリーズの特徴は、いかにも「超銀河伝説バイソン」というアニメ作品が本当にあるように振舞っている
点にある。そのため、当時アニメスタッフ志望者への通信教育や通販を生業としていた「代々木アニメイション」にキットの監修を依頼し、ちゃんと「アニメキット」として開発しているのである。

「ザ☆アニメージ」と同じくマンガをキットにおまけとして入れていた「メーカーオリジナルシリーズ」は既にアオシマの「合体」シリーズがあるが、こちらは自らの商品であるオリジナル模型のSF的な世界観をより分かり易くする為のものであったが、「ザ☆アニメージ」では違う。飽くまでオマケに過ぎないのだ。

これは上記したように「ザ☆アニメージ」というシリーズをちゃんと「アニメを原作として持つキャラクターモデル」として開発されている為である。だから、このシリーズにはマンガの他にも「セル画」や「設定集」のようなものをオマケとしてつけていたのだ。この辺のメーカーのこだわりと、いざそれを受け止める側の我々購買者の意識のズレこそが、オマケマンガを見た時の衝撃に繋がるのだ。

話によって顔が変化する為、「代々木アニメイションの社長が自分で書いている」等といったスゴイ噂が流れたキャラクター達、インチキ臭い上「何かに似ている」メカ設定、唐突なアメリカンコミック風の擬音、あまりに強引な演出、矛盾と謎だらけ(設定に)のストーリー…。
一時期一部のアニメ誌には「超銀河伝説バイソン」が実際にテレビ放映されるという話題もあったようだ。もっとも、アニメ制作を通信制にしてセル画を自宅制作させるなんて記事から察するに、単なるハッタリだったのかも知れない。

とにかく、シリーズの展開のみならずマンガの内容の方にも思わずツッコミを入れたくなる部分が満載!!あまり健全な楽しみ方ではないが、この「ザ☆アニメージ」の本当の面白さは、こういったモノへのツッコミにあるのだと思う。
現在、上で紹介した「超絶プラモ道」の他に、最近はネット上でもこのおまけマンガを見ることが出来るので、「B級」という言葉に思わず反応してしまうコアな人は是非ツッコんで見ると良いだろう。

そして、私が一番重要だと思うのはメーカーとしての「オリジナル」という心意気である。
昔は模型店は子供にとって宝箱だったように思う。私が幼少の頃は、まだガンプラブームの余韻が多少残っていた事もあり、様々なキャラクターキットが模型店に並べられていた。また、メーカーオリジナルとして、日東の「オモロイド」や「妖怪シリーズ」、イマイの「ロボダッチ」なんてのもあった。トミーの「ZOIDS」だってアニメにまでなったのは最近の事だ。それでもやはり版権キャラクターものの人気の方が圧倒的に高かったが、メーカーオリジナルのキャラクターキットにも色々なギミックやコレクション性等、中々に侮りがたい魅力があったのだ。

そして、母親と一緒にスーパーに行けば、そこでは様々なオリジナル食頑が置かれていた。ゴム動力で走るディフォルメカーや、色々と組み合わせて遊べるメカ等、非常に凝ったアイデアで幅広く展開していた。
しかし何時の頃からかそういったオリジナルな玩具というのは無くなってしまい、何処へいっても同じキャラクターばかり目に付くようになった。最早メーカーオリジナルキットなんて、模型史のミッシングリングになりつつあるような気もする。

思えば、今のアニメ等のキャラクターとのタイアップばかりが目立つ昨今の模型界よりも、荒唐無稽ながらも遊び心が光り輝くオリジナルトイが街に溢れていた当時の方が活気があったのではないだろうか?
上記している「超絶プラモ道」の第2作「超絶プラモ道2アオシマプラモの世界」のカバー折り込みに記載されている言葉を借りれば

「巨乳のおねいさんのエッチなフィギュアや、激ヤバ超レア即ゲットといったジャンルのものもあまり載っていないような気がします。でも、プラモデルが今より元気だった時代の、夢と思い出はたっぷり詰め込みました。」

といった所か。しかし逆に考えれば、原作の設定に捕らわれてせっかくの遊び心が無駄に終わってしまい易いキャラクターキットよりも、実はそういった遊びの要素を徹底的に次ぎ込んだものの方が受取側の楽しみ方に幅が出来て良いような気がするのだが…。一時期の「ミニ四駆ブーム(爆走兄弟の際のではなく)」等には、そういった「遊べる要素」というものが大きく影響したのものだと私は思うのだが…もっとも、マンガやアニメでのタイアップもあった事は確かだが。

ちなみに、英文法としてはアニメージの頭文字が母音なので「ジ☆アニメージ」と表記するのが正しいのだろうが、商品登録が「ザ☆アニメージ」で成されているのだから、「ジ」ではなく「ザ」が正しいのだろう。「リポビタンD」が「リポビタンディー」ではなく「リポビタンデー」なのと同じようなもの…か?

あ、ちなみにご存知とは思いますが、私のHN「ベン・レイコック」もコレが元ネタだったりします。(笑)

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