等身大の子供らしさ

銀河漂流バイファム

1983年 サンライズ制作 全48話 TBS系放映
声の出演:難波克弘、鳥海勝美、菊池英博、竹村柘、野沢雅子、他

銀河漂流バイファム13

1998年 サンライズ制作 全26話
声の出演:保志総一郎、鳥海勝美、菊池英博、竹村柘、野沢雅子、他

簡単解説
20世紀半ば、宇宙に進出した人類は地球から40数光年離れたイプザーロン系宇宙まで植民の手を伸ばしていた。イプザーロン系宇宙では開拓初期からUFOが頻繁に出没していたが、それらは特に地球人に干渉せず監視しているだけであった。しかし地球人がクレアド星に植民を開始した直後、突如今まで静観していただけの異星人が攻撃を開始し、奇襲により防衛隊はほぼ全滅してしまう。そんな中、親とはぐれてしまったロディ・シャッフルを始めとする13人の少年少女は自分達の力だけで地球への脱出を目指す。


いきなり余談から始まるのはココ「大惨事」の批評では結構多いのだが、今回もこのパターンだ。(笑)

丁度この批評を書く数日前、出張先の退屈凌ぎに「オーバーマン・キングゲイナー」のDVD6巻を鑑賞したのだが、コレが妙にハマッてしまって数日間は仕事が終わった後毎日の様に見てしまった。
この巻は前の5巻では全然おとなしかった私のお気に入りキャラクターであるアデット姐さんとケジナンが大活躍する話を始め、オイシイネタが凝縮されたお買い得の一品であった。いやはや、やっぱり幾らロボットのアクションシーンが封入される事が大前提であるロボットアニメというジャンルに置いたとしても、やはり世界観を根底で支え、作品をつむぎ出していくのはやはりそこで描かれるキャラクター達なんだという事を再認識させられた。もちろん、ロボットアニメならばキャラクター優先の作品だからと言ってロボットのアクションシーンに手を抜いて良い訳ではないが。

いや、もちろん取り敢えず「オタク共を萌え萌えさせときゃいいや」という志が低い事を声高らかに歌ってしまうダメ作品ならともかく、キチッとドラマとしての面白さを構築しようとするならやっぱり登場するキャラクターがそれぞれ自分の役割を果たさないとダメだ。絵がカワイかったり、スジが物凄く入り組んでいて複雑だったり、綿密な設定が存在していたとしても、その世界の中で「視聴者の代理人」として駆け回るキャラクターが死んでしまっていたのでは話にもならない。

さて、ようやく本筋に戻そう。上の余計な脱線で語ったとおり、ロボットアニメとはいえやはりドラマを見せていく以上ロボットのデザインや動きがいくらカッチョ良くてもやっぱりそのロボットの「心」たる主人公を始めとするキャラクター達を蔑ろにしていたのでは作品は面白くならない。そういったロボットアニメにおけるキャラクターの魅力として非常に上手くまとまっている例が、今回批評する「銀河漂流バイファム」なのだ。

本作の主役メカたるラウンドバーニアンであるが、各人の趣向やら趣味の問題を排したとしてもあんまりパッとしない印象が強いメカニックである。主人公のロディが乗るバイファムにしても単なる量産品に過ぎず、「機動戦士ガンダム」のように敵組織に対抗しうる唯一の手段という訳ではない。スコープドッグほど何処にでもある訳ではないが、一般兵器の枠を出ないロボットなのだ。

デザインにしてみても印象に残るのは全身の各所に配置されたスラスターぐらいなもので、いかにも「主役メカでござい!!」というデザインのガンダムを始めとする他のロボツト達に比べ、自己主張が極めて少ないのだ。もっとも動いている姿に関しては充分にカッコ良いし、敵が異星人である事を踏まえ、地球側とククトニアン側で別々のメカデザイナーを当てて意匠的に文化の違いを世界観にとけ込ませた功績もある。
ただ、主役メカとして考えるとどうも魅力に乏しい印象があり、素直に強くてカッコイイというイメージには繋がらない…要するにパッとしないのだ。

しかし実際に作品を見れば分かるのだが、この作品のキモはメカ描写には無い。この作品の魅力というのはやっぱり、等身大に架空世界を生きるロディ達13人の子供達なんじゃないだろうか?

ククトニアンの攻撃で子供だけになってしまった艦内…一応ジェイナス号が練習艦である事が幸いしてコンピューター・ボギーの補佐のおかげでなんとか動かす事は出来る。しかし元々は大人用に作られたものであり、子供がそれをそのまま扱うのは難しい。
そこで彼等は何とも子供らしいアイデアで難問を一つ一つ解決していくのだ。例えばラウンドバーニアンのシートにそのまま座ったら足がフットペダルに届かないので下駄を履いて操縦する等、何とも子供っぽい工夫を持って事に当たるのだ。そしてウブで多感な思春期らしく、戦闘中にも関わらずエロ本を読みふけってしまうなど、本当に等身大に描かれているのだ。

もちろん彼等13人の描き分けも徹底しており、それぞれがいかにもソイツらしく活躍するのだ。主人公ロディとフレッドの兄弟愛や、最年長でリーダー格ながら何処か小心で頼りないスコット、ガサツでガンコだが良い場面では必ず泣かせるセリフを言ってくれるケンツ軍曹、イタズラ好きなシャロンにサバサバしたマキ、お母さん役のクレア等など、それぞれが己の持ち味を存分にドラマに反映させてくれるのだ。

残念ながら本作は視聴率不振の為後半は打ち切りか続投かの瀬戸際で放映が進行した為、前半と後半の印象が妙にズレていたり、なんだかバタバタと慌しい展開になってしまったのが惜しまれる。初めてポリキャップを本格的に導入したプラモデルもあまり売れなかったのかも知れない。よく「プラモ狂四郎」で四郎がプラモシミュレーションに使っていたりはしていたのだが…。
しかしそんな本作も確実にファンのハートを捉えていた。それは放映終了後に彼等13人の後日談を描いたOVAが制作されたり、平成になってから「銀河漂流バイファム13」というタイトルでリニューアルされた事からも明かであろう。そしてファンのハートを射止めた要因は、やっぱり各々のキャラクターがそれぞれ「らしく」行動した等身大という部分…そこに少年少女は共感し、その少し上の女性は彼等に母性本能をくすぐられたからであろう。

ちなみに「バイファム13」は微妙に設定が変更されており、オリジナル設定としてククトニアン、地球双方を分け隔てなく救助する難民保護組織「ラピス」が登場する。このラピスのメンバーとしてホルテとルービンという2人の美女がジェイナス号の子供達と本編とはまた違うドラマを見せてくれる。特に、とあるきっかけからルービンにほのかな恋心を抱くケンツ(多分初恋なんだろうなぁ)は個人的にとても印象的に感じた。

…実は私、ホルテさんがロディ達が救助したククトニアンの赤ん坊を抱くシーンを見て、「うお〜赤ん坊と交代してぇ〜!!」と思っちゃったっていうのはナイショだ!!(笑)

最後になるが、第1話の異星人来襲に対しても機敏かつ迅速に対応していたり、飽くまで「民間人の盾」として民間人の脱出…つまりは人命を最優先させる行動する防衛軍の描写も、「ガンダム」における地球連邦軍とは正反対。彼等は異星人に対して全く無力という訳でもなければ堕落しきった無能集団ではないのだ。この辺り、得てして賛美か卑下かのどちらかに偏る日本の映像世界における軍隊の描写の中でも唯一常識的で「まとも」に思える。
このようにキッチリと正しい大人達を描いた事も、等身大に活躍する少年少女達をより一層輝けるものとしたのだろう。

本作にはククトニアンの正体と正邪逆転的な構図やら、ククトニアンと地球人のハーフでライバルキャラクターのミューラーといった魅力的な要素もまだまだ残っているが、そういった細かい部分はぜひ見て確認して貰いたいので今回は語らずにおこう。あんまり設定がどうこういっても、ねぇ…。(笑)

あ、そうそう、この作品にはパーツやカチュアなんて名前のキャラクターが登場するが、これらはテレビゲーム「ファイアーエムブレム」が本作のキャラクターの名前を流用したのだとか。なんでもスタッフの中に本作の熱烈なファンがいたのだそうだ。



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