スゴい設定の怪作

魔境伝説アクロバンチ

1982年 全24話 国際映画社 日本テレビ系放送
声の出演:柴田秀勝、中原茂、野島昭生、若本規夫、杉山佳寿子、他

簡単解説
アマチュア考古学者「タツヤ蘭堂」はヒロ、リョウ、ジュン、ミキ、レイカの子供たちと共に、遥か古代から伝説が存在する大秘宝クワスチカを求めて世界中の遺跡を発掘する旅を続けていた。地上に復活するためにクワスチカを必要とする地底人ゴブリンと衝突しながらも、彼等の旅は続く。


この作品、一部のマニアの間では「いのまたむつみ氏」が初めてキャラクターデザインを務めたことで知られてはいるが、基本的には非常にマイナーな作品である。もっとも「アオシマ文化教材社」が何故か版権を取得してプラモデルを発売していた為、立体モノマニアや当時を生きたアニメファンには比較的知名度があるらしいが…。

1982年といえば同時期に「戦闘メカ ザブングル」「超時空要塞マクロス」等が放映されていたいわゆる「リアルロボット作品ブーム」全盛期である。そんな中この「アクロバンチ」を制作した国際映画社は独自の路線で作品を排出し、女性を中心にヒットを飛ばしていた。それが「銀河旋風ブライガー」に始まる通称「J9シリーズ」である。このシリーズは従来のロボットアニメの勧善懲悪にSF的なテイストを取り入れた作風で、メカよりもキャラクターの粋な台詞廻しが印象的であった。

その「ブライガー」のヒットを受けて、別路線のロボットアニメとして制作されたのがこの「魔境伝説アクロバンチ」である。その為この作品も非常に斬新な設定が盛り込まれているのだ。まず主役メカの「アクロバンチ」であるが、このロボットは他では到底考えられないような凄まじい設定を持っている。

このアクロバンチは主人公であるアマチュア考古学者・タツヤ蘭堂が謎の大秘宝クワスチカ探索用に自ら設計した合体ロボットなのである!!これはとんでもなくブッ飛んだ設定である。ロボットアニメでは一般的に「博士」と呼ばれる人物、もしくは軍またはそれに属する研究機関が開発するものである。それをこの「アクロバンチ」では何のツテもコネも無い、しかも畑違いの男がロボットを、しかも複雑な分離合体出来るものを作ってしまうのである。

そして彼等の邪魔をする存在も「地底人ゴブリン」である。「ガンダム」以降「人間同士の戦争」が主流になっていた中ではかなり冒険した設定であろう。こういった一件ハチャメチャな設定が、以外とすんなり収まってしまっているのが逆説的な言い方をすればこのアクロバンチのスゴさなのかも知れない。

そして忘れては行けないのがオープニングアニメと合体シーンである。特に合体シーンは上記した「銀河旋風ブライガー」でもかなり強烈なインパクトを与えてくれたが、この「アクロバンチ」ではさらにやってくれた。アクロバンチは胴体部に変形する「ファルコンバンチャー」、それぞれ右腕、左腕に変形するスーパーバイク「バンチャーアロー」2機、それぞれ右足、左足に変形するスーパーカー「バンチャーホーネット」2機の5体のメカが合体することで完成する。この変形がたまらなくカッコ良いのだ!!「アタック!!バンチアウト!!」という掛け声と共に合体を開始すると、画面が暗転し,白い描線のメカニックが画面狭しと変形合体していくのだ。

そして腕部、脚部それぞれが合体する度に一瞬だけ色がつく所がニクイ演出である。そして合体完了してようやく全身に色がつき、アクロバンチとなるのだ。線だけの合体シーンは分かり難く、何回か見ないとどうやって合体しているのか分からないのだが、それを差し引いてもカッコ良さは抜群であった。

しかしそういったユニーク(過ぎる)設定が足を引っ張ったのか、はたまた時代の波に飲まれたか、この「アクロバンチ」、後半は妙に「リアルロボット的」な演出が見られる。後半ではクワスチカを巡る攻防が地球人VS地底人という構図になるのだが、ここで蘭堂ファミリーは完全に遊軍扱いであった。そんな中ゴブリンに追い詰められた蘭堂ファミリーの元へ「量産型アクロバンチ」が大量に飛来するのだ!!合体システムこそオミットしているものの、見た目はアクロバンチそのままの「量産型アクロバンチ」が大量に出現するシーンはなんとも夢に出そうなインパクトがあった。この「量産型アクロバンチ」は、リアルロボット主義に対する制作陣の「精一杯の抵抗」であり、作品としての「最小限の譲歩」だったのかも知れない。

また、ラストではクワスチカの発動で全員が違う次元へ飛ばされるというものであったのだが、この「アクロバンチ」を始め、「銀河烈風バクシンガー」「超時空世紀オーガス」等、この頃の作品はどう言うわけか最終回で全員死亡したり、因果地平に飛ばされたりといった結末を迎えるものが多い。「イデオンの皆殺し」の業に引きずられたのだろうか?

余談であるが、この「アクロバンチ」はたった2クールの作品なのに3度も放映時間が変更されている。正に魔境を探検する蘭堂ファミリーを象徴するような話だと私には思えてならない。


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