ダンバインのアンソロジー

スーパーロボットコミック「聖戦士ダンバイン」編

アンソロジー漫画 双葉社 (今回は各エピソードの紹介のみ記す)


「狩りの日々」 長谷川裕一 作

TV本編のサイドストーリー的エピソードで、強獣狩りというバイストンウェルならではのネタを活かした作品。戦いで疲弊し、補給を待つゼラーナを飛び出し強獣ガッターを狩っていたショウとチャムは森の主と戦いつづける地方領主の娘「ナナラ」と出会う。ショウは彼女達の「主狩り」を手伝うことになる。本作の注目点はTVシリーズでショウやトッドと共に召還され、最初の出撃でニーに撃墜された男「トカマク・ロブスキー」の登場であろう。
撃墜されたが実は一命を取りとめたトカマクは「聖戦士」等とおだてられていた手前ドレイクの元へ帰るに帰れず、半壊したダンバインと伊達の眼帯と義手をネタに「歴戦の勇者」として各地を騙り歩いていたという。そんな時にナナラと出会い一目惚れ、以降は親衛隊長としてカニのハサミを右手に取りつけたダンバインを駆っていた。異世界バイストンウェルの設定をうまく遊びに取り入れた作品と言えよう。



「骸の鎧」 富士原昌幸 作

TV本編後半のショウの愛機「ビルバイン」開発を巡るサイドストーリー。ショウ達ゼラーナ隊の活躍と言うよりも、どちらかというとシーラ女王の性格設定の裏付け的な味付けが成されている。
「ビルバイン」と競合試作されたオーラバトラー「スカルバイン」の魔性に捕らわれたシャルドの狂乱ぶりは凄まじい。ちなみにこの「スカルバイン」はパイロットの他にもう1名人間を「オーラ増幅器」に組み込むことにより、従来機を遥かに凌ぐパワーを持つ。しかし人を犠牲にするスカルバインを認められないシーラ女王はビルバインの開発を決定し、スカルバインには廃棄処分を下した。
ナの国の旗艦「グラン・ガラン」の思案決定の際のエピソードも作中「カワッセ」から語られる。カワッセの「戦人としてはお甘いかもしれない。だが、そういう方だから…命を賭けてお守りしようとも思えるのですよ。」という台詞は、シーラ女王というキャラクターの性格をよく表している。



「ショット追撃」 藤井昌浩 作

本作はショット・ウェポンのオーラバトラー開発に関するエピソードを描く。城塞戦用に開発した試作オーラバトラー「ヴォルバル」がミュージィを乗せたまま暴走してしまう。生物をベースとしたオーラバトラーという設定を独自に説明した作品であり、特にラストのミュージィの台詞「オーラバトラーは自分達を忌むべき存在と思っているのでしょうか?自分達(オーラバトラー)はこのバイストンウェルにあってはならないものなのでしょうか?」はTVシリーズ本編のラストシーンに繋がる印象的なものである。ちなみに、この作品のショットは少々破天荒な性格に変更されている。



「Chain」 山下博行 作

戦闘により損傷を受けたダンバインはとある森に不時着するものの、無線が故障して救助を呼ぶことが出来なかった。仕方なく自力で修理しようとしたショウに、謎の少女が襲いかかる。彼女はオーラ力を宿す不思議な石を「神」としてあがめる部族の最後の生き残りであった。部族の掟をかたくなに守る少女の生き方をショウは「そんな生き方は悲し過ぎる!!」と否定する。
そこへオーラ力を宿す石を手に入れる為にバーン・バニングスが現われる。石の力を受けた強力なバーンのオーラに劣勢に立たされるショウを見て、少女は自らを縛り付けてきた「神」を自らの手で破壊する。バーンを追い払った彼女は、自分の意思でここに住むことをショウに告げる。
「自らを縛る鎖」、ショウにとってその鎖はオーラ力であり、オーラバトラーに頼らなければならない自分である。そして名も無い少女にとっては「神」、いや「神を守れ」という部族の掟である。鎖を自らで断ち切った者、これから鎖を断ち切らねばならない者の別れのシーンは、静かながら熱い余韻を残す。



「2人ともう1人の出撃」 蜂文太 作

この「スーパーロボットコミック」で唯一のコメディ作品で、リムルがゼラーナ隊に合流した時のエピソードを描く。ニーとリムルの仲睦まじい関係を横目に、ただ片思いを続けるキーンを描いており、キーンは戦闘中のどさくさで嫉妬心からリムルに銃口を向けるのである。しかしチャムの「振り向いてもらえるように努力出来るだけマシ」という叫びで我に返る。コメディ色の強い作品ではあるが、こういった深い部分も描いている良作と言えるであろう。ちなみにこの作品のニーはリムルにベタボレ(まぁ、TV本編でもそうだったが…)している部分がやたらに強調されている。



「最終審査東京上空」 坂井孝行 作

今回の「スーパーロボットコミック」でもっともムチャな崩しをしたのが本作である。この作品はタイトル通りTV本編の名エピソード「東京上空」をベースにしているのであるが、彼女にとっては異世界である地上に飛び出てしまったガラリアは何故か「西宝映画『ハイパーロボット大戦』ヒロインオーディション」なるものに飛び入り参加する(いや、させられる、か?)のだ。「何故かは聞かないで欲しい!」と言われても思わず「何でやね〜ん!!」とツッコミたくなってしまう展開である。
そのオーディションでガラリアは「今泉リエ」と知り合う。彼女は朝の連続ドラマに子役出演して大ブレイクしたものの、後は泣かず飛ばずであった。しかし彼女は決して諦めず、いくら落ちても再びオーディションに応募するのだ。更に彼女は喉頭ガンを抱えており、余命幾ばくもないのだ。「残りの人生をきっちり使いたい」という彼女の言葉からガラリアは彼女を「戦士」として認め、「オーディション」での真剣勝負を約束する。
しかしオーディション途中で国防軍が撮影所に現われ、ガラリアは隠しておいたバストールで逃亡する。そしてリエの目前でダンバインを相手にバストールで審査用の「殺陣」を演じるのだ。ガラリアとリエ、このヘンテコな女同士の友情は一見ハチャメチャではあるが非常に面白い。今回のイチオシである。


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