富野スーパーロボットのアンソロジー

スーパーロボットコミック
「無敵超人ザンボット3」「無敵鋼人ダイターン3」編


アンソロジー漫画 双葉社 (今回は各エピソード紹介のみ記す)


「戦慄の幽霊貨物船」 板橋しゅうほう 作

「ダイターン3」のオリジナルエピソードで、TV版のストーリー展開に準じたものである。万丈は港に停泊している古びた貨物船から正体不明の暗号電波を傍受し、ビューティ、トッポを連れて調査に向かう。そこで3人は特殊金属「バイオメタルZR」でコーティングされゾンビ化した人々とそれを操るメガノイドのコマンダー「シンラ」と出会う。
TV本編でお馴染みの万丈、ギャリソン、ビューティ、レイカ、トッポのいつもの5人がそれぞれの個性を出して大活躍するアクション活劇である。
ちなみに「コマンダー・シンラ」の正体は「森羅ミキ」というアイドル歌手で、「永遠の美少女」でいたかった為にメガノイドになった。そんな彼女のマクロマシンで小さくされて「美少女フィギュア」になってしまうという顛末はなんとなくブラックユーモア的である。



「中2時代」 坂井孝行 作

「ザンボット3」のヒロイン「神北恵子」にスポットを当てたサイドストーリーであり、神ファミリーが本格的にカイゾックと戦う以前、「ビアル3世」や「ザンベース」を発掘し戦いの準備をしている様子を描いている。
突然知らされた事実と急激に変わりすぎる日常に疲れ、癒しを求めて大の親友に「私は宇宙人だ」と告白してしまったが為に、その親友からも「気持ち悪い」と裏切られてしまう恵子を描き、TV本編で徹底的に「厄介者」扱いを受けた神ファミリーの未来を占うようなストーリーで戦士の悲しさ、運命の残酷さを描いている。



「無敵中年ソンチョー3(さん)」 藤井昌浩 作

村民から絶対な信頼と人気を寄せられる村長。そんな彼は村立記念日に「神ファミリー」呼び祭りを開催し、村は大いに盛り上がっていた。しかしそこへ颯爽(?)と現われる男が…彼の名は「破乱万丈」彼は村長がメガノイドであることを告げるが、村に招待されていた神ファミリーはそれを信用せず、農村を舞台に「ダイターン3」対「ザンボット3」の決闘が始まってしまう。2体の巨大ロボットに村を荒らされた村長は激怒し、自らをメガボーグ化して2体の正義ロボットから村を守るために立ち上がる!!
と、いうように本作では正義のロボットである筈の「ダイターン3」と「ザンボット3」が悪役を務めているのだ。そして2体のロボットの戦いが見られるのもこの作品だけである。
またこの村長の役回りが面白い。彼はメガノイド化して強化されたエゴを「世界征服」といった自らの野心に繋げず、ひたすら愛する村の為、村民の為にその能力を使うのだ。これは我が国にのさばるインチキ政治家への強烈なアンチテーゼと受け取れる…かもしれない。この「スーパーロボットコミック」で一番のオススメである。



「もう1人の万丈」 鷹岬諒 作

この作品も「戦慄の幽霊貨物船」と同様TVシリーズのオリジナルエピソードである。敵メガノイドの強力なビームにより発生した次元の歪みにより、万丈がメガノイドに支配されたパラレルワールドへ飛ばされてしまう。そこで出会ったのは自分を殺そうとメガノイド側についたビューティとレイカであった。
やはり本編の設定から大きく逸脱することなく作られた物語である。TV本編が独特のラストシーンである為か、「ダイターン3」では後日談的な物語を作りにくいのであろう。もっとも最終話で殆どのメインキャラクターが死んでしまう「ザンボット3」でも同じ事が言えるのだが…。
異世界でビューティ、レイカに追い掛け回された万丈が、元の世界に戻った早々やはり2人に追いかけられるラストはお約束ともいえる演出だ。



「緑の戦士」 計奈恵 作

「ザンボット3」の外伝的物語で、神北恵子の睡眠学習によるマインドコントロールが消えてしまうという本編の設定をうまく活かしたストーリーを見せてくれる。それまで感じなかった戦いへの恐怖に堪えることが出来ない恵子、そしてその恵子の言動を理解出来ないマインドコントロールの効果が残っている勝平と宇宙太…そして敵のメカブーストの吐き出す毒ガスにより死んでいく故郷の森を目の当たりにし戦う決意をする恵子。この描写が非常に丁寧に行われている。



「天使も飛べない空」 富士原昌幸 作

TV本編で視聴者に強烈なインパクトを与えた「無敵超人ザンボット3」のエピソード「人間爆弾」にスポットを当てた作品で、正にトリを取るのに相応しい壮絶な展開を見せる。
カイゾックは最後の人間爆弾を新型メカブーストに乗せ、「ザンボットを倒したら元の体に戻してやる」という約束をする。最後の人間爆弾「千秋」の壮絶な覚悟(お腹に新たな命が!!)と、人間の乗るメカブースト相手に何もすることが出来ないザンボットチーム…。そして、「子供達の未来」を自らの手で守ろうとザンボットに代わって自らが重荷を背負うことを選ぶ防衛隊の面々…。
この作品はたった1話ながらも強烈なドラマを持っており、「熱さ」という意味ではこの本で一番かも知れない。


戻る