企画モノに面白いモノはあっても良作はナシ

マジンガーエンジェル

2005年 マガジンZ連載 全4巻 原作:永井豪 作画:新名昭彦 企画協力:プレックス

簡単解説
そう遠くない未来、日本は何者かに狙われていた。巨大な機械獣を駆使して犯罪行為を行なう輩が跳梁跋扈し始めたのである。その魔の手から日本を守るのは強く美しい女性型ロボットを駆る魔神天使、マジンガーエンジェルであった。


さて、今回は「マジンガーエンジェル」である。「マジンカイザー」がスーパーロボット大戦からスピンオフした企画なら、コッチはバンダイの玩具、超合金魂からのスピンオフである。名前からしてイロモノ臭というか、B級企画モノなイメージが先行してしまいがちなマンガだとは思う。確かにタイトルにしても美人3人組が活躍するアメリカの人気ドラマ「チャーリーズエンジェル」からインスパイアを受けたものであろうし、基本的に物語自体もお色気あり、ダイナミックプロ作品や超合金魂シリーズのファンサービスありのコメディ路線なので、語るべき部分は殆ど無い。ただ、この手のどうしてもイロモノ扱いをされてしまい易い、玩具&人気マンガ(アニメ)からスピンオフした基本的にファンサービスを目的とした企画の割に、案外ちゃんと作られている気がする。

一応、この作品に対してまったく興味がなかったり知らなかったりする人に、「マジンガーエンジェル」誕生の経緯を書いておこう。この「マジンガーエンジェル」は、元々は超合金魂にて発売されたレディロボ(アフロダイA等)の金型流用を目的とした色変え商品の企画が立ち上がった事が大本のキッカケのようだ。この色変え商品は「マジンガークイーン」として企画されており、各レディロボをレースクイーン風なイメージにリカラーしたものであった。この企画を担当した野中剛氏が、レディロボ最大の特徴であり一番の魅力であろうオッパイミサイルに新たなバリエーションを加えたのがO.P.Mである。そして誕生した「マジンガーエンジェル」商品の著作権をクリアする為にダイナミックプロに持ち込んだ際、コミック化の話が立ち上がり、実現した、という事だ。ダイナミックプロは以前はマジンガーZの絵を使ったポスターを作ったJR東日本を訴えたりした割に、キャラクターそのものの解釈に関しては寛容な様で、「ゲッターロボ」に登場するジャック&メリーのキング兄妹など、逆にアニメ(OVA)やゲームがスパロボに合わせる様な形になっている。その良い面が出た一例であろう。

超余談であり、この「大惨事!!スーパーロボット大全」を読んでくれるようなロボットアニメ&マンガファンには無関係な話なのだが、昨今騒がれる著作権云々の話…松本零士氏等は、歌手の槙原氏の歌詞の件を始め、ヤマト裁判、セクサロイドだのなんだの…まぁ、そういう方がおる訳だ。一つこの件で紹介したいのが、岩手県にあるエアガンメーカー・KTWという会社の話だ。この会社、自ら”日本で一番小さいエアガンメーカー”と言っている程小さい会社なのだが、ある日、某雑誌編集長から「韓国でニセモノが出回っている」という情報を受け、そのニセモノと言われるエアガンを作っているドンサン社の社長に会いにソウルに飛び、自分達の製品のニセモノを作って売っている事に対してクレームを言うどころか、「真似してくれてありがとう」と感謝の意を伝えたんだそうだ。で、今ではこのKTWがかつてリリースしていたエアガンの機構を少し変更した安値版をドンサン社に作らせ、それを日本に輸入してKTWが販売する、という協力体制を取るまでに至っている。勿論、エアガンとマンガ、アニメでは違うし、物語やキャラクター&設定のアイデアという形の無いモノを売りとする作家にとって、著作権というモノは死活問題になるのだとは分かる。ただ、松本氏程まで行ってしまうともう少し寛容になった方が…とも思ってしまうのだ。ファンの中にも、かつて夢中になった作品を生み出した氏の現状を見て、醒めてしまったりガッカリしてしまった人は少なくない筈だ。「真似してくれてありがとう」と言えとは勿論言わないが、創作というものの最初は模写から、なんて話もある。もう少し考えて欲しい、なんて思うのだが。

さて、余談が長くなってしまったが本題に入ろう。
この「マジンガーエンジェル」であるが、企画自体は超合金魂…製品からスピンオフしたものではあるが、マンガに関して言えば、むしろダイナミックプロのセルフパロディ的な面が強く、この作品の大前提であろう、マジンガーZやグレートマジンガーの代わりにレディロボ達が世界の平和を守る、というもの以外に関しては果てしなく寛容であり、マジンガーシリーズ以外のダイナミックプロ作品から数多くのキャラクターが参加している。「デビルマン」「アイアンマッスル」「キューティハニー」「ドロロンえん魔くん」「ハレンチ学園」といった、永井豪関係の有名作品からのゲストが目白押しである。特に「デビルマン」に至ってはさやかと不動明&牧村ミキが同じ学校に通っている、という設定になっており、東映まんがまつりの「マジンガーZ対デビルマン」的な展開が繰り広げられる。他にも、さやか達の特訓を指導する教官役に炎桜子(「アイアンマッスル」)と如月ハニー(言わずもがな)を当てるなど、役割の意外性こそ無いが、OVA版「Gロボ」の様な全員集合っぷりはファンにはたまらないのではないだろうか。

まぁ、コアなファンに言わせるとこの企画も「マジンカイザー」と同様憤慨&冒涜モノなのかも知れないが、物語としての整合性、テーマ性といったモノに囚われず、ファンサービスに徹している部分は個人的に評価している。スピンオフ企画としては、先じてOVAにもなった「マジンカイザー」がやはりOVAとしてリリースされた平成版「ゲッターロボ」と比較しても保守的になってしまい、主人公の声をかつての「マジンガーZ」に配慮して石丸氏を当ててしまい、逆に違和感に繋がってしまった事、結局戦う”悪”もDr.ヘルやミケーネといった既存のモノの流量&アレンジであった事を考えると、ファンサービスというスタイルに特化している為思いっきりの良さが感じられるのだ。マジンカイザーもそもそもはマジンガーZにゲッター線を浴びせちゃえ!!という悪ノリから生まれた存在ではあるものの、現在ではもっともらしいコジツケがされている。そのクセ、2本作られたOVAでも方向性が定まらず、些か中途半端な印象を受けてしまう。「マジンカイザー」のOVA第一作と同様安易なエロが散見する「マジンガーエンジェル」にはナゼか「マジンカイザー」程の興醒め感はないのだ。それは、曲がりなりにも一本のストーリーを通さねばならない「マジンカイザー」と、ハナッからパロディに特化した「マジンガーエンジェル」の差なのだろう。かく言う私自身、当初はバカにしていたが何だかんだで最後まで付き合えてしまったのも、その何にも考えずに読める気楽さと、ナンデモアリの面白さ故だろう。

「マジンカイザー」との差…と言えばもう一つ、「マジンガーZ」という枠に拘らねばならなかった「マジンカイザー」とは違い、「マジンガーエンジェル」は他のダイナミックプロ(永井豪)作品をも引っ張り出せた、という点だろう。コレに関しては「『マジンガー』なんだから…」と否定的な意見もあるとは思うのだが、ハナッからミネルバXの”シレーヌユニット”の存在がナンデモアリをアピールしていた訳だし、むしろコレは企画ネタの強みでもあるだろう。そもそも、ネタとしては本格的にダイナミックプロ作品を取り込んだ頃…桜子やハニー辺りが登場してからの方が面白いのだし。逆に言えば、企画ネタらしくナンデモアリで勝負できなかった「マジンカイザー」の弱さこそがココにある、と言えないだろうか。かつてのファンを意識した声優の起用、その割に安易とも言える序盤のお色気路線、”新たなる脅威”ではない敵…何もかも取り込んでしまう訳にはいかなかったが故、ああなってしまったのではなかろうか。

もっとも、物語としての「マジンガーエンジェル」がどうかと聞かれれば、内容らしい内容は皆無なので評価は非常に出し辛い。当初あったのであろう「チャーリーズエンジェル」的な要素は割と直ぐに薄くなり、謎の指令的立場な筈だったプレックスの野中氏モチーフの野中博士が割と目立ったポジションに居座ってしまう。前述した明やミキの登場も些か唐突だし、ウリの一つであろうヒロインやロボットのアクションシーンも総じて薄め。まぁ、今の時代にはチト厳しい永井氏の絵でパンチラだのシャワーシーンーをやられるよりはマシかも知れないが、各ヒロイン達も可愛くは描けているが、動きの描写としてはイマイチスピード感が足りないというか、やや紙芝居めいて見えてしまう部分もある。完成度として考えれば、決して高くは無い。

ただ、企画モノとして今まではオッパイミサイルこそ有名ではあるが、マジンガー達ヒーローロボの影で埋没していた感のあるレディロボ達を主役に持ってくるアイデアは面白いし、他の永井豪作品の取り込みも、まぁ嫌味にはなっていない点で評価出来るだろう。コミックスの帯に購入券がついていたラ・シレーヌ・ド・ノワールやクイーンオブゴールド、他にもアクアブルーマーメイドといった強化形態のアイデアも秀逸で、非常に面白い。敵メカでもダブラスM2が何体かで合体してキングギドラ風の機械獣になったり、如月ハニー専用のオリジナルレディロボを登場させたりとロボット好きとしても注目できる点は多々ある。また、共演ネタとしてファイアービューナスやゴッドマジンガー、ビッグダイタン等が登場しているのはダイナミックプロのファンなら嬉しいネタだろう。

…まぁ、ミネルバの飛行&武装強化パーツであるミレーヌユニットのアイデアに関してはかなりスゲエ!!と唸ったものの、肝心のハンマーとかカッターとかドリルがついたO.P.Mは正直…特にハンマーなんかは下手なSMエロマンガみたいで悪趣味な気がするが。

ちなみにこのO.P.M、マガジンZ誌上でキン肉マンの超人と同じくアイデア募集をしており、マンガの方でも幾つか読者投稿アイデアが採用されている。ちなみにコミックでも白羽取りを敢行したロケットパンチ型O.P.Mを投稿したのは、同じくマガジンZで連載を持っていたマンガ家の長谷川裕一先生。しかも編集部から話を持っていったりした訳ではなく、コッソリ読者に混ざって投稿したんだそうな。長谷川センセ、アンタって人は…。(笑)

ともあれ、余談も含め、”企画モノ”故に良作と呼ばれる類にはとてもとても値しない作品ではあるが。それでも楽しませるという点においては実に良く出来た”企画モノ”だ。



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