強い女の自己主張

重戦機エルガイム

1984年 全54話 サンライズ 名古屋テレビ系放送
「OVAフルメタルソルジャー」も存在
声の出演:平松広和、本多知恵子、川村万梨阿、大塚芳忠、速水奨、他

簡単解説
2連恒星サンズの周囲に5つの星が巡るペンタゴナワールドの辺ぴな惑星コアム。その更に片田舎ウゴールから青雲の志を抱いて旅に出た2人の若者「ダバ・マイロード」と「ミラウー・キャオ」。2人はひょんな事から託された100万ギーンの手形を「アマンダラ」という人物に渡す為に元盗賊の娘「ファンネリア・アム」と共に旅に出る。しかし彼等が行く先々で起こす騒動が、次第にペンタゴナの支配者「オルドナ・ポセイダル」打倒への大きなうねりとなっていくってわけ。ま、そう言うことだ…。


この「エルガイム」は、「機動戦士ガンダム」の富野由悠季氏が監督を務めた作品ではあるのだが、いわゆる独特の「富野臭」というようなものは感じられない。それはメカニカル、キャラクター両デザインに「永野護」氏を起用するなど、若手スタッフを多数起用した為であろう。他にも「聖戦士ダンバイン」の「ハイパージェリル」の作画監督を手掛けた「大森英敏」氏や「北爪宏幸」氏等、当時有望と言われていた若手クリエイターが多数参加している。その為このエルガイムは当時としてはデザイン的な面で非常に斬新な作品であり、若さを前面に押し出した爽やかさが印象的に感じられる。

その斬新さはメカニック面に賢著に現われている。例えば主役機である「エルガイム」は軍の試作機として設定された「ガンダム」とは違い、ダバの義父がカスタムメイドしたワンオフ機である。

このエルガイムは良く言えば非常にスマート、悪く言えば物凄く華奢なロボットである。例えばジャンプの際はふくらはぎのアーマーを開いて内部構造を露出させ、傷つけば内部のダンパーからオイルを噴出す。更にメイン火器「パワーランチャー」は本体腰部についたコネクターにエネルギーチューブを接続しないと発射出来ない等、かなり貧弱に感じられる設定を持っている。しかし実際に映像として動いている姿を見ると、そう言った貧弱さが全く悪影響を及ぼしていない。むしろ洗練された機能美のようなものまで感じられてしまうのだ。その他にも360度スクリーンや「マジンガーZ」の「ホバーパイルダー」を洗練したような「スパイラルフローシステム」等、従来とは異なる「デジタル的」な設定を持っているのだ。

更にヘビーメタル(以下HM)はA級、B級とランク付けがなされており、さらにB級以下の外兵器として「マシンナリィ」というメカも設定している。特にA級HMにしか扱えないペンタゴナにおける最強兵器「バスターランチャー」は「Zガンダム」に登場する「ハイメガバズーカランチャー」や「ハイメガランチャー」の前身とも言うべき武器であり、エネルギーを充填して凶悪的な破壊力で敵を破壊する様は「宇宙戦艦ヤマト」の「波動砲」に通じるインパクトを視聴者に与え、A級とB級の格の違いを印象付けさせてくれる。

但し、メカのA級、B級というクラス分けが作品そのものに上手く順応していたか?と言われればそうでもない。ダバのライバルたるギャブレー君がグライアからバッシュに乗り換えた辺りから、登場するヘビーメタルの殆どがA級になってしまい、別段メカの格付けなどどうでも良くなってしまうのだ。
そもそも、ペンタゴナにおけるヘビーメタルは安価で汎用性も高いマシンナリィに取って代わられつつある、言わば消え行くメカニックという裏設定もあるぐらいなのだが、中盤以降、急速にそういった要素が物語から消えて行く。

数少ないA級ヘビーメタルがボコボコ登場するのは、実はオリジナルは一機のみで後は全てコピーだ等という設定がアトヅケされたり、A級であるにも関わらず、単体ではバスターランチャーを使えないヌーベルディザート(コチラは試作機故、という設定が成されていたが)の登場などにより、いよいよ持ってA級B級というクラス分けがなかった事になってしまっている。この辺をもう少しキチッと描けばもっとペンタゴナワールドという世界観が広がったのでは?と残念に思えてならない。

その他にも「スレンダースカラ」のハッチから這い出して登場するケレン味たっぷりの「バッシュ初登場」シーン(ダンパー等の内部機構が働いているカットを非常に巧みに挿入している!!)や、最後の決着シーンにおいての「豪華絢爛な黄金のオージ&アマンダラ」に対する「純真な思いを象徴する純白のエルガイムMK−1」という構図(もう一機おいしい所総ト取りの男がいたりするのだが/笑)は非常に巧妙な演出と言えるだろう。カッコ良いデザインのメカにオンブにダッコされることなく、映像において更にメカを引き立てようとした演出はやはり特筆すべきものであろう。

また、本作の特徴としては「女性の台頭」というものが挙げられる。実世界で女性が「社会進出」をはじめ強くなった為であろうか?本作に登場する女性キャラクターの自己主張は非常に激しい。アムとレッシィの「ダバ争奪戦」に始まり、顔を傷つけられると激怒する「ネイ・モーハン」、徹底して男嫌いを貫く「リィリィ・ハッシィ」、そしてダバに対する「アム&レッシィ」のダークバージョン的なポセイダルを巡る「フル・フラット&ミアン・クウ・アッシャー」…この作品の女性キャラクター達は、自分が女性であることを強烈にアピールしてくるのだ。

その為か非常に裸や下着が登場する演出(決してイヤらしい意味ではない)が多く、下着等にも細かな設定が成されていた。これは前述した永野護氏が服飾デザイナー的センスを持っている為であろう。この「エルガイム」に登場するキャラクターの服装や髪型は従来のロボットアニメには見られなかったものであり、非常にファッショナブルなのだ。この細かな設定やデザインワークスが、現在も展開中である「The Five Star Stories」に昇華されていくのである。そして、そんな女性陣に隠れがちな男性キャラクターの中にも、徹底的に「みんなのヒーロー」的性格設定を為された主人公ダバに対し、常に自分に正直に、本音を語る相棒のキャオや、2枚目ながらギャグをもこなす新感覚(?)のライバルキャラクター「ギャブレット・ギャブレー」等、個性的なメンツが存在しているのも忘れてはいけない。

この作品、第1話が「ドリーマーズ」、最終話が「ドリーマーズ・アゲン」と韻を踏んでいる。「ドリーマーズ」、つまりは「夢見る者達」と小粋な副題をつけるだけあり、この「エルガイム」のキャラクターは若いパワーに溢れる魅力がある。物語的には支配者からの解放、真の自由への戦いというものであり、富野氏が監督を務めた「戦闘メカ ザブングル」に近いものと言える。しかし「ザブングル」はシビリアン達の力強さ、逞しさが新たな時代への波となったのに対し、本作「エルガイム」では、自分という存在に悩み、もがき、進む…そんな赤裸々な若者の力、感情の脈動こそが時代を大きく動かしたのである。これは本作に携わった若いクリエイター達の心意気がフィルムにそのまま投影されたものなのではないだろうか?そんな若者らしい爽やかさを感じて欲しい。

また、本作には「リリス」という妖精のようなキャラクター(ミラリー族という)が登場するのだが、これが「聖戦士ダンバイン」に登場する「チャム・ファウ」等「ミ・フェラリオ」にそっくりなのだ。その為それを深読みしたファンが「実は富野監督の描く異世界はすべてバイストンウェルなんだ」等と言い出し(当の富野氏も「ペンタゴナ・ワールド」は「バイストンウェル」の一部等と発言していた。)各メディアでちょっとした論争を生んだという。確かに「ダンバイン」的要素や、前記した通り「ザブングル」に近い設定を持ってはいる。しかし本作はあくまで「ダンバインで描ききれなかった物を描いた別世界の物語」なのだと私は思う。

さらに余談ではあるが、作画陣の遊び心なのか、この「エルガイム」には本作に携わった「ビーボゥ」が参加した他のサンライズ作品のネタやキャラクターが密かにゲスト出演している。例えばリリスの宇宙服の推進器が「ダンバインのオーラコンバーター」そっくりであったり、サートスターで「トロン・ミラン」がキャオの横で踊っていたり、スレンタースカラの通信モニターに一瞬「ハルル・アジバ」が映っていたりしている。こういった遊びの部分を捜しても面白いかもしれない。


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